2019/09/19

馬車馬ちゃんと異世界

・マスターオブマスターがいる時空
・相変わらず馬車馬してるナマエとマスターオブマスターは出来ている
・何故かカルデアにたどり着いた馬車馬ちゃんと馬車馬ちゃんが心配なマスターイラとからかいたいマスマス


しばらくマスターにお会いできそうにありません。私は多分拗ねた顔をしていると思う。しかしながら、マスターのマスター、即ちマスターオブマスターの頼みなのだから仕方がない。彼は自分が何かしただろうか、と私に尋ねた。それは違うと首を左右にふる。
「マスターオブマスターに頼まれたんです。なんでも別世界の調査だとか言っていました」
「調査?」
「本来ならばマスタールシュ様に頼むそうなのですが、マスタールシュ様には他を頼んだらしく、かといってマスターたちにも頼めないのでと私に回ってきたようです」
「お前は腕がいいから当たり前だろう」
彼はそう言ったものの、口を真一文字に結ぶ。何かを考えるような姿に私は首を傾げた。
「無理はするな」
そう言った彼は私の髪を撫でる。
「必ず帰ってくるんだ」
「はい、必ず」
「ナマエ」
彼は私の名を呼ぶ。私は彼を見上げる。そっと頬に触れられた手に、私は酷くーー酷く。


はっきり言ってこの世界は変だ。たどり着いたカルデアとやらはおかしい。闇に近い感覚がする。なんだかんだで招き入れられた私であるが、私のやることはほとんどない。ハートレスもいないからダヴィンチちゃんやドクター、マシュと話したりする。何かは起こる気はする、けれど、物事の中心には行けないから私はこの世界で何が起こったのかを把握するのに時間がかかってしまったのである。

「レイシフト適性がかなり高いし、魔力の回路も安定している上に優秀。うーん、もっと早くに調べるべきだったかな」
ドクターはそう言って困ったように笑った。私はよくわからないので首をかしげる。
「レイシフト、は、藤丸とマシュのように他の世界に行くことですか?」
「他の世界じゃなくって、過去だね。この世界の昔だよ」
「時間を遡る?」
「そういうこと」
彼はそう頷いて、もう一度私をみた。彼は時折、私にわかりやすいように説明してくれる。この世界にはいくつもの国があって、いくつもの物語があるのだと。
「ナマエちゃん、手を貸してくれないかな。藤丸くんやマシュの力になってあげて欲しいんだ」
「それはもちろん、喜んで。私は藤丸やマシュ、ドクターやダヴィンチちゃん達の味方でいたいし、力になりたいとはいつも思ってます」
「……危険な目にあうんだよ、それでもいいのかい?」
「それは慣れているので」
苦笑いしてしまったのは仕方ないと思うのだ。彼は目を瞬いたけれど、すぐに、ありがとう、とお礼を告げる。私は気にして欲しくないので首を左右にふった。

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「サーヴァント……召喚獣みたいなもの?」
そう首を傾げれば、藤丸が頷いた。獣じゃなくて人間だけどね、と彼は告げてサークルの前に立つ。魔法陣のようではあるが、魔法陣ではないそれを眺めて藤丸のそばにいるサーヴァントとやらをみた。
「ここからエミヤさんやクーフーリンさんは来たんですか」
「君の問いは難しいな。来た、というよりはこれを用いて召喚されたんだ」
「他の世界から?」
「いや、過去あるいは未来からだろう」
ふーむ、ならばマスター達が来ることはないんだろう。チリシィも。サークルの前にたって藤丸に聞いた言葉を唱える。青白く光ったそれは天高く粒子を巻いて一人の人を作り上げる。そうして現れたのは鎧をまとった女の子である。
「私はガレス。円卓第七席、アーサー王に仕えた騎士です!」

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「ナマエちゃんは世間知らずというか、無垢なんだよ」とはドクターの言葉だ。たしかにナマエは世間知らずである。同じ時代を生きているはずなのに、少しくらい知っていそうな歴史も国さえも何も知らないのだ。いくらなんでも世間知らずすぎる、とは一部のサーヴァントの話ではあるが、それに対するドクターの返答である。
「この世界、あの世界。ナマエちゃんは昔からよく口にする言葉だ。レイシフトだって他の世界に行くものだと思っていたんだよ」
「それは、知識がないからでは?」
エミヤの問いにドクターは首を左右にふる。
「いいや、それは少し違う。彼女は説明すれば理解するんだ。だから、もしかしたら、彼女はーー」

「ナマエって何処から来たの?」
食堂である。ガレスちゃん達とご飯を食べていれば藤丸が不思議そうに告げた。
「ナマエさんは大きな時計塔がある街に住んでいると以前お聞きしました」
「ロンドンか?」
「いえ、違うそうです。なんでも朝日が美しい街なのだとか」
「そう、屋根に登ってみる朝日は最高なんだよ」
そう言って食事をとる。国は?と聞かれてもわからないため私は首をかしげる。
「自分の出身国もわからないのか?」
「うーん、そうなるというか……」
困ったように笑う。この世界ではないのだから、この世界のような概念はない。
「私の住んでいる街には大きな時計塔があって、そこには七人の人が暮らしてるんだ。正しくは一人と六人の弟子がね。私の街は彼らに見守られて毎日を過ごしてる」
「王様じゃなくて?」
「王様って感じじゃないなぁ。私や私の友達達はその六人の弟子の弟子。で、私は六人のうちの一人、マスターとしたっている人の中で一番弟子みたいなものだったから、時計塔には暮らしてないけど、自由に出入りできるんだ」
これでも一番優秀だって言われてるんだよ、といえば彼彼女らは目を瞬いたのだけど。マシュは昔話したことがあるからか、クスクスと笑ってみせた。
「ナマエさんからは色々な話を聞きました。冒険の話、マスターの話。その全てがお伽話のようでした」
「本当にあったことなんだけどなぁ。ちなみにこの近くに放っぽり出したのはマスターのマスター、即ち愉快犯と名高いマスターオブマスターの頼みだから」
ムーとしながら告げてみる。まさかこんな意味がわからない世界だと思いもしなかったが。一応毎日報告は紙に書いて鞄に入れればチリシィが届けてくれるし、マスターからはマメに返事が、マスターオブマスターからはたまに返事がくる。現状維持!とはマスターオブマスターの言葉だが、そろそろマスター不足が起きそうだ。ハートレスと呼ばれる彼らが現れる気配はなさそうである。
「その街が隔離されていたのでしょうか。歴史の要から」
「桃源郷や理想郷のようにか。それなら辻褄があう。なにはともあれ、コイツは人を疑うことを知らない。お人好しすぎる。性善説論者だといいたいくらいにな」
アンデルセンの言葉に、人を疑いたくないんだよなぁと思う。疑心は闇を呼ぶからだ。まぁ、別に騙されたってどうってことはないのだけれど。

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大怪我をした藤丸に魔法をかけたのがいけなかったらしい。魔術と魔法がどう違うのかは知らないけれど、おそらくそんな魔法はないのだろう。周りがポンポン魔法っぽいことをするからつい使ってしまった。傷が塞がった藤丸に、息を落ち着かせた藤丸に、多分もうすぐ目を覚ますと思うよ、とマシュに告げて近くの倒木に座った。
「ナマエさん、今のは」
「秘密」
そう人差し指を立てて笑う。まぁ、そういったところでモニターされているのだから恐らくはドクター達も見ている。現にピッという音がしてドクターの声が聞こえた。
「な、ナマエちゃん!?今のはなんだい!?」
「秘密」
「秘密って、そんなレベルの話じゃないぞ。これはまるでーー」
「そう、ロマ二。あれは恐らく魔法だ」
断定したダヴィンチちゃんに、私は苦笑いするしかない。
「やっぱり魔法は異端なんですね」
「異端なんてものじゃないぞ!」
ドクターの慌てたような声がする。ふうむ、異端なんてものではない、とは。
「あんまり、そういう場所では使わないようにしていたんですけど、藤丸が酷い傷を負ってしまったので……つい」
「ーーナマエさんが住んでいた街ではみんな使えるのですか?」
そう尋ねたマシュに、才能がある人は?と首をかしげる。でもきちんと教えてもらったり、力を譲渡されれば使えるものだと思う。ダヴィンチちゃんが真剣な顔で私をみる。
「ナマエ、人理修復が終われば元いた街に帰るんだ。いいね。君の力は異質すぎる。見つかればただじゃおかないぞ」

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マスターオブマスターに報告したら、知ってた、と返事がきた。サプラーイズと書かれたそれに変な顔をしてしまったのは仕方がない。サーヴァントとやらが増えた今、魔術師の先生?云々の人もいるようなのでなんとも言えない私である。マスターからは気をつけるように釘を刺されてしまい、しゅんとする。怒られてしまった。チリシィが元気だしなよと背中を叩いてくれたけれど誰かが来たので消えてしまったけれど。

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仕方がなかったのである。現れた化け物はどう見たってハートレスだ。人であったはずなのに化け物へと姿を変えたそれに、藤丸達の前に出る。そしてそのまま軽く助走をつけて走り出す。手を前に出しキーブレードを取り出すとそのまま相手の攻撃をひらりと回避し、宙に飛び上がった。そのままハートレスの背後に向き、落下する勢いを使ってハートレスを切り裂いた。光の粒子となったそれは宙に向かって舞う。うむ、体は鈍っていない。ゆらり、と影から現れたハートレスに、私はキーブレードを構える。
「ルクスを回収させていただきます!」


「あちゃあ、馬車馬スイッチ入っちゃったかぁ」
唖然とナマエを見ていれば、不意にとなりに人の感覚がしてそちらをみる。黒いフードを被った男は、ごめんねぇ、馬車馬ちゃんったらスイッチ入るとああなるのよ、などと警戒するこちらをよそに告げる。敵意はない気がするので、馬車馬ちゃん?と首を傾げれば、彼はナマエちゃんのこと、と告げた。どうやらナマエの知り合いらしい。
「君大丈夫?周りは俺のこと警戒してんのに、いや、本当に大丈夫?見るからに俺怪しいでしょ」
「いや、ナマエの知り合いなら大丈夫かなって」
「あぁ、そういう感じね、」
そう言った彼はまたナマエの方を見た。一瞬眩く光ったあたりに、ナマエはただ立っている。そして握っていた何かから手を離したナマエはハッとしたように振り返った。
「藤丸、マシュ、だいじょ……マスターオブマスター!?」
「やっほー、馬車馬ちゃん」
パタパタといつも通りの速さで走ってきた彼を見上げる。
「どうしてこちらへ!?」
「サプラーイズ!ってね!でも、イラっちはいませーん」
「マスターは、お忙しいでしょうから……」
「え、なに、ナマエちゃん、俺暇っていう認識?俺が一番上なんだけどな?」
顔はよく見えないが彼はコロコロ声色が変わる。マシュが首をかしげる。
「えっと、ナマエさんの知り合い、ですか?」
「私の師の師にあたる人です」
「そ。ナマエから聞いたろ?六人の弟子を持つ一、それが俺!」
「そんなことより、何故マスターオブマスターがこちらに?」
「でたよ、真面目ちゃん。もうちょっと……こう……歓迎というか、そんなのはないの?歓迎のハグとか!」
そう手を広げた彼に、面倒くさいのでハグしようかと思えば「今のなし、イラに怒られる気がする」などと彼は告げる。
「マスターオブマスター、任務中にお会いできて光栄です」
「そうそう、そういうの!」
「で?」
話を急かせば、彼はおいおいと泣く真似をして藤丸に声をかけた。
「フジマル、馬車馬ちゃん、酷くない?」
「え、俺の名前」
彼はケラケラと笑うと不意に真面目な声で私を呼んだ。
「ナマエ、この世界と俺たちの世界の道が繋がった原因だが、おそらくこの世界の人理とやらが燃えてしまったことが関係している。この世界は非常に不安定だ。本来なら消えて無くなる世界だからな」
「ーーしかし、消えていない。彼らはトラバースタウンにたどり着いたわけじゃない」
「そ、だから、消えるのを防ぐためにナマエを送り込んだってわけ。まぁ、手遅れなら鍵を閉めて戻っておいでって言ったから」



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