2019/09/19
↓改変
この世界は変だ。魔法はないけど魔術はある。召喚獣はいないけど人は召喚される。世界が闇に飲まれることはないが、世界が燃え尽きようとはする。そして今私がいる場所は狭間に閉じ込められているらしい。だから、マスターオブマスターは全ての蹴りがーー焼却にしろ修正にしろーー着くまでここにいろと行ったのだろう。そうして最後は鍵を閉めて帰ってこいと告げたのだ。
「ナマエさんは何故かレイシフト適性も高いし、マスター適性もあるのですが英霊を呼べないようでして」
困ったように告げたマシュに、フジマルもまた困った顔をする。私もまた困った顔をした。ドクターに色々検査されて判明したことらしい、が、私からすれば意味がわからないことだらけだ。恐らく英霊と呼ばれる彼彼女らが呼べないのは私が正式にこの世界に属していない関係だろう。
「でも、レイシフトはできるよ」
「サーヴァントなしでは危険すぎます、ナマエさん」
「自分の身は自分で守れるよ」
そう言ってエミヤ氏特性のアイスキャンデーを食べる。美味しい。おしいのはシーソルトがないことだ。
「というか、ずっと思ってたんだけど、ナマエってどこの国の人?」
そう尋ねたフジマルに、私はまた困ったような顔をしてしまう。私はこの世界の人間じゃない。だから、国という場所に属してなんかいないのだ。私の代わりにマシュが答えてくれる。
「ナマエさんはどこ出身なのか、人種も何もわかりません。ただ、霊長類ヒト科であることは間違いありません。ナマエさんが迷い込んで来られた際、カルデアで探したのですが何一つ分からずじまいで」
「え?記憶喪失ってこと?」
「記憶はあるよ。でも、国にいた記憶はないよ」
フジマルの言葉にそう返答する。彼は目を瞬いてーー首を傾げた。
「このカルデアで一番謎に包まれているのがナマエさんです。書く文字も私達とは少し違いますし、知識も少し違います」
彼女はそう言って、謎です、と私を見た。
「まるで理想郷から来たようなーー桃源郷から来たようなーー別の場所から来たような」
マシュや一部のスタッフが持つその認識はあたりだ。恐らく、英霊なんかもそれを感じ取っているに違いない。
「へぇ、桃源郷かぁ。行ってみたいなぁ」
そうぼやいたフジマルに、「フジマルとリツカならいつか来れるんじゃないかなぁ」と告げる。本当にいつか、レイシフトしてきそうだ。
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レイシフトの原理が意味がわからなくて?を飛ばす。説明してくれたスタッフは苦笑いをした。
「そのまま空間を繋げられないんですか?」
「ナマエちゃん、それは魔法になっちゃうよ。人類はまだその域まで達してない」
「いつも思うのですが、魔法と魔術の違いはなんなのですか?」
私の問いに彼らは言う。
「ナマエちゃんは一般人だったのかなぁ」
「それならこんな問いも仕方がないね」
「いいかい、ナマエちゃん、魔法と魔術はねーー」
ならば、私のこの手段は魔法だろう。こちらを見て動きを止めた彼らに、癒しの魔法をかけたフジマルだけが「わぁ、魔法みたい!」と声を上げた。深い傷を負ったフジマルにこれは流石にいけないと治癒魔法をかけたのだ。サーヴァントも静まり返った。歓喜を浮かべている人もいる。しかし、それよりも起こったことに衝撃を受けたらしい。賢王と呼ばれる王様が私を見る。面白そうに。
「魔法か」
「魔法、ですかね。線引きが相変わらずわかってないので何も言えませんが」
私は苦笑いしておく。ダヴィンチちゃんが「ナマエ、いつからこんなことが?」と尋ねられたので、最初から?と首を傾げた。
「幼い頃にマスターに教えてもらって」
「マスター?貴女はサーヴァントであると」
「いえ、貴方達のように主人を指すのではなくーー」
「師匠を指す?」
ドクターの言葉に頷く。彼は小さくなんてことだ、と呟いてから頬を叩いた。
「とりあえず、藤丸くん、検査しよう、検査!検査して異常が無いならナマエちゃんも一緒にレイシフトするようにしよう!」
「え!まじですか!やった!」
そう言ってバタバタと走っていったフジマルとドクター、マシュやスタッフを見て息を吐く。
「ナマエは魔女であった、と」
「魔女では……ないんですけど」
この返答は許して欲しいところである。
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「ディック?」
騒然としている場所になんだなんだと野次馬で見に行けば、見知った顔がいて口を開く。私を見つけた彼は、一瞬表情を明るくしたが、すぐにそれをかき消すように口を一文字に結んだけれど。人混みの先にいるフジマルが同じように首をかしげた。
「ナマエの、知り合い?」
「従兄弟弟子というか……なんでディックがこんなところに?」
英霊やスタッフの間をすり抜けてそう尋ねる。彼は呆れたように口を開く。
「お前がさっさと帰って来ないからだろ」
「え……えぇー、なんだそれ。誰に言われて来たのさ」
「マスターオブマスターに問いただした」
「君って変なところもマスターアセッド様に似てるよね」
「それは悪口か?」
「褒めてるよ。マスターオブマスターやマスターイラ様に聞かなかったの?」
「お前がここにいることは聞いた」
「でたよ、ディックの長所であり短所。肝心なところ聞いてないんだから」
そう言ってやれやれとする。話を聞いているフジマルがもう一度、知り合い?と聞いた。
「知り合い知り合い。同郷の知り合い」
「同郷の?しかし、外は燃えてーー」
「騙されて無いかね」
「私のあだ名は?」
「馬車馬だろ」
「間違いなく知り合いだ」
うむ、と頷く。私の反応にフジマルがまた首をかしげる。
「でも、どうやって来たの?」
「あー……あー……もう、ディックのせいで話がややこしくなるじゃないか。ここ、難しいんだよ、魔法じゃなくて魔術だとか、人類はそこまで到達してないとか色々あるんだよ」
ため息をついてそう告げる。ディックは腕を組むと指を口に当てて離した。ふむ、言葉の魔法をかけたらしい。
『どういうことだ』
私も同じく言葉の魔法を使用する。
『どういうことも何も、この世界の概念がだいぶ違いすぎる。主に対価なんかを必要とする魔術系統が多いみたいだ。魔法はないし、キーブレード ももってのほかだ』
『いきなり部屋に入ったのはまずかったか』
『かなりね。で、本当は何の用?心配だけできたわけじゃ無いんでしょう?』
『マスターオブマスターがこの世界にハートレスが現れ始めたと言っていた。闇の世界に通じる扉ができたとも。この狭間の世界も消えかけてる』
『時間がない?』
『まぁな。闇の世界の扉を閉じるように言われだだけだ。ーー彼らは味方か』
『味方だよ』
私の発言に、彼は息を吐いて両手をあげる。
「すまない、敵が味方かわからなかった。ナマエの味方であるなら俺は敵意はない。俺はディック。ナマエとは同郷だ」
そう言った彼は私を指差した。
「ナマエを連れ戻しにきたが、何か厄介なことになっているようだな」
「連れ戻し……えっと、ディックさん?」
「ディックでいい」
「ディックは何処からきたの?」
ほうら困る質問だ。私を凝視されたって困る。
「俺たちはお前達が思いもしない場所から来た。先程ナマエから話は聞いたが、色々と違いすぎるようだからな。そして、お前達は知らない方がいい」
「どうして、ですか?」
「おおよそ、理解できないだろうからだ。さっきの言葉だってそうだ。あれは俺たちの言葉だがお前たちは理解できない」
「でも、」
「あー、あのね、フジマル。多分、私達が本当のことを言っても貴方達は信じないと思う。理解するしないとか、そういう話の以前に、嘘だとか冗談だって思うと思うよ。だから私はいうのを避けてきた。頭がおかしい人だって思われてしまうから。だって、貴女達の多くは理解できないものに対して恐怖や偏見を抱くでしょう?」
そう告げて首をかしげる。何も答えない彼彼女らに続いて口を開く。
「でも、それはきっと貴女達なりの防衛本能なんだと思う。理解できないものに対してのね」
「ーーそれでも知りたいって言えば、教えてくれるの?」
フジマルの言葉にディックが何か言う前にいいよ、と頷いた。
「私たちはずっと遠くから来た。本来なら関わる可能性はかなり低い。貴女達のような世界とはね」
苦笑いしながら告げる。
「世界は無数にある。それがどういうもの世界であれな。時たまに世界と世界の扉をつなげる扉が開き、世界から世界へと渡る道ができる。それを管理しているのが俺たちだ」
ため息混じりに告げた彼に私は口を開く。
「管理してるって……なんか傲慢な言い方だなぁ。私達は世界と世界をあるべきものの姿に戻すことが役割だよ。世界と世界は基本的に繋がらないからね。それが世界の秩序の維持に繋がるから」
「お前、この説明で秩序乱してるぞ」
「ディックが急に現れるのが悪い。……私達は世界を超えた干渉を少なくするために働いてる」
「働いてるの?」
「うん、だから、ここに来たのも不安定なこの世界の干渉云々っていう話なんだけども、マスターオブマスター――一番偉い人に、大変そうだったら手伝ってあげてって言われたから私は手伝ってる。世界と世界を分けることはいつでもできるといえばできるけど、それをしてしまうとフジマル達が危ない気がするから、フジマルが人理を修復?してからにしようと思って。だってここは取り残された場所だからね」
客観的にそう告げる。闇と光の狭間にこの世界はある。前はジリジリと闇が迫ってきていたのにジリジリと光が増えたのはフジマル達の頑張りだろう。
「えっと、じゃあ、もしかして、人理修復したらナマエさんとは会えなくなるのでしょうか?」
「そうなるね。フジマルとマシュ達いつかレイシフトとか言って来そうだけど」
「ええ〜なんか、せっかく仲良くなれたのに」
「?会えなくても友達でしょう?形はどうであれ、心が通じていたらそれでいいんだよ」
そう言えば、フジマルとマシュがちょっと不貞腐れたけど。スタッフたちは頭を抱えているが、英霊はいがいとすんなり受け入れるらしい。いや、近代側は頭を抱えているが。
「えーと、とりあえずディックくん?だっけ?検査してもいいかな?」
「構わない」
==
「そもそもナマエは俺たちの中でも頭一つ飛び抜けた奴だからな。自分のマスターの為に働きすぎる。だからついたあだ名は馬車馬」
「働きすぎる?それくらいしかマスターに恩を返せる方法はないんだよ?あと、馬車馬は自称してたら周りが呼び出した。でも様付よりずっとマシ」
ムッとしながらディックの言葉にそう告げる。
「すごい師匠に入れ込んでいるんだな」
「師匠に拾われてなかったら私今生きてないからね?多分路上で死んでたか叔母さんに殺されてたよ?」
そう苦々しく告げる。周りはピタリと動きを止めた。近くでお茶を飲んでいたシェイクスピアさんが勢いよくこちらにきたが。
「その話、詳しく!」
「詳しくも何もそのままですよ」
「元々王族の娘だったのに、気が狂った叔母の手から逃されるために城下に置き去り。両親が叔母の手にかかり、自身も叔母の手下に命を狙われ続け、というかあの国の奴ら全員に見て見ぬ振りをされてた、だろ」
「なんで知ってるんだ?」
「……マスターオブマスターに聞いたんだよ」
あの人何やってくれてるんだ。そう思いながらムッとすれば、アンデルセンが口を開いたが。
「どこのおとぎ話だ」
「だって、良い子にしてたら迎えに来るって言われたんだよ?めちゃくちゃ良い子にしてたんだ。でも何年たってもそう言った人は現れてくれなくて、死にかけた時に今のマスターが現れた。で、待つんじゃなく探しに行けばいいって手を差し伸べてくれた。だから今私はここにいる。だから、マスターの為ならなんでもできる」
「人を殺せと言われてもか」
「マスターはそんなこと言いません〜。そんな人が現れてもアイツには関わるなって言ってくれます〜」
ベーっとしたを出してそう言ってみる。ペンを走らせていたシェイクスピアさんがこちらを見た。
「じゃあ、何か言われたことは?」
「出来るだけそばにいてほしいと頼まれました〜」
「はぁ?」
「その返答は!?」
「私の最期の一瞬までそばにいると言いました〜」
私の返答に周りがピシリと動きを止める。なんだ?と首をかしげる。フジマルがエンダァァなどと告げ、マシュが口元を隠しながら口を開く。
「ナマエさん、それはプロポーズというのでは?」
「プロ……ポーズ?いやまさかそんなマスターが私みたいな小娘にそんな意図のセリフ吐くわけないでしょ」
ひらひらと手を振って告げる。もし、そんな意図があったとしても私の一方通行なのである。
==ちょっと飽きた
これはマスターオブマスターのミスだろう。部屋の数というよりベッドの数が足りない。予知者様を省くことはできないため、とりあえず同期というかそういう彼らに部屋を振り分け私は屋上で寝る。野外で睡眠など慣れている。次の日も野外で寝るか、と屋根に登れば、何してるの?とマスタールシュが現れた。
「マスタールシュ様は何を?」
「君がここに向かうのが見えたから」
「いえ、えーと、」
そう少しいいよどむ。星を見に、と言っても彼には通じないかもしれないというか天候は曇りである。
「寝ようと思って」
「……え?」
「部屋とベッドの数が足りないので……」
「まさか、昨日もここで寝たの?」
「あーえーと、はい、」
苦笑いして頷く。彼は「言ってくれればよかったのに」と呟いた。
「いえ、予知者様の手を煩わせるわけにはいきません」
「でもさすがにこんな場所で寝るのは……」
「ルシュ?ナマエ?何してる?」
「あぁ、イラ、彼女、ここで寝ようとするんだよ」
「ナマエ」
咎めるように告げた彼に、私はしゅんとする。ああでも、と、マスタールシュが口を開く。
「部屋というか、ベッドの数が足りないみたいなんだ」
「そういうことなら、なんで早く言わない」
「ここで私が寝れば解決するので」
そうしょんぼりしながら言えば、彼はため息をついた。
「ルシュ、マスターとグウラが探していた」
「わかりました」
「ナマエは付いて来なさい」
はい、としおらしく告げてマスターに付いていく。まぁ、部屋に通されただけだけど。
「ナマエはそのベッドを使いなさい」
「しかし、マスターの寝る場所が……」
「私はソファで眠る」
「私がソファで眠ります!」
そう言ってソファに我先と向かう。おやすみなさい、マスターと言えば彼はやれやれという風におやすみと告げた。
==
目が覚めたらマスターの顔が近くにあって、死ぬかと思った。いや、マスターの顔をマジマジ見れるタイミングなんかあんまりないからマジマジ見て、ちょっと甘えてしまえとか思いながらちょっと寄り添ったりとかしてたのは秘密だ。秘密なのである。
「嬉しそうだね」
「そうですか?」
マスタールシュ様の発言に首をかしげる。
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