2019/09/19

↓改変

さっさとハートレスだけ倒してデイブレイクタウンに戻りたかったのに、どうしてこうなった感がすごい。そう息を吐きながら、倒壊したその場所の火を魔法を使って消す。今の音からして魔法というより人工的なものだろう。そっと息を吐き、壊れたその部屋から出てしまおうかと思っていればバタバタとこの施設の人が駆け込んできた。
「ナマエちゃん、大丈夫かい!?」
「えーと、はい、大丈夫です」
「ああ、よかった。この場所はきちんとスプリンクラーが作動したんだね」
この施設の人はそう息を吐く。そして、別の人がやってきて、よかった、と同じく安堵するとこちらに来るようにと告げた。

マスター及びマスターオブマスターの言葉にこの世界に降り立った時、あたりは一面の雪景色だった。白すぎる世界の中にあるこの施設もまた白く、そして見知らぬ人に対してはとても冷たい場所だった。そとにいるのは危ないと、招き入れてはくれたがこちらの話を聞こうともせず部屋に軟禁状態である。マスターやマスターオブマスターへの連絡はチリシィが間を介してくれているため連絡はできる、が、それ以上のことができない状態だったのである。
しかし、こうなってしまえば仕方がないのだろう。この施設の人達が掻い摘んで何が起きたのかを教えてくれるものの、多くはわからないところばかりである。つまりはーー。
「つまり、過去が改変されて今が不安定になっているーーもしくは過去が改変され、今がなくなった?」
時間軸は一方通行だ。しかも、礎を築かなければ時間軸の移動はできないし、何よりそれは私の世界では禁忌とされている。何らかの手段でこの世界は過去が闇に飲まれーーこの人たちは燃えたというがーー今この世界が消えつつある、ということだ。感覚からしてこの場所は狭間にあると思われる。
「そういうことだ」
ダヴィンチちゃんがそう頷いた。彼女ーー正しくは彼らしいけどどう見ても女の人だーーは時たまに私の部屋にやってきては会話をする人でもあった。それにしても、マスターオブマスターが危惧していたことが当たったのだろう。もしそうなったら、面倒見て鍵をかけてあげてね、とはマスターオブマスターのセリフである。
「今、君と同い年あたりのフジマルくんとマシュがレイシフトと言って、過去に遡ってその改変を無かったことにしてるのさ」
「で、ナマエちゃん、何か知らない?」
そう首を傾げたダヴィンチちゃんに、私は首をかしげる。彼女から疑っている感じはない。
「師匠の師匠が、危惧されていたことには近いかなって思います」
「君の師匠の師匠といえばーー」
「はい、ダヴィンチちゃんには何度かお話しましたが、私の街を統べる人、先を見通す人ーーマスターオブマスターです」
私の発言にスタッフの一部がこちらを見たが、ダヴィンチちゃんに促されて作業に戻る。
「君が私に話した表現はこうだ。この世界は闇に包まれる可能性がある」
「はい。私達の世界では、世界が消えることをそう告げます。しかし、私の行動の自由が保障されたからといって、過去に原因があるとは思いませんでしたし私は過去に飛べないので対処できません」
「そのマスターオブマスターは、ナマエちゃんに他に何か言わなかった?」
「マスターオブマスターはもしもこうなったら貴方達に協力するように告げました。それと、もうその時間軸に遡れなくなるように鍵をかけなさいと」
「鍵をかける……か……」
ふぅむ、と考えたダヴィンチちゃんは、ロマ二聞いたかい?とドクターロマ二に告げる。彼は若干混乱したように「えっえっ」と戸惑った声を上げるだけだ。
「私達は有益な人物を閉じ込めてしまっていたってことだね」
「そうするのが正しいでしょう。私、不審でしたし最初からこんな話をして信じろといって信じる人は少ないです」
特に、こんな世界では、と心の中で付け加える。画面の奥にいる所長が、私のなにかを調べるように告げて私は検査されるのだけれど。

「わ、すごい。レイシフト耐性、フジマルと殆どニアピンだ」
「れいしふと……?」
「魔力の質も量も素晴らしい。あとはマスターになれるかどうか」
その発言に?を飛ばし続けるが、スタッフの会話はトントン拍子に進んでいく。私の持っている鞄がモゾリと動いたのを見て彼らは動きを止め恐怖の色がさしたけど。私はそれに苦笑いしてかばんをみる。
「チリシィ」
そう呼べば、鞄からチリシィが顔を覗かせた。ひょこり、とのぞいた顔は可愛らしい。
「ナマエ、人前でいいの?」
「いいよ、仕方ないから」
「かわ……かわいい……」
ふるふると震えた女性スタッフにチリシィはそちらを見る。
「誰だかわからないけど、ナマエとぼくは悪い子じゃないよぉ」
「そういうことを言って欲しいわけじゃないよ」
そう言ってチリシィを鞄から出してあげる。
「この子はチリシィです。私の相棒で友達で使い魔」
「へぇ、使い魔がいたんだな」
「まぁ、師匠達からいただいたんですが」
「まぁ、こまかいことはいいよ。ナマエ、カレがここの一番偉い人に渡せってお手紙」
「マスターオブマスターが?」
真白の封筒である。一番偉い人となれば、所長さんだろうか。彼女にはあまり好かれていない気がするから、ダヴィンチちゃんに渡したくなるけど。まぁ、それはいいだろう。
「検査も終わったし、ドクターロマ二やダヴィンチちゃんのところに帰りましょうか」
スタッフはそう言って先程の部屋まで案内してくれる。そして、そのあとの展開に頭が痛くなってしまうのだけれども。


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あまりの怒涛の展開に、周りが慌ただしくなる。とりあえず、ドクターロマ二が一番偉い人になるようであるが忙しそうだ。ちなみにフジマルくんは帰った瞬間倒れてしまったらしい。レイシフトはそれだけ体に負荷がかかるのかもしれない。
「ナマエ?どうしたんだい?」
チリシィを抱えたまま忙しないその部屋をみていれば、ダヴィンチちゃんがこちらに気づいたらしく目を瞬いた。それをみて私の検査をしていたスタッフが思い出したかのように口を開いた。
「あ、そうだ、ナマエちゃん何か手紙もらってなかった?」
「手紙?」
「師匠の師匠から、一番偉い人に渡すように言われたのですが」
そういえばダヴィンチちゃんがロマ二と声をかけてくれる。
「ナマエちゃんの師匠の師匠から君宛の手紙だって」
「え?ぼく宛?というかどうやって?」
「使い魔が届けてましたよ」
「使い魔!?」
その発言に周りがこちらをみる。チリシィがやぁというように手を挙げた。ドクターがドタバタとこちらにやってくる。
「ナマエちゃん使い魔いたの!?」
「師匠達にいただきました。これ、師匠の師匠からお手紙です」
そう言って手紙を渡す。どれどれと手紙を開いたドクターは紙を開きーーシャボン玉のようなものが飛び出した。
『サプラーイズ!』
そんな声とともに現れたのは小さなマスターである。
「マスターオブマスター、それダメです。今凄い皆さん忙しいので」
『心にはいつも余裕をおくもんだぜ、馬車馬ちゃん……っと、アンタがカルデアとやらの一番……偉い人?』
「えーと、そうです、暫定で、ですけど」
『ふーん、まー、いっか。お前たちの世界がやばいことになってるのが見て取れたから連絡したんだ。俺はマスターオブマスター』
「ーー先を見通す人?」
『そう言われることもある』
「外は人理焼却されたはず……どこから」
『それって知る必要ある?どっちにしろ、アンタ達が図れるような場所じゃないし、アンタ達がたどり着ける場所でもない』
「マスター」
『あーもう、ナマエちゃんそんな顔しない。俺がイラっちに怒られる。さっきのは冗談だって、冗談。でも、たどり着けないのはホント。俺たちはアンタたちに敵意はないし、むしろ協力したいと思ってる』
真面目な声色で告げたマスターオブマスターは『だから』と声をかけた。
『ナマエを早めに行かせたんだが……まぁそんな雰囲気ではないと言うことは理解してた』
「あなた達は何ができる?」
『アンタ達が正した時間軸、それをもう不可侵のものに変えることができる。ナマエの力を使えばな』

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「はい、ナマエさんはマスター候補ではないのですがこの施設にたどり着きーーなかば軟禁といいますか、部屋から出れないようにされていた方です。まさかレイシフト適合率が高い方だったなんて……」
「なんかよくわかんないけど仲間ってことだよね?」
「そうですね。あ、こっちは使い魔のチリシィです」
そうチリシィを鞄から出してみる。チリシィがやぁとまた片腕を挙げた。
「かわ、可愛い……!?」
「チリシィ、アイスない?」
「あるよぉ、はい」
そう4本のシーソルトアイスキャンデーを取り出したチリシィにフジマルとリツカは目を見合わせた。
「お近づきの印にどうぞ」
「食べていいの!?」
「はい」
私も一本とって食べる。美味しい。それをみてマシュもフジマルもアイスを食べた。

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「ナマエって、ずっと思ってたんだけど、魔術師なの?」
「んー……魔術師では、ないかなぁ」
そう言って食堂で話をする。随分とサーヴァントが増えたなぁと思うのは、人数が少なかった食堂が賑やかになったからだ。
「え、そうだったのですか?てっきり使い魔を連れてらっしゃるので魔術師だと思いました」
「チリシィは師匠達からいただいたというか……主に師匠達と連絡を取る手段というか……まぁそれは置いておいても親友で相棒かなぁ」
「かれこれ長い付き合いだからねぇ」
そうチリシィと二人で話す。長い付き合い?と首を傾げた二人に、チリシィは口を開く。
「僕はナマエが小さい頃からしってるよぉ。ナマエを2番目によく知ってるのが僕だからねぇ」
「2番目なの?」
「1番目はナマエのお師匠様だから。ナマエはお師匠様馬鹿なところがあるんだぁ」
「チリシィ、余計なことは言わなくていいの」
彼にそういえばチリシィは「えぇー」と眉間にシワを寄せた。
「今だって毎日、イラ様からの手紙たのしみにしてるくせにぃ」
「チリシィ!」
ムーっとしながらチリシィ掴もうとする。避けられたけど。二人は顔を見合わせて、そういえば、とフジマルが口を開く。
「俺は日本人だけど、ナマエってどこの国の人?」
「ニホン??」
「冬木がある島国です。極東ともたまに言われます」
「あ、遠すぎてわからない感じかな」
フジマルがそう言って遠い目をする。今度はマシュが「そういえば」と口を開いた。
「ナマエさんの出身国は不明扱いだったような……?」
「不明?記憶がないってこと?」
「記憶がないっていうよりは記録がない、んだよねぇ、ナマエの場合」
そう言って隣に座ったダヴィンチちゃんは、私に「ね?」と口を開いた。彼女の言葉に私は頷いた。
「記録がない?」
「ナマエの話からいくつか街をリストアップして見せたんだけど、そのどれもがナマエの住んでた街じゃなかったんだ。ナマエの師匠の話を聞くに、ナマエの住んでいる場所は人理焼却の影響を受けてないんだよね」
「えっ?」
「で、行き着いた答えが理想郷もしくは桃源郷。我々では決して行き着けないどこかに彼女の街はある」
「えー、そう聞くといってみたくなるなぁ」
フジマルの言葉に、いつかは来れそうな気がするな、とは思わなくもない。
「この事件が解決したら道は閉ざされちゃうけど、キミ達ならいつか来てしまいそうだけど」
チリシィの言葉に私も頷いておいた。

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「一騎打ち……」
これフジマルが行ったら危ないのでは?と思わなくもない。相手は何か黒いのを纏っているし。そもそもサーヴァントを指定してこないあたり相手の格がわかるというか。そう悶々としていれば、フジマルがわかった、と言いかけたのでフジマルの口を手でふさぎ、そのまま清姫さんとバトンタッチする。マシュがほっとしたように口を開く。
「先輩、いくら手を抜くとおっしゃっていても、サーヴァントと人間なんて」
「私でもいいの?」
そう手を挙げて告げてみる。チリシィが「そうなると思ったよ」とぼやいた。私はコソッと、チリシィと作戦会議をする。
「でもあの纏ってる黒いの、どうみても影とか言われてるサーヴァントじゃなくて、ルクス持ってる系のやつじゃない?」
「馬車馬スイッチが唐突に入ったねぇ。でも、たしかにそうみたいなんだよぉ。フジマルやこっちのサーヴァントがハートレスになったら困るし、ナマエが行くしかないんだけどさぁ……」
「何か危惧してる?」
「……ナマエ、異質になっちゃうよ?いいの?」
「それは別にいいよ、慣れてるから」
そんな会話のあと、相変わらずいこうとするフジマルを止める。
「私が行くから、フジマルはステイ」
「ステイ」
「でも、ナマエさんが!」
「私はフジマルよりも武力的に強いから」
そう言って親指を立てておく。
「それに、なんでも使っていいんでしょ?どこの誰か知らないけど」
「ああ、いいぞ」
黒い何かを纏った存在が頷く。よし、言質はとった。勝ち誇った顔をされようが何をされようが、私はルクスを狩るだけである。



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王国心関係 

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