2019/09/19
dcst小ネタ(けんにんししょ?)
「俺たちの場所では、生まれた時に一振り刀が贈られんだ。守り刀って言われてる。短いのはそれだ。で、長いのは旅に出る時に無事を祈願していただいたものだ。この笛もな」
「ってことはお前は追い出されたわけじゃねぇのか」
「まぁな」
「狭くて嫌になったか?」
「いーや、そうじゃないけど自分で出てきた」
そう言って彼は頬杖をついた。少しの沈黙、のちに、気恥ずかしそうに目をそらす。
「笑わねぇか」
「内容によるな。ドジ踏んだとかなら笑うし、呪いがーとかなら余計に笑う」
「呪いのわけないだろう。惚れたお人が全員に平等に接するんだよ。老若男女関係ねぇの。その人の特別になるには何か成し遂げねぇといけねぇだろう」
そう告げられた言葉に私達は顔を見合わせた。命がかかっている旅をしているというのに可愛いらしい理由である。
「まぁ、もちろん、行ったことがねぇ場所に行くっつーのも目的だし、人を保護してやるってのも目的」
ガシガシと頭をかいた彼ーーウスイさんはやれやれと息を吐いた。ゲンが彼をみて問いかける。
「そういや、ウスイさんってどこからきたんだい?」
「ざっくりいうと酉の方角だな」
「酉?」
「あーと、西、だ、西。一番高い山を目印に滝を越えて、高い山に背を向けてきた」
「かなり遠いな……」
「場所の名前は?」
「俺たちはキョウって呼んでる。昔はこっちの方にも都があって沢山の人が住んでたって聞いたから来たんだよ」
モグモグと魚を食べる彼の言葉から察するに、恐らくは石化から解けた人がそこにいるんだろう。
「今は俺の住んでる場所から申の位にオーサカっていう場所ができた」
「ん……ん?」
「移住区が増えたってこと?」
「んー?カナタ様って人が、次は海整備して多少遠方まで漁ができるようにするかぁっつってたかんなぁ。漁の基点になるんだと思う。川と海を使った方が物資は円滑に運べるしな」
「そのカナタって人が偉いお人かい?」
「いや、偉いお人は二人いる。もう一人は京の方にいるんじゃねぇか」
彼はそう言って両手をあわせてご馳走さまでした、と頭を下げた。ううむ、この時代の人とは思えない人だ。
「てかよぉ、さっきから、ウスイ、酉だとか申だとか意味ワカンねぇことばっか言ってるけどよ、なんだそれ」
「あー、やっぱり違うのな。俺たちは方角を時間と一緒で12で区切ってんの。干支っつー昔話を元にな」
「……は?」
「えーと、ウスイさんだけが知識持ってんの?」
「いいや?俺の住んでる場所ではガキんときに教わるぞ。文字とか算術、武芸や楽器もな。そこからまぁ親の跡継ぐ奴もいれば、武芸を磨く奴もいるし、算術とか文字が得意なら偉いお人の手伝いができるって感じ」
これは中々文明レベルが高いのでは。そう思って私は千空くんを見る。他も同じだったらしい。彼はワナワナと震えて、面白えじゃねぇか、とぼやいた。
「行くぞ、京に!」
「言うと思った……が、お前、陸路だとかなりかかるぞ。気球とかいう奴で行けば撃ち落とされる可能性もある……あぁ、でも船ならいけるかもな」
「いいじゃねぇか。練習に、な」
「あぁ、いいだろう!」
「あぁ、じゃあ待て」
そう言って彼は馬のところに行くと、積んでいた荷物からカゴを取り出した。中にいるのは鳩っぽい何かだ。彼は懐から紙と筆、墨を取り出すとサラサラと文字をかく。
「どれくらいに出る?」
「準備があるから一月は先にしたいな」
「お、なら、葉月の頃か。米が旨い時期だ」
「米」
「お前らんとこは小麦だろ?俺たちんとこは米っつー奴だ。まぁ食わしてもらえるだろ」
「お前も行くんだよ」
「はぁ?俺は」
「間の交渉役がいるだろうがよ」
その発言に彼はうっと声を上げ、肩を落とした。ちらりと彼の文字を見れば達筆である。彼はむっとしたまま自分の名前を書くと千空に筆を渡した。
「ほらよ、アンタもなんか挨拶ぐらいは書いとけよ」
「お前……字上手いな……」
「あぁん!?お前は時間旅行者だろうが!下手な世辞はよせ!」
「時間旅行者……面白い例え方だなぁ」
ちなみにそのあとウスイさんが千空くんの文字をみて、まぁ得意不得意はあるよな、と肩をたたいたのだが。ウスイさんはその文を鳩のような鳥にくくりつけるとそれは空を飛ぶ。それをみて、伝書鳩か、と感動したのは余談だ。
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