2019/09/19
arcトリップアルディア兵は特殊なようです
「あー、推し達が今日も可愛い〜」
そう言っていたら他の兵士達がまたかみたいな顔をした。そもそも違う部隊なのだから、推し達の絡みを見て気力を補給するのは許して欲しいところである。それをわかってグレーゴル将軍はたまに私にアレク少尉の伝達を渡したりするし。まぁ、私が同期ということもあるんだけども。
さて、私はといえば、今やなんやかんやで人気というか流行または巷で噂の異世界トリップをした人間だ。安心して欲しいのは特にトラックに跳ねられたとか、加害者がいるわけじゃない。気づいたらここにいて、どんな世界かもわからないのでとりあえず身分を作るために軍隊に入ったのだが、これは間違いなく某スマホゲーだ。しかも敵側である。推しを見れたからいいが、死亡フラグが乱立する一般兵a的な立場だ。これは間違いなく途中で死ぬパターンであるし、魔法とか使えないために一般兵から抜け出せないパターンである。下手すれば実験隊だとか見捨てられる部隊の気もするしね。
「あ、ナマエ」
そうこちらを向いた推しに私もにこやかに笑う。
「やほー、元気かいアレク青年。グレーゴル将軍からのおつかいだよ」
「ありがとう」
「相変わらず軽いわね……」
はぁー、推し達が今日も可愛い。
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何も私の推しはアレクとシェリルだけじゃない。シュウさんとかも推しだ。スマホゲーからのキャラは全員把握してるわけじゃないから、すまんな。たまに見かけてはぼんやり眺めたりもする。イヤだってイケオジなんだもの。彼がなんでアルデアにいるかは不明であるが。まぁ、そんな話は置いておいて、絶賛の危機である。部隊の過半数はさよならしてしまったわけである。ちょっと吐きそうだが、何回かぶち当たって仕舞えば慣れた。悪運だけは強いというのが上からの評価であるが、そのために無い知恵を振り絞るのだからもうちょっと評価してくれてもいいと思う、と現実から逃避していたら発砲した隣が死んだ。あとは逃げた。逃げてもコンラートさんに戻されるか他の危険な任務にあたるかのどっちかだと思うんだけど。鞄からチョコレートを取り出すためにゴソゴソすればソレは警戒する。そうして私はチョコレートを割って齧る。うむ、美味しい。そうしてソレに合わせて屈むとチョコレートを差し出した。
「チョコレート、食べる?」
私の言葉にソレーー女の子とモンスターが組み込まれたキメラは目をパチパチと瞬いた。
「お姉さん、あなたと戦って遊ぶのは嫌だな。一緒にチョコレート食べよ」
私は死体の中に座り、彼女を手招いた。恐る恐るやってきた彼女は子供と一緒だ。チョコレートを割って手渡してあげる。それを食べた目を瞬いた彼女は、おいしい、と、ただの子供と同じように笑った。
ーーひどく残酷な世界だ、とは思う。
このこは恐らくロベリアという国が作り上げたキメラか瘴気のせいでキメラになってしまったこだ。大崩落を生き残ってしまった。このまま駆除を待つのだろうか。異形には生きる価値がないんだろうか。そんなものを考えてみるが、一般兵の私には答えなどでない。
「逃げた方がいいよ、怖い大人が来ちゃうから」
「おねえちゃんも……」
「ごめんね、私はいけないや」
そう言えばひどく悲しそうな顔をした。仕方ないと、鞄に入れたヌイグルミーー難民の子供をあやしたりするのだーーを予備の鞄に入れて渡してあげる。
「はい、この子はキミのお友達」
私の言葉に彼女は目を見開いて、町に住む子供と同じように笑う。頭をくしゃくしゃと撫でて、さぁ、逃げて、と促せば彼女は振り返りながら霧と共に後にした。さて、どうやって帰るかなー、と死体を見渡す。まぁ、そのあと本隊がやってきて、また悪運が強いと言われるのだけど。
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ひぇー、英雄達だー。一般兵が勝てるわけないよなぁ、と彼らをみる。これもう私完璧に左遷というか使い捨てルートなんだよなぁ、と思う。多数対一に持ち込もうよ、と呼びかけようとしたが、その前に味方が蹴散らされた。がってむ。頭を抱えた私は悪くない。プルプルしてる新兵くんに、現状を報告するために本体に合流するように促して私は彼らをみた。いやいや、敵意丸出しにされても困るというか。そういえば、彼らなら、この前の答えを知るのか、はたまたキメラとかしたあの子をモンスターと分離させる方法を知るのか、と彼らを眺める。
「……貴方には敵意がないの?」
「こちらが多数対一に持ち込めばともかく、逆はちょっと無理じゃないですか?こちとら魔法も使えない一般兵ですよ」
「諦めてるなら通らせて欲しいところだけど」
「うーん、それはそれで……まぁ、私の死に場所が別になるだけなんでいいんですけど……英雄さんたちに聞きたいことがあるんですが」
そう言って話をしてくれる雰囲気のサニアさんをみる。
「私達は急いでるのよ」
「一つだけ、一つだけですから。ほら、白い霧に覆われた森があるじゃないですか。白い森?っていうんですか?」
そう彼女を見る。
「そこにね、女の子がいたんです。普通の女の子なら保護するんですけどね、違うくて」
私の言葉に彼らは動きを止めた。なので私は彼女達に問いかけるとする。
「元に戻す方法とか、その子が安全に暮らす方法とか、知らないかなって」
「……そこにいるのが安全だと思うわ」
「あー」
「それか一思いにやっちまうかだな」
「……ねぇ、やっぱり、あの子は大人が勝手にああしたのに、生きてはいけないんですか。まぁ、文句は無くなった国に言うべきなんでしょうし、万人が幸せな世界があるとは思わないんですけど」
そう言って銃を構える。
「なんでい、やっぱりやる気か」
「まぁ、一般兵なので、上の命令には逆らえないといいますか……あの子を知る人が増えるのなら、安心して死ねるといいますか……あ、あと、アレク少尉とシェリルは悪い人じゃないので話し合ってみてくださいね!以上一般兵の遺言でした」
そう言って発砲する。まぁ、斬られたけどな。どんな神経してるんだろ。
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あ、これ死ぬわ、と思う。トッシュ将軍に斬られるならいいかとか思った私は悪くない。見えた鮮血、倒れる体に死ぬなぁと思う。悪く思うなよと言った彼に、思ってないんで大丈夫です、と告げておく。まぁ、一般兵ですから。主人公達の経験値となるために死ぬのが役目である。この世界にさよならを告げて目を伏せる。目覚めたら元の世界とかはないだろうか。
なかったねぇ。今の状態:もしかして捕虜。いやだいいやだい、推しと敵対は嫌だい。
「と、思ってた時期もありました」
遠い目をして口を開く。
Q.なんで主人公側パーティー入りしてるんですか?
A.あのあと保護というか連行というか捕まったからです。
「言っときますけど私は使いっ走りの捨て駒Aですからなんも知らないですよ。強いて言うなら悪運が強いくらい」
「悪運が強い?」
「私含む二、三人以外全滅とか割とあります。で、そのまま使いっ走りというか死地にまた回されるというか……」
「……なんでそんなのでもアルディアにいるのよ?」
「やだなぁ、なんでってそこしか居場所がないからですよ。私達みたいなのは理想の為じゃなくて生きていくために働いてる人が多いので理想がある方は上に登っていくのでね」
そう肩を竦めて告げる。
「私みたいに大崩落の前に何をしていたのか記憶も何もない人間が、身分を得るためには、安定した生活を得るためには軍に入るしかなかったというか」
つらつら告げても意味がないだろう。いや、よく考えると魔法もクソもないから死地送りの一般兵だった可能性はあるな??そうぐるぐると考えてみたが、まぁ、真意は不明だ。あの中で気遣ってくれるグレーゴル将軍がいい人としか言えない。
今作ヒロインは「なによそれ」と苦言を呈したが。
「生活のために戦争をしたいってこと?」
「アルディア兵の全員が、アルディアの国民全てが戦争したいと思ってるなんて、思わないでくださいね。私は戦争したくない派です」
「じゃあ、どうにかしてよ!」
「あのねぇ、将軍とか、軍の偉い人ならなんとかできるかもしれないですけど、私は一般兵Aですよ。無理です」
「そんなの、」
「言ったら私死にますよ。処刑される可能性が高いですね。私はそれはやだな」
「……」
「まぁ、でも、ぶっちゃけいってほとんどの兵士は疑問も何もないんじゃないですかね。考えるのをやめてる感はある」
私の発言に、トッシュ将軍が私をみた。
「その割には俺に斬られた時死ぬつもりだったじゃねぇか」
「いや、私死にたがりじゃないですからね?上層部にやたらと前線というか死ぬ確率が高い場所に送られてるだけで……まぁ遠回しに死ねって言われてる感ありますけど……悪運試されてる感じありますけど……安直に死ねって言われてるきもしますけど……」
「アンタ、それ、もう何かしちゃったんじゃないの」
「えっ……」
ヒロインちゃんの言葉に動きを止める。何かしただろうか。思い当たることはないのか、と聞かれたが特にないわけで。
「ま、捕虜になっちまった今は関係ないだろうがな」
「ですよねー」
トッシュ将軍の言葉に項垂れる。なんとかなると信じたいところだ。
==
「いっつも魔法使う人見て思うんですけど、使ってる本人って熱かったりとかしないんですか?」
昔からの疑問である。ちなみに推しのアレクは?を浮かべた質問である。かの有名なエルクさんに尋ねれば、彼は「特に」と返答した。
「使ってて熱かったら大惨事じゃないかしら」
「あ、そりゃそうだ……いやぁ、魔法って意味わかんないなぁ」
首を傾げて眺める。嫌だって意味わからなくないか。燃えたり凍ったりするんだぜ。意味がわからないよ。
「お前魔法使えないのか」
「使えたら最下級使いっ走りじゃなくなってたと思いますよ。回復魔法を使いたくなりたかったのにてんで駄目でした」
「お前見るからに魔導師って感じじゃないもんな。普通に街にいるやつみたいな」
エルクさんの発言に的を得ていると頷く。なんで頷いてんのよとはミズハちゃんの発言だ。
「いやだって実に的を射てる意見だったから。あれ?私なんでアークスの一員みたいな立ち位置になってるのかな?アルディアの一兵士だったのにな?でもこっちの方が死ぬ確率低いような……」
「はぁ?」
「アルディアからしたらお前裏切り者だぞ」
で、す、よ、ね、ぇ。
そう項垂れる。まぁどちらにせよ私は殺されて死ぬと思う。
「どうせならアレク少尉にバッサリされるかシェリルに撃たれて死にたいなぁ。実験体ルートはご遠慮したい」
私の発言に周りは私を見た。え、なに。なんだ。
==
「やっぱり悪運がつよいですよね、貴女」
まさかあの噴火の中生きているとは。
そう告げたその人にうわぁと口元がひきつる。
「死体が確認できない状態だったから死亡扱いになっていましたが……やはり悪運が強い」
「貶されてる気がする」
「褒めてるんですよ?」
こてん、とくびをかしげた私を死線に送り出す上司達のうちの一人であるコンラートさんに私は嫌々と首を振る。
「どうして貴女がそんなにも死なないのか、興味がとてもあったのですが……」
「いやぁ、お言葉ですけど、コンラート博士、私、死んだと思いました。今回ばっかりは」
「じゃあなぜ生きてるんです?」
「……なんでですかね?」
問いかけに私も首をかしげる。ちょっとなに仲良くしてるのよ!とはミズハちゃんの言葉である。サニアさんが私の前に立つ。ひゅー、かっこいー!
「残念ながらこの子はアークスの所属よ」
「ほぅ、ならば捕らえれば規則もなにもなく実験ができるというわけだ」
「ひぇっ」
「さて、捕まえてどうするか……どうして死なないのか実験しないといけませんね。死線に立たせるだけじゃあ勿体無い」
ニコリと笑った彼はサディストである。私はサニアさんの後ろに隠れる。
「あぁ、そういえばーー貴女の元上司のグレーゴル将軍やお気に入りのアレク少尉が悲しんでいましたよ」
「えっ」
「貴女が生きていると伝えればさぞ喜びーーアークスにいるといえば嘆かれるでしょうけど」
「……無駄口はそこまでよ」
そう話を叩き切ったサニアさんは強いしかっこいいなぁと思いました、まる。
==
こちらを睨む推しが辛い。多分、もう笑顔は見せてくれないのだろうなぁ、と思う。彼の元には沢山の部下がいる。だから、彼は上司として振る舞うしかない。シェリルなんかは怒っている。
「アンタ、なにしたか分かってんの?」
「ははは」
「笑い事じゃない!」
脱走兵は重罰が降る。それは私も理解していることである。シェリルは口を開く。
「アンタ、死ぬわよ」
「そうだねぇ」
優しいなぁ、と思う。全く、優しい。アレクはジッと何かに耐えるようにこちらを見た。
「ナマエ、なにがあったんだ。君は逃げ出すような人じゃない」
「んー、簡潔に言うと、英雄に殺されたと思ったら拾われたし、手当てされたりしたからその恩返し中みたいな」
「傷は大丈夫なのか?」
「うん、もうすっかり。でも、今更そっちには戻れないよ」
彼のことだから、恐らく私を諭してーー戻ってくるように言うのだろう。きっとグレーゴル将軍に掛け合ってくれる。
「どうして?」
「だってここの人は私を無理に前線に置いたりしない。繰り返し死ぬような場所に連れて行ったりなんかしない」
彼は知らない。何も知らない。だってたまにあった時の笑顔を曇らせたくなかったからだ。でも、今は違うから別にいいかとも思う。
「私だって、生きたい。私はアレクみたいな理想なんてない。生きる為に軍人になった。いつ死ぬか試される為じゃない」
「きみ、に、何があったんだ?グレーゴル将軍からは別の安全な部署に移動したって」
「優しい貴方が知る必要はないと思う」
そう言って笑う。
「だから、遠慮なくその剣を突き刺していいとし、その銃で風穴を開けていいよ。どうであれ私は規則を破りに破った裏切り者だから」
彼はグッと握り拳を作った。別にアレクならいいんだよなぁ、と私は彼をただ笑顔で見る。まぁ、その前に現れたコンラートさんにぐっさり刺されたけど。そのあとすぐに主人公ズがやってきたけど。
==
「だからなんで生きてるんだ?」
そう手をグーパーする。恐らく相変わらずの飛行船である。今回ばっかりは死んだと思ったのになぁ、と言いながら服を着て部屋の外にでる。まぁ当然ながらそこにいた人達は私を見て目を見開いたが。
「おま、お前何立ち歩いてんだ!」
「え?普通に動けるからですけど」
「はぁ!?」
「というか昔ならこのまままた前線に送られてましたから動けるが正しいんですけどね」
元気元気〜とガッツポーズすれば、頭を叩かれる。痛い。ひどい。
「けが人は部屋に引きこもってなさい」
「だって暇なんですもん」
そうブーブー言えばリアちゃんがなら手伝って!と私を引っ張った。私科学からきしだぞ。
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「お前はナマエじゃないだろう」
そう鋭い目で告げた青年に何言ってんだ?と首をかしげる。青年はなんだか怒っているらしい。こちらを睨んだ彼は、しかしながら私の顔を見て理解していないと察したらしい。眉間にシワを寄せて彼は告げる。
「随分とナマエに寄せたものだな。髪型、雰囲気、喋り方。だが、お前はナマエじゃない。どうあがいても偽物だ」
「なにそれ、酷い言いがかり」
そうそちらを見る。眉間にシワを寄せた彼は、口を開く。
「そんなことをしてもナマエは帰ってこないぞ、ネム」
「ネム?誰のこと?なに言ってるの?」
私の台詞に彼は哀れんだような表情をしてその剣に手をかけーー一瞬で詰められた距離に体は太刀筋を知るかのようにひらりと避ける。
「お前がお前でなくなるのならば、俺はお前を切るだけだ」
「出たよ、二言目には切るって言葉。物騒な奴」
そう突いて出た言葉に私は息を詰める。私は彼を知らないはずだ。コイツは誰だ。彼はその剣に炎を纏わせて口を開く。
「認めろ。お前はナマエじゃない。そんなことをしてもナマエは戻ってこない」
「ちょっと待ちなさいよ、アンタ、なに言ってるの!ナマエはここにいるじゃない!」
「お前らの前にいる人間はナマエじゃない。ナマエという人間はもう既に命を落としている」
その言葉に、体は動きを止める。認めたくない。認めたくなどない。
「違う、私は、」
「お前はナマエじゃない。ナマエは俺たちの前で死んだだろう」
頭がひどく痛む。冷や汗が滲む。彼は敵意を丸出しにして刃を構える。
「お前はナマエじゃない。お前はナマエの双子、ネムだ」
その言葉と共に縮められた距離に、感じた灼熱に意識は闇に飲まれた。
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ーーいつも一緒にいる。三人でいつも。一人は血が繋がらないが、同い年は三人だけで、変な運命をたどっているのも同じで。
ーーそう、いつも一緒だったのだ。あの事が起こるまでは。
「こちらに敵意はない」
そう言って彼らを見たところで敵意が消えるわけではない。まぁ、先に攻撃したのはこちらである。明確に敵意がない事を示すために、武器を地面に落とす。意識を失った野郎は転がしておくが。
「あなたは?」
「俺はナナシという。コレの同郷だ」
そう言って近くに腰かけた。本当にコイツがなにをしてるか小一時間ほど、むしろ小一時間以上問い詰めたいところであるがどうも様子がおかしい。まるで自分を片割れだと思い込んでいるような。いや、事実、コイツは思い込んでいるのだろう。
「こちらに敵意はないのね」
「あぁ」
「ナマエの知り合いか?」
「ナマエとも知り合いであるし、コイツとも知り合いだ」
「コイツはナマエでしょう?」
そう戸惑ったようにつげた彼らにだから面倒な事になるのだと息を吐く。
「コイツを手当てしたことは?」
「あるわよ、それくらい。仲間だもん」
「……コイツ、男だろ」
「?あぁ、そうだな」
「……本来ならナマエは女だ。コイツはネム。本来ならばナマエの双子の片割れだ。恐らくショックで記憶を混同させてるんだ」
少しでも期待した自分がバカバカしくなる。未だに自分も向き合えていないのだ。人のことなど言えない。
「本物のナマエという人は?」
「キメラに心臓を貫かれて死んだよ。俺たちの目の前でな。死体も波に飲まれてどこに行ったんだが。途中まで一緒に傷んだが、モンスターに襲撃されてな。で、今まで会えないでいた、と」
肩をすくめてそう告げる。あれが闇夜でなければナマエは生きていただろうに。何はともあれ、記憶がないコイツには用はない。立ち上がって剣を拾う。そしてそのまま「悪かったな」とだけ謝って俺は立ち去るとする。まぁ、呼び止められて反アルディア組織に属することになるのだが。
==
元々俺たちの住んでいた場所はロマリアに隣接する場所である。竜を信仰する小さな部族で、ワイバーンやドラゴンといった存在と共に生きる部族だった。だからこそ、ロマリアに狙われたのだろう。大人も同い年の子供は捕らえられ、俺たちとドラゴンだけが残ってしまったのだ。まぁ、ナマエはキメラに殺されてしまったのだが。
ーーしかしながら、あの子もコイツは神子と言われる存在であったはずである。ならば、もしかすれば、と願ったというのに。
==没!
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