2018/01/29

↓改変 学園怪綺譚


・モブがいる
・四人の司書が学生(18〜17)になってる。
・とある事が原因で司書が本の中にいる。菜乃花と大槌さん、館長と赤青は留守番。
・モブは必然的に本の登場人物になるわけだけど、主人公とかではない。
・モブの名前が『七志アキト』。

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この学園には四人の有名人がる。彼らは有名人のつもりではないんだろうが、それぞれが特殊すぎるのだ。
例えば、目の前で静々とお茶を立てる苗字さんは日本屈指の名家の出であるし、その横で和菓子に目を輝かせているの立川さんは外交官のお嬢様、お茶を立てる手元をみている棋院くんは財閥の御曹司であるし、欠伸をこぼした按司くんは有名な政治家の息子だ。どうして僕がそんな彼らと一緒にいるか、といえば、僕が四人に助けられたからなのだけど。もしかしたら僕は口封じに殺されるかもしれない。四人の家を使えば僕が死んでも隠せる気がする。
「殺しはしないから安心しろよ」
そう言った按司くんに僕はピクリと肩を揺らす。
「え、な、なんで、」
「顔に書いてあるぞ」
「殺すってひどいなぁ、七志くん、私たちにどんな印象持ってんの」
そうカラカラと笑った立川さんに僕はさっと目をそらす。
「え、ちょっと何その反応」
「だって、僕は貴方達の秘密みたいなの、知っちゃったわけだし」
「秘密とかじゃないぞ。お前が言いふらしたとして信じる奴は少ないだろうがな」
ポケットから何かを取り出そうとした。
「按司、タバコはよせ。教員にバレると厄介だから」
「不良だ、不良」
「へいへい」
「粗茶ですが。蓮子と棋院、七志くんのは抹茶オレにしました」
そう言ってお茶を配った苗字さんはマイペースだった。

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本の中の世界に組み込まれた私たちであるけれど、外にいる文豪に似た人がちらほらいたりする。私の父親代わりになっているのは露伴先生だったりするのだから面白い。独り身であるはずの彼の元に転がり込んだ『親類』の娘、が、私の設定である。……これで『露伴先生』を読んだらあの露伴先生が私の父親になるんだろうか。というか、元の場所に戻った時に間違えてお父様って言いそうだ。そんなことを考えながら、下駄をカラコロ鳴らして学校の門まで歩く。悲しいかなこの本の登場人物である七志くんを含めても私だけが一学年下な為、時間割というものが少し違うのである。偶に図書館で時間潰すけど。家の方向が東西南北であるし、車の迎えがくる。偶に私に付き合ってくれるけど。偶に露伴先生が迎えにくるけど。今日はその日らしい。雨が降りそうなこの空模様だし私が傘を忘れたから迎えに来てくれたのだろう。門にもたれている露伴先生を見て一般生徒が二度見していく。そりゃあ名家の次期当主的な人がいたらそうなるだろうに。
「お父様」
そう声をかければ、露伴先生――正しくは露伴先生に似た人、は目を開く。
「お迎え、ありがとうございます」
「いや、傘を持っていけというのを忘れていたからな。それに、少し出かける」
「私がご一緒してもよろしいのですか?」
「あぁ、煩いんだ。やれ娘をみせろってな」
そう眉間にシワを寄せた彼は手招いた。
「行くぞ、娘よ」
この人が父親は、なかなかいいと思うのだ。

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露伴先生が連れてきたのは大学高校一貫性の学校、らしい。大学は共学ではあるが高校が男子学校な為に女の数が少ないのだ、とは露伴先生の言葉である。帝国学園と書いてあるそこに、あ、これは、と思う。これはもしかしなくても、文豪がたくさんいるのではないか。あとで四人に共有して、七志くんに話を聞くとしよう。カラコロ、カラコロ、と露伴先生の後を歩くが、チラチラとこちらを見る視線があまり好きじゃない。そちらを見れば目を逸らされるし。
「気にするな、声をかけてくる気もない臆病者だ」
「お父様の知り合いがこちらに?」
「あぁ、だが、まだ時間がかかりそうだ」
そういった露伴先生の視線の先には講義について張り出された掲示板がある。尾崎紅葉、と書かれた紙には講義の時間変更が書かれている。ちょうど今の時間である。
「ちょうど今の時間ですね」
「仕方ない。俺は先に声をかけてくるから、ナマエは図書館にいなさい。あそこならまだマシだろう」
「図書館……」
「この大学の図書館は蔵書がかなりあるからな。本、好きだろう?」
そう尋ねた露伴先生に頷けば、頭をぐしゃりと撫でられた。

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図書館である。カラコロ音がなる下駄はあんまりかな、と思ったが、絨毯が引かれていて音はしなかった。さて、この世界に彼らの書いた本はない。何故なら彼らは作家ではないからだ。ならば海外の本でも読むかと他の文学の所に足を運ぶ。フランス文学にするか、何にするか迷ったが、とりあえず三銃士を手にとってフランス語の辞書を探した。
「……取れるけどあやうい」
何故辞書を上に置くのか。恨めしく一番上の棚を見る。失敗したら本が落ちるパターンである。はぁ、とため息をついて背を少し伸ばす。辞書に手を伸ばせば、誰かがそれを取った。そちらを見れば、見知った人である。一方的に、だが。
「悪いな、この図書館の利用者はみんな男ばっかのもんで、辞書でも平気で一番上の棚に置くんだ。ほらよ、」
「ありがとうございます」
そうお礼を言う。彼は「礼を言われるまでのことじゃないさ」と首を横に振った。
「寛、探してた本だけど――おや?軟派かい?」
「違う。このお嬢さんが困ってたから助けただけだ」
そうやれやれと言った彼――もとい菊池さんに、芥川さんがふぅん、と返事をして私をみた。
「うちの高校の生徒じゃないね」
「当たり前だろ、うちの高校は野郎しかいないんだから」
「偶に罰ゲームでいるじゃないか。女装する生徒が」
「嫌な思い出を思い出すからやめろ」
「下駄を履いてるね。歩きにくくないのかい?」
「慣れてますので」
そう苦笑いしておく。あの学校は制服は一応あるが自由にアレンジしていいため、私は下駄を履いている。というのも、一応、両親が入学祝いに下駄を買ったとかいう設定があるからだ。靴を履くと残念そうにされるので下駄である。
「しかし、他校の生徒がなんでここに」
「お父――父が知り合いの方と会うと言って」
「連れてこられたのか」
「はい、まだ時間があるから本でも読んでおけと」
「……それで、ソレか」
そう菊池さんが私の本と辞書を見る。何かあるんだろうか、と思えば、ああそういえばその辞書はよく佐藤くんが使っているね、と、芥川さんが告げた。……佐藤さんは大学生なんだろうか。
「それなら、私は別のを――」
「いいんだよ、図書館は早い者勝ちだからね。寛が佐藤くんに怒られるだけさ」
いやいや、それは、と眉尻を下げる。菊池さんは気にするな、とまた手を振ったけど。
「俺がなんだって?」
「あぁ、佐藤、お前がよく使ってる辞書なんだが、お嬢さんの方が先に手に取ったわけだし、別にいいだろ?」
「お嬢さん?」
そうこちらをみた佐藤さんは洋装の佐藤さんだ。……それもそうか。和洋折衷のあの服は合わないんだろう。目を合わせて、数回瞬きをする。こてん、と態とらしく首を傾げれば、彼もまた首を傾げた。
「……見かけないな、他校の生徒か?」
「あぁ、親父さんがこっちに来たからついて来たんだと」
「先にとられたなら仕方ないな」
「なら、一緒の机に座りますか?辞書は頻繁に使うわけではないので……」
そういえば、三人は顔を見合わせた。

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ちょこちょこと三人と話しながら本を翻訳する。どうやら三人は自主勉強らしい。そんなこんな時間を潰していたら、図書館がざわざわしだした。なんだ?と思ってそちらを見る。三人もつられてそちらをみた。というか、菊池さんが知り合いだろう人を呼び止めた。
「どうしたんだ?」
「あぁ、あの幸田露伴が来たらしい」
「幸田先生が?」
そうなると思った。尾崎紅葉という名前があるから。昔教鞭取ってたとかそういう話かと思えば、話が「紅露逍鴎」の話に映った。どうやらこの世界のその四人は幼馴染で、それぞれが偉い立場にいるから有名らしい。元は教鞭も取っていたとか。話を聞いていれば、人混みが分かれる。露伴先生と鴎外さん、尾崎先生が見えた。
「ナマエ、そろそろ出かけるぞ」
「はい、お父様」
そう返事をして立ち上がれば、三人がギョッと私をみた。
「ふむ、あの露伴が娘を迎えたというからどのような娘かと思っていたが。利発そうな娘よ。我は尾崎紅葉だ。この大学で国文の教鞭をとっている」
「森鴎外だ。同じくここでドイツ語・フランス語の教鞭をとっている」
「私は苗字……幸田ナマエと申します。父がいつもお世話に」
「俺はなってない。あと、無理に幸田を名乗らなくてもいい」
ぐしゃりと頭を撫でた露伴先生に、優しいなぁ、と思う。露伴先生が目を細めて三人をみた、ので、一応フォローをしておく。
「勉強を教えてくださりました」
「……娘が世話になった」
「いえ……僕たちもまさか幸田先生の娘さんとは思わなかったので……」
「本を片付けますので、寸分待ってください」
「ああ、それくらいなら俺たちがやるから」
「しかし、」
「いいから、な?」
そう言われては仕方ない。ありがとうございます、と頭を下げてそのまま三人に続いた。



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