2019/10/24
カゲデソウロウ2
「君、もうすぐ本戦でしょ。そんなことしてていいの」
そう尋ねてきた男性に、そうですね、と言いながらページをめくる。どうやらアカデミーの教員になるには試験に受からなくてはならないらしく、そのテキストをもらえたようである。男性はちょこちょこと私を見張ってなのか様子をみにくる男性である。
「他の子はやれ修行だなんだって言ってるのに」
「修行をつけてくれる人もいないので」
「担当上忍は?」
「私の同期に付いてますね。私は孤児なので修行をつけてくれる親もいませんし」
テキストを閉じて彼をみる。見下ろした男性は私をみて動きをとめたようである。なんだ?と首を傾げれば、目をそらされてしまったが。
「そういうこと、ねぇ」
「なにか?」
「いや、こっちの話」
何かを納得した彼は私にまつわる何かを知っている。テキストの表紙をみて彼は「アカデミーの先生になりたいの?」と聞いた。
「はい、なので中忍でいいです」
「……修行しなくていいの?」
「別に今すぐなりたいわけではないので」
そう、よくよく考えたら今すぐなる必要はないのだと思うのだ。恐らく担当上忍はヤサカくんのスキルアップのために参加させたようなものだろう。ならば、別にキリのいいとこで負けてもいい気がする。マゴイチにしろ私にしろ、他の里相手であるし。
「消極的だなぁ」
そもそもの話、知らない人に話してもな、とは思うのだが。男性はなんともいえない顔をしてこちらを見下ろしている。
「私みたいなのが積極的になった方がおかしいんじゃないですか?」
「ーーそれってどういう」
彼が何かを言い出す前に私は立ち上がる。そろそろ夕飯の支度をしなければならない。では、と笑顔だけ浮かべて私はそのままそこを離れた。聞こえてきたため息には知らないふりだ。
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そう、私みたいなのが積極的になるのがどうかと思うのだ。そうぼんやりと相手を見る。いや、別に、面倒とかそういうのではなく、私の相手もマゴイチの相手も下忍の振りをしたような人物である。だから、マゴイチは結構本気で当たっていた。戦術を何度も切り替えて。彼が近代雑賀孫市の中でも優秀と言われるのは射撃の腕よりもその切り替えの速さ戦況を読む力にある。風、温度、地形、全てを読むのだ。シカマルくんと戦ってみれば面白いと思う。まぁ、マゴイチは将棋は嫌いなようだけど。ナマエー、現実みろー、と聞こえてきた声に私は苦笑いして審判をみる。
「すいません、ちょっとぼんやりしてました」
「へぇ、アンタでもぼんやりはするんだねぇ」
そう言った彼もしくは彼女(さまざまな理由込みで非常に判別しにくい姿なのである)は、恐らく予選で戦った相手の兄妹だろうか。
「あの子、出来損ないだったから、楽しくなかったでしょ?」
「出来損ないではありませんでしたよ」
「お世辞はいいわよ、あの子、私達の一族の中で一番の出来損ないなの。おかげで私達はまだ下忍ってわけ」
「彼女のからくり三味線の扱いは非常に優れていました。ただ、戦術の裏を読むことを知らない無邪気さがありましたが、それでも出来損ないではないと思います」
「あら、優しい。あれだけすぐに倒して見せたのに」
「偶々ですよ。……そもそも、出来損ないの人間なんて誰もいません。そんなもの、当人が何かが優れているのを見つけられない周りがつけるレッテルだ。見つけられないくせに、見つけようともしないくせに、それで人を嘲笑うのはどうかと思うけど」
割と真面目にそう返せば、彼もしくは彼女は目を細めた。まぁそれはこの里の人にだいたい言えることなので普段は言わなかったが。殺気が飛んでくるなぁ、とぼんやりと考える。
「あらあら、元盗賊の孤児院にいたわりにはいいこと言うわね」
おーっと、相手はあの孤児院を知ってるらしい。そう、あの孤児院、きな臭いというかグレーゾーン通り越して黒である。まぁ調べたら結構すぐわかることだからノーコメントで。
「私の里の人間がね、その孤児院を襲ったのよ」
「そう」
「一人、命からがら生き延びて帰ってきた役立たずは、こう言ったわ。『子供だ、子供にやられた』。それは誰のことかしらね。イバラギと呼ばれた一人は偶然にも見つけたけれどーー」
そう言って相手はマゴイチをみる。マゴイチは眉間にシワを寄せて見下ろした。まぁ、割と本気でドンパチしてたからなぁ、と思う。まぁ、まわりがマゴイチみてざわざわしてるけど他の上忍を見る限り知っていたようである。
「シュテンと呼ばれた、もう一人はーー誰かしら」
「さて」
肩をすくめてそうつげる。というか、なかなか面倒くさいなコイツ。
「言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに」
そう言って審判をみる。いまだにかからないはじめの合図だ。審判はただ、私に構えなさい、と促した。それもそうである。とりあえず私がクナイを手に持てば、はじめ、と審判が叫んだ。
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ひらひらとただ攻撃を避ける。大体読める攻撃筋だよなぁ、と思いながら、どうするかを考えた。同じ幻術はかからないだろう。むしろ相手は私を幻術使いだと思っている節がありそうだ。ならば同じ幻術と見せかけて他の術を使うか、と、足元につけたポーチから横笛を取り出す。攻撃をかわしながら、ひゅるりと音を鳴らせば風が吹いて木の葉がまった。ひゅるり、ひゅるりと音が鳴り、それは曲になるはらはらと舞い落ちる木の葉が相手を襲い出す。私は分身をおいて、姿を消しマゴイチがいる柵の近くまで上がる。分身がひゅるりと音を鳴らす。さて、どうしようか、と頬杖をついた。
この前と同じ幻術なら、と相手も誰かも言う。私はただただ分身に翻弄されーー幻術だと思い込んでいる相手を見おろした。同じ流れなのであれば、分身が消えた瞬間に幻術をかければいい。本来ならこのまま距離を開けるのだけれど。あぁ、まどろっこしい!と騒いだ相手は大技を使って背後にいた私に攻撃をした。その瞬間、私の分身が音を立ててきえ、笛の音が止む。宙を待っていた木の葉が、はらりはらりと地面に落ちていく。しかし、相手はそれを恐れたように一歩また一歩と下がっていく。あれ、ただ木の葉が私に見えるようになったのにな。闇雲に武器を振り回す相手に私は落ちていた武器を拝借して飛び降りる。そのまま鎌の部分をそっと相手の首元に近づけた。相手は動かない。それはそうだ。動いたらきれるんだから。それをみて審判がやめ、と声を上げた。拍手なんかの歓声と私の名前を呼ぶ声が聞こえる。私は武器を手から離し、地面に落とす。カタカタと震えている相手が笑っているのか泣いているかわかなかったため相手を覗き込む。ふむ、どうやら怖かったらしい。彼もしくは彼女より視線を低くして頭を撫でる。
「ごめんね、こわかったね、もうなにもしないよ……君の鎖鎌の技術は素晴らしかったよ。分身はほとんど一太刀だからね。ただ、右方向から投げる癖があるから左が結構隙だらけだし気をつけてね。こうだと思ったらきめつけるのもね」
そうぽんぽんと頭を撫でて、じゃあね、と言って手を振る。なに仲良くしてるんだってばよー!とナルトくんが怒ったように告げた。
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さてさてこの展開は読めていなかったぞ、と息を吐く。幻術だと理解した瞬間解いて、マゴイチのところに行けば担当上忍が応戦してたのでそのまま相手を躊躇なく飛び蹴りをした。
「大丈夫ですか」
「お前こそな」
「マゴイチとヤサカくんは?」
「そこだ」
「ヤサカくんの術で一般客を避難、その護衛をマゴイチが相性いいと思いますよ。彼、護衛の方が得意なので」
「お前はどうする?」
「私は応戦しつつ避難を呼びかけますかね。アカデミーの方も心配ですし」
そう言いつつまた来た敵に容赦なく一太刀浴びせる。これは仕方がない。担当上忍は私をみて目を細めた。
「……戻れなくなるぞ、いいのか」
「仕方ありませんよ」
そう言って影を纏わせてカゲマルに変化する。少年のままだとやりにくいがため大人の姿にまた変わり、近くにいた敵を今度こそ蹴り飛ばした。
「うん、やっぱりこの距離の方がやりやすいな」
「……お前そっちがホンモノか?」
「いや、この体の方がリーチも力もあるからつかっているだけだよ」
影から刀を取り出してついでにマゴイチの武器も取り出したら担当上忍が銃はここにない技術だからダメと言った。……うん?
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木の葉崩しここにあり、と言った惨状だろうか。とりあえずアカデミーはイルカ先生他先生たちがいたので近くにいた敵を蹴散らして逃げ遅れた子を預けておく。あとは一般人の保護くらいだろうか。そう考えて瓦礫の下敷きになりそうだった親子をひっつかんで瓦礫をかわす。安全な場所ってどこだ。
「腕が立つのに見かけない顔だ」
「避難場所ってどこです?」
殺気を飛ばした相手にそう問えば無言である。これは疑われてるな。木の葉のマークつけてるんだけどなぁ、と思ったら他の担当上忍もいた(おもにシカマルくんとこの)ので一旦変化を解く。私をみて、頭を抱えたが。
「バンサイのトコの問題児か」
「え、私問題起こしてます?めちゃくちゃ大人しく彼の言うことほとんど聞いてるんですけど」
「お前の場合は遡行の問題じゃないんだよなぁ」
苦笑いである。とりあえず斜め上部にいた敵にはクナイ投げたら呻き声をあげられた。
「バンサイはどうした?」
「マゴイチとヤサカくんに分身あたりが付き添ってるとは思います。あとの二人は避難の護衛を。……あ、マゴイチとヤサカくんに合流したらいいのか」
ぽん、と分身を二人だし大人に変化して一般人を避難させる。
「まぁ、私もアカデミーの様子が気になって見に行っただけなのでもう合流しますけど」
「そうしろ。普通の下忍中忍は一人でまず動かない」
「貴方か言うならそうします」
もう一度ぽん、と変化してカゲマルになっておく。
「……それが本来の姿か?」
「いえ、リーチと力があるので好んでるだけです」
そう頭をさげて、マゴイチ達の方へ足をすすめた。
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マゴイチ達に合流したら担当上忍が交戦中だったのでアシストしとく。
「おー正式カゲマルルックスってことは中々やべぇんだな!銃だせ、銃!」
「……砲術は先生が存在しないからやめなさいと言ってたからやめとくよ」
そう言いつつ譲歩案として千本を射出できるボーガンとポーチを渡す。ヤサカくんに大丈夫かい?お声をかければ、首を傾げられた。そりゃそうだ。ぽん、と姿を元に戻せば、「あー!ナマエだー!」と喜ばれた。可愛い。
「心配したんだからねぇ」
「ごめんね、ありがとう」
やっぱりソワソワするので少年ルックスに化けておくとする。ちなみに折り紙の船を巨大化したものに乗せて避難中だ。ちらほらと同じものを見たということはおそらくはヤサカと同じ一族の人がやっているんだろう。
「ナマエ、市街地はどうだった」
「壊滅とはいきませんが程々に倒壊してました」
「引率はお前に任せるぞ」
そう言って消えた担当上忍に、私はまた大人になっておく。ついでに周りに幻術をかけといた。これでしばらくは安全だろう。
「少年ルックスじゃねぇの」
「大人がいた方が安心されるだろう?」
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