2019/10/25

カゲデソウロウ3

喪に服す周りを見て自分があまり乗り気でないのは割り切っているからだろうか。そこまで関わりがなかったし、個人的に忍びの長という存在にあまりいい印象を持っていないからだろう。あのクソもまた忍びの長だったわけであるし。真っ黒の服をきていると、どうもカゲマルとしての面が出てしまうのでカゲマルに変化しているが。マゴイチはヤサカと葬儀にでているため不在だ。
ーーもしも、この里で。
もしも、この里で先生達と過ごしていれば、先生達は。私は。
そんなもしもを考えて、目を伏せる。ありえないことだ。そもそも、先生達は扱う術からして里が分かれていた可能性が大きい。それでこそ先生達の殺し合いになるのだからそれもそれで嫌だ。
忍びだらけのこの場所にいれば、何処かに先生がいるのではないかと探す自分が嫌になる。
「先生達は死んだじゃないか」
両手を見て、小さく呟く。僕がこの手で、殺したじゃないか。

oo

家に帰ればアンニュイなカゲマルがいた。なにアンニュイになってんだ、と思いながら近づけばこちらをハッとしたように見たカゲマルに「珍しい」と思う。これはもしかしなくても体調が悪いナマエでは。そうペタリと額に手を当てれば熱い。
「熱あんぞお前」
「……通りで気分が沈むわけだ」
カゲマルはそう力なく笑う。寝てくる、と自室に入ったカゲマルにため息をついた。今日はどこも店は閉まってる。とりあえず先生を探してなんとかしてもらうか。

「マゴイチ、盗み聞きはよくないぞ」
一応忍んできたのに、気づかれた。ので、大人しく窓から顔を出す。おー、上忍がいっぱい。知らない人もいるが、そこはスルーである。
「よ、先生と他の班の先生達」
「ヤサカとナマエはどうした」
「俺の癒しのヤサカはちゃんとお家に送り届けた。先生に用事っつーか」
「なんだ」
「ナマエが体調崩した。医者どこも閉まってるしどうしたもんかと相談に」
「は?アイツが?」
「しかも結構額熱かったから熱高そうだったし」
俺の言葉にカカシ先生が本をめくりながら口を開く。
「それを聞いてるとまだ子供なんだなぁと思うね」
「別にほっといてもいいんスけど、悪夢見てうなされてうるさいし、何より」
「何より?」
「寝ぼけて忍者絶対殺すマンになったらヤバイ」
「……は?」
「ちょっとまて、お前、そういうこと急に盛り込むのはやめろ」
周りが目を見開いておれをみる。バンサイ先生は頭を抱えた。アスマ先生にちょいちょいと手招かれたのでそちらにいく。渡されたオレンジジュースはバンサイ先生が持ってたやつではないか。
「どういうことだ?」
「この里の人は別に嫌いじゃなさそうだから普段はそんなこと考えてないだろうけど、アイツの意識が朦朧としてるならそうなると思う」
「何があったんだよお前らに」
「セットにされても、オレとアイツ、親も育ちも途中まで別だしな」
そう言いつつオレンジジュースを飲む。自白剤の類は多分効かないから大丈夫だろ。バンサイ先生が持ってたやつだし。
「ただ、アイツ、バンサイ先生のこと先生って呼ばないだろ」
「あぁそうだな」
「舐められてるの?」
「さぁな。掌もみせてくれないからしらん」
「いや、舐めてはないと思う。やりとり見てると最近は警戒解いてるし。まぁ、なんだ、アイツにとっての先生は他にいたんだよ」
「どこかの里にいたのか?」
「いや、そういうわけでもない。ただアイツには先生が複数人いて、その先生達が大好きだったからバンサイ先生は先生と認めなくないとかそんな感じだと思う」
「その先生達はどうしたんだ」
シカマルそっくりの男性の言葉に、頭をかく。
「その人達がいればアイツは孤児にも忍者嫌いにもなってないんだよなぁ」
それは一種の答えである。微かに目を見開いた周りをスルーして先生薬かなんかない?と聞けば彼はため息をついた。
「診てやるからナマエのそばでじっとしてろ」
「は?何、先生医者だったの?」
「バンサイは元々医療忍者の方の人間だからな」
「なんだよそれ早く言えよ。アンタも人のこと言えねーじゃねーか」
そう言って空き缶をなげておいた。

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「なんで高熱でてんのに変化してるんだコイツ」
「くせみたいなもんだろ」
カゲマルになっているナマエに対してバンサイはそういうと息を吐いた。面白半分でやってきたカカシ先生達はナマエを見下ろす。任務はいいのかと聞けば待機であるし何か有れば連絡が来る、らしい。ひやかしじゃねぇか。意識が朦朧としているナマエは当初どろりとした目を俺にみせて起き上がろうとしたがバンサイの寝ろという言葉に大丈夫だと言い張ろうとしたがーー呆気なく倒れた。バンサイが体温測って眉間にシワを刻みテキパキと処置をした。
「いやぁ、綺麗な顔してんのね」
「変化だけどな」
「変化してもほとんどパーツは変わってないし、本当に男になっただけって感じ。なんで男の子に化けてんの?」
「成人にも化けるぞ。その時はリーチと力があるからって言ってるな」
ナマエを覗き込んでいる上忍に向かってそういえば、アスマ先生なんかは思い当たったんだろう。あぁ、この前は化けてたな、と呟いた。
「これをデカくしたーーカカシの黒バージョンみたいな」
「え、何、俺のファンなの?」
「ナマエの枯渇に関わる気がする。アンタじゃなくてアイツの先生の二人に寄せてんの」
ぶっちゃけ言うと写真を見る限りはその二人は元祖忍者漫画の赤影と影丸にそっくりである。どっちかというとアンタがそっちに寄せている。変化をするチャクラもなくなったのか、ポンッという音とともにナマエが元に戻る。うわ言のように、ナマエが「せんせい」と告げる。あ、やばい、と俺は思う。
「呼ばれてるよ、バンサイ」
「俺じゃない」
ひやり、と温度が下がる。カカシ先生そっくりだった人間が操っていたとされる影や糸、木の葉や炎ではない。俺は慌てて他の上忍を押し除け、バンサイを蹴飛ばした。その瞬間、パキリ、と音が鳴ってバンサイがいた場所が凍りつく。彼彼女らは目を見開いた。
「氷遁……血継限界か……!」
そう驚く周りに俺はナマエに馬乗りになって揺すった。めちゃくちゃ寒いが気にしてはいられない。家賃がやばい。
「ナマエ、起きろ。それ夢だから。お前の師匠はもういないだろ。何回繰り返しても帰ってこねぇし、教えてもくれねぇよ」
それでも先生先生とうわ言のように告げるナマエにため息をつく。結局僅かに覚醒したナマエにカカシ先生が写輪眼を使って眠らせた。
「霧の里の出かしら」
「先生の一人が元を辿ればそうだったんだろ。俺が考えるに先生のうち二人は元を辿れば木の葉だぞ」
「なんでそう思うんだ?」
「アイツが好んで使うのが木の葉と影だからな。でもシカマルと使い方が違うあたり、どっか枝分かれしたとかそんなんじゃねぇか」
ガシガシと頭をかきながら告げる。
「で、先生、結局コイツなんで熱出してんだ」
「毒だな」
「は?コイツあの孤児院に平気でいたから耐毒あるぞ」
「……それを上回ったんだろ。あとお前、孤児院やらの情報を小出しにするのはやめろ」
「他里の忍者が壊滅させてる時点で察してほしい。が、多分他里の忍者がなんかしてなくても子供以外は時間の問題だったけどな」
俺もナマエもいつ牙を剥いてやろうかと隙を伺っていたのだから。

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「この前はどうも」
バンサイに色々聞いて、周りが凍りついたのを見て理解したのが今朝である。しかしながら暴れたあとではないために、恐らく上忍が押さえてきたのだろうとは理解した。だから担当上忍にはまぁツラつらと言っておくかと詰所に向かったわけである。窓から顔を覗かせれば驚かれたがとりあえずスルーだ。
「……もう治ったのか」
「はい、おかげさまで。お忙しいのにご迷惑をおかけしました」
「おかしいな、普通のやつならもう2、3日は寝込むんだが」
「私が普通ではないなんて、貴方が一番知るでしょうに」
私がそういえば彼は私をじっと見て口を開く。
「お前に何があった」
「何があったかといわれても」
そう言って私は窓枠に頬杖をつく。
「私の生まれはよくわかりません。母親も父親の顔もね。ただ、物心がついたときには七人の先生に対して私一人、そして先生達に指示をする人間が一人という構図でした。そこで色々と教わったんです。家庭教師みたいなものですかね」
「ずいぶん豪勢だな。嫌になりそうだ」
「そうですか?私は兄がたくさんいたようで楽しかったですよ。先生、先生と昔はよく後ろをついて走ったものです」
あの頃は無邪気だったと思う。
「その先生はどうしたの」
そこで口を噤む。この人達に伝えてもいいものなのか。元の世界では完璧に犯罪者である。
「……ありふれた話です。先生達より偉い一人が私一人を必要としてしまえば、その結末なんてわかりきったものでしょう?」
こてん、と笑顔を浮かべて首をかしげる。担当上忍の顔が真っ青にそまった。彼はやってきて、私の肩を掴む。手が震えている。他の人達も唖然としたようにこちらを見た。
「殺したっていうのか」
「それがおやかたさまの命令でした。先生達はみんな私を殺そうとしました。私が逃げてばっかりだったので、先生の一人が私に殺されたようにみえるように私の目の前で自害しました。その瞬間、理解しました。この人達と家族のように幸せに生きる道はないのだと」
だから。
「だから、僕は彼らを殺しました。残った僕はしばらくおやかたさまといましたが、原因となった彼が忍という存在が許せなくて見限りました。あの孤児院に行ったのはそれからです」
だから。
「ーーだから、僕は誰一人僕と同じ目に合わせないと誓いました」
そう、だから、僕(私)はあの子たちに同じ目に合わさないと、あんな大人から守って見せるのだ、と。そっと抱き寄せられる感覚がする。どうして担当上忍がそうしているかはわからない。
「先生、貴方はやっぱり優しい人だな」
そう笑って私は影に溶けるように消えて見せたのだ。



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nrt/brt 

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