2019/11/11

ハルアカツキニテ5


途中でマゴイチも加わったけれど、相変わらずボルトくんは見つからずだ。シカダイくんが見つけた空の光の付近を探していれば、ボルトくんやミツキくん、委員長が空から降ってきた。なるほど時空間忍術で行方知らずになっていたらしい。ほっと息を吐けば、大人達が現れて委員長を囲んだ。その様子を見ると恐らく犯人は委員長だったのだろう。少し話してくるだけだからと告げた彼女はもう吹っ切れたようだった。だから私は、まってるよ、と無邪気を装って笑って手を振る。
「なにがあったか、よくわからないけど、アカデミーでまってるよ、スミレちゃん」
私の言葉に彼女は目を見開いてーーうん、と小さく頷いた。朝日が眩しい。もう朝らしい。腕に抱えていたタロちゃんとジロちゃんは寝息をたてているので巻物の中に戻ってもらう。アキノくんとウーヘイくん、ウルシくんはすんすんと鼻で宙の匂いを嗅いだ。
「ナマエ、そろそろ帰ったほうがいいぞ」
「うん、朝だもんね」
私の言葉に他の彼らは目を見開いた。ボルトくんとシカダイくんは見るからに顔を青ざめさせている。
「私が手伝ってもらったっていおうか?」
ボルトくんはともかく、シカダイくんの両親に限ってはなんやかんや私を出せばいける気がする。
「……いや、大丈夫だ。ナマエも早く帰ったほうがいいぜ」
「うん、またあとでね」


ーーそう言って別れたのはいいものの、帰ればカカシ先生が笑顔で待っていた。カカシ先生の忍犬が説明してくれたけれどこってり怒られることになった。しゅん、とすればワンコ達に元気出せと舐められだけど。
「カカシ、ナマエをあんま叱ったらダメだ!」
「シュンとした、カカシのせいだ!」
「ナマエは頑張ったんだぞ!」
「なんでナマエを庇うの……」

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「うーん、デンキくんはチャクラの感じがわかんないんじゃないかなぁ」
彼に近づき手をとる。えっ、と固まった彼にそのまま医療忍術よろしくチャクラを少し分け与えてみた。
「今の手の感覚、これがチャクラを纏う感じ。この感じを足に向けたらいいと思うなぁ」
そう言ってみたけれどもデンキくんが固まっていた。なんだ?と首を傾げればチョイチョイとチョウチョウちゃんに呼ばれる。
「ナマエ、今のはちょーっとデンキには刺激が強すぎじゃなぁい?」
「刺激?他の子にしたみたいに手にチャクラ流しただけだよ?」
「ナマエ、それ、なみだ達というか女の子でしょ?」
「うん」
「デンキは?」
その問いにデンキくんをみる。……。
「……男の子だ!」
これは完璧に無意識である。先生の動作をしてしまった。最近私に男女(本人曰く恋のいろは)を教えたがるチョウチョウちゃんは「これだからナマエは」と告げた。
「あちしみたいな素敵なレディになりたいなら、あんまりベタベタしちゃダメ。わかった?」
「うん!」
「よろしい」
「ナマエー、私に教えてよー!」
「いいよー」
かけられた声にチョウチョウちゃんに断ってそちらに向かう。マゴイチがシカダイくんに向かって何か爆笑してるのが見えたので、「こら、マゴ!」と叱っておく。マゴイチはただ両手をあげた。

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「マゴイチとナマエって出来てんの?」
そう問いかけられた言葉にはぁ?と答えた俺は悪くない。聞いてきたいのじんに、あぁそういやボルトとシカダイはともかくコイツらは知らないよな、と理解する。
「なんでそう思うんだよ」
「この前2人で出かけてるのをみたから」
いのじんの言葉にただただコイツは疑問を聞いただけだろうなと思う。チョウチョウが「あちしもみた!」というのを皮切りに見たという報告が次々とあがる。ナマエに聞かないのは恐らくアイツが恋愛のれの字も知らないと思われている節があるからだろう。ちなみにナマエは先代が今日から旅行に行くとかではやめにかえっている。見計ったなコイツら。
恥ずかしいなら聞かなきゃいいのにボルトが何故か顔を真っ赤にしている。なんで赤くなってんだコイツ。ウブか。いや、小学生だったわ。
「まぁ、仲はいいよな。でも付き合うとかナイナイ」
「なんでよ」
「だって、あいつきょうだい」
みたいなもん、といおうとしたのだが、綺麗に周りが叫んで消えた。苗字違うよね、先代が離婚!?みたいなことを言われたが「まぁおちつけ」と周りを落ち着かせる。
「先代が離婚して親父が、とか、その逆もねぇよ。はやとちりすんな。ただ、ずっと昔から一緒にいたからきょうだいみたいなもんなんだ」
思えば長い付き合いである。元いた世界でも付き合いは長いというのに、ナルト達のアカデミー(より少し前)の時代からあの大戦まで、そして今ときた。これぞ腐れ縁、相棒という感じだろう。まぁ親と血が繋がってねぇとかいうのは野暮だから言わねぇが。
「あいつと恋人とか、ねぇわー」
シカダイを見ながらそういえば眉間にシワを寄せられた。お前テマリに似たな。目元。

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先代が旅行(半分調査半分)に出かけたためしばらく一人暮らしである。一人暮らしも慣れている物なのだが、カカシ先生がしきりに心配していたのが面白かった。何かあったらバンサイ先生のとこかシカマルさんのとこにいきなさいと言われたが2人は忙しいので基本頼らないだろう。シカダイくんも私の世話ばかりしてられないだろうし。淡々と普段できない場所の掃除を分身したりして片付ける。カカシ先生の部屋は流石にノータッチであるが。まぁ、やることを済ませて私が向かいたかったのは昔の自分が住んでた部屋である。チラッと聞いた話ではそのままらしかった。鍵は実は私が持っているというか、影の中にある。昔は暗部の待機所近くだったけれど今はどうなのだろうか。忍ぶぐらいが丁度いいだろう。ちなみにマゴイチの部屋もそのままであるのをみると、彼らは私達が帰ってくると本気で信じていたのだろう。だから、ヤマトさんは私に「おかえり」と言ったのだ。

ーーあの部屋は思ったよりも綺麗だった。それもそうかもしれない。ヤマトさんと暮らしていた場所なのだから。ヤマトさんが掃除をしてくれていたのかもしれない。あたりにある何もかもが懐かしい。アカデミー時代にナルトくんと撮った写真、一班の写真ーーヤマトさんと不意打ちで撮られた写真。それらを見てなんとも言えなくなった。私の記憶の中の写真はもっと綺麗だったのに今は色褪せている。クローゼットを開けてみれば、新品の服が何着かあった。そういえば復興のためという名目で衣装屋さんに大戦前に買わされたような気がする。化粧品だって、買わされた気がする。今の姿で羽織って見せてもサイズの合わないその服は床についてしまった。あと何年かかるのだろうか。ぽん、と変化の印を組んで素の姿に変化する。ピッタリになったその眞白の衣装を鏡で見ていれば、小さく扉が開いたのが見えた。一瞬である。突っ込んできた男性が誰か、私は理解している。私はクナイをそのまま弾く。彼はそこで私が誰か認識した。小さく息を止めた彼は、あの頃のままの私とは違い年を重ねている。カカシ先生に言われて、私に分身をよこしたのかもしれない。相変わらず心配性だ。
「ナマエ……?」
小さく私の名前を呼んだ彼に、私はそっと微笑んだ。彼は唖然としたように、夢を見ているかのように、一歩、一歩、私に近づいた。
「ナマエ、なのか?」
私はそれに答える気はない。答えてはいけない。今やこの姿の私は過去の亡霊に似た姿で、本来の私はあの惚けた子供になりつつある。彼はそっと私に触れた。頬に手をあてる。触れることを理解した彼は、もう一度、ナマエなのか、と尋ねた。私は相変わらず笑みを浮かべて同じように彼の頬に触れた。彼はそっとその手をとる。
「ナマエ、なんだね」
「……」
「どうして喋ってくれないんだい?」
「……」
「ボクには君に言いたいことがたくさんあったんだ。でも、それはあまりに遅すぎた」
彼はそう言って、息を吐いた。そして、彼は笑った。困ったように、悲しむように。
「……ボクはもうこんなになってしまったよ」
それは、逆なのだ。貴方が嘆くことではないのだ。だって、それが正しいことだ。時間は前にしか進まない。後ろには進むことなど、本来はない。はらり、と落ちた涙に彼は今度こそ困ったような表情をした。
「どうして君が泣くんだ?笑ってくれよ」
「……」
「頼むから、ボクの夢なら笑ってくれ」
彼の言葉に目を伏せる。笑え、笑うのだ。緩やかに笑みを浮かべる。夢にしてあげようと、私は彼の名を呼ぶ。
「ヤマトさん」
そうして舞った蝶をみて彼は意識を失った。私は彼を抱きとめて近くのソファに寝かす。変化を解いてしまえば、緩んだ涙腺が決壊したようだった。
「どうして」
どうして、私はこの人と一緒の時間が過ごせなかったんだ。どうしてこんな姿になっているんだ。どうして。ポロポロと流れた涙を止める術なんか知らない。ただ、ヤマトさんのそばで静かに泣いていれば、彼は意識を戻したのか起き上がった。そうして小さい私を認識すると、慌てたように私をみた。
「ナマエ、どうかしたの!?何かあったの!?」
肩を掴んでそう告げた彼にぐずるように泣く。えーん、えーん、と子供のように泣く。彼は眉尻を下げて、泣きたいのはこっちなんだけどな、と小さくぼやく。そうして彼は私に目線を合わせると、私に尋ねた。
「ねぇ、ナマエ、どうして泣いてるんだい?」
「どうして私はおとなじゃないの」
私の問いかけに今度は彼が何も答えない。目を見開いたまま彼をみた。
「私じゃない私は、七代目様と同い年なんでしょう。どうして私はおとなじゃないの」
「……」
「私じゃない私も、カゲマルも、そう思ってる。どうして私とマゴだけ、子供なの」
「それ、は、」
「どうしてわたしたちだけ、こうなってしまったの。わたしたちだって、みんなといっしょがよかったよ、ヤマトさんといっしょが、よかったよ」
かえってきたのに、こんなのひどいよ。おいてかないでよ。
えーん、えーん、と子供のように喚く。彼は目を閉じて、そうだね、と小さく告げて私を抱き寄せた。私は甘えるように彼に手を回す。
「先代の家に帰ろう、ナマエ。ここにいたら、悲しい気持ちになっちゃうだろう?」
それはきっと貴方の本心だ。

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