2019/11/21
ちょっと大人になったあの子主とガラル地方
・色々間違ってるので今度書き直します
下らない理由で旅に出たいのだから、心配性の両親は心配しないだろうか。そうポツリと呟けば、プラターヌは目をパチリと瞬いた。
「下らない理由?」
「ガラル地方のポニータをみてみたくって」
そう、始まりはホロキャスターに配信された他地方の森のライブ中継だ。メルは作業の合間に見ていたのだが、その時に偶然ポニータが映ったのである。本来ポニータは炎の鬣を持つのだが、ガラル地方のポニータはなんとも可愛らしいふわふわとした鬣を持つのである。それを是非とも自分で見てみたい、そんな理由で旅に出たかったのだ。プラターヌもまた同じライブ配信を見ていたのだろう。あぁ、とうなずいた彼は「確かに可愛かったね」と笑った。そのままメルとプラターヌ、研究員ががガラル地方の森について離していれば、エレベーターが止まる。カツリカツリとヒールを鳴らして入ってきたのは純白を見に纏った女性だ。「久しぶりね、メルちゃん、プラターヌ」だなんて告げて見せた女性ーーカルネにメルもプラターヌも研究員も唖然とした。大女優のチャンピオンがなぜここに。彼女は「なあに、その顔」だなんて告げたが。
「カルネさん、どうしてここに!?」
「その顔みると忘れてそうね」
「えっ!?」
声を上げたプラターヌに、カルネは息を吐いた。
「マネージャーを通してこちらにメッセージを入れたのだけど、その様子を見てるとみてないわね?」
「え、あっ、そうか、切り替えてたから」
慌てたようにメッセージをチェックするプラターヌを他所に、カルネはメルを見た。ニコリと笑った顔はさすが女優である。見惚れるくらいだ。
「ヴィセンテやフラダリには内緒にしておいてほしいのだけど」
「お父さんには?」
「貴方にガラル地方に赴いてほしいのよ」
「えっ、」
先程まで話していた内容が内容である。目をパチリと瞬いたメルはプラターヌをみた。どうやらロトムスマホに切り替えたことでメールの引き継ぎがうまくできてなかったらしい。プラターヌはその話をきいて画面から顔を上げた。
「ちょうど良かったじゃないか!さっきまでガラル地方に行きたいっていう話をしていたし……僕的にもちょうどいいよ!」
「プラターヌ博士的にも?」
「ちょっとね、ガラル地方の博士に届けなきゃいけない資料があって……ボクも行きたいのは山々だけど仕事があるからね。いやぁ、残念……」
「貴方もいくの」
バッサリと切り捨てたカルネに、プラターヌは目をまたたいた。
「貴方の学会の関係でメルちゃんを連れて行った、ついでに私のお手伝いを頼んだってしないと、あの厄介な親バカと極度の心配性をどうにかできると思ってるの?あとメルちゃん一人でいかせてホウエンみたいなことになったらどうするのかしら」
カルネの言葉に、プラターヌは内心「カルネさんも心配性なんだよなぁ」と思う。口に出すことはないが。
「博士の学会はともかく、カルネさんのお仕事の手伝い?」
「ガラル地方のポケモンリーグの委員長が私を誘致してくれたのだけど、向こう一年私のスケジュールは抑えられてるのよ。それに、一応観光大使の役割もあるわ」
カルネの言葉にメルは動きを止めた。
「メルちゃんの実力は私と同じグランダッチェスでしょ?」
「それは、カルネさんが返上するならって……」
「そうね。貴方がチャンピオンの座を返上する時に出した私の条件ね。それにモデル経験もある」
「それはカルネさんとフラダリさん、お店のお手伝いで」
「あら、プラターヌ、知らせてないの?」
「何を?」
研究員に旅行準備を押し付けられているプラターヌはこちらを見た。博士は偶には休暇を取るべきです!それにはメルも同意である。
「そうね、貴方も疎いわよね」
「えっ、プラターヌ博士知らなかったんですか」
女性研究員がプラターヌを見た。プラターヌは首をかしげる。
「あのブランド、一部他地方に進出したりフランチャイズしてて、メルちゃんって結構有名なんですよ」
「えっ」
メルもプラターヌも初耳である。通りでアルトマーレに家族で訪れた時に騒がれたわけだ。
「とにかく、貴女は知名度もあるし実力もあるから私の代わりに赴いてほしいの。仕事はちょっとだけよ。そのあとはプラターヌの手伝いをするなり、戻ってくるなり、好きに旅をすればいいわ」
メルが肯定するか迷っている。が、プラターヌが口を開いた。
「その顔はもうその案を提案して了承されちゃってる顔だ」
「あら、バレちゃった?ということで、よろしくね、メルちゃん。航空機のチケットはプラターヌの分もとってあるわ。ヴィセンテ達にはあたしからうまく言っとくわ」
よろしくね。
ひらりと手を振ったカルネはまたヒールを鳴らして戻っていく。マネージャーがメルにチケットと手紙、トランクケース一式を渡して後を追った。まるで嵐のようである。プラターヌとメルは目を見合わせて苦笑いした。何はともあれ、ガラル地方にはいかなければいけない流れである。
「ポニータを頑張って見に行こう」
「捕まえるじゃないの?」
「仲良くなったら一緒に帰ってきます」
研究員の言葉にそう答えれば、男性の研究員がほんわかと笑った。
「メルちゃんのお家、ギャロップ牧場になりそうだねぇ」
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「あ、そっか、メルは古い機種をずっと使ってるもんね」
そう言ったシトロンはメルのホロキャスターをみる。この地方ではホロキャスターが主流であるが、スマホ型のホロキャスターが今は第一線だ。スマホロトム型ホロキャスターも人気があるが、メルのホロキャスターは古い機種のままである。なんとなく愛着があるが故にそのままなのであるが、ガラル地方からの通信に不具合が生じる可能性があるらしい。とりあえずこういうことはミアレシティのジムリーダーであるシトロンが詳しいだろうとメルは尋ねにきたのだ。
「最新型のスマホロトム型ホロキャスターなら大丈夫だと思うよ」
「うーん……スマホロトムって、ロトムが入ってるんだよね」
「悪戯が心配?」
「ロトムと仲良くなれるかなって」
メルはそう言って苦笑いした。シトロンは目を瞬くと、「大丈夫だよ」とうなずいてみせる。
「みんな仲良くなれてるし……」
「そっか……」
「メルのことだし、フラダリさんに言ったら機械は貰えるんじゃないかな。ロトムはボクが準備しておくから……」
フラダリという言葉にメルは固まる。シトロンがどうしたの?と尋ねて見せた。
「フラダリさんにね、まだガラル地方に行くって言えてなくって」
メルはそう困ったように告げた。フラダリとプラターヌ、そしてメルの父親であるヴィセンテは仲が良い。三人揃うとトリコロールカラーになることからカルネやメルの母親にトリコロールトリオとまとめられることが多い。前にそのトリオとカルネで一悶着どころか二悶着、いやある意味この星の危機ぐらいのことがあったのだが、ヴィセンテが本気でフラダリを叱ったこととメルの介入によりコトなきを得たのは五人だけの秘密である。そこから、フラダリは何故かメルに対して心配性になっている。曰く、いつ騙されやしないか冷や冷やしている。だから、ある意味メルが行方不明になったトラウマをもつヴィセンテと同じくらい過保護なのだ。別の地方に向かうのもついてきたコトがあるし、なにより他の地方に行きたいという話をすれば、必ずロケット団に誘拐されかけた話やアクア団に気に入られた話を槍玉に止められてしまうのだ。何も知らないシトロンは首を傾げたのだけど。
「私が何か?」
不意に聞こえた言葉に、メルは肩をはねさせた。後ろを見ればフラダリである。あ、ちょうど良かったと告げたシトロンにフラダリは首を傾げた。
「メルがガラル地方に行くみたいなんです、だから、」
「スマホロトム型ホロキャスター、ですね?」
フラダリの言葉にメルは目をまたたいた。もっと反対意見が飛んでくると思ったからだ。
「そろそろメルのホロキャスターを変えてもらおうと思っていたんです」
そう言ってフラダリは鞄の中からスマホ型のホロキャスターを取り出す。可愛らしいデザインのそれに、わぁ、とメルは言葉をこぼして受け取った。
「可愛い」
「メル、それかして」
そう告げたシトロンにメルはスマホ型のホロキャスターを渡す。ロトムをつれてくるね、と言ったシトロンはそのまま彼のラボに入った。
「プラターヌ博士にここにいるコトや色々とお聞きしました。ガラル地方に向かわれるそうですね」
フラダリはいつもの穏やかな口調でそう告げてメルを見下ろした。
「ついていきたいのは山々なんですが、ヴィセンテを止める役割を押し付け……担ってしまったので。シトロンくんとの研究もありますしね」
穏やかに笑った彼にメルはホッと息を吐いた。怒ってはいないらしい。
「ガラル地方でそういう話は聞きませんが、変な大人についていってはいけませんよ」
「ちょっとは大人になったんだけどなぁ」
「年はあまり関係ありませんよ。しかし、貴女のポケモンはしっかりしているので大丈夫でしょう。旅道具を一式お渡ししますので、後で一緒に来て頂いても?」
「はい」
ふにゃりとメルが笑えばフラダリもまた穏やかに笑う。ちょうど部屋から出てきたシトロンがロトムを連れてきた。メルの周りを飛び回ったロトムはロトロト笑いながらスマホにはいる。これでスマホロトム型ホロキャスターは出来上がりである。あまりの可愛さにメルが話だと言いながらスマホロトム型ホロキャスターを触る。シトロンもフラダリも満足そうだ。
「図鑑の同期や連絡先の同期はカフェで行いましょう」
「はい。ありがとう、シトロンくん」
「ううん、いいんだ。ガラル地方、楽しんできてね」
そう両手を振ったシトロンに、メルは手を振り返した。
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旅道具といっても、プラターヌがいるため最初から野宿はないだろう。しかしながら、どうやらガラル地方はキャンプが流行っているらしい。フラダリがしっかりと準備してくれているのをみるとメルが旅に出たいと申し出るのがわかっていたようである。キャンプ用具なんかを説明して見せたフラダリはメルを見下ろした。
「きっと貴女が旅に出たいというのではと思って準備はしていたんです」
「えっ」
「この前のガラル地方の森のライブ配信があったときに、ポニータが映ったと聞きましたので」
「フラダリさんは見ました?」
「画像だけですが」
緩やかに笑ったフラダリは冷やかすように「ギャロップが焼きもちを焼きますよ」と告げた。メルは自分のボールをみる。ギャロップは今日の朝もご機嫌だった。
「本当は私も行きたいのですが、プラターヌ博士に譲りましょう。ゆっくり休むようにいっておいてください」
「わかりました。また連絡をしますね」
「楽しみにしてます。さて……ヴィセンテをどう止めるか」
そう少し考えるフラダリにメルは少し申し訳なくなった。最悪、追いかけてきそうな気がする。フラダリとホウエン地方に行った時も追いかけてこようとしていたとは母親の言葉だ。メルはそう思ってフラダリに声をかけた。
「……追いかけてくることになったら教えてください」
「そうならないようには善処しましょう」
フラダリはそううなずいて見せたが、ありうる話だ、と思う。そうなれば自分も向かうことになりそうであるが。
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メルの話半分で何処かの調査に向かった父親を見送り、母親はメルにお土産を催促した。メルはうなずけば、スマホロトム型ホロキャスターはリストに加えてくれる。後は飛行機に乗り込み、ガラルに向かうだけだ。メルはワクワクしていた。未だ見ぬポケモンはどんなポケモンなのだろうか、だとか、景色は、だとかそんなふうに考えていたのだがーー。
ついた瞬間に始まった怒涛のスケジュールにメルは目を回しそうだった。やれ、カロス地方の紹介だの、やれインタビューだの、テレビの撮影だの、服を着て写真をとるだの、詰め込まれていたのだ。カロス地方を代表する大女優でもカルネが推薦したということもあるのだろうし、分刻みのスケジュールをこなすカルネのマネージャーが組んだスケジューということもある。ホッと一息つけたのはガラルについてから一週間が経った頃だった。プラターヌと合流すると決めていた(というよりは決められていた)日である。行き方はマネージャーのように手配してくれていた青年が教えてくれた。どうやら電車を使っていくか、ポケモンのタクシーで移動するようだ。ポケモンで移動できるのあれば、タウンマップを見ながらも移動できるだろう。メルは青年と連絡先だけ交換して街に出るとボールからフライゴンを出してあげる。擦り寄ってきたフライゴンの頭を撫で、そのままフライゴンに乗った。フライゴンは高く高く舞い上がる。カロスとはまた違う美しい景色にメルはようやく違う地方に来たのだと口元に笑みを浮かべた。これからどんなことが起こるのだろう。メルはワクワクとした気持ちを抑えながら、フライゴンをなでる。
「いこう、フライゴン」
その声にフライゴンは鳴き声をあげた。
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都会を抜け、森を抜け、のどかな街、煉瓦造りの街をぬけ、そうしてたどり着いた小さな街にスマホロトムは到着だと告げる。フライゴンはそのまま街に緩やかに下降した。もう少しフライゴンと空の旅をしたいがもう少しの我慢である。フライゴンと共にやってきたメルに人々が驚いたようにこちらを見たが、メルが研究所がどこにあるか聞けば快く教えてくれた。どうやらミアレシティの真ん中にあるプラターヌの研究所とは違い街の隅にあるらしい。メルはプラターヌ博士に街についた旨のメッセージを送って研究所に向かった。
「あ、メルちゃん、きたきた」
そうひらりと手を振ったプラターヌ博士にメルは駆け寄った。見知った顔を見つけたことに対する安堵もある。ホッと息を吐いたメルに「怒涛のスケジュールお疲れ様」と彼はメルの頭を撫でた。
「ここが?」
「そ、マグノリア博士の研究所。ダイマックスっていうポケモンが巨大化する謎の研究をしているんだ」
プラターヌの言葉にメルは首を傾げた。
「メガ進化とは違うんですか?」
「驚いたことに、この地方ではメガ進化が確認されてないんだ。その代わりに同じような石が作用しているとされるダイマックスが確認されてる」
「ダイマックス」
「見たことないかい?数分だけだけど、ポケモンがビルほどに巨大になるんだよ」
メルはその言葉に想像する。屋内でビルほどに巨大になっては大変だ。
「その違いや原因を突き止めればメガ進化についてもダイマックスについても何かわかるかもしれないだろう?」
だからプラターヌはガラル地方の博士に呼ばれたらしい。
「有意義な意見交換はできましたか?」
「あぁ、すっごく捗ったよ」
そうガッツポーズをきめたプラターヌにメルはニコニコと笑った。ここのところ、根を詰めていたように見えたからである。不意にプラターヌの後ろの扉が開く。
「プラターヌ博士?」
「あぁすいません、マグノリア博士。席を外したままにしてしまって」
背後から現れたのは高齢の女性だ。プラターヌは扉から一歩退いてメルに並んだ。
「メル、こちらはマグノリア博士。ダイマックスを研究されている方だよ。マグノリア博士、こちらはヴィセンテ博士の娘のメルです。僕の研究を手伝ってもらっています」
「まぁ、この子が」
「はじめまして、メルと言います」
そう頭を下げたメルにマグノリアは「はじめまして」と優しく目を細めた。
「プラターヌ博士から話は伺っています。なんでもーー」
「あーっ!!」
今度はメルの後ろからである。ビクリと肩を跳ねさせたメルが後ろを向けば、オレンジ色の髪色をした年が近そうな女の子と青年、その青年とそっくりな少年がいた。
「メゾン・ド・ポルテの……!ガラル地方に来てるっていう情報は本当だったんだ!」
「めぞんど……?」
「メゾン・ド・ポルテ!カロス地方の有名なブティック!あの子はそこのモデルなの!」
そう告げた女の子にメルはここ数日の扱いを思い出してゾッとした。プラターヌがそれに気付いて苦笑いしたが。女の子を咎めるようにマグノリアが彼女の名を呼ぶ。
「ソニア」
「あ、おばあちゃん、ごめんなさい、つい、舞い上がっちゃって……でも、メゾン・ド・ポルテのモデルのメルさんでしょ?」
女の子ーーソニアにメルは苦笑いをした。
「モデルはあくまで臨時的なものなので……メルです。普段はプラターヌ博士や父の手伝いをしています」
そう手を差し出したメルにソニアは目を瞬いたが、すぐにニコリと笑って手を握った。
「私はソニアよ。おばあちゃんの手伝いをしてるの。で、こっちは幼馴染のダンデとその弟のホップ」
「ソニアちゃんとダンデさんと、ホップくん」
「さん付けはいらねーぜ。年も近そうだしな!」
ニッと笑ったダンデにメルもニコリと笑っておく。サトシくんと同じようなタイプだなぁ、となんとなくメルは思った。プラターヌが同じく笑みを浮かべながら口を開く。
「ダンデくんとホップくんは昨日ぶりだね。でも今日はどうしたんだい?」
「フライゴンがこっちに飛んできてるのが見えたんだぜ!」
そう告げたホップに、プラターヌはメルを見た。
「メルちゃん、フライゴンできたの?」
「?はい」
プラターヌはメルの返答に苦笑いして頬をかいた。
「あー、あの忙しさじゃ仕方ないかぁ……僕ともはなされちゃったし」
「ダメでしたか?」
「ダメじゃないとは思うけど、この地方の人はあんまり自分のポケモンで移動しないみたいだよ」
「えっ」
プラターヌの言葉にメルはどおりで、と思った。すれ違った飛行タイプのタクシー運転手にも降り立ったこの街の住民にも驚かれたのはそういうことだろう。ポケモンを出して歩くのはダメだろうとは思ったのでピカチュウはボールの中であるが。
「おや、メルさんもポケモンを育てているのかい?」
「ちょっとだけです。あまりバトルは得意じゃないので」
メルは確かにカロスのチャンピオンになった。しかし、バトルは得意なわけではない。どちらかというと、ブリーダーの方が向いているだろうとは本人の考えである。しかし、プラターヌはメルに才能があることを理解している。成り行きでチャンピオンになった、とメルはよくカルネやプラターヌ、フラダリやシトロン、家族に話すがチャンピオンは成り行きでなれるものではない。何よりも実力が示されるバトルシャトーで一番上の爵位であるグランダッチェスであることがなによりの証明だろう。まぁこれもカルネに言われたためであり本人は乗り気ではなかったようだが。あの母親に対しこの娘か、とはたまに身内で話題になる話であるが、どうやら昔に何かあったようである。争いを好まないメルがそこまでしてフラダリを止めたのだから。ーーしかしながら、これとそれは話が別だ。
「なんだ、バトルが苦手なのか?」
首を傾げたダンデにメルは頷いた。
「あんまり好きじゃないです」
それを聞いたソニアがダンテに声をかけた。
「残念だったね、ダンデ」
「うーん、そうだな。嫌いなことを無理強いさせるわけにはいかないしな!」
ニカリと笑ったダンデにメルはホッと息を吐いた。どうやら無理強いしてくるタイプではないらしい。しかし、その安堵を途切れさせたのは一緒に来たプラターヌである。
「ダンデくん、無理強いでもいいと思うよ」
その発言にメルは嫌な予感がした。メルちゃんこう見えてーーと言いかけたプラターヌの口をメルは慌てて手で塞いだ。
「もがっ」
「プラターヌさん!ダメです、ダメ!ただでさえ、カルネさんのお仕事のお手伝い、最後の一つがそれなんですよ!」
「あぁ、やっぱりあるんだ、そういう仕事も」
「私だってついてから知りました!色々と!私はこの地方のポニータに会えたらそれでよかったのに」
「うんうん、そうだねぇ、そうだったねぇ、楽しみにしてたもんねぇ」
「ポニータに会いたいの?」
「この前テレビで見たんです……私が知ってるポニータよりひと回り小さくて、ふわふわでした」
「ってことはメル姉ちゃんの地方のポニータは違うのか?」
ホップはそう言って首を傾げた。
「はい……ギャロップならいますが、見てみますか?」
「みたい!」
ホップの言葉にメルはボールを少し離れた場所に投げた。ブルリと鼻を鳴らしたギャロップはメルに頬擦りをする。
「うぉー!すっげー!」
「あ、そうか、他の地方のギャロップはこうなんだっけ」
ソニアはそう言ってギャロップを見た。ホップが撫でようとしたのを見て、ダンデが止める。
「ダンデくん、メルちゃんのギャロップなら大丈夫。優しくて懐っこいから怒った時しか熱くならないんだ」
「へぇ、じゃあ、俺が触っても大丈夫なのか?」
ダンデの問いかけにメルは「大丈夫」と答える。手を伸ばしたダンデにギャロップは鼻先を押し付けた。
「お、本当に懐っこいな」
「兄ちゃん、俺も!俺も触りたい!」
その声にギャロップはホップに合わせるように頭を下げた。熱くない!と告げたホップにギャロップは嬉しそうにブルルと鼻を鳴らした。
「よく育てられてるギャロップね。毛並みもとても綺麗だし……大切にされてるのね」
「ありがとうございます」
メルはニコニコ笑いながらそう告げた。メルにとってポケモンは大事な友達でありーー家族でもある。それが褒められる事は何よりも嬉しい事だ。
「他の地方のギャロップはこんなかっこいいんだな!でも、俺のウールーだって負けないんだぞ!」
「ウールー?」
「まだ見てないのか?この地方のポケモンだぜ!」
「見てないです。まだ全然この地方のポケモンを確認できてなくって」
「ホップ、連れてきてあげたら?」
「おう!」
そのあとホップが連れてきたウールーの可愛さとソニアのワンパチのかわいさにメルが感動するのは余談である。
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目の前に現れたその人にメルは目を瞬いたし、向こうもそれは同じだった。メル?と首を傾げたのは仲良くなったダンデその人である。ガラル地方のポケモンリーグ委員長であるローズがもう知り合いかい?と首をかしげる。メルは眉尻を下げた。
「マグノリア博士の研究所でお会いしました」
「あぁ、そういえばメルくんと一緒に来たのはカロス地方の博士だったね。勝負は?」
その問いにメルは首を左右に振った。ダンデはその様子をマジマジとみてーー何か考えーー結論をだした。
「まさか、メルがカロス地方の?」
「そう!彼女がカロス地方のチャンピオンさ。元、がついてしまうけどね」
ローズはそう言ってメルの肩を叩いた。
「現チャンピオンを招いたんだけど、カロス地方の現チャンピオンはあの大女優カルネだ。彼女は多忙で有名だから、モデルとしても活躍してる彼女が変わりに来たってわけだ」
ローズはそこで言葉を区切る。秘書であるオリーヴが紙を見ながら口を開く。
「彼女はまたチャンピオンから下ろされたのではなく、自ら降りたチャンピオンとしてもカロス地方では有名です。また、バトルシャトーと呼ばれるバトル施設での位も現チャンピオン・カルネと同じく一番上ですから彼女が代わりというのは当然かと」
彼女の言葉に、ダンデがワクワクしたようにメルをみた。強かったんだな、と告げた彼にメルは苦笑いした。
「得意ではないんですが、ポケモン達が頑張ってくれるので……今は後に引けない状況ですから」
「そうか!楽しみにしてるぜ!」
ニカリと笑って見せたダンデはそのまま更衣室に足を運ぶ。やはり、ダンデがこの地方のチャンピオンであるらしい。ローズがメルに告げるに10歳から無敗のチャンピオンだそうだ。それはすごいことだろう。しかしながら、それはまた孤独でもある気がした。メルは一度、物凄いバトルが強い男性と会ったことがあったが、彼は孤独であるような気がしたのだ。カルネだって、シロナだって、メルにたまにぼやくことがある。
ーーこの高さまで登ってくる人はいても、同じ高さにずっといてくれる人は少ないのよ、と。
だとしたら、ダンデはとても寂しいのではないか。
メルはローズ達に着替えるよう促されて更衣室に足を運ぶ。ボールから出てきたピカチュウに、頑張ろう、とうなずきあいーーメルはドレスに袖を通した。
外に出てみれば、スタジアムはまるでスポーツをする場所のようである。何よりもダンデの服がユニフォームのようで、メルは自分の服装が噛み合わないなと思う。バトルシャトーになればダンデの方が噛み合わないのだろうが。大観衆が埋め尽くしたその場所の多くはやはり地方のヒーローだけあってダンデの応援を掲げている人が多い。しかしながら、旅行者であるのかところどころでカロス地方の旗を掲げていたりもする。
「楽しもうぜ、メル!」
そう笑ったダンデにメルは「出来る限り頑張ります」と頷いた。
思ったよりも接戦だ。お互い最後の一匹である。と、いってもメルは最後のポケモンをボールに入れていない。メルは横笛を取り出し、そっと音を奏でる。首を傾げたダンテだが、空から聞こえてきた鳴き声に空を見上げた。空から飛び込んできたのはラティアスである。くるりとスタジアムを旋回して見せたラティアスはメルに頬擦りすると「どうしたの?」というように鳴いた。
「アス、手伝って」
メルの言葉にラティアスは了承するようにひとなきすると、ダンデのリザードンをみた。
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