2018/01/30

↓学園怪奇譚・三

「大丈夫?泣かないで、ほらほら、」
そう朔太郎さんに似た生徒を励ます。居残りさせられていたら肝試しに巻き込まれた彼はめちゃくちゃかわいそうだ。室生さんが付いてたから無事みたいだけど。それに比べ、肝試ししていた無頼派はやばいしか言わない。やばいのはわかってるから。あと、大学生であるらしい佐藤さんや菊池さん、芥川さんなんかは外の様子を伺ってる。彼らが誘導してくれたからこの一室にこもることができたけども。按司?一人で見にいこうとしたら、パニックな太宰さんにソレ死亡フラグっていうんだぞ!!!って止められて室内にいる。ナマエと棋院が来てくれないとどうにもならない。というか、ナマエの分野もチラホラ混ざってるのがタチが悪い。七志くんも顔を真っ青にしている。
「あ、あああ、按司さん、どうしましょう、あんなでかいの」
「最悪、朝になったら消えるだろ」
そうタバコを取り出した按司に、佐藤さんが「未成年だろ」と突っ込んだ。
「教師がいないモンで。一本どうです?」
「いいね、僕は頂こうかな。どこの銘柄だい?」
「ラッキーストライク」
そうタバコの箱とジッポを投げた按司に、金持ち学生か?と菊池さんが首をかしげる。朔太郎さんに飴をあげたら目を輝かした。可愛い。
「そう言えば、お前見ない顔だよな」
「その子に至っては女の子やしね」
「何処のやつだ?」
「国図学院だよ」
「あぁ、あの名門金持ち校か」
そう言った菊池さんにタバコを蒸した芥川さんが私を見る。
「夕方のあの子も国図学院の生徒かな」
「たしかに同じ制服だな」
「幸田露伴先生の娘さんだけど、知らないかい?」
その言葉に私は首をかしげ、按司が頭を抱えた。
「知ってるようだ」
「下駄履いた奴だろ、腐れ縁だ」
そこで私がわかる。あの学園でカラコロと下駄を鳴らすのはナマエだけだ。
「ナマエのことかぁ」
「あいつ夕方までここにいたくせになんで料亭まで移動してんだよ」
そうタバコを蒸した按司がそわそわしている太宰さんを見る。煙吹きかけたけど。
「お前にははやい」
「はぁ!?なんだよそれ!」
「お前何年だ?」
「三年」
「大学は決めてるのかい?」
「決めてないし、アンタ達が夕方あった奴は一学年下だ」
「貴女は同い年なの?」
そう首をかしげた朔太郎くんが可愛い。
「私は立川蓮子。三年だよ」
「そうなんだ……」
そうはにかんだ朔太郎くんが可愛い。癒しである。ほんわかしていると、足音と銃声が聞こえてそちらを見る。教室の外からである。ガタガタと揺れた扉に警戒する。扉が開き、飛び込んで来たのは棋院とナマエを抱えた露伴先生、尾崎先生と森先生だ。あの刃を持った森先生が扉を閉め、露伴先生から降ろされたナマエが慌てたように紙を貼る。すると扉は静かになり、気配が遠のいた。
「よお腐れ縁。どうだよ、他校の七不思議は」
「聞いてない……」
そう遠い目をしたナマエに、棋院も聞いてない、と座り込んだ。
「……生徒が結構残っていたな」
森先生が辺りを見渡してそう告げた。尾崎先生が、「大学生は兎も角、高等部の生徒が残るのはいただけないぞ」と叱る。しょげた高校生に、「まぁ、七不思議なぞ面白い話題があるのなら致し方がないがな」と茶目っ気を乗せて告げた尾崎先生はいい人だと思う。
「というか、あれなんなの?いつものと違うよね?」
「聞いてないよ、按司、七志くん」
「俺だって聞いてねぇよ。なんだアレ」
「僕もわかりませんよ……」
七志くんの言葉にナマエが息を吐いた。
「いつものやつが七不思議でコーティングされたものだと思います」
「料亭で見たものと違うのか?」
「元は同じでしょうね、としか」
「というかお前何かわい子ぶってお父様に抱っこされてんだ」
「あぁ、下駄の鼻緒が切れてしまったのと、食べられました」
「……食べられた?」
朔太郎くんが恐る恐る尋ねる。ナマエが肯定する。
「えぇ、パクッと、跡形もなく」
その言葉に私達が固まる。
「足じゃなくてよかったな、足がなきゃ嫁に行けなくなってただろ」
「そうですね、泡になって消える運命を辿るところでしたね」
「いやいやいや、何ほっこりしてんだよ」
室生さんのツッコミに、お父様が抱えてくださったので、とナマエは告げ、貼った紙を見て目を少し見開いた。
「え、なに、」
「いえ、困りました、もう少し持つと思ったんですが」
ジュ、という音がして、煙の匂いがする。タバコの匂いじゃない。煙はナマエが貼った紙から上がる。棋院がハッとしたように立ち上がり、私も立ち上がる。按司はタバコを灰皿におしつけると、そのまま太宰さんに押し付けた。
「非日常へようこそ、太宰クン?」
「え、なんで俺の名前ーー」
「ーー眉高く道無き道を往かむ哉」
太宰さんの言葉を無視して按司がそう告げる。按司の手元まで伸びた影がオダサクさんのナイフを作り上げる。
「ーー春雨の隣を聞けハ小唄かな」
ピアノの音がする。それと同じく弓が棋院の手に現れる。私もため息をついて言葉を口にする。
「とんでもない時に春がまつしろの欠伸をする」
すると、どこからともなく箱が現れて中から銃が現れた。周りの視線は気にしない。
「慣れないなぁ」
「ナマエ、さっさとしろ」
「さっさと、したいん、ですけどね、」
ナマエが少し顔をしかめた。私達が首をかしげる。頭を抱えたナマエに私達は目を瞬いた。次第にフラフラとするナマエを露伴先生が支える。その様子に按司がハッとした。
「ーー下駄か」
「恐らくは」
ナマエが何かを紡ぎかけて、やめる。ナマエがそっと露伴先生の手に手を重ねた。
「運命とは切り開くものである」
その瞬間、桜吹雪が舞い落ちてそれは鞭へと変わる。それを手に取ったのはナマエではなく露伴先生だ。
「申し訳ありません、お父様、少し気分が優れないので。按司」
「わかった、起こす」
その返答を聞いてナマエは倒れた。

==

「下駄がどうかしたのかい?」
「いや、下駄がどうこうじゃない。身につけてるものが喰われたのが重要だ。身につけているものはそいつ自身を表すっつうだろ」
紙が燃える。ガタンと音がする。扉が外れーーそれは部屋にその手を伸ばした。


==

「露伴先生が強い」
「あの人第二会派だったよね?」
そうコソコソと話していた私と棋院である。按司と森先生と露伴先生で事足りるらしい。私はホッと息を吐いてナマエを見る。呻き声が聞こえて、何かが触手をこちらに伸ばしたらしい。七志くんと朔太郎くん、太宰くんが叫ぶ。私が構えるよりはやく、ナマエが目を開いて宙に手をかざした。
「ひふみよいむなやことももちよろず」
その言葉にピタリとそれがとまる。棋院が矢を射ったらしい。ピアノの音が聞こえてーーそれは耳をつんざくような雄叫びをあげる。
「うるさいぞ」
按司が首を掻っ切った。それは呻きをあげることもなくドロリとしたインクの塊になると、按司はナイフを手に話した。
「七志、他はいるか?」
「これだけ見たい。苗字さんは?」
「あぁ、ナマエは動くな。足が汚れる」
鞭を離した露伴先生がナマエを抱える。
「もう時間も遅い、生徒は帰るがいい」



 Comment(0)
兼任司書関連 

次の日 top 前の日