2020/01/08
年末年始没ネタ祭3 妹ちゃん新サクラAざった寄せ集め
そんなことを言っている事態ではないし、そんなことしている事態でもないのだ。このプレジデントを名乗る人はそれを理解しているのだろうか。なんども会場を降魔に狙われる可能性があることも告げたのに実機同士の戦いに持ち込むなんて無茶にも程がある。帝国華劇団が勝ち上がっているのは嬉しいけれど、それはそれ、これはこれだ。秘密裏に彼らの機体を直したりはしているが。それでもーー大きめの歩幅で近いてぶってしまったのは仕方がない。弾みでしりもちをつき、目を見開いてこちらを見た彼に、周りに、私は構わず彼に軽蔑的な視線を向ける。
「なにをするんだ!ミス・M!」
「プレジデント、私は遺憾の意を表します。華劇団は今やWOLFの所属ではありますが貴方の個人的な武装軍隊ではありません。それぞれは国家を守るために存在し、また、それぞれの国民を守るために必要な存在です。決しておもちゃにしていいものではないし、馬鹿にしていいものでもない。私は再三貴方に言ったはずです。こういうことが起こりかねるから観客の避難場所を考慮するよう伝え、また各自の実機も壊さないようにするべきだと」
怒っているのだ、と普段の柔らかな言葉使いではなくワザと刺々しい言葉遣いにする。声色も下げる。彼はそれだけでも萎縮する。私がそういう人間だと思っていないからだ。さて、話を変えなければならない。今の結界は奏組の音で出来上がっているだけだ。くそッと言いながらその場から離れた彼の背を見つめる。
「よかったのかしら、みつはさん?仮にも上司でしょう?」
「仮にも上司ですが、殴るしかないなと思ったので。私は何度か忠告差し上げたんですよ。それを今まで無碍にしてきたのは彼です」
そう言って息を吐く。
「支配人の知り合いですか?」
「帝国華劇団の知り合いか?」
「……はじめまして、とご挨拶したいところですが、今は出来かねます。外は今辛うじて奏組の作る結界により守られている状況です。各国華劇団の隊長は隊員を率い、降魔の殲滅及び観客の避難誘導をお願いします。機体はWOLFの私の権限で修復はさせていただいています」
「みつはさん、外の状況を詳しく教えてくださる?」
「はい、ただいま上空には約百の降魔が飛び交っています。競技場の周りには同じく無数のカラクリ兵が取り囲んでいる状況です」
「ひゃ、百!?」
「このスタジアムに収容されている人は約千。地下の避難所に徐々に誘導はしています、が。恐らく全員が避難するより早く結界が消える」
そう腰に手を当てて告げる。スッと手をあげたのは倫敦華劇団のアーサーさんだ。
「ミス、結界、というのは?」
「今演奏が聞こえると思います。あれは私が管轄する舞台が音に霊力を込めることにより、力にしそれを糸のように紡いで結界にしています。貴方達より数はいます、が」
「私達より霊力はない、と」
目を細めた伯林華劇団のエリスさんに頷く。
「もって後二十分程でしょうか」
「乗客収容までの時間は恐らく三十分」
「マルガリータさんのいう通りです。降魔をひきつけ時間を稼ぐ必要があります。プレジデントGの船を使って援護ができれば最適だったのですが、彼は会場をめちゃくちゃにされたのと先ほどのことで頭が回ってないでしょう。そこで、伯林華劇団には上空の敵を、上海華劇団と倫敦華劇団には周りの敵を、帝国華劇団は避難誘導をお願いします。隊長は各自無線で連絡を取り合い、フォローし合ってください。また帝国華劇団は避難誘導が終わり次第上空及び周りの敵の殲滅に参加してください」
そう告げれば全員から「了解!」という返事がきてそれぞれテキパキと行動に移っていく。ふむ、ありがたい。私はそっと息を吐く。
「スミレさん、私はとりあえず奏組に合流します。あとは任せても?」
「えぇ、構いませんわ。ほんと、貴方、大尉に似てきたわね」
えっ……えぇー、と思いながら「褒め言葉ありがとうございます」とだけ言ってそのまま奏組に合流する。そのままそっとフルートを持ち、参加した。
==
そろそろ限界だろう。パリン!という音がして結界が割れる。全員に避難するよう促して、私は息を吐いた。
『我が音を聞け』
そう言いつつ降魔を見上げる。『夜の女王の独唱歌』と歌えばこちらに向かっていた降魔がピシリと動きを止めた。でもまぁあんまり時間は稼げないためどうにかしてほしい。避難する周りに紛れてとなりにぴょこぴょこやってきたナマエは同じメロディをポケットトランペットで吹いてくれる。
=没
・妹ちゃん……WOLF所属、形式的にはプレジデントの部下になるがどちらかと言うと対立派閥に近い。華劇団運営ではなく、所謂「花組/第一部隊のなり損ない」と言われている奏組のようなオーケストラを率いている傍、紐育華劇団の育成にも携わっている。宍戸さんもちらほら手伝っている。
・オーケストラ……なんやかんやで妹ちゃんが人をあつめた楽団。霊子戦闘機などを持たない国に現れる降魔を払う目的であり、エイバブに乗って各地を移動している。妹ちゃん大神化が進んでいるが、本人は加山さんにしか興味がないためなにも起こらない。
・ナマエ……奏組所属。帝国トップ、wolfのオーケストラではトランペット首席であるが帝国から離れることはまだない。あざみと同い年。妹ちゃんを母親と慕う。帝劇の常連してたら音楽監修になった。
・メドラウト……倫敦華劇団に元いた人。ウォルフのサックス主席。アーサー達とは犬猿の仲。
・ジェイミ……紐育出身。ウォルフのトロンボーン主席。気の良いお兄さん。
・ローロ……巴里出身。ウォルフのフルート主席、または指揮者。妹ちゃんが巴里にいた頃からの付き合い。なんやかんやで面倒見がいい。
また決まり次第追加するぞ
==
「ははぁん、メドのお兄さん、倫敦華劇団と仲悪いな?」
そうニヤニヤ言えばニヤニヤするんじゃねぇと頭に拳骨を落とされる。痛い。先ほどのやり取りを見ればモロバレなことなのだから別にいいだろうに。お母さんの率いるオーケストラは評価する人が分かれる組織であることはなんとなく理解はしている。花組のなり損ないと言われるからだ。そりゃそうだ。花組になれない程度の霊力の持ち主が集まっているからである。しかし、そのかわりに数が多いのだし、霊子戦闘機やらを持たない国には重宝されているのだが、どうも華劇団があればその実感はないっぽい。ま!私は!日本に置いてけぼりをくらうけどね!もうちょっと年を重ねてからね、とお母さんは言うけれど先に花組に組み込まれる気がしているよ、私は。スミレさんが舞台に興味ない?って言ってくるもん。
「メドラウトー、あぁ、ナマエをつれてきてくれたんだねぇ」
「ちぃーっす!ジェイミのお兄さん!」
「やぁ、ナマエ、元気そうでよかったよ」
ホワホワ笑うジェイミのお兄さんは癒しだ。メドのお兄さんは私のほっぺをむにむにしているが。私のほっぺでストレスを発散しないでほしい。魅力的なのは知ってるけどさ。
「なになに、メドラウトどうしたの?」
「倫敦華劇団の人達と喋ったらこうだよ」
「あぁー、なるほど」
「なーにがなるほど、だ、ジェイミ。くそ、いいよな、紐育はよ!」
「なら紐育くるかい?」
「阿呆、アメリカに魂はうらない」
そんなふうにふざけていれば足音が聞こえきて、後ろからジェイミのお兄さんとメドのお兄さんが殴られている。かわいそ。ローロのお兄さん結構容赦ないって知ってる。
「なーにやってんだこのすっとこどっこい共。みつはさんを待たせる奴らはみんな首席から引き摺り落とすぞ」
「えっ、もうそんな時間かい?コーヒー飲みたかったのに」
「またジェイミの時計遅れてるんじゃねぇの?」
「これだからお前らは……ハイレンを見習えよ……ナマエは衣装合わせもあるんだからな。いつものトランペットじゃなくて、こっちのトランペット持ってこいよ」
「はぁい!」
そうちゃんと返事をすればローロのお兄さんは私の頭を撫でる。これくらいお前らも素直ならな……と言ったローロのお兄さんは苦労人ポジである。がんばれ!あとジェイミのお兄さんは素直だと思うよ!
==
「最近は私も忙しいから、ぐったりだよ」
そう神山さんにごちてみる。食堂でダラっとしていれば神山さんがやってきたのである。忙しい?と首を傾げた神山さんに、色々あるんだよ、と言えば子供なのに?と聞いてきた。そうだよ子供でも色々あるんだよ。
「今回の公演見にいけないかもなぁ」
「えっ、珍しい」
「お母さんも日本に帰って来てるし、一緒に観にきたいんだけどね」
わがままを言っても仕方がないのだ。お母さんは忙しいのである。気にかかるのは体調であるが、多分首席組と宍戸さんがきちんと見張っているに違いない。
「お母さんが日本に……?」
「ん、お母さん、いつも世界中飛び回ってるんだ。今回は休みでかえってきた、というよりは仕事で日本にきたって感じだし……」
「驚いた。ナマエのお母さんは凄い人なんだね」
「もっと褒めていいよ!」
えっへん、と、胸を張れば神山さんは苦笑いだ。ノリが悪ーい。司馬のお兄さんなら「日本一!」ぐらいは言ってくれるぞ。
「でも、寂しくないのかい?ナマエはその間日本にいるんだろ?」
「うーん、ちょっとだけ寂しいけど、私だけのお母さんじゃないから……」
そこまでいってから、あっ、これ神山さん勘違いするやつだと思う。彼を見れば案の定驚いた。これは彼が何か言う前に話を変えるべきか、と頬杖をつく。
「新しい話はどーお?」
「あぁ、みんな頑張ってるよ」
「帝劇って昔はフルオケでやってたって聞いたけど、もうしないの?」
こてん、と首を傾げる。ふるおけ?と首を傾げた神山さんに、「フルオーケストラのこと」と言えば彼は理解したらしい。
「あぁ、最近はしてないな……オーケストラがないんだ」
「ん……あー、そっか」
帝劇のオーケストラだった奏組がお母さんの配属になり、また、紐育に拠点を置くようになったからだろう。でも準備組織は立ち上げてるって聞いたような?
「ふーん、色々落ち着いたら多分フルオケでできるようになるんじゃないかな」
大会とか大会とか大会とか。大会のファンファーレとかは全部あのオーケストラがやるんだし。大会が落ち着いたらしばらく日本かなってお母さんも言ってたし。
「色々?」
「大会とか大会とか大会とか」
「落ち着いた頃に華劇団が残るように頑張るよ」
「自信持ちなよ隊長ー」
そう言いながら神山さんの腰あたりをつつく。彼は苦笑いだけどな。
「そういや新しいゲキゾウくんグッズ届いてたよ」
「え、やった!」
==
お母さんもゲキゾウくんが好きである。帝劇に不意に現れるゲキゾウくんをみて、ワナワナと震えているお母さんに私はむふーっと満足気に笑ってみた。
「可愛い……!」
「でしょー?」
その実中身は神山さんだと声から察したが放っておいている私である。面白いし。
「紐育支部におけないかな……?でも帝劇のゆるきゃらがリトルリップシアターにいたらおかしいよね……」
「うーん、そうだねぇ。ちなみに喋るよ」
「喋るの?」
「うん、あざみちゃんが言ってた。ここら辺を押せば……えいっ!」
鼻の辺りを押せば、帝劇をよろしくパオ!と声が聞こえる。お母さんは想像した声と違ったのか首を傾げた。
「可愛い声じゃないけれど、これはこれで可愛いからやっぱりリトルリップシアターに……」
「だーめ」
「だめかぁ」
私の発言にお母さんはちょっとしょんぼりとした。うっ、お母さんが可愛いとか思ってないからな!そんな顔をしても駄目!と言えばお母さんは首を傾げたのだけど。
「ナマエちゃんがそういうなら諦める……」
=没
「む、娘!?」
そう目を白黒させた加山さんにクスクスと笑ってしまう。私にへばりついたまま固まったナマエは伺うように加山さんを見上げている。百面相していた彼はその視線に気がついてナマエを見たのだけど。視線を合わせるために屈んだ彼は「ナマエ、ちゃん」と首を傾げた。
「いや、自分の娘にちゃんづけはおかしいな……ナマエ。俺は知っての通り、加山雄一。君の父親だ」
って感じの話ください。同い年になってびっくりしてる加山さんの話もください。
==
「よぉ、司馬。娘ちゃんが世話になってんな」
「!?」
上から降ってきたのは加山さんである。色々ひと段落付き、幻都から帰ってきた彼はなにかと神出鬼没であり、あの未亡人感が甚だしかったみつはさんの旦那さんであるらしい。らしいというのは、俺が直接話を聞いたわけではなくナマエがぼやくからだ。最初はお互い戸惑っていたらしいがお互いミツハさんが好きだから団結したとはいつ聞いた話だったか。いや、特に世話をしているわけでは、と首を左右に振れば「またまたぁ」と彼は笑って俺が使っている寝台を指差した。そちらを見ればスヤスヤと寝息を立てているナマエがいる。
「は?いつのまに!?」
「多分君が機体を熱心にメンテナンスしてる間に来たんだろ」
そう返された言葉に、確かにメンテナンス最中何か声が聞こえたような、と思う。迎えですか、と聞けば、いや、たまたまと返される。違うのか。
「すみれさんに色々頼まれて見回ってたら娘がそりゃもうぐっすり寝てたから」
「凄いですね。娘って言われてすぐ受け入れられるもんなんですか」
「そうだなぁ、案外なんとでもなる」
「愛さえあれば?」
「それだけじゃないさ。ナマエは間違いなく命の恩人だよ。感謝してる」
彼はそう言って目を伏せた。感謝?と繰り返せば彼は頷いた。
「この子がいなかったらみつははもういなかったかもしれない」
「何を言ってるんですか、彼女は」
「ナマエが幻都に行かなかったわけを聞いたか?」
「貴方達が言い聞かせたからだと聞きましたが」
「そうだ。でも、どうして言い聞かせたかが問題だろ」
彼はそう肩を竦める。どうして言い聞かせたか、それは聞いていない。彼女はただ、総隊長であった兄と彼に反対されーー眠らされている間に二都作戦が始まったのだと苦笑いしていたのだから。間抜けな話だな、と思ったのは俺だけではないだろう。誠十郎だって、他の隊長だって驚いていたというかなんとも言えない顔をしていた。それを思い返していれば、彼は静かに口を開く。
「ーーあと三年」
「え?」
「あの時、医者から言い聞かせられていた彼女の寿命だ」
その言葉に動きをとめる。
「正しくは、あと三年生きていればいい方、か。あの時の彼女は歩くこともほとんどままならなかったからな。流石にそんな人物を連れてはいけないだろう。足手まといだ。それは彼女もわかっていた」
彼はそう言って「だから、帰ってきて、十年も時間が経っていることを聞いて、俺は彼女の安否を真っ先に確認してきたろ」と笑う。
「生きていたことが嬉しかった」
「……」
「娘がいるとか、そう言うことがどうでも良くなるくらいには」
いい話だと期待したが、嬉しすぎてナマエはどうでもよくなったということか。そう複雑そうな顔をした俺をみて、彼はまた口を開く。
「みつはの話を聞けば、ナマエの存在が大きかったらしい。俺を待つため、だけじゃなく、ナマエを一人にさせられないから、頑張ったとも聞いた。あと、ナマエとみつはの霊力の波長があって、彼女の容態は安定した。ま、一重にナマエのおかげだな、みつはが生きてるのは」
彼は屈託もない笑顔でそうつげる。彼女は俺たちにとって正真正銘の天使だってことだ、とナマエを見た。
「みつはに聞いたら神山よりも司馬に一番世話になってたって聞いてな。大神みたいな垂らしの神山じゃなくてお前に懐くあたりみつはに似たな、と思うんだが、まぁそれをおいといて、娘も妻も世話になったな。これからも、娘を世話してやってくれ」
彼はそう言うと天井に張り付いた。いやどうなってるんだ。
「まぁ、別に世話するくらいは……」
「だがまだ嫁には出さないからな」
「はっ!?」
「じゃ!」
その言葉と共に彼は消える。いや、は?と一人で混乱していれば、そういやみつはさんがニコニコと「ほんとにナマエは司馬くんがすきなんだね」と言っていたことを思い出して固まる。いやいやいや、あの年頃、憧れと恋愛の分別がついてない年頃である。というか、自分もそういう目で断じて、断じて見ていない。数年後に期待だな、とは言ったが。
「いやいやいや、ないないない」
あんな小娘に惚れるなど。そう首を左右に振っても、あの子の笑顔が頭に張り付くわけで。意識してしまうようになるのは仕方ないと思うのである。
あくまで俺は彼女の兄がわりとしてだな、と酒の席で愚痴れば大神さんに「加山と同じことをいってる」と笑われた。
「加山さんと同じこと?」
「加山も昔はミツハのことを妹ちゃん妹ちゃんって呼んで妹みたいだって言ってたんだよ。蓋を開けてみれば結婚したから俺はまぁ驚いたよ」
Comment(0)
次の日 top 前の日