2020/01/09
妹ちゃん新サクラ
書きたいとこだけ書いてる
==
泣いている場合じゃない、というのはこの子供も恐らくは理解しているのだろう。グズグスと鼻を鳴らしながらも、気丈に振る舞う彼女は恐らく母親の安否が気になるに違いない。恐らくは支配人の近くーーいや降魔だったあの男のそばにいた彼女はどうなったかは不明である。本当は避難した方がいいのだろうが、はっきり言って下手に避難をするよりも帝劇にいる方が安全だろう。
「令士さんは大丈夫なの」
不意にスパナを握りながらナマエはこちらに問いかける。怪我的には大丈夫ではないが、気力的には大丈夫である。なので大丈夫だ、と頭を撫でておいた。
支配人が帰ってきたことで、ナマエはパッと表情を明るくした。しかしながら、きちんと分別を弁えているらしく支配人の話が終わるのを待っている。そうしてようやく終わった話に、神山が支配人に尋ねる。
「スミレさん、ナマエさんは……」
「ナマエなら大丈夫よ。ここにはいないけれど、助け出されましたわ」
そう告げた支配人に、ナマエはほっと息を吐いた。そうして、よし、と気合を入れるように頬を叩く。
「令士さんのお手伝いにほんりょーはっきできる!」
「おい、今まで本領発揮してなかったのか」
「だって、おかあさんが心配だったんだもん」
あっけらかんと笑ったナマエに支配人ーースミレさんが俺を見た。まぁ緊急事態であるが面倒を見るのは仕方ない。俺は頷いて彼女を見下ろした。一緒に連れて行こうとしてーースミレさんは引き止める。ナマエはここにいなさい、と告げた彼女に二人で顔を見合わせたのだけど。
==
「申し訳ありません、スミレさん。出遅れてしまって」
不意に知らない戦艦のような飛行船が来て援護射撃をしたと思えばそんな通信が聞こえた。本当に、貴女は、と小さく愚痴を告げるように言った支配人は「でもまぁ許してあげて構いませんわ」と告げた。
「上海華劇団、伯林華劇団の輸送、感謝いたします。みつはさん」
その声にやっと通信が安定したらしい。通信回路の端に姿をあらわせたのはみつはさんである。おかあさん!と全力で嬉しそうに笑ったナマエを見て彼女はめを瞬き俺を見る。
「ナマエをありがとう。神山くん、司馬くん。もう少し預かっておいてください、スミレさん」
「この借りは高くつくわよ」
「みつはさん、貴女は……」
「本当はプレジデントGを見張っときたかったのだけど……少し色々あって後手に回りすぎてしまいました」
苦笑いをした彼女はちらりとアナスタシアをみる。
「貴女が信頼できる方を見つけたようで安心しました、ナターシャ」
「……えぇ、貴女の優しさを無碍にしてしまってごめんなさい」
「気にしてません。こうなると思い、私は貴女に帝国歌劇団を勧めましたから」
彼女は茶目っ気たっぷりなウィンクをしてみせる。
「マエストロ!出撃準備が整いました!」
「ありがとう、リーリャ。……さて、帝国華劇団、上海華劇団、倫敦華劇団、伯林華劇団各位、この降魔は私たちが引き受けます」
「まさか、でも貴方達の部隊は機体を持ってないって」
アナスタシアの言葉に、それは他の隊長も同じだった。支配人が口元を緩ませる。
「貴方も酷い人ね」
「そばにいてくれた人が人ですよ?これぐらいの芸当出来なければやっていけません」
「それもそうね」
「それに、任されてしまいましたからね。貴方のように」
彼女はそう苦笑いをした。そうして指を拳銃を撃つような仕草をする。
「私達は持たざる国の為の華劇団。ここで退くわけにはいきません。各位、降魔を殲滅せよ」
「了解!」
「紐育華劇団、レディ・ゴー!」
そんな言葉と共に、周りに飛行物体が現れる。ひらひらと攻撃をよけたそれらは空中旋回すると降魔を殲滅していく。
「これは……」
「STARV。紐育華劇団の機体の進化型かしら。唯一の飛行形態が備わった霊子戦闘機よ。今が乗り込むチャンスね。神山くん、準備して頂戴。全速前進!」
支配人の指示に機体に急いで乗り込む。ナマエが、頑張れ!と応援する声が聞こえた。
Comment(0)
次の日 top 前の日