2020/03/01
こちら帝国劇場刀剣支部A
運命だとおもった。眉目秀麗の容姿、革靴を鳴らして歩いているその姿、帯刀されている達は二振り。背はいくらかは低い。しかしながら、少年のようなその姿にはあいまっている。軍帽のようなその帽子、外套を翻して歩くその姿は凛とし圧倒される何かがある。外見だけでなく刀の扱いにも優れていた。二刀を抜き、他の審神者を守り、斬り込んでいく姿は、もう。
「大包平、それは何度目の話だと思っている」
「鶯丸だって何度も俺の話をするそうじゃないか」
「あぁそうだな、噂によればな。うちにはいないけどな!!」
そう言った審神者に大包平は頬杖をついた。この審神者はすぐ癇癪をおこす。これだから女っ気がないのだ。その言葉を飲み込んで審神者に団子をやる。この本丸にはレア刀と呼ばれる刀はあまりにも少ない。この審神者があまりにもついてなさすぎた。ドジというレベルではない。自分が顕現されたのは、政府から確定された報酬であったからにままならない。それほどまでこの審神者の運は悪い。刀の集まりがいかにも悪いためどこぞの本丸と統合される話もある。
「主、守られておきながらそんなことを言うのか」
「うるせっ、あんなお坊ちゃん、絶対やなヤツに違いねえ!」
そう審神者が叫んだ彼に周りがきゃあっと声をあげた。きゃあきゃあと女の高い声が聞こえる。そちらを見れば鶯丸が見える。それに合わせて珍しいとされる刀が続いた。眞白の着物を着ているのは鶴丸国永だろう。黄色い着物をきた小狐丸、青い着物をきた三日月宗近、水色の江雪左文字、そして洋装の一期一振。どれもこの審神者のもとに顕現していない刀である。不意にその女性達や見ようとしていた刀剣達が避ける。大包平も審神者もそれに息を止めた。その先からやってきたのは、件の審神者だったからだ。目を見開く二人に気付いていないのか、彼は団子屋に声をかけた。
「申し訳ありません、団子屋さん。いつものを包んでいただけませんか」
「おや、おやおやまぁまぁ!」
奥から現れた団子屋の女店主は件の審神者をみるとニコニコと笑う。
「どうしたんだい、その姿!」
「色々あったんですよ」
審神者はそう言って笑った。主。と鶯丸が審神者を呼ぶ。どうした?と返した彼に鶯丸は大包平を指を指した。
「あれが大包平だ」
その言葉に件の審神者が大包平に視線を移した。
「なるほど、良い男だ」
「あぁ、そうだろう。主はそう言うと思った」
穏やかに笑ってみせた鶯丸に審神者もまたフッと笑みを浮かべる。店主が団子を審神者に渡すと、また鶯丸を引き連れて人混みの先を歩いていく。そうしてレア刀に合流してみせた件の審神者にまとわりつくようにして人混みは移動していく。それを唖然とみていた二人に店主は「ねぇねぇ」と声を荒げた。
「いったいどうしたんだい!?あの子!!」
「店主殿は、あの審神者を知っているのか?」
「知ってるもなにも、あの子はここの常連でね!いつもはもっとこう、おとなしい感じの子なのよ!」
そう言った店主に、二人は顔を見合わせたのであるが。
それからである。なんとなく、だ。なんとなく、店主の話が気になって二人が団子屋を訪ねた時だ。また団子を食べていると、鶯丸を引き連れた人物が現れた。鶯丸はお茶好きとなれば足を運ぶ審神者と鶯丸も多いだろう。しかしながら、店主も働く刀剣も「あっ」とその人をみて声をかけた。
「ナマエじゃーん、この前のアレなに?どうしたの?」
「いや、かくかくじかじかで」
そう言って近くの席に座る。鶯丸も同じく席についた。そうして視線に気づいたのか、鶯丸は審神者の肩を叩いた。
「ナマエ、この前の大包平がいる」
その言葉にその人物は二人をみた。目を瞬いたのは恐らくは女だ。この前の男に似ている。しかしながら、身を包んでいるのは女物の袴だ。
「えっ、あっ、本当だ。この前は騒がしくてすいません」
「えっ?いや?はっ?いや、大丈夫、デス?」
目を白黒させて審神者は答える。大包平がただただ目を見開いて彼女をみた。
「女ァッ!?」
そう叫んだのは大包平だ。ウワッと肩を跳ね上げた彼女に鶯丸が「大包平」と嗜める。
「ナマエが怯えるだろう?」
「いや、久々にびっくりしただけだから大丈夫」
「ちょっと騒ぐなら出てってよ」
店員の刀剣男士の言葉に大包平が「すまん」と謝る。
「というか本当にこの前のあれなに?」
「演練場に遡行軍の侵攻があったんです」
「え、なにそれ初耳なんだけど!」
「どうやら戦える審神者がいる本丸にしか通知がいかなかったみたいです」
「ナマエ戦えんの!?」
「ほどほどには」
彼女はそう言って渡されたお茶を飲む。鶯丸が口を開いた。
「困ったことに、その時のナマエをみて『月下の君』と慕うものが現れた。刀剣だと勘違いした審神者、一目惚れした審神者が政府に問い合わせるものが多発。それを収めるためにナマエがあの姿で演練場にいった。……まぁどう見ても完全に逆効果だな、あれは」
「ですね」
彼女は相槌を打って団子を頬張る。美味しいと食べた姿はどうも噛み合わない。鶯丸は大包平をみる。口に笑みを浮かべて。
「どうした、大包平。月下の君に夢でも見たか」
「!うるさい!」
「図星か」
「それは悪いことをしてしまったな」
彼女はそう言って頬をかいた。それは先程までの女のような笑みではなく、少年のような笑みだ。
「すまない、夢を壊してしまった」
「い、いえ、そんな、ことは……!」
「ほぅ、珍しい。大包平が敬語を使っている」
鶯丸はそう言って大包平の審神者をみ、ナマエ、と再度彼女を呼んだ。
「そろそろ買って帰らなければ、他がうるさい」
「え?あ、うん、珍しいね、雨降らない?」
「さぁなぁ。大和守、勘定だ」
「はいはい」
鶯丸はそう言って彼女を引き連れて帰る。加州が「あぁなるほど」と頷いた。
「そういうこと、ね」
加州はそう言って大包平のそばにいる審神者をみる。つられて大包平がみれば顔を真っ赤にした審神者がそこにいた。
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別に夢を見られるのは慣れているのでどうってことはない。好きだと言われた時の交わし方だって心得ている。それはあの劇場がそうであったのだから。外套を翻して、三振りを帯刀して歩く。そうしてただ一つ残った席に座す。面倒だという言葉は口の中にしまった。服部さんがいくべきだったという言葉も黙る。そうしてただただ前を見たのだけれど。
会議に出席しているのは恐らく有力な審神者だった。面白いことに連れている刀剣は被っていない。私にも服部さんにもいなかった初期刀と呼ばれる彼ら、そして三条、平安刀と呼ばれる彼らがいるのに鶯丸は私が連れている鶯丸さんだけだ。知らない刀もちらほらいる。会議といっても談笑会だ。見るからにお偉いさんの。適当に相槌を打ち、鶯丸さんがひょうひょうと話を交わしていたがついに私に視線が向く。
「この前の戦働き、大義だった。どこぞの刀剣かと思ったものだ」
「いやいや二刀使ってんだからそれはないだろ、おっさん」
「相変わらず口がなってないわねぇ。そういやアンタあのばにいなかったものね」
「へん、悪いかよ。で、君は何処の誰なのかなぁっと」
そう言って男は私を見た。何か術をしようとしたのか、それを若干殺気を込めて一平すれば彼は怯む。
「怯えさせ申し訳ございません、あまりみかけないことをされようとしたので」
「気にしなくていいわよ、そういうヤツだから。それより先が楽しみね、貴方」
品定めするような目にはとりあえず微笑みを返す。しかしそんな会話も三日月宗近を引きつれた老人が咳払いをしたことにより鎮まった。
「悪いな、若いの。急に呼びたててしまい」
「いいえ、別の本丸の方の話を聞くのは大変有意義なお時間でした」
そう少し頭を下げる。
「君に頼みがあって呼び出させていただいた」
「頼みとは?」
「君にとある本丸を頼みたい」
そんな言葉に、私は目を瞬く。思ってもいない言葉だ。そばにいた鶯丸もそうだったのだろう。目を少し見開いた。
「きみのいる本丸は特殊でな。黒くんの本丸にはどういうわけか、君たちのような存在が多く訪れる」
それは聞いたことがある。鶯丸もまたそれを肯定した。今は私達だけなのであるが、そうした存在が出鱈目に現れては審神者になったりちゃんとした時代に帰ったりする。その境目を彼らは知らないが、私と服部さんはわかっている。存在がするかしないか、それが正しい歴史か否かということだ。
「帰せるものはいいのだ。だが、どうしても帰せないものがいる。君達のようにな」
「……それは理解しております」
「そうか、君は聡くて助かる。君たちのようなものは皆最初は戸惑って話にならないのだ。君の本丸にいる服部くんには政府の仕事をもうすでに請け負ってもらっている。彼は自分の本丸を持たない方がいい。黒くんのいい保護者になる。あの少女もまた刺激になるだろう。それは君にも言える、のだが」
そう彼は一度話を置いた。鶯丸が尋ねる。
「言えるのだが?」
「君は少し目立ちすぎた。君が、君だけが主でない本丸にいることは他に示しが付かなくなる」
それは一理ある。
「ならば俺たちのいる本丸の主でもいいはずだ」
「忘れたのか、鶯丸。お前の主は別にいるだろう」
「だが何年も帰ってこない!」
「それでも黒は待っておろう」
その言葉に鶯丸さんは言葉を止めた。ぐっと何かを言うのを堪えているようだった。お前は主を待てないと、そう言いかけた男性に私はそっと待ったをかける。
「そのお話喜んでお受けいたします。しかし、ひとつだけ条件をよろしいでしょうか」
「あぁ、かまわない」
「この鶯丸を連れて行っても?生憎私は本丸についてなにも知らない身故、誰か一振りいて欲しいので、彼を連れて行きます」
「わかった。了承しよう」
すんなりと認めてくれるものだなぁ、と思う。ニタニタと先程の男が口を開く。
「お前が持っている刀も鶯丸だろぉ?もう一振りは大包平。調べたらわかるもんねぇ。なんで二振り必要なんだよ?愛でるためか?」
「さて、なんのことやらさっぱり。鶯丸は宗家のーーいえ天皇家の、大包平は池田家の家宝。個人的に持つようなものではありません」
「しらばっくれんなよーーお前何もんだ。それ、鍛刀されたやつでも配布されたやつでもねぇ」
「なんだと?」
そう反応したのは誰かが連れていた大包平だろう。
「なんでんなもんを持っている」
「貴殿の質問に答える義務があると?しつこい男は嫌われますよ」
「おい、不法所持として警察のおっさんにつきだしてもいいんだぞ!」
カチャリ、と静かに音が鳴る。私は刀から手を離している。ふわりと現れた二振りにそこにいた数人の男性が目を見開いた。
「やめなさい!!春告、秋告!」
そう言えば彼らはピタリと止まる。首元に刀を突きつけられた審神者ははっはっと浅く息を繰り返す。戻れ、と言えば彼らは渋々刀をなおした。警戒する刀剣の一部もまた彼らが見えている。恐らく契約した審神者の力によるのが大きいのかもしれない。ふた振りが消えないのをみると彼らもまた恐らくは怒っているというか警戒している。
「申し訳ございません。彼らは私に対して少し過保護だ」
「……分岐した世界での本霊か。そのふた振りをもつならば君は相当な家のものだな」
「もう鬼籍入りしております故、関係ありません」
「ならば、逆に鬼籍入りしたのならば名を名乗っても構わないだろう。それはもう死者の名だ」
面倒くさいので話したくない。が、名乗らなければあの男はしつこいだろうし、他の興味も続くだろう。許嫁殿、と春告がいう。
「名乗った方が早い」
その言葉にため息をつく。老年の男性が口を開く。
「名乗るのはこちらから、が礼儀か。私の名は二条頼隆だ」
二条。そう言った彼に代表的な立ち位置の彼らをみる。彼を含めて六人。なるほど恐らくは。
「公爵家の方、か。通りで三条の刀の中に徳川家ゆかりの刀がいると……」
「公爵?」
「違いましたか、五摂家と徳川の血筋の方だと踏んだのですが」
私がそう言って首を傾げたその瞬間一部が顔を怖がらせた。まぁ怖がらせるつもりはない。要らぬ探りでしたね、申し訳ございません、と謝る。
「私の名は……」
そこで言葉を途切れさす。なんとな乗るのが、正しいのか。少し佇まいをなおす。きちんとした場である。
「……私は大日本帝国直属・秘密防衛組織『帝国華劇団』所属、池田ナマエ」
その言葉に大包平と鶯丸がこちらを向いた。
「池田詮政が子の一人でございます」
そう言って静かに頭を下げる。その瞬間周りが騒がしくなった。鶯丸は「あぁだからか」と緩く笑い、二条殿は納得したようだった。
「通りでナマエは大包平について詳しいと」
「まて!!俺はお前を知らない!」
「大包平、あの子は違う歴史を歩んだ先からの来訪者だ。改変された世界の先ともいえよう。お前が知らない存在でもおかしくはない。そうか、大包平を持っているのは」
「二条殿、何を言いますか。この刀は秋告。父が私に持たせた守り刀の一つ。門外不出の家宝などを持ち出せるわけがないでしょう」
「ははは、それもそうだ!」
「二条の!笑い事か!」
「何をいう、徳川の大包平、あれは大包平ではないらしいぞ」
「どう見ても俺だろう!……、……、……俺についてはそれで納得してやる!だが、もう一振り、鶯丸はどうなんだ!」
「大包平、落ち着け」
「落ち着けるか!」
「鶯丸?なんのことやら。春告は宗家の許嫁が私の身を心配し私を守るように願をかけたもの。由縁は知りませんが春告と……」
「嘘をつけ!」
「はっはっはっ、これは面白い!秋が先か、春が先か気になるところだな!」
「言うなれば同時です」
「はっはっはっ!」
本当に愉快なもののように二条殿は笑う。これは愉快だ、と告げた彼に違う人物が口を開いた。
「まて、お前が歩んだのが違う歴史ならば、歴史修正主義者にならぬのか」
「それに関しては心配するな、鷹司。そういうものは黒くんの本丸にわかないようにしている。その子は変えるつもりはない」
「特に心残りもないので」
「……二条様は不思議な呼び方をされます。あの子、その子……彼で良いのでは」
その指摘に彼はまた笑った。私は肩を竦める。
「二条様、詳しい話はまた後日でもよろしいでしょうか。そろそろ皆が心配します故」
「あぁ、すまん、詳しくはまたワシが伺おう!」
その言葉にありがとうございます、と頭を下げて立ち上がる。鶯丸もそれに続き、春告と秋告は姿を消した。その後、大包平の「女ァ!?」という声が聞こえて来て耐えられず吹き出す。鶯丸が後ろを振り返った。
「どの大包平も鈍いな」
「普通はわかりませんよ」
「そうか?俺はすぐわかった」
ニコリと笑った彼に私は貴方が珍しいだけです、とかえす。
「あー、疲れた。お茶して帰りませんか」
「あぁ、そうだな。そうしよう」
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鶴丸さんが拗ねている。とても拗ねている。一部の刀剣もまた拗ねている。理由はわかる。何故鶯丸さんだけなのかということだろう。口から出まかせにちかいそれだ。あと彼は春夏秋を軽くかわせるからという理由もある。鶴丸さんはあくまで突っ込んでいくのだ。あと、クロくんも拗ねている。ぎゅうぎゅうと私にへばりつく様は可愛らしいがちょっと大変だ。しかしながら請け負ってしまったので仕方ないと思っていれば、鶯丸さんが「今更だろう」と彼は告げた。
「だいたいこういうときは面倒な本丸に配属されるんだぞ。鶯丸も知ってるだろう」
「あぁそうだな。どこも厄介そうだった」
「厄介?面倒?」
「あぁ、審神者が急死した本丸、酷い扱いをして審神者が恨まれている本丸……俺はもう一振り増やした方がいいと思う!」
増やした方がいいと言われてもなぁ、と頭をかく。黒くんもこくこくとうなずいた。
「鶴丸国永、黒くん、ナマエくんを困らせてやるな」
不意にそんな声が聞こえて振り返る。服部さんに連れられた二条殿だ。
「だってそうだろう?厄介な案件だ。さーて、どんなブラック本丸が飛び出してくるやら」
彼は少し楽しそうに笑う。二条殿は「違う違う」と手を振った。
「違う?本当にか?」
「いや、最初はそちらに頼むつもりだったのだが」
「ほらみろ、ブラック本丸以上の厄介ごとなんでそうそうないぞ」
「鶴丸国永、そう身構えさすんじゃない」
二条殿はそう言って苦笑いした。
「じゃあどんな本丸か聞かせて欲しいね」
「あぁ、聞かせるとも。ナマエくん、君に行って欲しいのは劇場だ」
二条殿の言葉に私は目を瞬く。鶴丸さんが「あそこかぁ」と頭を抱えた。劇場?とカナちゃんが首をかしげる。鶯丸さんがお茶を飲みながら口を開いた。
「中心街の方にあるな。寂れているが」
「寂れているんだ……」
「あぁ、昔は人気があった。元は審神者達が集まって歌劇をしていたようだが、いつしか刀剣達に代わりーー時間が流れに流れて寂れた」
「どちらかというと、今はアイドル本丸が人気だしな」
なるほど、本丸にも色々あるらしい。
「いや、時間が流れてというよりは審神者が変わって落ちぶれた。まぁ刀剣男士は見目もいいからな」
「刀剣男士は審神者を見て審神者は刀剣男士をみる。そこに観客はいない、か」
「あぁ。そこで君にどうにかして欲しい。なに、あそこは色々優遇されている。刀剣男士も入れ替わったものが多いが、練度も高い」
「ちょっと待って入れ替わった?」
「いつしかあの本丸は流れ者が増えてな。もといた刀剣は他に引き取られた。あとは何代か審神者は短期間で代わり……前の審神者は失踪だ」
「神隠しされたのか」
「さぁな」
二条殿はそう言って肩をすくめた。鶴丸さんが静かに逃亡を図り、二条殿が彼の服をつかむ。
「何を隠そう、この鶴丸国永も元はその本丸の刀剣だ」
「えっ」
「あぁ、どこの本丸から来たかと思えば」
鶯丸さんはそう言ってお茶をのむ。
「おっと俺はまた演劇だなんてやらないかな」
「連れて行っても?」
「あぁ、構わん。内部事情も詳しい」
にっこりと笑った二条殿に、鶯丸さんは「よかったな」と告げる。鶴丸さんは天を仰ぎーー私をみた。
「ナマエ、正気か!?素人が何人立て直しに失敗したと思っている!?」
「鶴丸、その点は大丈夫だ。彼女は役者だ。それも歌劇のな」
「それどうやって調べたんですか」
「君が名乗った名前から九条が調べた。あれはあんな性格であるが、別世の歴史もすぐ調べられる力がある。なかなか売れっ子だったようだな、月下の君」
くつくつと二条殿が笑う。今度は私が頭を抱える。
「立て直しと役者はまた違うのですが。まぁ引き受けてしまったのは仕方ない。粉骨砕身で頑張りましょう」
はぁ、といきをはく。二条殿は楽しみにしていると笑い、鶯丸をみた。
「鶯丸、通常の本丸経営については彼女は無知だ。支えてやれ」
「言われなくとも」
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