2020/03/01

こちら帝国劇場刀剣支部B

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なるほど、帝劇だ。私の世界の帝劇である。うわぁ、と思いながら鶴丸さんと鶯丸さんと見上げる。あの、という声が聞こえて目線を下にやればそこには秋田くんがいる。
「もしかして、新しい主君さんですか!」
そう尋ねた彼に私は彼に合わせて屈む。そうです、と肯定すれば彼は本当に嬉しそうに笑う。そうして、僕、秋田藤四郎です!と名を名乗った。
「私はナマエと言います。共に頑張りましょう」
「はい!」
彼はそう頷いてこっちです、と案内してくれる。今日は丁度何か演目をしているらしい。鶴丸さんが「観るのか……」と若干引きながら告げた。
「やめておいた方がいい、あれはまるで」

なるほど学芸会。そう思いながらパチパチと拍手をする。まばらの客は皆帰っていく。鶯丸さんに至っては寝息を立てていた。殺陣の基本はやはりできている。動きや台詞が硬いのは手本がないからだ。あとは立ち位置。手探りなんだろう。鶴丸さんは顔を覆った。だから嫌だったんだ、と呟いた。
「……終わったか、主」
「えぇ、」
男性メインなら恐らくはアクション中心の演目をして、実力がついてからシリアスなものに運んだ方がいいのだ。大体の目算を立てていれば、秋田くんが私を見上げた。
「主君は席を立たないのですか?」
「彼らが一生懸命だから、席を立つのは失礼でしょう?」
周りの野次が酷いなだ、と思いつつ。ふぅ、吐息をはく。観客がはけたあと、私はまた開いた幕の方を見た。げっという顔で役者がこちらを見た。私はもう一度パチパチと拍手をする。
「殺陣はやはり迫力があっていいですね」
そう一言褒めれば、彼らはパァッと目を輝かせた。
「声量もはきはきしていて丁度いい。タイミングも完璧。ただ、動きや台詞が硬いのが目立ちました。緊張もあるのでしょうが……」
「へぇ……詳しいね、その道の人?」
「えぇ、まぁ」
「冷やかしなら帰れ」
大包平さんがそう少し怒りながらつげる。私はため息をついて立ち上がった。
「第二幕の第四章。加州清光と大包平の立ち位置は逆の方がいい。大包平演じる人物はヒロインと結ばれる光の立場であるのに対し、加州清光演じる人物は影の立場で負ける必要がある。上手と下手が逆になってしまっていました」
そう言って舞台に上がる。大包平を右に移動させ、加州清光から舞台道具の剣を借りる。そうして少し目を伏せ息を整えた。第二幕、第四章。
『何故だ、何故お前が選ばれる!?』
そう言って私は大包平を見上げる。
『僕は彼女だけを見ていた、お前は他の女を見ていただろう!何故なんだ……答えてくれ!エンデラ!』
そう言ってヒロインを演じていた宗三くんをみた。
『どうして……どうして答えてくれない……僕は醜いからか……僕には君だけだった……僕は君さえいれば、よかったんだ……』
あぁ、憎い。この男が、この男がいなければ。大包平を睨む。
『お前さえ、いなければ!!』
そう言って剣を抜く、のだが抜かずにニコリと笑う。
「というように台詞に強弱をつければ尚良し、というところですかね。一点長になりすぎると、間延びしてしまいますから」
そう言ってそのまま舞台に降りる。オーケストラピットもきちんとある。帝劇の施設そのままだろう。鶴丸さんがただただ目を見開き、鶯丸さんだけがパチパチと拍手をした。
「主君!」
パァっと目を見開いた秋田くんがかけてくる。
「主君、すごいです!!」
そう言って彼はくるくると私の周りを回る。主君?とその場にいた彼らが私をみた。
「ってことは……」
「新しい……」
「改めましてはじめまして。新しくこの本丸に派遣されました審神者、ナマエと申します」
そうきちんときれいに舞台映えする西洋式の礼をする。
「舞台には少々覚えがあります……皆さまとご一緒に舞台に立てることを喜ばしく思います」
ニコリと笑みを浮かべれば彼らはただただ目を見開いて私をみただけだ。私は首をかしげる。しかし、そんな沈黙を切り裂いたのは加州清光である。ガシリ!と私の手を掴んだ彼は、「あの写真の人間!」と叫んだ。写真とは?と首をかしげれば、彼はこっち!と手を引いていく。舞台袖から舞台裏に周り、そのまま楽屋方面に抜けーーそうして一つの部屋にたどり着く。遠慮もなく開けたそこは支配人室だ。その中にあるアルバムのようなものを開き、彼は私にそれを見せる。
ーーたしかにそれは私だった。プロマイド、と呼ばれる写真である。なんで、だとか、どうして、という話よりも先にアルバムを巡る。奇跡の鐘の公演、シンドバッド、その他色々。私の写真だけでなく、他のメンバーのもの、新しい歌劇団のもの、たくさんあった。見慣れない公演もある。そして、最後のページには。
「花組だ」
小さくそう呟いてしまったのは仕方がない。古びた写真にはかわりなかった。私がいない。そのかわり数人の刀剣男士がいた。
「……そっかぁ」
私はそう目を伏せて笑う。恐らくは彼らも審神者になったのかもしれない。加州くんが首をかしげる。
「そっかぁ、みんなここに来てたのか……」
小さく告げてアルバムを閉じる。
「これはたしかに私です」
「やっぱり!」
「貴方は彼女達を?」
「ううん、俺は知らない。何代も前になるから……でも映像とかも残ってる」
そう穏やかに笑った彼に私も笑う。主、と顔を出したのは鶯丸さんだ。そうしてあたりを見渡した彼は一言、埃っぽいな、とつげた。
「審神者の部屋か」
「鶯丸?」
「あーと、私の連れというか……一緒に来ていただきました」
「鶯丸だ。舞台のことはよくわからないが、まぁ、主の本丸経営の補助をすることになっている。後一振り、鶴丸国永がーー」
「主ー!助けてくれ!」
そうバタバタとかけてきた鶴丸さんは私の後ろに隠れる。バタン!と音を立て閉まった扉はまた大きな音とともに開いた。
「鶴さん!!……!えっ、」
「何したんですか、鶴丸さん」
「酷いな主、何もしてないぞ。あれは主を見て驚いている」
そう言った鶴丸さんに私は小首をかしげる。
「あれ、燭台切帰ってきてたんだ、おかえり」
「えーと、加州くん、この子は?」
「聞いてよ!新しい審神者!!」
「えっ、今日だっけ!?」
ワタワタと慌てた彼は慌てたように手ぐしで整える。ジャージだとしまらないな、と更に慌てた彼に「気にしません」と私は首を左右に振った。
「だそうだ、よかったな、光坊」
「僕が気にするんだけどね……」
「燭台切光忠さんですね、えーと、燭台切さんも役者を?」
「主、光坊はできない。音痴、棒読み、加えてあがり症だ」
「鶴さん!」
「期待されるよりはいいだろ?」
「よくわからないが、役者として致命的だな」
ズバッと告げた鶯丸さんに燭台切さんは顔を覆った。加州さんが俺知らなーいとそっぽを向く。燭台切さんは半泣きである。うーむ、黒くんのところにいた彼とは百八十度とは言わずとも九十度ぐらい違う。
「うぅっ……鶴さんもそうじゃないか……逃げ出したくせに……」
「逃げ出したとは失礼な。ちょっと他の本丸に厄介になってただけだ!」
あっけらかんと告げた鶴丸さんであるが、ちょっとなのだろうか。普通にあの本丸の刀剣だと思っていたのに。鶯丸さんも「ちょっとか、鶴丸のちょっとはかなり長いな」と告げる。加州清光は目を瞬いた。
「ん?この鶴丸はここにいたの?」
「うん、そうなんだ。でも急に旅に出るって居なくなって……」
「へぇ」
「言っとくが俺は役者はやらないぞ!」
「あぁいいよ、鶴丸さんは元から役者をさせる気はなかったし」
私はそう言いつつ張り出されている紙を見る。恐らくはこの本丸にいる人達だろう。
「ん?そうなのか?」
「鶴丸さんは舞台装置とか大道具かなって思ってたから」
「この顔でか。そんなことを言われたのは初めてだぞ」
「それ自分で言う?」
「多分そっちの方が向いてる。舞台装置はある程度人を驚かせる工夫がいるからね」
「!」
とりあえず張り出されている紙を剥がさせてもらう。なるほど前の審神者は全員に役者をさせようとしていたらしい。
「燭台切さんはまだ話せていないから何が得意かとかはわからないから何してもらうかわからないけど、無理に舞台は立たなくていいよ。他にもたくさん人手は必要だから」
舞台装置は一人じゃ無理があるし、大道具、小道具、衣装のデザインに、脚本も必要だし、そもそも劇場を運営するなら経理とかもいる。あと、せっかくオーケストラピットがあるなら使わないともったいない。そうつらつら思っていれば燭台切さんが私の手を掴んだ。
「本当かい!?」
「はい」
「僕と一緒で苦手な子に教えてくる!!」
ぱあっと明るい顔をした彼はそのままどたどたと走って行った。ついでに鶴丸さんがキラキラした目で私を見ている。
「舞台装置!舞台装置か!楽しそうだ!」
「まぁそれについては舞台のことを教えつつおいおい……」
「……そういえばこんのすけはいないのか」
鶯丸さんが机に持たれながらそう尋ねる。こんのすけといえば、黒くんの代わりに喋る狐だろうか。
「こんのすけは朝からバタバタしてたし、多分後で合流できると思う」
「本丸も兼ねているんですよね。後で案内していただいても?」
「後で?」
「衣装のままでは疲れるでしょう?」
そう問えば彼は自分の服を見た。どうやら忘れていたらしい。着替えてくる!と言った彼に私は頷いた。

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加州さんに続いてきた大包平さんに案内してもらう。なるほどやはり帝劇と何も変わらないらしい。しかしながら昇降機や緊急のハッチなどは使われていないようである。昇降機を尋ねればどうやら部屋という認識らしい。帝劇の建物とは別に宿舎もあって、彼らはそこで生活しているらしい。ふむ、と思いながら中庭に抜ける。相変わらず霊子水晶が祀られているらしい。
「俺たちはここから出陣している」
「まあ、主に遠征なんだけどね」
加州さんはそう言って肩をすくめた。相変わらずか、と告げた鶴丸さんに大包平さんが首を傾げた。
「何故遠征ばかり?出会ったみなさん練度が高そうですが」
「俺たちは基本的に流れ流れてここにつくからな。来るもの拒まず去るもの追わずってやつだ。でもここは居心地が良いから去る奴は少ない」
「それは霊脈に違いからでしょう?」
そう首を傾げればそこにいた三人も鶯丸も首を傾げた。えっ。変な顔というか、驚いてしまったのは仕方ない。
「貴方達は何故ここで舞台をしているか知っていますか?」
「たまたまじゃないの?」
「そこに舞台があるからだろう?」
「先人たちがやってたからだろ?」
三者三様の答えに私は頭を抱える。それって他の刀剣もそう思ってます?と恐る恐る尋ねれば彼らは頷いた。
「この本丸を管理しているこんのすけも?」
「あぁ」
頷いた大包平さんに、だから蔑ろになるわけだ、と頭を抱えた。支配人室の地図を見ていても多くの本丸につながっているこの小さな都、のほぼ真ん中にある。体感的には霊脈に最も近い。刀剣を考えるのなら本来ならそこには演練場があるべきだ。
「この場所でやる意味があるのか」
鶯丸さんが霊子水晶を囲う柵に腰掛けてそう尋ねる。ある、と答える前に、中庭と廊下を繋ぐ扉が開く。とてとてとやってきたのはこんのすけである。あぁ、貴方が!とかけてきた彼を私は抱き上げるーーついでにキュッと両手で顔を挟む。
「あるじさまぁ!?なにを」
「政府のここの見解を教えてください」
「えっ」
「教えてください」
「池田の、ここは古くある劇場、としか今の政府も認識していない場所だ」
そうやってきたのは二条殿である。私はパッと手を離す。きれいに着地したこんのすけは加州さんの後ろに回った。うわぁ、と頭を再度抱えた私は彼に尋ねる。
「演練場の襲撃、あれが初めてではないでしょう」
「……あぁ」
「この街の襲撃もあるんじゃないですか」
「ある」
「ここの審神者が居なくなって増えている」
「それも肯定しよう」
「ついでにここの売り上げが落ちた時からそれは始まった」
私の言葉に彼は少し考えた。
「それについては調べてみないとわからない……が、確かに、ここが盛況していた時はそう言った記載はないな」
「ちなみに二条殿はここで舞台をする理由を?」
「いや、知らないなぁ」
彼はそう言って首を傾げた。何か理由があったのか?と加州たちに尋ねて彼らは首を振った。とりあえず、私が言えることは。そうツカツカと加州さんと大包平さんに近づき手を取った。
「舞台を続けていてくれてありがとう!」
「えっ?」
「詳しいことは地下で話そう」
「えっ、地下?」
「おい待て、そんなものは……」
「こっち」
そう手招けば彼らは顔を見合わせる。鶯丸さんは立ち上がって私の隣に並んだ。

昇降機の昔のパスコードを入力すれば、ガタン、と音がして起動したようだった。え、何、と困惑する彼らに二条殿が目を瞬く。
「エレベーターか?」
「はい、昇降機です」
私はそう言って中に入る。彼らはおっかなびっくり入った。作戦司令室であった階を選択する。もう一度確認されたパスコードを入力すればそこは開く。埃っぽいが、まごうことなく作戦司令室である。
「なに、ここ、」
「ふむ、出陣管理をする審神者の部屋に似ているな」
そうくるりとあたりを見渡した鶯丸さんは、「主」と言って私の袖を引いた。彼の視線の方を見れば、なるほど私の肖像画ーー風のディスプレイがある。大神大尉は私がいつか来ることを踏んでいたのかもしれない。だからパスコードもそのままで。
思い出に浸る場合ではないので頬を叩く。モニターを起動させていけば、中央の大きなモニターがついた。映し出されたのはやはりこの街だ。違うのは横に街の名前と時代が書かれていることだろう。恐らくはこれをさわればいいのだろう。こんのすけが「この街ですね」と尻尾をもふりと動かす。
「恐らく一番新しい地図だと判別できます」
私は近くにあった指揮棒で帝劇の場所をさす。
「これがこの建物。この街のほぼ中心に位置し、霊脈に最も近い場所にあります」
「えっ、そうなの?」
「あぁ、それは理解している」
「私の認識が正しければこの施設は街の結界の要です」
そう言えば二条殿が眉間にシワを寄せた。
「どういうことだ?」
「私は聞いたでしょう。ここで舞台をする理由を知っていますか、と。恐らく当時の政府は魔を祓うためにここを立てた。ここで霊力の高いものが舞い踊ることにより霊脈と呼応し魔を祓うことができる。即ち」
「それが結界となってこの街を守っていた、と」
二条殿の言葉に私は頷く。彼は頭を抱えた。わかってくれただろうか、私の気持ちを。こんのすけは目を白黒させていた。
「審神者さま、もう、なにがなんやらこんのすけには……」
「申し送りみたいなのはないの?」
「何代も何代も前になりますがゆえ」
目をぐるぐると回しているこんのすけは少し不謹慎であるが可愛らしい。もふり、と撫でていれば大包平さんが鶯丸さんをみた。
「そこの鶯丸、なにをしている?」
「ここで出陣管理ができるのかとみていただけだ」
ぱちぱちと色々な時代の地図に切り替える彼はもう一度元の画面に戻す。そうして彼は私をみた。
「主、この街も俺たちの管轄になるというわけか」
「何?」
鶯丸さんの言葉に大包平さんが眉間にシワをよせる。
「出陣管理の画面にこの街の地図がある。なら、この街に侵攻が確認された場合、この本丸はいち早くその情報を感知し出陣できる、ということじゃないか?」
「なんと!」
こんのすけはそう言って端末をみた。古すぎる……と若干ぼやいた彼であるが、ぱちぱちときようにボタンを押していく。途端に何か解析画面になる。私はここまでいくとわからないため肖像画の方に向かう。高さ的に同じことができる。システムも生きていそうである。システムの設定が私のやつがある、というか適応されている。と、なると。
「主?」
「すぐ戻るのでご心配なく」
そう言って一度部屋を出る。そのままあの作戦司令室に繋がる道を開ける。ダクト、というのか滑り台というのか。そのまま滑り落ちれば着替えのシステムが作動したのか、服が変わる。そうして、ストン、と肖像画の位置から着地する。
「なるほど、システムは生きてるし……前より随分軍服っぽい」
埃っぽいのは仕方あるまい。服を数回はらう。鶴丸さんが目をキラキラとさせた。
「主!?なんだ今の」
「出陣システムのうちの一つですかね。帝劇のあちらこちらにここに繋がるダクトがあって、滑り落ちるとここにきます。着替えもできるみたいです。恐らく内番服と出陣服の切り替えに使えるでしょう」
「ほーお、秘密基地みたいだな」
二条殿はそう言って私をみた。こんのすけが「むむ!」と声を上げる。
「二条さま、鶯丸さまのいうとおりです。ログを遡れば前回の異変も感知している模様」
「警報音とか鳴らないんですか。って、審神者さまどうされたんですか!?」
「うん?主、いつのまに着替えたんだ?」
「まぁかくかくじかじかで」
そう言いつつ鶯丸さんに並ぶ。
「使えそうですか」
「あぁ、黒の本丸のシステムと似たような感じだからな」
ということはあの本丸はなかなかに古いのかもしれない。
「池田の、ここが過去どのような経緯で建てられたのかはまたこちらで調べさせてもらおう」
「主、先ほど階数表示にまだ何かあったが、他にも何か?」
「一つはお風呂だとは思うんですが」
「お風呂!?」
加州くんが目を輝かせる。ないのか?と二条殿が聞けば宿舎に簡易なものしかないらしい。なるほど。
「あと一つが何かわからないですが……」
格納庫、である。昔なら霊子甲冑、霊子戦闘機が並んでいたはずだ。と、なれば刀装用の何か、か、出陣用の何か、だ。
「また確認しておきます」
「そのさいはこのこんのすけも同行致します!ここに配属になった時はもしや左遷かとおもいましたが……このこんのすけ、ワクワクしてきました!」
そう興奮したように告げた彼に可愛いなぁとおもう反面、喧嘩をうったなぁ、ともおもう。まるできた当初の大尉である。
「そろそろ戻らなければ皆さん心配するでしょうし、わたしは服をとりに向かいますので」
そう言って扉をあける。鶴丸さんが、俺もあれしたい!というのをまた今度、と背中を押した。

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先に加州くんや大包平さん、ついでに鶴丸さんに1階に戻ってもらい、二条殿は様子見だからといって帰っていった。鶯丸さんにも戻ってもらうつもりだったが、ついてきてくれるらしい。とりあえず着替えるために風呂場の階に行く。突き当たりは倉庫であり、どういうわけか服はここに来る仕組みになっているため服を回収した。そのまま風呂場のほうに進めば、「なるほどここが風呂場か」と鶯丸さんが告げた。
「はい、開くかな……」
そう木製の引き戸をあける。ふむ、脱衣所は掃除をすれば使えそうだ。そのまま一応お風呂場も見ればこちらも洗えば使えそうである。
「着替えますね」
「あぁ、なら外にいよう」
彼はそう言って外に出てくれた。
「主はこの建物について詳しいな。まるでーー」
「まるで、ここにいたよう?」
扉越しにかけられた言葉にそう答える。
「あぁ」
「黒くんの本丸に来る前、似たような場所にいました。いわば、鬼籍に入る前にいた場所です」
私は着替えつつそう答える。
「何歳からそこに?」
「13歳あたりでしょうか。そこから22歳まで舞台にたっていたんですが……」
「うん?主の今の年がそれくらいかと思っていたが」
「33歳ですね」
ははは、と笑いながら言えば少し扉が開いて鶯丸さんがこちらを伺った。冗談か?と聞いた彼に私は苦笑いした。着替え終わっていたので服を畳む。
「22歳の秋から、32歳まで魔と一緒に封じられていたので、その間は歳を取らなかったといいますか」
「封じられていた?」
「よくわからないんですが、体感はそこまでなかったと言いますか……帝都に大きい魔がやってきてそれを鏡世に封じる作戦がありました。私はそれに参加し鏡世に入りーー結果十年間失踪。結果、魔を倒しもとの世に帰ってきたのですが、その結果鬼籍に入りました」
そう言って風呂場をでる。そしてさいごは、うみに。広がる青
とまんまるの空気。沈む体、緩やかな月光。
「主?」
「あぁ、ううん、ごめん、それから紆余曲折を経て黒くんの本丸へ。外見的にも精神的にも23歳で止まってますけど」
そう言って苦笑いしつつ昇降機に乗る。鶯丸さんはふむと考えたようだ。
「まぁ、10は些細な問題か」
「些細ですか」
「あぁ、俺たちに比べたらうんとな」
そりゃそうか。ゼロが数桁ちがう。昇降機がとまり扉が開けば、三振りだけじゃなく他にも数振りの刀がいた。

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とりあえず宿舎も案内された。前の審神者が使っていた部屋はどうも趣味が合わなかったため、執務室として支配人室を寝る部屋として大神大尉が使っていた部屋を使わせてもらうことにする。鶯丸さんはどうする?と聞けば、私の隣の部屋ーー神山くんの部屋を使うという。鶴丸さんは元の部屋を燭台切くんーー黒くんの本丸にいる彼より可愛らしい面があるため君付けにするとするーーが残しているためにその部屋をまた使うそうだ。とりあえず寝室を使えるようにしないとな、と思っていればこんのすけが赴任時のサービスですと式神を呼んでくれたらしい。私たちの部屋だけでなく帝劇の中の部屋ーー使われていなかった風呂場などもきれいにするからと舞台の方に追いやられてしまった。……なので、舞台上に私、観客席にこの本丸にいる刀剣という形になっている。鶯丸は元からいなかったのか、私ときた鶯丸さんだけであるし鶴丸さんも同じくだ。しかし、ちらほら同じ刀がいる。まぁそんなこともあるんだろう。黒くんの本丸でも同じ刀はいたことがあるようだし。ただ、天下五剣で最も美しいとされる三日月さんがいなかったり、珍しい刀は少ない。こんのすけがもふりと私の腕の中で口を開く。
「名乗りを受けて初めて契約が成立します故、名乗ってもらうのがいいでしょう!主さま、私は管狐のこんのすけでございまする!これから苦楽を共にいたしましょう!」
その瞬間、こんのすけの周りに桜が散る。毛艶が少し良くなったような。
「む、鶯丸さまは契約されていないのですか」
「あぁそう言えば……主と呼んでいるがちゃんと契約はしていなかった」
「俺もだな!契約なんざだいぶ昔のことで忘れていた!」
そう言った二振りは私を見上げた。
「古備前の鶯丸。名前については自分もよくわからんが、これからも宜しく頼む」
「鶴丸国永だ!これからも君に驚きをおくろう!」
名乗った瞬間、また桜が舞う。ということは名乗るたびにみえるんだろうか。
「?契約してなかったの?」
「あぁ、俺たちがいた本丸は色々不思議な本丸でな」
「ふぅん、あー、加州清光、です、」
ぺこりと頭を下げた彼をきっかけに次々名乗ってくれる。ちょっとした花見の気分だ。最後の一振りが名乗り終えるころを見計らって周りはザワザワと騒がしくなる。首を傾げればこんのすけが「主さまの霊力の質に驚いてらっしゃるのでしょう」と答えてくれる。ザワザワしてるのもあれなので私も名乗る為に手を叩く。そうすれば静まるあたり彼らは賢い。
「本日よりこの劇場に着任いたしましたナマエと申します。主でも支配人でも名前でもお好きにお呼びください。舞台には少々覚えがあります。皆さまとご一緒に舞台ができるを喜ばしく思います」
そう綺麗に一礼する。こんのすけが「主さま」と私の手から降りて私を見上げた。
「あとはこの本丸に霊力をお注ぎくださいませ!」
「本丸に霊力を?」
「でた、恒例儀式」
「恒例儀式?」
大和守さんの言葉に私は首をかしげる。刀剣達がザワザワとしている中、こんのすけはニコニコしながら「はい!」と頷いた。
「主さまが歌い舞い踊れば、本丸に霊力がそそがれましょう!」
「……何をすれば?」
「だから、歌い舞い……」
「いえ、何の演目をすれば?」
そう首を傾げればこんのすけが目を瞬いた。
「え、演目?」
「少年っぽいとか……女の人とか……ざっくりでもいいので言ってもらえると嬉しいんですが。急に言われるのが一番困りますので……」
お互い困り顔である。不意にオーケストラピットが下がる。そこから現れた洋装の式神が私にグッドサインをむけた。演奏は式神だろうか。彼は指揮棒を振る。するとよく聞いた曲の冒頭である。なるほど、これをやれと。とりあえず動きやすいように帯刀していた秋告と春告を観客席において、舞台にもどった。深呼吸してから式神をみる。よろしくお願いします!と言う前に彼らは音を奏でる。最初の台詞はきまっている。
「やぁ、みんな!一緒に公開ができて嬉しいよ!これから人生で最高の冒険がはじまる!そうだろう、こんのすけ!」
そう悪戯っぽく笑って歌い始めるのだ。

「式神さん、そろそろストップ……」
シンドバッドからはじまり、なんか色々歌い演じ踊らされている気がする。音楽の合間に言えば彼は親指を立てて、最後の曲だというふうにまた指揮棒を動かす。ぐうぅ。「これで最後ですよ」と言い聞かせもう一度息を整える。ピアノの音。
「誰もいない交差点に立つ、貴方と私の間に粉雪が舞う」
奇跡の鐘、である。そっと目を伏せて柔らかに舞う。
「誰もがほんの少し誰かを想うとき、奇跡の鐘が鳴るのだろう。誰もがほんの少し誰かを想うとき、愛の灯火灯るだろう」
ゆっくりと目を開き、微笑む。あくまで柔らかく、女性特有の動きで舞う。
「あなたと、ふたりの、ラブストーリー」
歌い終えてポジションをなおす。そうして余韻を残すように終わった曲に、ふぅと息を吐けばパチパチと拍手の音がした。そちらを見れば鶯丸さんである。桜の花びらがたくさん舞っている。それを皮切りに拍手が起こり、わぁわぁと刀剣達が騒ぎ出す。こんのすけも何か感極まっているようだった。私はとりあえず式神さんにお礼をいい舞台から降りてこんのすけを抱き上げる。
「……これでいいんですか」
「はい!十分です!みてください、主人さま!主さまの霊力が補填され本丸も綺麗になったでしょう?」
そう言われて周りをみる。確かに幕などが綺麗になっている。
「主の歌も舞いもいいな」
そう柔らかく笑った鶯丸さんにありがとうございます、と少し照れながら返す。観客席においた二刀を帯刀し直していれば、ガバッと片手をつかまれた。なんだ?と思えば長谷部さんである。桜をたくさん舞わした彼はキラキラとした目でこちらをみた。
「お美しい……今まで見たどの主よりも」
「ありがとうございます」
そう言ってやんわりと手を外す。お世辞でも嬉しいものは嬉しいのだ。扉が開き、掃除を担当していた式神達がゾロゾロやってきてグッドサインをした。
「主さま、ちょうど掃除も終わったようです!」
お疲れでしょうから今日はお休みください!
そう言ったこんのすけはグイグイと私の足を押す。決めたいことはたくさんあったのだ。でも自分で決めることも多い。じっとこんのすけを見つめてみたものの、話は変わらず足を押されてしまった。


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目が覚めたら整った顔がすぐそこにあった。眠たい目で彼をみて名を紡ぐ。
「春告?」
「許嫁殿、俺たちはこちらだぞ」
その声は反対側からである。そちらを見れば確かに春告と秋告はいる。え。慌てて彼をみる。そう言えば慣れない場所だからと鶯丸さんが訪ねてきたような。
「許嫁殿、気を許しすぎだ。前にも言っただろう。いつか痛い目を見るぞ」
「主、春告の言う通りだ。些か甘すぎる」
「まぁ俺と似た容姿だから仕方もないか」
「仕方なくない」
朝から説教か。くどくどと怒る秋告に私は半分寝ながら聞く。欠伸をついこぼせば彼は余計に起こった。くつくつと笑う声が聞こえる。振り返れば鶯丸さんが笑っている。
「おい、元はと言えばお前のせいだぞ!」
「許せ、鶯丸。これは昔から自分が見えた許嫁殿が弟妹のように可愛いのだ。口煩くもなる」
「それはお前もだろ!」
「あぁ、そうかもしれないな」
相変わらずである。ふわりと現れた夏告が「朝からうるさい!」と怒った。鶯丸さんと初対面だろう、と思ったが彼は夏告と呼んだので私が寝ている間に話していたらしい。というか春秋コンビも初対面か。ぼうっとしていれば、シャキッとしろ!と怒られたのだけども。


とりあえず誰が苦手だとかがわからないし、練度もさっぱりなのでデータを整理していればそういうことが得意だという長谷部さんや博多くんが手伝ってくれた。昨日の舞台の賛辞から入った彼に苦笑いする。とりあえず支配人室の隣ーー前は経理やら秘書がいた部屋ーーは近侍の待機室とする。燭台切くんが持ってきた舞台苦手リストに長谷部さんの名前がある。あがり症だそうだ。博多くんはそうではないらしいが、やはり商売が好きらしい。売り上げなどの管理は彼だ。……風組かな。しかしながら人が多すぎる。月組は……服部さんにこそっとお願いするとして、花月風では無理だ。三つの組でローテーション……四つ……三つで合同公演一回……これでいくしかないか……
「ぐ、その鶯丸とあの鶴丸はカンストか……」
「カン……?」
「あぁ、主は気にしなくていい。それより、主、誰が何が得意かというデータがでてきた」
彼はそう言って冊子をだす。こんのすけが「私がまとめたものです!」と口を開いた。
「今までどの審神者さまもおつかいにならなかったのですが……」
「助かります、ありがとうございます」
鶯丸さんが大包平さんの欄を読み込んでいる。四つでまわして出陣や遠征、内番もそれでできれば回したい。とりあえず花鳥風月と思ったが、鳥組ってシュールだ。雪組にしよう。
「主さま、次の演目も決めないといけませんよう」
「それはなんとなくもう決めてるけど、脚本にしないと」
「えっ、もう決まってるの!」
ガチャリと扉が開いて顔を覗かせたのは加州さんである。その後ろには苦笑いしている大和守さんだ。
「何するの?」
「昔話」
「昔話?」
「みんながとっつきやすい話にしないと。最初は集客をしてリピーターを増やさないといけないでしょう?」
「候補は決まってるのですか?」
そう尋ねた長谷部さんに私は頷く。
「桃太郎」
「えっ」
「脚本を少し手直しすればいけそうなので」
そう言えば、加州くんと大和守くんが顔を見合わせた。
「あーじゃあ、俺はいいや……」
「昔話なら、短刀メイン?」
「いえ、主演は太刀。猿が短刀サイズか脇差、雉は槍か薙刀、犬が打刀か太刀。相対する鬼は舞が上手い人。エキストラは打刀サイズ」
「やけにはっきりしてるんだね」
大和守くんの言葉にだいたいのあらすじは決めたんです、と苦笑いしてみせる。
「あらすじは、武家の武士が朝廷か将軍に男ばかりを喰う鬼がいるからと鬼退治を命じられる、鬼ヶ島的な場所に実際に行ってみたら表からは竜宮城みたいに美しい女がいる場所だったけども裏では虜になった男を喰っていた、それに気づいた桃太郎が鬼を退治する、みたいな。雉は長物が得意な主人公の友人、猿は主人公が助けた忍か実は鬼ヶ島からの密偵、犬が主人公に忠誠を誓う従者か弟分。目指すのはそのままの桃太郎じゃなくて、知ってると思ったのに少し違う話」
つらつらといえば彼らは目を瞬く。大和守くんが口を開いた。
「普通に面白そうなんだけど……」
「そう?ならよかった」
やることが増えるからできれば脚本は他人に譲ってしまいたい。音楽はどうする。考えることが多いすぎる。大尉はすごいな、と再確認した。あの人見回りもしてたし、いつ寝てたんだろう。
「長谷部さんは鶴丸さんや燭台切くんと一緒に裏方に回ってもらってもいいですか?役者だけではやはり成り立たないので」
「喜んで!」
「博多くんには役者もしてもらうんだけど、売店も任せたくって。ダメかな?」
「!まーかせときんしゃい!」
へへ、と笑った彼に私もニコニコしてしまう。可愛らしい。
「主、主、配役はどうすんの?」
「それもこれからです。とりあえず脚本に落とし込まない……と……」
ペラペラとめくっていたこんのすけお手製の得意不得意資料に、ちょうど読書好き兼ト書き直しをしていた刀を見つける。それも二振りだ。その他裁縫やデザイン、音楽諸々もいるのがちゃんとわかった。役者を分けるより裏方と表側を埋めたほうがはやい。ぽくぽくぽく、と数秒手順を考え、裏方をやってほしいメンバーを書き出す。覗き込んだ加州くんが、それがキャスト?と変な顔をした。
「いえ……少しお二人にお願いがあるのですが」
「ん?」
「ここに書いてある人を呼んできて欲しいんです。そうですね、十時を目安に、とお伝えください。ちなみに役者さんではないです」
そう言えば彼らは頷いてお安い御用だと言ってくれた。そのまま部屋を出た彼らに資料を眺めるのに飽きたのか鶯丸さんが簡易なセットでお茶を淹れはじめた。長谷部さん達も不思議そうにしている。
「役者ではない?」
「無理に舞台に立たなくてもいいと思うんです。全員が役者をする必要はありません」
そう言ってザッと資料をまとめる。
「鶯丸さんは私の本丸関係のサポートに入ってもらいますし、長谷部さんには事務的なサポート、博多くんには経理関係……ただ機械関連の使い方は覚えてもらった方がいいかもしれませんが、それはおいおい。10時までは休憩で」
そう言って伸びをする。鶯丸さんがそろそろだと思っていた、と手招いてくれた。

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「ご足労ありがとうございます。お呼びした方は色々お願いしたくて集まってもらいました」
「まさかとは思うが、この面子で演劇を?」
そう尋ねた山姥切長義さんに「いいえ」という。
「山姥切長義さんは曲」
「は?」
「山姥切国広さんと物吉さんは脚本」
「え?」
「鶴丸さんは以前言ったように舞台装置、燭台切くんは舞台美術、歌仙さんと蜂須賀は舞台衣装、山伏さんは大道具、篭手切さんは振り付け、大典太さんは小道具……というようにそれぞれお願いしたいのです」
照明も本当はいるけれども、それは様子見だ。私の言葉に彼らは顔を見合わせたり、目を瞬いたり様々な様子を見せる。大典太さんがポツリと口を開いた。
「舞台には立たせない、ということか」
「いいえ。望む方は舞台に立っていただきます。ただ、役者だけでは本来舞台はできないんです。今まで役者だけで回っていた、だなんて考えはお捨てください。それはお人好しがいたから成り立っていただけです」
はっきりとそう告げる。山姥切長義さんが手を上げる。
「主、どういう意図で選んだか聞いても?」
「はい。こんのすけに皆さんの特技や不得意なことが書かれたデータをいただき検討させていただきました」
そう言ってこんのすけが作った冊子をみせる。
「山姥切長義さんは音楽に造詣が深く、また曲についてよく意見を出しているとお聞きしました。また、交渉が上手いとも。オーケストラピットの式神との交渉もできると踏んで」
「!オーケストラピットを使うのか」
「はい、せっかくなのでそのつもりです。次に脚本ですがーー」
そう言って説明していく。ト書き直しに読書量に台詞なおし、鶴丸さんは驚かせるのが好きだからであるし、燭台切くんはやはりセンスがいい。大典太さんは手先が器用で色々なものが作れるし、山伏さんは日曜大工もできれば絵も描ける。蜂須賀さんも歌仙さんも洋裁も和裁もできるし、なんなら二人は配色などのセンスもある。こんこんと(もうちょっと詳しく)説明していれば彼らは桜を舞わした。「そこまで言われては引き受けないのは雅だね」とは代表した歌仙さんの言葉だろうか。
「主、年間スケジュールは決めたのかい?」
「今私の中だけで想定しているのは、役者が多いので三つの隊に分けること、四ヶ月に一度の公演をすること、ですかね」
「一年に四回の公演、ですね!」
「はい、三つの組がそれぞれ一度ずつ。クリスマスか年末あたりに合同公演、といきたいな、とは……」
「なるほど」
そう言って山姥切長義さんは考える。
「主、脚本と音楽は誰かもう一人ずつ見繕った方がいい」
「おい、山姥切長義」
「長谷部さん、いいです。長義さん、続けて」
「音楽については俺は全力でやるが、どうしても手が回らないことが出てきそうだ。脚本については」
そう言って彼は山姥切国広さんをちらりとみる。偽物くんだからか、と呟いた国広さんに彼はため息をついた。
「これだから偽物くんは。俺は君と物吉脚本の能力については認めている」
「!」
「ただ、作風が似通うと観客は飽きる。メインで書く人間とサブで書く人間を三階の公演でそれぞれ変えるべきだ」
なるほど、一理ある。目をパチパチと瞬いて、私は頷く。
「一理あります、採用しましょう。しかし、音楽の人員も脚本の人員も私には決めかねます。誰か推薦をお願いしても?」
「わかった。検討しよう。大道具や小道具、舞台装置、衣装の人員はどうする?」
「3組のうち1組を演劇、1組を過去への出陣遠征、1組を内番兼手伝いをしてもらうつもりです。貴方達に関しては便宜上4組目とカウントしますが出陣遠征はどこかに混じってやっていただくつもりです」
私の言葉に彼は納得したように頷いた。
「ではとりあえず脚本の方以外は解散して頂いても大丈夫です。長義さん、脚本の人員はいつ増えてもいいので」
「あぁ。わかった」
「あと、皆さんを纏めて召集する際は風組という呼称をさせていただきますので覚えておいてください」
では解散。
そう言って私は取り寄せた桃太郎の脚本を持つ。部屋にはとりあえず脚本の二人と朝からいる長谷部さんや博多くん、鶯丸さんが残った。
「主様は次はどんな演目が決めているんですか?」
「これでいきます」
私が見せた桃太郎の文字に二人は目を瞬いたのだけど。



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雑多 

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