2020/09/17

↓続きとか色々

「なんでETU推してるんですか?」
そう尋ねた後輩ちゃんに首をかしげる。次に後輩ちゃんは、「ナマエさんって、持田選手と仲がいいですし、ETUって毎年残留争いしてるとこでしょ」と予測する。そのまま一言一句間違うことなく告げた後輩ちゃんに私は笑ってしまった。オッケーオッケー、たまに蓮にも言われる。両親が元々ETUのサポーターだったということもある。今は幼馴染み的な蓮がいるのでヴィクトリーのサポーターをしているが。だが、答えはそれだけじゃない。
「なんだろうな、最下位あたりにいるチームが上位に上がってくるのを見るのが好きだし、何よりもさいきんいい選手見つけたっていうのはあるよ」
そう答えれば彼女らは不思議そうな顔をするのであるが。




女王様とは周りが付けた私の呼称である。恐らく男子リーグにいる蓮が王様と称されることが多々あるから私をそう呼ぶのだろう。付け加えるなら一応女子の中で世界五本指には入るプレイヤーだと思う。いや、三本指か。まぁ、そんなこんなで女王様と呼ばれるのだから周りをアリスちゃんと呼んだりするのであるが。その実女王様は王様によくパシられるのである。いや、一応幼馴染みの腐れ縁だしいいのだが、たまにアッシーする私だ。なので蓮の車も私の車も何故かお互いにスペアキーを持っているのである。ため息をついて大きいホテルの中に入る。そのままフロントに行けば教えてくれた場所に顔を出した。なるほど、男子の方のパーティーかなんかだ。恐らく蓮はこれから逃げたいんだろう。スーツっぽい服装じゃないけどまぁ中に入るわけじゃないんだしいいだろう。とりあえず近くにいたホテルマンに蓮に伝えるようにお願いし入り口付近に待機する。
「おや、苗字か。ユニフォームを着ていないとわからないな」
そう言ったのは平泉さんである。あれ?今からなのかこの人はと思ったが席を外していたらしい。
「ははは、まぁ、そろそろこう言う服をきろとスポンサーに怒られて一式もらいました」
「となると撮影の帰りだな」
「はい、一応」
「で、迎えか」
「迎えですよ。全く困った王様です」
やれやれと肩をすくめれば彼は私をみた。甘やかしてる?その自覚はある。
「女子の方は今年もベレーザだったな」
「当たり前です。まぁその当たり前があと何年続くかですけどね。下の層が育ってきてるんで、私もあとどれくらいで首を跳ねられるかわくわくしますよ。断頭台に足を進めてる気分です」
ははは、と笑いながら告げる。まぁこれ言うと関係者は変な顔をするのだが、平泉さんは真面目な顔なだけだ。
「トランプ兵や不思議の国の住人だけじゃつまんないですからね、そろそろアリスが来て欲しいんですよね。夢が実現できる感じもないし」
「なんだ、急いで来たのに。平泉さんと話してんの」
「でたー、君を待ってる間平泉さんが雑談付き合ってくれてただけなのに。パーティーいいの?」
「別にいい。何その服、若作り?受けるんだけど」
「スポンサー様がくれた服にそんなこと言う奴は君しかいないわな。私も若作りだと思うから着替えたいんだよ。さっさと帰るぞー、じゃあ平泉さん、また今度」
「あぁ、持田を頼む」
その言葉に二人で「はぁ?」と返したら平泉さんが若干目を瞬いた。珍しく驚いてるらしい。まぁ城西さん達が来る前に逃げるけどな。写真撮られては熱愛だのなんだの言われるが、腐れ縁の幼馴染みなだけである。いやそろそろこの歳ならあるんだろうけども。どうも結婚だのなんだの言う感覚がないのだ。そういう話をするたびに同僚や先輩に、あぁはいはい、持田くんや花森くんがいるもんねと言われるのである。いや二人とも度々恋人云々の話あるじゃん。で、度々振るんだか振られてるんだかわからないが結局は3人の腐れ縁に収まるのだ。隣でスマホをいじっている蓮に羨ましくなる。こちとらいろんな方面から結婚しないのとか言われるのに向こうは言われないんだろう。ずるいなぁ、とぼやけば蓮が口を開く。
「何が」
「いや、蓮はさー、独身だ結婚だなんて色々言われないでしょ?面倒くさいんだよ、女子はその辺」
「じゃあ結婚すればいいじゃん。お前に相手がいればだけど」
私が一回どっか他クラブの人と付き合いかけた時度々潰したのはお前だろうが、とジト目でみる。何?と嘲笑いながらこちらをみた蓮に、読モ女子アナに振られ続けろと言えば俺が振ってんのとか言ってくるコイツは恐らく何回も呪われてると思う。アンチも多いし。
「くっそー、もうハナちゃんに娶ってもらおうかな。ハナちゃんなら娶ってくれそう」
「アイツにも選択肢あるって知ってる?」
「知ってる。そんなつもりもないしね」
最近はあれだ。私と蓮が一緒にいる写真を週刊誌に撮られることはない。最初はあったが幼馴染みという関係が露呈していくにつれ、お互いに「ありえない」という発言をするたびにお金にならないと踏んだ彼らは遠のいた。私とハナちゃんでもそうなのだけども。
「面倒くせー、男として生まれたかった」
いろんな意味で、本当にそうだったらよかったのにと思うのだ。赤信号である。ハンドルに持たれながらそういえば、蓮が「本当にな」と告げた。

==

去年男子リーグのついでだろうから取材してきた藤沢さんに、いつか絶対ETUみたいなチームは面白い変革があると思うとぼやいた私である。まぁ、私は東京ヴィクトリーベレーザに属しながら幼馴染みである持田蓮が所属する東京ヴィクトリーではなく、ETUのサポーターとして有名なのだ。東京ヴィクトリーは応援しなくても勝つからいいんだよ。
「ETUにさ、一人面白い選手がいて……あぁ、スタメンじゃないよ。私のスタメンの推しは堺選手だから。その子に出場機会あげたら楽しいことになると思うんだよ」
そう言いながらドリンクを飲む。首を傾げた彼女はメモを走らせようとしたのでオフレコオフレコと言いながら邪魔をする。彼女は息を吐いて首を傾げた。
「それは誰?」
「椿くんっていう子」
「くんってことは……年下かしら?」
「19とか20とかそのくらいじゃないかなぁ」

そう、それが去年の話だ。蓮にも何か言った気がする。ふぅん、あっそ、で終わったけども。私の試合の関係もあるし、全ての試合に応援に行けるわけでは決してないがまぁ行ける時に行ってるのだ。まぁ、ゴール裏ではない場所でいつも試合をみているのだが。そして今年、やっと達海監督が就任したのである。はー、楽しみだ、とわくわくしている私に私の監督が浮き足立ってるな、と突っ込んだ。
「ETUのことにワクワクしてる」
「自分のことにワクワクしろ」
「ならトランプ兵じゃなくてアリスちゃん育てて」
「いや、お前な……」
「冗談冗談。半分は」
そうひらひらと手を振って練習場を後にした。

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==前回のネタ(前記事)の続き

「一生のお願いだから出て」
そう言ったのは仕方ない。はぁ?という顔をした蓮には悪いが、ここしかチャンスはないと思ってるのだ。恐らくこれ以降は三人のうち誰かが引退した後か、私達全員が引退した後しかあり得ないのだ。お願いします、と頭を下げれば蓮は頬杖をついて息を吐いた。
「……言われなくても俺もハナも出る」
その言葉に顔を上げる。嬉しい!という表情を浮かべてると思う。めちゃくちゃ嬉しいのだ。本当に、本当に嬉しいのである。やったー!と手をあげて喜べば彼は吹き出した。
「まだ同じチームかもわかんないのにそんなに喜んでいいわけ?」
「敵チームならハナちゃんとボッコボコにしてやるからな!」
「ハナが一人かもしれないでしょ」
「ハナちゃん二人でからかうだけだし、一人なら一人で椿くん達と一緒だと思うしそれはそれでよし」
「……好きだねぇ、椿くん」
「素直で可愛いから!」
誰かさんと違って!そこは止めたが蓮の椿くんいじりがひどくなるかもしれない。ごめんね、椿くん。私は今テンション高すぎてそこまで気にはできないから。ありがとうー!と勢いよく蓮に抱きつく。嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。いやまて、これは夢なのではないか。だって蓮が大人しいわけだし。いかん、一周回って涙目になってきた。私の動きが止まったからか、蓮は口を開く。
「何」
「夢じゃないよね?」
「……夢じゃない」
「本当の本当に夢じゃない?」
「そうだって」
「ただいま、って言ってもいい?」
そう言って蓮を見上げる。彼は吹き出すと思いきや、口端だけをあげた。
「それにはまだはやい」
まぁ頬を思いっきり抓られたけども。痛い!と騒げばいつものような笑い声をあげる。
「夢じゃないのがわかったから!」
「よく伸びんなー」
「はなしをきけー」

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嬉しすぎて飛び跳ねたいが自分の歳が歳なので我慢する。にやける。顔がにやける。チーム分けが私と二人は同じチームだったのもある。大きく息を吸って吐く。まぁ、監督にはお願いしたし多分同じ時間にゲームに出れるはずだ。椿くんや窪田くん、アリスちゃんと違うチームなのは残念であるが、まぁそれはそれでこれはこれだ。日本代表のサンキューデー的なやつである。女子男子ごっちゃのオールスターみたいなものなのだ。チーム分けはアンダー22とそれ以外であるが。多く観客としての見所はやはり、こう言う場にはあまり出ない何故か帰国してまで参加してるハナちゃんと蓮なのであるが。東京ヴィクトリーのサポーターだけが王様と女王様が揃う云々を話題にしてくれているが。
「いや、こいつに関しては身長小さい男って思った方がいい。女じゃないから」
「……そうだな」
「めちゃくちゃ失礼なこと言うな、君ら。でもそっちの方がやりやすいからいいよ。女子選手全員小さい男ね」
と言えばそう言われてもなぁ、みたいな顔をされたが。ので、言い切るしかないな、吐息を吐く。
「手加減なんかしないでほしい。スポーツマンとしてさ、この場だけでもいいから対等に扱ってほしい。この場での区別は私にとって、私達にとって、ただの侮辱だ。あと、甘く見てると足元すくわれますよ」


だってそこはいつもと同じ場所だというのに、いつもとは違う夢の舞台になったのだ。ずっと夢見て頑張ってきたのだ。叶わないと思っていた。だってレベルが違いすぎるからだ。
「このゲームが終わったら死んでもいい気がする」
子供と手をつなぎながらそう呟いてしまったら後ろにいた蓮が吹き出してハナちゃんに「このゲーム終わったらナマエ死ぬらしいよ」と話を振った。やめなさい。まわりが反応に困るでしょう。ハナちゃんも困るでしょ。
「ナマエ、困るぞ……それは……誰が持田を止めるんだ……」
「ハナちゃん……は無理だから城西さんあたりだね。ほら、最近ハナちゃんは椿くん達と仲良しで癒しだから、蓮のストッパーはちょっとね」
ハナちゃんが変な声出したけど知らなーい。城西さんが口を開く。
「……苗字のストッパーはどうしたんだ?最近セットでいたろ、新人の」
「あぁ、アリスちゃん?アリスちゃんなら向こう側だよ。椿くんや窪田くんと相性良さそうだしね。向こう側に行かせた。そろそろあの子も私をどうこうして貰わないと困る。私を崇める奴はもういらない。私が欲しいのは、私の首を跳ねてくれる人だよ」
ははは、と笑いながら告げる。さっさと女王なんて立場から引き下ろして欲しい。私を崇める人なんてみんな敵なのだ。
「さーて、若手おちょくりますかー!」
「発言がすでにババアなんだけど」
「うるせぇ」

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笑える。入った瞬間、俺やハナのサポートもあって、さっさとゴールを決めたナマエをみて周りは固まった。だから女だと思わない方がいいって言ったのに。まぁ、実際ナマエはそれをわからせるためにやったのだろうが。目の前にいる椿くんは偶にナマエが吐く言葉に驚いている。笑ってしまう。
「あはは!椿くん、なんでナマエが女王って呼ばれてるか知らないの?」
「えっ?えーと……」
「なに、君たち、アイツただの面倒見のいいプレイヤーだと思ってんの?だとしたら騙されてるぜ。アイツは俺やハナと同類。普段は温厚ぶってるけどな、今のアイツが本当のアイツ」
そう、お行儀良く振る舞っているが、俺たちが知るアイツはああなのだ。15年前からそれは変わっていない。女子の方でプレーをするアイツは本当のアイツではない。何かを押さえつけているような、我慢をしているような。偶に暴言を吐くらしいがそれにしても大人しくしているものである。
「いやー、ほんと厄介だよね。アイツなんで女に生まれたんだろうな」
「えっ……でも、女子のエースですよね」
「まぁね、でもそれは今となっての話。ナマエが男なら俺とハナと三人で日本代表のスタメンは確定だった。君らは代表になれてないわけ」
わかる?と嘲笑う。そんな夢など捨てたはずなのに。やってきたハナは女子のメンツを見た。
「ナマエは……俺には及ばずとも天才。だが、女子の中では一番の天才……何故お前達はナマエを超えようとしない?」
「無理無理、顔見てればわかる。コイツら結局はナマエのいうトランプ兵なんだよ。ナマエのパス受けてりゃ勝てるからな。それが当たり前……ま、別に俺たちとしてはお前らがトランプ兵だろうがアリスだろうが関係ないけどな」
関係ない話だ。性別の差だとか、そういうものは。面倒なことでもナマエはここにもってきた。でも、まだだ。
「でもさぁ、もっと死ぬ気でやってくんない?せっかく、俺たちの夢が叶ったんだからさ」

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楽しい。超楽しい。いなぁこれはニコニコしてしまう。爽やかキャラじゃないがやっぱりすごい楽しいわけで笑ってしまう。このままずっと時が止まればいいのにと思うほどだ。めちゃくちゃ楽しい。いや、思ったよりも接戦なんだけど。めちゃくちゃ楽しい。いやぁ、一発目のゴールが私で悪いけど。でもそうしなきゃ向こう側もこっち側も蓮とハナちゃん以外は私相手に同じ立場で向き合ってくれないんだから仕方ない。あとは思うようにやればいいのだ。楽しい。そう思いながらハナちゃんが来るだろう場所にパスを出す。やっぱり現れたハナちゃんがシュートを打ちまぁ阻まれて蓮が押し込んだけど。とりあえず私のアシストを消しやがって、と蓮に行けば、蓮はハナちゃんに下手くそって煽ってた。やめなさい。向こうに配置されたキーパーの星野くんがうまいだけでしょ。

「相変わらず気持ち悪いパスばっか」
ハーフタイムである。ベンチに座ってたら蓮が私の頭を叩いた。脱ぐな。と思ったが男子勢結構脱いでいらっしゃる。まぁ見慣れてるからいいけども。
「その気持ち悪いパスで得点産んでるんだからいいでしょーが」
「……確かに、ナマエのパスって気持ちいいくらいにドンピシャだよねー。ミシンみたい」
ミシンとは。まぁ褒めてもらっているのだろうが。
「いや、気持ちいい通り越してパスがドンピシャすぎて気持ち悪いんやけど。あねさん、なにあれ」
「なにあれって、なんで?」
そう首を傾げれば彼らは目を瞬いたが。
「……ナマエは昔からああだ。俺には及ばないがパスの成功率が高い」
「えっ?ハナちゃんダメだよ、パスの成功率は私の方が上でしょ?確かに今回は結構試合中に修正かけてるけど、君基本パス下手じゃん」
「!」
「ぶはっ!!ナマエに言われてやがる!!」
「爆笑してるとこ悪いけど蓮も下手じゃん」
「はぁ?俺はお前より上手いんだけど、なに言ってんの?」
いやいやいや、と彼を真顔でみる。向こうはすぐ爆笑したけどな。うるせぇ。


==

「本当になんでミョウジは男じゃないの?いや君は綺麗だし美しいんだけど、君が男なら確実に代表入りなんだけどなぁ」
「現行でもルール改変してくれたらオッケーだと思うので、ブラン監督から働きかけてくれません?」
「僕に権限がないからねぇ。そうしてあげれるならそうしてあげたいけどね。君たち3人使えばいいし」
はははー、と笑っていればベンチが引いた。すまんな!
「ちぇー、ブラン監督でも無理なのか。まぁ仕方ないか」

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「いえーい、mvpの車はもらったー!でも、そろそろ車いらなーい!」
女子のオールスターに出るたびに車をもらうのであるが、ヴィクトリーベレーザの公用車が増えるだけだったりする。男子キャプテンな城西さんが挨拶してるのを見ると私がやっぱり挨拶なのであるが、ああいうまじめ腐った挨拶わたしには出来ないから。mvpのインタビューも含むらしいのだが、まぁ、話すことかー、と思いながら頭をかいた。
「どーも、女王様こと女子キャプの苗字ナマエでーす。私には城西さんみたいなまじめ腐った話ができないので、まぁいいから聞いて欲しいんですけども、多分女子サポは慣れてても男子サポ離れてないと思うので、聞き流して欲しいでーす」
そう不真面目気味に言えばインタビュアーは苦笑いした。
「苗字選手、そういうところですよ。苗字選手、いかがでしたか?」
「うーん。観客の人には悪いけど、蓮とハナちゃん、男子対男子の試合を見たかった人は沢山いるでしょう。サンキューデーとはいえなんで女子を混ぜんの、と思った人は選手も含めて山ほどいるでしょう。ごめんね、私はすっごい楽しかった。許して!油断したらにやけるの!」
そう言って笑う。だからしかめっ面してたと思う。怒ってないですよー、と言いながら手をパーにする。
「男子選手に食ってかかるあの活躍、さすが苗字選手でした。そのところどうでしょう?男子選手相手にサッカーをするというのは」
「……うーん、いつか言った私が今まで一番悔しかったことの話、やらなきゃいけないって思った話。知ってる人も知らない人もいると思うんですけど」
頭をかいてそう告げる。
「私がプロでやらなければならないことと思っていたことから先に言うと、女子のレベルを男子一部リーグの一番下以上に持ってくることなんですよね。そうしたら必然的に女子の代表は男子一部リーグの上位あたりの能力にまで上がるから。だから監督達と交流したり、私は他のチームであっても褒めたし相談に乗った。私が思ったことを後の世代に思わせないために、女子全体のレベルを引き上げたんですよ」
「すべては女子サッカーのために?」
「綺麗事だとねー。でも、本音をいうと、全部が私の夢を叶えるための布石だ」
そう言って口端をあげる。
「ーーさて、答え合わせ。私が人生で一番悔しかったのは15年前、性別が理由で蓮とハナちゃんと違う場所に立たされたことだ。悔しかった。とても。だって、一緒にするサッカーが味方でも敵でも楽しかったからさ。それがどうしても超えられない性別とかいう壁に阻まれた。どうあがいたって、先の人生で二人とサッカーできない。でも諦めたくなかった」
だって、先に行く二人を見送るだけでは嫌だったから。同じ場所に立てないのが悔しかったから。性別が理由で置いて行かれたりはいえない。
「だから、その時描いた夢は一つだけ。蓮とハナちゃんと同じピッチに立つことだ。それが、今日、叶った。やっぱり二人とするサッカーは楽しい。というか、上手い人達とするサッカーは楽しい。だから、めちゃくちゃ今日は楽しくて、本音を言うと終わって欲しくなかった。体力は持ってないけど」
苦笑いする。いやぁ、すまんな、個人的な理由で!
「だからごめんね!男子選手、サポーター諸君!今日はサポーターの為の日なのに!お互いの試合みたかったろうに!女子も混ぜてもらって!」
ごめんなさーい、とカメラに向かって手を合わせる。そしてそのままハナちゃん達がいる方に手を振った。
「あとありがとね!わざわざハナちゃん達海外組も日本に来てくれて、普段だったら絶対こんなゲームにでない蓮もでてくれて!夢を叶えてくれて!」
ニコニコしてしまうのは仕方ないのである。インタビュアーが若干涙目でわたしを見た。
「では、苗字選手、次の夢に描く夢は?」
「それはもちろん、女王の座を奪われることかな」
そう言ってハナちゃん達の反対側、若手側をみた。
「何年お膳立てした上に、その道舗装してあげてると思ってんの?私は君らからしたら私やハナちゃん、蓮は目の上のタンコブでしょうよ。だからさっさと私を倒しに来てね」
ザワッとサポーターが声を上げた。
「まぁ、片っ端から叩き落としてくけど」
そう言ってヒラリと手を振った。そうして、あー、あそこで結婚報告すればよかったのかー、と思っていれば代わりに男子mvpの蓮が呼ばれてった。
「あねさん、いってくれたなぁ」
「いっただろう……ナマエは持田よりはマイルドだが中身は一緒だ……」
「えっ、ハナちゃんひどくない?なんで?なんでそうなるの?私アイツよりマシだよ?だからmvp奪われるんだよ」
「ぐっ……」
「あ、ごめんハナちゃん、言いすぎた、言いすぎた。いらないもの背負わしちゃったもんね?ごめんね?」
「持田の話を聞けお前ら」
城西さんに言われて黙る。いやでも、私の話を踏まえてどうでしたか?とか聞かなくていいよ、恥ずかしいから。
「いや、でも、まぁ俺もハナもアイツが何かしらやってたのは知ってるし、俺もハナもわがままに付き合ったわけじゃない。同じピッチに立ちたかったからきた、それだけ」
その発言に私は彼をみて、ハナちゃんをみる。頷いた彼に私はやばいと直感で思った。顔を覆うのを許してほしい。やばい、泣くからやめてほしい。そういうの、やめてほしい。
「あー、でも、やっぱり、ハナはこのゲーム参加したの完璧日本にくるついでだけどね」
「なっ!適当なことを……!……ちがっ……違うぞナマエ……俺だって、ナマエとゲームするのを……」
「見ないでほしいかなぁ」
そう口元だけ笑う。ハナちゃんは私の頭をポンと撫でた。

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「じゃあ城西さんはまた明日」
ハナちゃんは私達の家にお泊まりーーではなく、ホテルに泊まるのだがマスコミが面倒臭くないのだろうか。いやまぁ、別にいいんだけどさ。そもそも私のスポンサーの関係もあるしな。何処かからは情報は漏れるだろう。とりあえず泊まるホテルまで送ろうかと聞いたが、そこまでの迷惑はかけられないと言われてしまった。別に迷惑じゃないのだけど。まぁ、そんなこんな解散なのでいつも通り蓮を車に乗せて帰るとする。その去り際に城西さんに手を振った。あぁ、と手を振った彼に、えっ!?と驚いた顔で女子も男子も私と城西さんをみる。
「やめい、その勘違い。城西さんに失礼だから」
「はい!女王さま!問題児と優等生はありです!」
「なしです。全然なしです」
「ナマエ、さっさと帰るぞ。じゃあな、ハナ、遅刻すんなよ」
「しない」
その返答をきいた蓮に首根っこ掴まれたので引きずられる。またねー、と手を振れば大体の人が振り返してくれた。ありがたいな。

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「いや、多分、ですけどね、喜ばれると思うんです」
アップアップしながら椿くんと窪田くんにそう伝える。何人か城西選手も声をかけているようであるし、そもそも披露宴はしないといっていたし、呼ばれてる人も少ないと聞いていたし。まぁ、私も式の参加はなく、ただライスシャワーなのかフラワーシャワーをするためだけなのだが。恐らく呼ばれている人はかなり限定されている。それこそ、きっとご両親だとか二人の親友の花森さん、監督ぐらいだろうか。ヴィクトリーのキャプテンである城西さんもナマエさんの挨拶を聞くに来るのだろう。
「だから、明日、スーツきて、一緒に来てくれると嬉しいなって」
詳しくは言えないのである。二人は顔を見合わせたのだけれども。

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気恥ずかしいなぁ、と鏡に映る自分をみる。スポンサーが式場経営もしているため、スポンサーの式場での挙式ともあってまぁスポンサーの気合いの入り方はすごかった。写真もとった。面倒くさかったが、まぁ、それも仕事だ。しかたあるまい。真っ白なドレスなど縁がないと思っていたが。最後に王冠ではなく、ティアラを乗せられる。そうしてただ椅子に座ってスタンバイ状態だ。やっぱり落ち着かないぞ……両親が感極まっている。うーん、誰か喋り相手に来てほしい。そうこうしてたらノックが聞こえた。顔を出したのは監督である。
「そうしてると別人みたいだな」
「自分でも気恥ずかしいから早く終わってほしい」
「そういうな。新郎達もそのうち来るぞ、覚悟しておけ」
そう言った監督は両親にご令嬢のご結婚おめでとうございます、と頭を下げて雑談に映る。くそ、私と!話してくれ!そう思っていれば外から騒ぎが聞こえた。ノックされて返事すれば、蓮が城西さんに背中を押されて入ってきた。なにやってんの、と笑えば蓮が動きを止めた。なんだ、その反応。後ろからきたハナちゃんも動きをとめた。なんだ。平泉監督もやってくる。
「ふむ、苗字、別人みたいだな」
「それうちの監督にも言われました。私も気恥ずかしいです」
「そうか?似合ってるじゃないか」
さらりと吐いた城西さんはやはりできる男だ。ハナちゃんがハッとしたように私を見た。
「ナマエ、似合ってりゅ……」
「ふふ、噛んだな、ハナちゃん。でもありがとね。あとで写真撮ろ」
「あぁ」
「ほら、持田、言ってこい」
そう蓮の背中を叩いた城西さんに、いいのいいのと手を振った。
「蓮はこういう時なんかいう性格じゃないしね。ふーん、いいんじゃない、とか孫にも衣装とかくらいしか言わない」
ははは、とわらいながら言えば余計に持田、と他が重圧をかけた。だからいいというのに。近づいてきた蓮が若干顔を背けた。
「……似合ってる」
う、わ、ちょっとまって、そういうの聴くとやばい。うわー。でも負けない。
「蓮もやっぱりカッコいいね」
「……当たり前だろ、ハナじゃあるまいし」
まぁ式までの間ハナちゃん達と写真撮ったりしたのだが、移動する時間が来てしまったでござる。もうすでに半泣きの父親の背中を叩いておく。そうして開いた扉の先に彼は立っているのだ。

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「え?ここって結婚式場だよね?」
「本当にオフレコだから、内緒にしてほしいな……でも、ヴィクトリーの一軍とかとかベレーザの一軍とか昨日の人の一部は来てるね」
そうスーツの二人を引き連れる。そのまま監督達や花森さん、城西さんが別の場所から現れてそれぞれの指揮を取る。何事!?と騒ぐ周りを黙らせた彼らは整列を促し紙の花びらを渡す。よくよく見ればサッカーボール柄だ。椿くんと窪田くんが不思議そうにしている。私達は一応、ナマエさん側の前の辺りにきていた。椿くんの隣に並んだ花森さんに椿くんが目を白黒させている。式場の人が、そろそろ新郎新婦が来ますので皆さま拍手とフラワーシャワーでお祝いしてあげてください、とつげた。ここまで役者が揃っていれば周りは理解できるはずだというのに、理解していないのは二人が腐れ縁だとかただの幼馴染みだとかそういう話をずっとしていたからだろう。窪田くんはわかっているが椿くんはわかっていない。扉が開いて現れた二人に、一瞬静寂が訪れーーたくさんの人が叫んだ。ベレーザのコーチもチームメイト達も、東京ヴィクトリーのコーチも選手たちも、代表選手達も。ナマエさん達も驚いたのだろう。動きを止めた。
「なに、アイツら呼んだ記憶ないんだけど」
「わたしもさっぱりないんだけど」
うわー、素敵だ。素敵すぎる。持田さんがスラッとしつつも体型がしっかりしているからか白いタキシードが似合いすぎている。隣にいるナマエさんも真っ白なウェディングドレスが似合っている。頭上に輝くティアラはまさしく女王様だし、まるで王様と女王様の行進だった。そのまま足を踏み出した二人に拍手がなる。花吹雪が舞う。おめでとうという声が聞こえる。そして野次みたいな言葉も飛ぶ。主に持田さんに。花森さんが何処か清々しい顔で二人を見つめているのがみえた。その視線の意味をわたしは知らない。

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そのまま一番下に降りたらに式場スタッフが何かを取り出された。取り出されたのは真っ白なサッカーボールとブーケである。折角なので、ブーケキャッチとサッカーボールを、とつげたスタッフに私がサッカーボールを取ろうとしたら吹き出された。なんで俺がブーケ投げるんだよ、らしい。そりゃそうだ。式場スタッフの声で騒がしくなる。
「ブーケ、ハナちゃんに届かないよなぁー。まぁ、ブーケキャッチに憧れるのは女の子だしね」
と思ったが男子もちらほらいるな。でもちゃんと女の子は前にって言われてるんだよなぁ。とりあえず適当に投げるか、と思って投げる。蓮が「ひっしすぎ!!!」と爆笑してるのが聞こえる。振り返ればもう決着がついていたらしく椿くんが持ってて笑ってしまった。女性陣に睨まれた彼は慌てている。蓮が爆笑してる。そのまま窪田くんに言われてアリスちゃんに慌てて渡した彼に、おおっ、初々しくて可愛いと思う。蓮がボールを持つと今度は男子が騒いだ。ジャンプなしとかいう声が聞こえたりもする。まぁ、蓮の蹴ったはそんな彼らを通り越し、綺麗にハナちゃんの元に落ちる。それを難なく手に取った彼に、蓮はただ一言、「ハナにあげる」とだけつげて手を振った。私も一応手を振っとくか、と思えば手を引っ張られる。写真!写真!と広報さんがかけてきたし、即座にスマホを取り出した連中の動きの速さには感心である。蓮の顔が近づいた瞬間にシャッターを切る音がした。

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