2020/09/21

↓書き直しとか

・うっ、難しい
・カレーパーティーとか書き直し

後輩ちゃんと一緒浅草にぶらりときてみれば、ETUがカレーパーティーしているらしい。いくいくー!とワクワクしながら後輩ちゃんと別れてETUの本拠地に向かった。まぁ、堺さん探して一直線なのであるが、その前に椿くんとも是非とも話しておきたい。そうぐるりと見渡して見つけた姿に、あ、と声を上げる。そうして一人のところを突撃した。
「いたいたー、椿くん」
「えっ!?」
「今期なかなか好調だね、見てて嬉しいし楽しいよ」
「あり、がとう、ござい、ます」
わー、照れてるー!可愛いー!若干下がった頭を撫でてしまったのは仕方ない。なんだろう、ハナちゃんが照れてるところに似ている。え、あの、と焦った彼に、楽しい?と尋ねた。
「え?」
「試合、楽しめてる?」
「えーと」
「私の幼馴染みもね、サッカーしてるんだけど、まぁ嘲笑ったり色々背負い込んだり純粋に楽しんでる奴がいないんだよね。まぁ、それは性格上当たり前なんだけど、今はまだなにもないんだから楽しんでほしいなって私は思うよ」
「でも、」
尻すぼみな彼にやっぱりハナちゃんよりも繊細なタイプだなぁ、と思う。
「大丈夫、ミスしても私は幻滅しない。ミスしたらそりゃまぁダメだけど、それくらいで応援やめたりしないからさ。大丈夫、大丈夫、楽しんでっていうのも君を応援してる人がいるっていうことも、こういうこと言われたなぁって頭のほんの隅っこに置いといてほしいだけだよ」
そう笑えば彼は目を瞬いてから頷いた。うむ、素直でよろしい。
「あの、できれば、また、一緒に、ボールを蹴ってほしい、です」
呟かれた言葉に、いや、あのっ、と彼は訂正を入れる。いちいち可愛い奴め。
「私はいいよ、でも今日君練習後でしょ?一緒にやるならコーチか監督の許可取らないとね」
そう促せば彼は周りを見てから、コーチ陣のところに向かった。ヒュー、可愛い。素晴らしいくらいに素直だ。というか私是非とも監督とも話したいんだよなぁ、と思っていれば屋上から後藤gmが現れた。やっ、と手をあげれば彼も目を瞬いてこちらにやってくる。
「これはこれは女王様じゃないか」
「やー、後藤gm、お久しぶりです」
「ここにいるってことは今期もETUのサポーターをしてくれてると」
「当たり前でしょ。堺さんいるんだから。浅草でチラシ配ってて行くしかないなって思って今です」
「カレーは食べないのか?」
「いや、昼ごはん残念ながら食べたとこなんですよね。だからちょっと運動してもいいですか?」
そうグラウンドを指差す。彼は目を瞬いた。誰と?と首を傾げた彼に、椿くん、と指させば彼は目を瞬いた。
「知り合いか?」
「サテライトの時に声かけたんですよ。多分私が見たのは波が高い時の彼で、その後ダメダメだったけど」
「ははは」
「でも、そこを含めて可愛いから良し。だからたまーにETU1軍だけじゃなく見に行くようにしてたんだよね。まぁ、自信を持ってほしいし話したりしてたんだけど」
そう言って椿くんをみる。後藤gmが私を見下ろした。
「……というかそもそもなんでETUのサポーターしてるんだ?」
「堺担だから。今年から椿担も加わったけど」
「いや、それはわかってるんだが」
「あっちは勝って当たり前だからねー、それに今期そんなに出てるわけじゃないし、負けてるけど。応援しがいがない。まぁ、元を辿れば両親が元ETUのサポーターだっていうのはありますよ」
「……それは……いいのか……悪いのか」
苦笑いした彼に、椿くんとコーチ達にひらりと手を振った。なんとか勝利をもぎ取ったらしい彼はサッカーボール片手にやってくる。「可愛いー、いやぁ、若い子は可愛いね、」とぼやけば後藤さんが変な顔した。失礼な、変な意味ではないぞ。
「許可とってきました!って後藤さん?」
「あぁ、いや、彼女は昔ながらのサポーターでな。サポーターの中でもちょっとした有名人なんだよ」
「じじゃーん、スパイクー」
そう鞄からおニュースパイクを取り出す。服はないがまぁ仕方ない。何するー?と言いながら椿くんに続いて中に入る。まぁそこそこギャラリーがいるので多分怒られるのは私だろうけどそこはいい。仕方ない。適当に遊んでたらちびっこが来たのでちびっこ込みで遊ぶとする。近くを通りかかった湯沢くんを呼び込めば万事オッケーである。椿くんにはちょっとがっかりされたけど。よし、遊ぶぞー、と手を振ればちびっこが手をあげた。ちびっこ相手って難しいんだよなぁ、威力調節しないといけないし。きゃっきゃっしながらやっていれば椿くんも楽しくなってきたみたいなので良しとする。まぁたまに下手とか言われてるけど。 まぁそろそろ選手陣も騒ぎだすので、そろそろ終わらせるかとちょこっと本気を出すとする。蹴ったボールはカーブを描き、湯沢くんを飛び越えてゴールに入った。
「いえーい、ゴール!私のチームの勝ちー!」
「えっ、も、もう一回!お願いします!」
「ふっふっふっ、また今度ね」
そうひらひらと手を振れば彼はがっくしと肩を落とした。また今度また今度と言いながら練習場を後にする。そして目に入った堺さんの姿に手を振った。
「あ!堺さんだー!堺さーん!今季初の握手しましょう!サインもらえるものがないから今度また突撃しますけども!」
「誰かと思えばお前か」
そう突っ込んだ彼と握手する。嬉しい、とニコニコしてたらカレーを渡されたが。お腹いっぱいでも食べないのはよくないので口に入れる。やっぱり他人が作ったご飯は美味しい。夜ご飯食べれなさそうであるが。石神さんが口を開く。
「そういや結構昔から練習見にきてくれてるよなぁ」
「まぁ、両親がetuサポしてたのでなんやかんや子供の頃から見てますよ。村越さんくるより前にはもうちらほら見に行ってましたしね。あんまりいうと年齢がバレてしまうから言いませんけど」
そうもぐもぐ食べてたらなんか周りに驚かれた。なんでだ。世良くんが「なんで堺さんなんですか!?」と聞いたが君失礼だぞ。
「世良くん、真面目な答えと半分ふざけたような答えとふざけた答えどれがいいですか?」
「えっ、なんスかそれ」
「まぁ、堺選手何故か私の誕生日やムシャクシャしてるときにゴール決めてくれるっていうのが一番ふざけた答えね。半分真面目になるとゴール前で表情が読めないし、テクニックとスピードを兼ね備えてるから」
「それで半分真面目な答えなのか」
「真面目な答えは?」
「サッカーのプレー関係ないんですけどね、数年前のある試合のMOMのインタビューで聞いた言葉が、その時の私の背中を押してくれたから」
そう言えば彼は目をパチパチ瞬いた。赤崎くんがプレー関係ないのかよ、と言ったがそんなものだ。
「うーん、プレーも確かに好きです。好きなんです。でも、そうじゃないところでもこう……うーん……上手く言えないんですけど、物の考え方とかそういうのを聞いてファンになる人もいるって話です、赤崎くん。人間誰しもそうなんだけど、テレビに映る貴方達はプレーだけじゃなく何気なく告げた言葉とかそういう物でも人の気持ちを支えることもあるってことさ」
まぁそれは自分に帰ってくる言葉でもあるのだが。カレーを食べる手をとめる。
「まぁ、そのときめちゃくちゃ色々諦めかけてたんですよ。もう仕事もやめてやろうかとか思ったけど、堺さんのその言葉聞いてもうちょっと頑張ろうって思ったんです。多分、堺さんの言葉聞いてなかったら私は今の仕事辞めてる気がするから堺さんには感謝しかないんです」
諦めない奴にはボールが転がってくる。恐らくは彼のサッカーの信条なんだろう。でも、私はそれを聞いて、諦めかけていた夢にもう一度足を踏み出すぐらいには元気がでたのだ。諦めないでいようと思ったのだ。
「だから堺さんの調子がいい日も悪い日も試合に出てない日も堺さんを応援してる。ETUも同じで、勝てない日も勝つ日も応援する。でもそれは決して両親がサポーターだからという義務的な物じゃなくて、3年前の村越さんの札幌相手にした逆転弾とか、2年前丹羽さんのパスから石神さんが裏から駆け上がってきて決めたシュートだとか、同じく2年前のドリさんの三連続ブロック、黒田杉江コンビのデコボコなのにぴったりな息ぐあいとか、王子のあの飄々した感じとか。まぁ、その他も色々ETUの選手のプレーに色々元気をもらえたりしたから私はそれを返したくてベテラン勢は応援してる。逆にルーキー勢はこれからの力になれば嬉しいから応援する。私が応援する理由はそれだけ」
そう言ったところで、あ、そうだったと口を開く。要望ぐらいは言ってもいいだろう。
「あ、でも、今年のETUは監督が変わったからだと思うけど色々巡るましく変わってるから凄いのでとてもワクワクするから余計に好きになりましたし、今年こそ上位食い込んで欲しい」
そこまで言って恥ずかしくなったのでまたカレーを掬う。
「やっぱり人が作ったカレーは美味しい。はっ!あそこにいるのは達海監督では!握手してもらおう!」
逃げるが勝ちである。そのまま達海監督ー、握手してくださーい!と言えば彼は手を差し出してくれた。わーい!と握手する。
「達海監督の現役時代からのファンです!ETUにおかえりなさい!」
「……ありがと」
「あと、イーストハムとプレミアの試合見ました!めちゃくちゃワクワクしました!あれはやばかった!」
ぶんぶんと手を振って満足する。はー、これで今期は頑張れる。余は満足である。手を離せば彼は首をかしげた。
「さっき椿と蹴ってたけど、何、サッカーやってんの?」
「一応」
そう言えば近くにいた後藤gmが嘘だろお前みたいな顔をした。知らない人は知らなくていいのだ。まぁ、サングラスして分け目変えてるからわからない人はわからないのである。何か言おうとした彼に人差し指を立てておく。ピロリンと音を立てたスマホを見れば結構いい時間だ。
「おっと、そろそろ行かないと。じゃあ達海監督、期待してます!後藤gmもまた機会があれば」
そうサングラスを外して軽く頭を下げる。二人はひらりと手を振った。

==ついでにオールスター

呼び止められた為振り返ればそこにいたのは男子の方の監督である。たしかガンナーズの監督ではなかろうか。通訳さん通して会話をし、別れる。まぁ、それが何件も続くと流石に面倒くさい。オールスターを男女一緒の日にするというのは聞いていたが同じ試合に出るわけでなく、男子の前哨戦というか、余興というかそんな立ち位置である。
「苗字」
そう呼び止められて振り返る。そこにいた平泉さんに軽く頭を下げた。
「平泉さん、こんにちは。持田が今年もお世話になります」
「あぁ、まぁ、世話になっているのは私もだ。どうだ?今年のベレーザは」
「今年もまぁ優勝でしょうね。私がいるんだし」
私の言葉に彼は目を瞬いた。蓮みたいなことを言ったな、と思われてるだろう。
「……本当に似たもの同士だな」
「ノーコメント」
そうふざけて口元で罰をつくる。彼はフッと笑ったが。
「ということは今日も勝つのか。慣れた代表チームがあっち、君は若手中心慣れないチームだろう」
「関係ない関係ない、勝つのは当然。ここだけの話、今回の目的は他チームの若手達とプレーして鼓舞させることだしね。偶に敵に塩は送ってるけど、こういう場でプレーしないと別の女王様でてきてくんないし。私が引退したあと人気低迷しましたー、じゃ意味ないですしね。あと代表はそろそろ誰のおかげで勝ってんのか理解した方がいいよ。天狗になる前にその鼻叩き折る」
まぁ、私が天狗かもしれませんけど。子供の手遊びのように鼻に拳骨ふたつつける。平泉監督はそれさえも口元に笑みを浮かべただけだ。
「これだけやっておいて、まだ物足りないか」
「まだ、全然」
大袈裟に肩をすくめる。
「私が同じ視点に立つのが先か、二人がスパイクを脱ぐのが先かみたいなチキンレース真っ最中だから」


うまくいくわけないじゃん。私がいないのに。私一人でのプレーを抑えようとするからパスで動かされ、若手に疲れるのだ。悔しかろう、日の丸を背負う君らがルーキーの多い、しかも代表選手にも慣れない選手に負けるのは。だからトランプ兵はいらないというのだ。監督の指示を頭に置いた状態で自分で考えて動け。それが出来ない奴にピッチに立つ資格はない。まぁ、パスコースを潰したところで私がシュート決めるだけだけど。さぁ悔しがれ。仲間であろうと潰しに来い。この国の女王は自分なのだと。何のために試合をワザと拮抗させてると思ってる。いやそれは観客を盛り上げさせるためだけど。
「でもそろそろ時間切れ。不思議の国にまたおいで、アリスちゃん達」
そう言ってまたシュートを決める。そうして私の勝ちは確かになる。わあーとよってきたルーキーちゃん達に流石です!と言われたがそれは違う。
「こんなもの流石じゃない。君らもこうなるんだよ」
そう一人一人の頭を軽くグーを落としていく。海外勢も混ざらなくていいのに混ざるのでグーを落とす。ハグされたけども。悔しそうにしている代表選手は考えろ。私がいなくてもできるようにしろ。私がいなくても勝てるようにしろ。ピースサインしたら舌打ちされたけどまぁいいでしょう。監督が私をみた。
「いいのか、あれ。亀裂になるぞ」
「いいのいいの。私のおかげでこっち側が勝っただけ、と思ったら私と向こうの監督の賭けは負け。それが自分たちに言えることだと気づいたら私達の勝ち。トランプ兵は要らないしね」
そのままタオルをかぶる。まぁ今日コーチしてる普段の監督陣は私に目を瞬いているが。ピースサインでごまかしてそのまま遅れてロッカールームに向かう。つまんないの、と呟いてしまった言葉は紛れもなく本心だ。それは相手にも仲間にも自分にも向けた言葉だ。行き交う人がいうお世辞なんて興味がない。何がナイスプレーだ。これでナイスプレーならいつもの私はどうなる。まぁ後ろにいるベレーザの監督は何も言わない。誰に向けた言葉かわかっているからだろうけど。ちょうど通りかかった恐らく男子のロッカーに向かう監督達の中で、平泉さんが私をみた。
「苗字、酷い顔をしてるな」
「いやぁ、今のをみてみんな流石だって褒めるから」
「そうか。確かに今日のプレーはお前らしくはなかったな」
「優等生プレーするのも考えものですよ、私自体が楽しめないや。でももうちょっと我慢しますとも」
へらりと笑ってロッカーに向かう。生まれる性別間違えたー、と去り際に言えば周りがギョッとしたように私をみた。あー、ダメだわこれ。男子の試合楽しみにしてたけど、このもやもやのまま見ても楽しみじゃないわー。
「あぁ、つまんないの」
メンタルリセットが決まらないなぁ、とユニフォームを脱ぎ捨てて目を伏せた。そろそろロッカーから撤収せんと。

==

機嫌がよろしくないからなのだが。mvpを呼ぶときにサッカー界不動の女王!勝利の女神!とつげたナレーションにイラッとする。でもそれを隠して笑顔を貼り付けて隠す。
「東京ヴィクトリーベレーザ所属!苗字ナマエ!」
そう告げられて拍手の中ピースサインを突き出す。イエーイ、だなんて告げて車のキーをとりにいく。なんだ、インタビューがあるのが面倒くさいな。今変な言葉吐きそうだからかわしたいんだよなぁと思う。
「普段とは違うチームでの出場でしたが、いかがでしたか?」
如何でしたかも何も、私がこっち側つかないとこうはなってないと思います。そんな言葉を押し込んで笑顔を浮かべる。
「代表選手も強いんですけど、こっち側の選手もすごい頑張ってくれたので、代表相手に勝てました。嬉しいです……ってコメントができたら女版ケン様とか城西さんとか言われるようになんだろうか……」
そういえばサポーターが笑った。まぁそりゃあそうだ。ヴィクトリー側の王様のイメージがアイツであるし、私のイメージも似たようなものだろう。仕方ないのでそういうコメントをする。
「まぁ、こっち側の選手は勝った。私がいるおかげでね。向こう側の選手は負けた。私がいないからね」
「苗字選手らしい強気の発言ですね!」
ほら、これでメディアやサポーターは満足するのだ。流石女王だと、流石勝利の女神だというのだ。心にもやっとしたものがあるために、視線を女子の方に向けて口は勝手に動く。
「ーーでも、それって『私がいるから』で受け入れていいことでは決してないよ」
「え?」
アナウンサーが困ってる。それを、そして自分自身を嘲笑うように口元に笑みを浮かべて顔を下げる。そしてまた笑顔を貼り付けて顔を上げた。
「ま!なんですか、今年も私の車が増えました!ありがとう!スポンサー!そして毎年言ってますけど!我こそは女王の首を刈る者だという方を募集中です!来たら叩きのめすけど愛ゆえにだから許してね!」
「苗字選手の何時もの冗談が決まったところで、では、最後にオリンピック予選の意気込みなどがありましたらどうぞ!」
「私の年齢的にも最後のオリンピックになる可能性がありますけど、金メダルは確定させるので安心して応援してください!以上!」
そう言ってピースサインをすれば、サポーターがワァッと声を上げた。アナウンサーが「ありがとうございましたー!」と言ったのでそのまま元の場所に戻る。周りが私を凝視して固まっている。なに?と笑って彼女をみた。
「私だっていつかはいなくなるよ。もしかして、考えてなかったの?」
そうして私がいなくなったら、さっきのチームになるんだよ。それで勝てると思ってるの。

==

「癒しが欲しい」
そうソファにぐでっとする。なに急にとは遊びに来ていた蓮の言葉だ。いや、遊びにというか夜ご飯を食べに来ていた。自炊できるくせに私の家に食べにくんのやめろ。食費が嵩むわ。
「いや、気分転換の代わりに出たオールスター戦でムシャクシャした。癒しが欲しいからハナちゃんと話す」
「あっそ。でもアイツ電話でんの?」
「練習してなくて気づいたら基本出てくれるしメッセージでやりとりもしてくれるよ。誰かさんよりマメ」
私の家にあるサッカー漫画を読んでいるその誰かさんに言えば、ふぅん、と告げたあと私を見る。
「お前とラインするやつとかいんの?」
ドヤァ、お前友達少ないもんなビーム。その顔に腹が立ったのでアンタに言われたくないとガシガシと腕を殴る。
「いるわ、君よりは確実に友達多いわ、いや、芸能人とかモデルとかの友達は確かに少ないけども!」
まぁいるといえばいるのであるが、私がマメでもないし話題もないので連絡はあまり取らないのだ。飲み会や合コンも行かないのであくまで仕事で関わった人というだけだから余計にだ。なのでストイックな人という認識である。蓮は笑うだけなので腹が立つのでハナちゃんに電話するとする。数コール後に、もしもし?とちゃんと日本語で出てくれるハナちゃんは私を確認して出たんだろう。時々確認してないからかドイツ語で出られる。声は元気そうだ。
「ハナちゃーん、今時間大丈夫?」
「あぁ、大丈夫……」
「聞いてよー、また蓮が意地悪言ってくるんだよ。私にラインするやついんの?とか友達少ないとか言ってくる。酷くない?第一その言葉そのまま向こうに行くと思うんだよ」
そう不満を言えば蓮が足で私を蹴った。痛い。不満があるならいうな。
「……そういう電話が来るということはオールスターに満足しなかったのか」
「ぜんっぜんダメだったね!あれはヤバイ。悪い意味で。でも私出なきゃ行けないじゃん?集客減るんだからさ。なんかもう、私抜けただけでそうなる?って感じ」
「それだけナマエの存在が大きい……俺のように」
「ハナちゃんの存在は日本でもそりゃあ大きいよ」
そう言えば蓮が吹き出した。だから私を蹴るな。発言が面白いからって私を蹴るな。
「でもさ、女子はそれじゃダメなんだよ。もっとこう、私のトランプ兵になって欲しくないんだよ。ハナちゃんにはさ、蓮がいるじゃん。同じ視点の蓮がさ」
「……そうだな」
ええい、茶々を入れるな。持田蓮。俺のが高い、じゃない。そういうことばっかいうからハナちゃんにこういう話をするのだ、私は。クッションを押し付けてる。
「私も同じ視点で見るプレーヤーが欲しい」
隣のやつは笑い声をあげる。クッションを押し除けて無理ときっぱり言った。無理だろ、と。まぁ、きっと、電話の相手も似たようなことを言うのだが。
「……俺がいる。持田も。ナマエは一人じゃにゃい」
噛んだけど、可愛いからよしとする。私はうんとうなずいた。
「でも、ナマエは諦めないんだろう……」
「うん、頑張るけどさ……まぁ、周りが私を当たり前と思いすぎてムシャクシャしてしまったわけよ。ごめんね、愚痴って」
「いいや、俺も似たようなものだからいい」
「え、ハナちゃん、何かあった?」
そのままハナちゃんの話を聞く体制に入る。蓮はまた無言でマンガをめくった。

==

私は貴方を幸せにすることはできないと思う。そう言って何回か振ったのは申し訳ないと思っている。私を好きだと言ってくれたり、私を幸せにすると言ってくれるのだが、そうではないのだ。私の生活は自他共に認めるサッカー中心の生活なのだ。恨む人もいれば、二人との仲を怪しむ人もいるがそうではない。ただ、私の幸せは夢が叶うことであり、その事を中心とする私では相手をおざなりにしてしまうことが目に見えているのだ。サッカーと相手どっちかを取れと言われたらサッカーというし、二人と相手どっちかを取れと言われたら夢のために必要な二人をとる。そんなことを言っても理解されない。夢も悔しさも「仕方ないじゃないか」で終わってしまうのだ。確かに仕方ない。男女では体力も体つきも筋力も違うのだ。それは理解している。でも、諦められないのだ。きっと私が感じた悔しさは世界にいる誰かの悔しさなのだろうから。

「おーい、寝るなら家に帰りなさい」
つい話し込んでしまった。電話を切れば蓮はソファの上でうたた寝を決めている。ゆすっても起きやしない。ため息をついてもう一度頬を叩く。蓮、と呼べば手をはたき落とされたが。
「うっさい」
「寝るならちゃんとベッドで寝た方がいいよ。別にゲストルーム空いてるし。お風呂入るなら入っていいし」
「明日入るからいい」
のそり、と起き上がった彼はそのまま慣れたようにゲストルームに行く。そして扉を開けて、普通は、と言いかけて私を馬鹿にしたような顔を向けた。
「あーそうだよなー?ナマエに普通はとか通用しないか」
「はぁ?そんなこと言ってる暇あれば寝たら?おやすみ」
そう返せば「おやすみ」と返して扉が閉まる。それを確認して私もさっさとお風呂に入って寝るかと立ち上がる。そこで思い当たった言葉をわざわざ扉を開けて口を開いた。
「えー、なにー?なんか期待した?」
「馬鹿じゃねぇの?誰がお前にするか。寝言は寝ていえ」
飛んできたサッカーボールクッションを扉で防ぐ。もう一度おやすみと言ったが返事はない。私はそのままお風呂場に向かった。

==

ナマエが日本に残ったは、持田だったから?とはハナちゃんに聞かれた言葉だったか。別に蓮が海外でハナちゃんが日本でも私は日本にいるだろう。二人とも海外に行っていても私は日本にいたかも知れない。女王様はどうであれ多忙なのだ。それはそう問われた数年前から変わらない。試合以外で日本から出ることなど……旅行はあるけどそれ以外、海外移籍とかはない。まぁ、なんでそんなことを思い出したかというと、同じようなことを尋ねられたからだ。
「やっぱり苗字さんが日本に残ったのは持田選手が日本にいるから?」
「んなわけないですよ。花森くんと持田が逆でも日本にいますし、二人が海外にいても私は日本にいます。そこまで過保護じゃないですよ」
「そうじゃないんだけどね」
そう告げた相手に、尋ねたい真意を理解する。どうしても恋愛に結びつけたいのだ、こういう人は。スキャンダルが好きなカメラマンやゴシップ記者達は確かにさったが、こういう興味がある人は減らない。それはチームメイトや他のチームの人にもある。面倒くさいのだ。どうやって回避するかを考える。それは恐らく蓮にもハナちゃんにもまとわりつくのだろう。
「いつまでサッカー一筋でいるの?」
「夢が叶うまで」
「その夢が叶ったらどうするの?」
「また次の夢が叶うまでサッカーする」
「結婚は?」
「しないと思う。他人にかまけてる暇があればサッカー関連に時間さくし」
時間がもうほとんどないのだ。女子サッカーの選手生命は短い。それは結婚や出産といったことで辞める子がやはりいるからだ。あとは体の関係もやはり上がってくる。だから私も恐らくあと数年で選手の幕を閉じる。
「夢、夢って、苗字さんはなにも叶ってないんですね。女子ワールドカップで優勝して、オリンピックでも何回も金メダル取ってるのに」
かわいそうにと言いたいように彼女は告げる。慣れている私は目を伏せて「そうですね」とつげた。
「どれも夢を叶えるステップなので」

==

「やや、椿くんだ」
ふらりとETUの本拠地に向かえば見つけたその姿に手を上げる。見事にゴールを外した彼に吹き出してしまったのは仕方ない。う、え、あ、とカチコチになった彼にごめんごめんと苦笑いした。自主練かー、頑張れー、と言えば彼はこっちにやってくる。
「あの、すいません、俺、」
「うん?あぁ、私のこと知らなかったの気にしてる?」
そうニヤリと笑って尋ねれば彼は固まった。図星か。いちいち素直で可愛いな。普段捻くれてる奴を相手にしてるとこういう素直な子は可愛く見える。
「す、すいません」
「気にしてないよ、ETUのファンしてるのは完璧個人的な趣味だし。五輪代表おめでとう。開会式と閉会式は一緒だから楽しみにしてる」
「いや、まだ、出れるとは……」
「出れるよ。君たち強いもん」
そう言い切れば彼はパチパチと目を瞬いた。
「君は君が思うように好き勝手にプレイしたらいいよ、周りも好き勝手するだろうし、それでも繋がるんだよ、全員が上手いから」
「ええ……苗字さんは、こういう大会、慣れてるんですよね?」
「慣れてるね、もう世界大会の相手ほとんど顔見知りになるんじゃないってくらい出てる」
男子とは違って年齢制限がないからオリンピックは二回経験してもう三回目だし、女子サッカーのワールドカップにもでてる。
「でも、不思議なことに、まぁ、女子の選手生命が短いからもあるんだけど、結構一期一会なことも多いんだよね。私とフランスのジャンヌダルクって言われてる友人とか……まぁ変な肩書きついてる人だけ残ってるというか、残ってるからついてんのか……」
「やっぱりすごいなぁ」
「凄くないよ。男子より競技人口少ないからね、競争が男子よりは緩やか。君はその中で選ばれたんだし自信持っていいと思う」
そう言えば彼は目を泳がせて、俺なんて、と告げた。うーん、ハナちゃんとは違う方向でネガティブだ。彼にこの言葉は重かったか。
「椿くん、サッカーなんて楽しんだもの勝ちなんだよ」
「え?」
「サッカーの試合って、まぁ楽しいんだけど、時々凄い楽しくなるときない?」
「……あります」
「そういう時って、自分が求めてたものが来て楽しくなるんだと思う。なんだろうな、お互いに欲しいパスがきて、お互いが思い通り動けてて、それが仲間で共有できた時がすごい楽しくなるんだとおもう。きっとETUのサッカーも変わったし、君も楽しくなってると思うんだけどね」
「はい」
「代表のサッカーはもっと楽しいよ。全員上手いに決まってるし、普段はチームがあるから絶対仲間として一緒にプレーできない人と同じ舞台に立ててるんだから。まぁ君の場合深く考えずにサッカーの友達作りに行こうぐらいでいいんじゃない?」
ははは、と笑いながら彼を見る。彼は目を瞬いたが。
「A代表になったらもっと楽しいよ。全員超上手いから」
「そんな、俺にはとても」
マイナス思考だなー、と笑ってしまう。そろそろ帰らねば。
「自主練邪魔してごめんね、もう帰るよ」
そうひらひらと手を振る。
「いえ、なんか、ちょっとだけ気持ちが楽になりました」
「ならよかった。あ、A代表に選ばれたら、ハナちゃんと蓮と仲良くしてあげてね。おやすみー」
恐らく椿くんの反応をみると誰かわかってないんだろう。曖昧なまま頷いたのをお姉さんは見たぞ。
「あれ?女王様が何してんの」
「えっ、達海監督こそ何してるんですか。私はサッカー以外の仕事帰りです。誰かいるーと思ったら推してる椿くんだった」
「あぁ、あれね。調整してんだって」
「いやぁ、椿くんは自信ついてきていい感じになってきましたね。めちゃくちゃワクワクする。あと堺さんがとてもいい仕事をするので楽しくなる」
「まぁねー」
まぁ達海監督ってあんまり腹の中読めないんだよなぁ、と思いながらみる。
「あ、そうだ。前の話聞いて思ったんだけど、苗字って女子サッカーをどうしたいの」
「レベルを男子リーグ一部の下層あたりまでにあげたい」
そう言えば彼は目を瞬いた。
「もっと強くなって欲しいだけですよ。それこそ女王様が乱立するくらいに」
「なんで?今でもめちゃくちゃ強いじゃん。後藤から聞いたけど今の日本の女子サッカーって世界トップクラスなんでしょ」
「まぁ、日本の女子サッカー界がどうのとかじゃなくて凄い個人的な話なんですよ、結局」
「個人的な話?」
まぁ、達海監督なら変なことはいうまい。
「オフレコですよ、オフレコ。私には夢があるんですよ」
「夢?」
「はい。まぁ、聞いてるかもしれないですけど、東京ヴィクトリーの王様って私の幼馴染みなんですよ」
「えっ、そうだったの?苦労しない?あんな奴幼馴染みだと」
「まぁね。あともう一人、花森っていう海外でプレーしてる奴も幼馴染みなんですよ。その二人と一回でいいから同じピッチに立って90分プレーするのが夢なんですよね。遊びじゃなくて、本気で」
そういえば彼は驚いたように目を瞬いた。
「簡単なことに思うでしょう?でも、なかなか難しいんです。それをするなら最低でも女子サッカーのレベルを男子リーグの下位あたりまで上げないといけない。じゃないとサポーターも他の選手は同じ場所に立つことを許してくれない。ほんと、チキンレースですよ。どちらかが引退するのが先か。私がその高みまで登るのが先か」
私は自虐的な笑みを浮かべる。自己都合な馬鹿な話でしょう?と。彼は目を伏せてから、口を開く。
「なんか、面白そうな話じゃん」
今度は私は目を見開く番だった。
「達海監督は笑わないんだ」
「えっ、どこに笑う要素あんの?まぁ、確かに体力の差とか、筋力の差とか、体格の差とか確かに危険だから考慮する点はあるけど、それって男子だけでも一緒じゃん」
それも、そうだ。
「逆に俺はいいと思う。今からサッカーする奴が男であれ女であれ、憧れの選手とプレーできるかもしれない環境をつくるんだからさ。俺もなんとなーく頭においとこ」
ニヒヒ、と笑った彼に私も吹き出す。それは心強いと言えば、彼は今度は真っ直ぐに私を見た。
「でもさ、これだけは言っとくけど。それって苗字一人で背負うことじゃないよ。今の待遇を変えることなんて、一人の選手が背負うことじゃない」
「……知ってます。でも、誰かが引っ張っていかないといけないので、私と女子の監督と日本代表の監督は大忙しなわけです。ま!平泉監督も達海監督もネルソン監督も味方になってくれるし、ちょっとは夢に近づいたかな!」
そう笑ってピースサインを達海監督に向ける。達海監督は驚いたように目を瞬いたが。
「おやすみなさい、達海監督!元気出たから帰ります!次の試合楽しみにしてます!」
私が手を振れば彼も振り返す。ちょっと嬉しくなって鼻歌を歌いながら帰ってしまうのは仕方がなかった。

==

「ナマエは結婚しないの?」
親善試合後である。そう英語で問いかけた友人に私は目をパチリと瞬いた。なんで?と聞けばどうやら彼女は婚約したようだ。そこで初めて彼女の左薬指に輝く指輪をみた。結婚おめでとう、と言えば彼女ははにかむ。そして、もう一度、ナマエは結婚しないの?と私に尋ねた。苦笑いして口を開く。
「私はそれどころじゃないかな」
「ナマエっていつもそればっかりね。サッカーと結婚でもするの?」
「うーん、それができたらそうするんだけど」
「花森は?持田は?」
「そんな関係じゃないからなぁ」
「そんなこと言ってると取られるわよ」
これが噂の肉食系か。フハッと笑みを浮かべる。なんだそんな解釈。今まで何回か誰かとくっ付いては振ったり振られたりしてるよ、と返せば彼女は目を白黒させた。
「そういう関係じゃないよ」
「なら、ナマエはどんな人が好みなの?」
彼女はそう言って頬杖をついた。どんな人が好みか。考えてみてもイマイチパッとしない。
「どんな人だろう。そういうこと、あんまり考えたことなかった」
「まさか、本当にサッカーのことしか考えてないの?」
「うん」
そう言って私はストローで飲み物をかき回す。すると彼女は酷く心配そうな表情を浮かべた。
「じゃあ、ナマエからサッカーをとったら何が残るの?いつかは引退しなきゃ行けないのよ」
「うん、そうなんだけど」
自分からサッカーをとって残るものはなんなのか。二人と同じ場所に立つ夢が叶って、その次の夢が叶った先、恐らく私はサッカーをやめる。でも、その先私は何をするのだろう。


「蓮はさ、自分からサッカーとったら何残ると思う?」
そう尋ねれば見るからに嫌な顔をされた。他の人にそういうことを言われたんだろうか。何急に、と不機嫌丸出しで告げた蓮に私は口を開く。
「今日友達と会ってたんだけど、ナマエからサッカーをとったら何が残るの?って聞かれた。まだ引退するつもりはないけど、確かに何が残るんだろうって」
私の言葉に蓮は吹き出した。そうして肩を揺らして笑う。
「じゃあ取らなかったらいい話だろ。お前さ、サッカー馬鹿なんだからサッカー馬鹿らしくサッカー馬鹿貫けばいいじゃん」
「その言葉自分にも返ってくるって知ってる?」
「俺は馬鹿じゃないし。ま、今回出れなかったら俺はスパイク脱ぐから」
その言葉に私は蓮を見上げる。彼の視線は雑誌に落ちたままだ。心臓がバクバクいっている。私はただただ目を見開いて彼を見上げた。しばらくの沈黙の後やっと私を見下ろした蓮は何その顔と笑った。そうして、真面目な顔で口を開く。
「本気で言ってる」
「ーーハナちゃんには言ったの?」
「言ってないし、言うな。成田さんとナマエしかしらない」
「……そっかぁ」
そう言って私は笑う。笑えてるのかなどわからないが。
「止めないわけ?」
「止めてほしいの?」
「全く」
「でしょう。蓮がそう判断したなら私は言わないよ」
というか、言えない。周りがそう判断したのではなく彼自身がそう判断したのなら私は何も言えない。今度は私が彼をみない番だった。手元の本を見る。内容など入っていてこない」
「そのわりには何か言いたそうにしてんな」
「うーん、それは私の個人的なことだから……」
「なにそれ、俺の辞める辞めないって話となんでお前の個人的な話が関係してんの」
そりゃそう思うだろう。向こうにとっては。いうか、言わないか迷ったところで、達海監督の言葉を思い出す。私が、一人で背負うことじゃない。でも、これは。何?と尋ねた蓮に私は口を開く。
「……蓮やハナちゃんが引退する前に、一度でいいからあの頃みたいに一緒にサッカーしたかったな、って言うだけ」
まだいつ引退するかなんて決まってないのだ。だから、叶わないとは限らない。何も返さない蓮に今度は私が笑って彼を見上げる。笑えてんのかな、これ。
「私が未練がましいだけだから、蓮は気にしないで」
ふふ、と笑ってまだ手元の本に目を移す。ため息が聞こえて頭が軽く、本当に軽く叩かれる。
「……馬鹿だよな、ナマエって」
「好きに言えー」
「というか、なんで勝手に俺が引退する話で持ってってんの、お前」
ぐわし。音にしてそれだ。頭を握り潰す気だ、こいつは。痛い痛いと言えば、彼はまた笑い声をあげた。
「ほんと馬鹿な奴」

==



 Comment(0)
GK関連 

次の日 top 前の日