2020/10/15
空白 3
丁度空いてたグランド押さえてクラッチ持ってボール蹴ってたら本当にハナちゃんがちゃんと来てくれてハッピーすぎる。わーい、と喜びのあまりぴょんぴょんクラッチ使いながら跳ねて進んでたら意外に早いな、と言われたが。いざボールを蹴り始めたら私のリハ担当職員さんに連れられて蓮がやってきた。あぁそういやリハビリ室に行く癖あるもんね、蓮は。
「お前ら何やってんの、下手同士で」
「ぐっ……ナマエとボールを蹴っている……下手ではない……」
そう言ったハナちゃんに蓮は中に入ってきて周りを見渡した。
「へぇー、貸切?」
「貸切ー。蓮もボール蹴ろうよ。私の下手くそなパスの餌食になるがいい」
そう言ってわりかと強く蓮に向かってボールを蹴る。まぁ、普通に受け止められたけどね。荷物を置いた蓮はこちらにやってきた。そのまま三人でギャイギャイとサッカーしたりゴール目掛けて連携やってみたりしていれば、看護師さんに連れられてアレックくん達もきた。まぁ、片足ないのみて固まった一部は置いといて、飄々とアレックくんがやってくる。
「あねさん思ってたより元気そうやなぁ、もうボール蹴れんの?」
「蹴れる蹴れる。まだ精度クソだけど、今蓮とハナちゃんとボール蹴ってた」
「いや、あねさんの精度クソはクソやないで。あかん。あねさんはパス精度に完璧求めすぎ。あと俺もまざりたい」
「いいよー、遊ぼー」
「あねさんそれで移動すんねんな」
「普段は義足の練習してるけど、サッカーはこれでしてる。松葉杖でサッカーやってるみたいなもん」
「どうやってボールけんの?」
「両手とこれで体重支えつつ蹴る。ピッチもそこまで大きくないしね」
そう言って試しに椿くんに向けてければちゃんとそれは飛んでいった。椿くんが軽く蹴ったボールもちゃんと止めれるしな。
「移動範囲がどうしても短くなるぐらいとパス精度、私の体力ぐらいかな、問題は。練習台になってほしい」
そう言ってわちゃわちゃある程度ボール蹴ってたらまぁ結局はみんなでミニゲーム的な流れになるんだけどな。
しばらくあそんでいたら、金網の向こうにリハ室の人と一緒にリトルズがいた。
「あ、リトル花森とリトル持田じゃーん」
そうひらひらと手を振ればリトル花森だけが振り返す。可愛いな、リトル花森。近くにいたジョーさんと椿くんがそちらをみた。
「リトル花森とリトル持田?」
「なんだろう、言動がそれっぽい。喧嘩する割に仲良いし。あと、結構いい線いってるんだよね。反射神経いいし、体力あるし。今の私の相棒なのだ。まぁ年齢干支一回り違うのだけども。あとショタコンじゃないからね、椿くん」
そう釘をさす。椿くんが「え?」みたいな顔をした。いかん、この子はショタコンの意味がわからないのかもしれない。
「誘ってくるか?」
「え!いいの?」
「別にいいだろ、遊びだし」
そう言った2人に私はぴょんぴょんとまたリトルズに近づく。まぁ、結構な距離だけどな。ジョーさん達が説明してくれるだろう。
「ババア何してんの」
「お姉さまと呼べ。あ、ラッキー、ちゃんとクラッチ持ってるじゃん、一緒に遊ぼうぜ」
「……でも、苗字さんの知り合いじゃ」
「別に向こうがいいって言ってるからいいよ。大人に甘えとけ。ね、担当さん」
「ははは、そうっすねー。苗字さん、あそこにいるのって」
「ははは、私のお友達だねー、サッカーしてる。なんか飲み会前に集まって私に会いにきてくれたらしいよ」
「うまく出来ない……」
「大丈夫大丈夫、向こうが合わせる。来なかったら下手くそって言ってやれ」
そう言えば義足外してリトル持田がクラッチを持った。それをみてリトル花森が迷ったが、そこで指を加えて見てたら?と言われて苦々しい顔をした。ほーら、在りし日の蓮とハナちゃんじゃん。ほら、やろうよ、と声をかけたら彼は同じようにおずおずとやってきた。まぁ、近づいたところで2人が固まったが。
「紹介しよう、リトル持田とリトル花森こと矢野くんと長谷くんである。私の現在の相棒達でそのうちエースになるから覚えといて。リトルズ、あっちの人達はね、サッカーはうまいかもしれないけどアンプティサッカーに関しては私達の方より下手くそなお兄さんとおじさん達だよ」
そう言ったら蓮が吹き出した。つぼったらしい。
「おじさんはジョーさんしかおらんやろ」
「私がおばさんとかババアって言われるから私の年齢以上はジジイ兼おじさんだから。私1人ババア扱いとか許さない」
「事実ババアじゃん」
「うるさいぞ、15歳から見たらお前もジジイじゃ」
そうギャイギャイ言いながら簡単にハンデを定めて、リトルズと私、私側にハンデありというルールの中なんとなくのままミニゲームに移行した。
うーむ、体力が著しく落ちたな。それに比べて。
「男子中学生の体力恐ろしいな……」
そう言いつつベンチに座る。外から見ても一応ミニゲームの形になってるんだよなぁ、と眺める。アンプティサッカーやろうと誘った時は死んだような表情だったのに、キラキラしちゃってまぁ。まぁ、それもそうで、私とリトル花森、リトル持田の足をなくした経由は違う。私とリトル花森が膝に腫瘍ができた病気であるが、リトル持田は事故だったらしい。私とリトル花森は宣告があったから覚悟を多少でも持てた。しかしながら彼は目が覚めたら片足がなかったのである。覚悟も何もないまま、今なのだ。
「待ち合わせ時間に来ないだろうからここにいるとは思ったが」
後ろから降ってきた声に振り返る。そこにいた城西さんに私はパチパチと瞬いた。そうしてあぁ、飲み会の、と思い出す。越後さんと古谷くんもいるの見るとお迎えだろう。
「やっほー、古谷くんも越後さんも久しぶりじゃん!」
「苗字思ったより元気そうだな」
「元気元気、さっきまで混じってやってたんだけど、バテた」
そう言ってミニゲームをもう一度みる。蓮が蹴った綺麗に山なりの円を描いたボールをリトル持田が片方の杖を軸に体を持ち上げて遠心力を利用したシュート決めた。お前……それは……かっこいいやつじゃん……私もできるけど……私の方がうまいけど……
「うおっ、なんだアレすごいな」
「あれシュートなんだよ、めちゃくちゃかっこよくない!?」
そうこうしてるとリトル花森もやれと言われて同じものを披露した。まぁ枠ギリギリだけども。まぁまたリトル持田に下手くそ言われてそうな気がするが。蓮が爆笑している。そろそろ切り上げさせるかー、と、手を振る。
「お兄さん達ーお迎え来てるよー」
その声に気づいた彼らはお迎え組を見たのだが。
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片足になってはじめて東京ヴィクトリーの方に顔を出せばそりゃもう騒がれた。私をみるなり苗字!?と驚いた彼彼女らに、ヨッと手をあげる。
「男子の練習覗こうとしたら相変わらず凄い人で諦めた。ここで待たせて」
「いや、いいんだけど、いいんだけど……!」
「なに、相変わらず王様のアシやってるのか?」
「私ができるときだけね。私も最近多忙だし」
そう言って肩をすくめる。いやぁ、fcとはつくがやっぱりここみたいな整った環境ではないのだ。広報とかもボランティアだし。もうちょっと色々整えるので会長のお力貸してと言おうと思ったが簡単に会えるわけないわな。
「リハビリとか?」
「いや、サッカーの練習とかしてるけど、何しろマイナーだから運営らしい運営がいなくって運営に手を出してる」
そうひらひらと手を振れば、サッカー?運営?と首を傾げた周り、一部が私の足を見たのでズボンをめくる。
「みて、私の新しい足、めちゃくちゃかっこよくない!?」
まぁ動揺されるがな。そりゃあそうだ。しかし意外と歳を重ねた上層あたりの人は立ち直りがはやかった。
「ははぁ、今の義足はそんなタイプもあるのか。こう、普通の足みたいなイメージあったけど」
「普通の足みたいなのも一応持ってるけど、こっちの方が好きなんだよね。なんかそっちつけて無駄に期待させたくないし、何よりかっこいい。アンドロイドみたいで」
そうケラケラ笑えば周りがホッとした。部長さんあたりが、サッカーということは、と少し考えて口を開く。
「アンプティサッカーしてるの?」
「そう!してる、っていうかリハビリ期間から始めたの!めちゃくちゃ楽しい!サイッコウだね、サッカーできないかな、とか思ったけどそんなことなかった!ただ、運営がボランティアだしみんな社会人だから私がよくわかんないまま運営手伝ったり広報手伝ったり、まだそんなに競技してない私が学生と一緒に練習したりしてる」
「何何?苗字、相変わらずサッカーしてるのか?」
そう顔を出した会長に、会長ー!っと手を振る。会いたかったー!と言えば笑われたが。
「お前が会いたい時は自己都合だろうが。稲瀬には会ったのか?」
「稲瀬さんは偶に練習見にくるから。ねぇ、会長、アンプティサッカーの東京ヴィクトリーのオフィシャルしてよー、ていうか、空いてるグランド無償で貸して。東京の練習場所増やして競技人口増やしたいから協力して、また共犯者になって」
要望が多い。多分みんな内心そう思ってるだろう。私も思う。ちなみに稲瀬さんは監督だ。あの人なんか休みの日に気分転換とか称してきては私と一緒に色々チームメイトにきくのだ。会長は目をパチパチと瞬いた。
「今度はなにしたいんだ、苗字」
「アンプティサッカーの学生あたり増やして競技人口増やして土壌こやしたい。日本だけで100人行かないんだよ?この前練習試合で関西組に会ったけど、すぐ仲良しになったわ!」
「マイナーだなぁ」
「でもさ、足なくてサッカーできないって思ってるだけだと思うんだよね。だから注目されたらいやが応にも増えるよ。私が今相棒って言ってる子15歳のリトル持田なんだけど、それこそ私が入院中に誘った子だし、サッカーできないと思ってたからね」
まぁ、ツンデレだけど。蓮は持田さんなのに私にはおばさんって言われるけど。というか蓮にショタコンって言われるけどショタコンじゃない。
「だからさ、今足がなかろうとサッカーできるし、腕がなくてもキーパーできるっていうのを知らない人が多いんだよ。それ知ったら絶対子供の競技人口増えるから。私はその子のライバル達を増やしたいの。土壌こやしたいんだよー」
そう言ってねぇいいでしょーと譲る。じゃあ今度見に行くか!と笑われたが。
「キャップ、監督、東京ヴィクトリーのお偉いさん来てもいいですか!」
「持田さんか?稲瀬さんか?」
「いや、東京ヴィクトリーの会長あたり」
そういえばチームメイトが固まってしまった。まぁ、まて、と私はドウドウと落ち着くんだという動作をする。
「五年以内に世界トップに持ってきたいから協力頼んだ。というか、パラリンピックの正式種目になるのも時間の問題だろうからせっかくなんだし初金メダル日本にしたいじゃん。その為には競技人口増やして子供の競技人口増やしたい。バックにヴィクトリーがつくと設備の心配が多少しなくてよくなるし、遠征費も多少なら援助してくれるはずだし。注目されたら間違いなく競技人口増えるし、競技人口増えたらもっと強くなると思う」
真っ直ぐにそう告げる。彼らは目を瞬いた。
「だって、足なくてサッカー諦めるこ、結構いると思う。私だって、病院のグランドでこのチームが練習してなかったらサッカーやるの諦めてたよ。だからさ、新参者の私が言うのもなんだけどさ、もっともっと行こうよ上まで。入院中に試合の映像とか網羅して思ったけど、世界トップチームの座に私は行きたいというか十分行けると思うからさ」
うーん、堂々巡りである。
「まぁなにが言いたいかというと、環境を整えたい。自分たちがプレーしやすくなるのもそうだけど、後の世代のためにもうちょっと環境を整えてプレーしやすいようにしたい。そこをボランティアとかじゃちょっと難しいから東京ヴィクトリーに支援してもらう。それだけ」
「……それ、オッケーでるのか?」
「多分win-winの関係だからオッケー出やすいと思う。まぁ、ただ、提供を受けるとなると結果は出さないといけなくなるけどね」
そう言って彼らをみる。
「まぁ、私運営どこまで首突っ込めるかわからないし任せるよ。会長は見にくるだけ見にくるけど、別にやっぱりいいやでもいいし」
じゃ!とぴょんぴょん跳ねながら後にしようとすれば待て待てと突っ込まれたが。
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