2018/02/01

↓改変断片 それは出会いか別離か再会か 一

・現パロ?二周目?
・色々特殊


度胸試しだった。転校してすぐ、田舎者だと言われた俺は、その荒れ果てた大きな屋敷に足を踏み入れたのである。立ち入り禁止と書かれた荒れた敷地、元は綺麗であっただろうその道のりを進み、今にも朽ち果てそうな扉を開ける。中は真っ暗で持っていた懐中電灯をつけた。照らし出された時計は秒針を進めることはない。元はきっと立派な建物だったんだれう。二階から見回ってみるかと階段に向かう。手摺を掴めば手には埃がついた。それに少し顔をしかめて上の階へと足を運ぶ。カタン、となった音に肩を跳ねさせたが、そちらを見ても何もない。暗い廊下が続くだけだ。
「冗談はよしてくれよ」
そう小さくひとりごちて、音のした方を懐中電灯で照らす。
――扉が開いているのが見えた。息を飲んでそちらに向かう。きいきいと軋む今となってはなかり珍しい木製の廊下がひどく恨めしく感じた。たどり着いた端の部屋は、本棚に囲まれた部屋だった。酷く懐かしさを感じる自分が酷く異質なのは知っている。何故なら同級生と呼ぶ周りは本など触ったことがないからだ。いや、本という概念はある。電子書籍がそれに当てはまるだろう。しかし、紙でできたソレを触ったことがある人は今はもうほとんどいない。そっと本棚に手を伸ばす。
「泥棒はいけないなぁ」
そんな言葉に「っあ!?」と変な声が出てしまった。慌ててそちらをみると着物を着た女が扉にもたれている。時代錯誤だ、と思うのは女が提灯のようなランプを下げているからだろうか。
「いや、盗む気は……」
「冗談ですよ、肝試しに来たんでしょう」
そうケラケラと笑った彼女に怖さはない。君は神経が図太いね、と笑った女はまた口を開く。
「普通はさっきの一言で逃げ出すんだけど」
「アンタは?」
「この屋敷に住んでる」
「廃れた屋敷に?」
「うん、そうだね、元はもっと綺麗だったんだけど。いや、住んでるというか、管理しているというか」
「あぁ、じゃあ勝手に他人の家の敷地に入ったのか。悪い……電気はないのか?」
「切れてしまってるね」
「放ってるのか……」
そう少し呆れてしまう。彼女はまたクスクス笑ったが。懐中電灯で照らせばかなりの量の本があるのかわかる。
「物珍しいですか?」
「博物館にしかないからな」
「もっといっぱいありますよ、一階には」
「本当か!?」
「ええ。でも、今日はもう遅いから帰りなさい」
女はそう言って本棚から一冊の本を取り出して俺に渡す。
「肝試しの証拠がいるでしょう?」
そういった彼女に俺はそれを受け取った。門まで送るよ、と言って歩き出す。その後ろ姿には見覚えがある。
「……アンタの名前は?」
「新手のナンパかな?」

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本を学校に持っていけば、教室が煩くなった。田舎者だと言っていた奴もそんなことは言わなくなる。ただ、教師に見つかり怒られる羽目になったが。はぁ、と溜息をついて職員室を出る。本は返してこい!と怒鳴られたが、本は教師に没収されてた。どうしろというのか。もう一度溜息をつけば、後ろの戸が開いた。
「……あぁ、おまえ……災難だったな」
現れたのは違うクラスの菊池だろう。その後ろからは芥川が顔を覗かせる。
「君、一人肝試ししたんだって?」
「バカにされたからな」
「偶に肝試し行く奴はいるが、逃げ帰ってくるのがオチだからな。なんでも女の幽霊が出るとか」
「幽霊?管理者だって聞いたが」
そういえば菊池がケラケラと笑う。
「なんてこった、お前、図太いな。幽霊擬きと話したのか!」
「図太くてわるかったな」
「なんだ、幽霊じゃないのか、残念。中はどうだった?」
「廃れた木造屋敷だった。本がたくさんあるらしい」
「本が?」
目を輝かせた芥川に、菊池が首をかしげる。
「貴重なものだろ、どうしてそんな場所に」
「所有物っぽかったんだが」
「なんだお前ら面白そうな話してんな」
そう職員室の廊下側の窓から顔をのぞかせたのは正岡先生である。
「お前らが話してる場所って、アレだろ。化け物屋敷。俺のガキん時からあるぞ。なぁ、夏目」
「正岡、はしたないですよ」
「昔、夏目達と忍び込もうとしたんだがよ、夏目がそりゃもう怯えて」
「正岡」
正岡先生の言葉を夏目先生が書類で叩いて黙らせる。それを見ていた森先生がクスリと笑った。
「森先生まで」
「いや、すまない……化け物屋敷というと、町外れのか?」
「そうそう」
「だから佐藤は怒られていたのか。珍しいと思ったんだが」
森先生は近くに置かれたままの本を忘れ物だと俺に渡す。夏目先生と芥川が少し目を輝かせた。菊池がやれやれという風に肩をすくめたが。
「返しに行くのかい?」
「そのつもりだ。日中に来たら本を見せてくれるって言ってくれたしな」
「僕もついていっちゃだめかい?」
「別にいいんじゃないか?」
「じゃあ僕も行くよ。寛はどうする?」
「面白そうだから行く」
「俺も行く」
「正岡、今日は会議でしょう」
身を乗り出した正岡先生が、夏目先生に釘を刺される。森先生が「私たちが顔を出してもいいか聞いておいてくれ」と告げて窓を閉めた。

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日中にたどり着いたそこは、相変わらず木が生い茂っている。ただ、明るいだけ幾分かマシだろう。獣道をかき分けて進めば屋敷の扉にたどり着く。巨大な扉に芥川が首を傾げた。
「屋敷というよりは、何かの施設みたいだね」
そう言って壁を見る。やって来たのはいいが、あの女がいるかはわからない。コンコン、とノックをしてすいません、と声をかける。返事はない。扉を押してみれば扉に鍵が閉まっていることがわかった。
「留守か?」
「さぁ……すいませーん!きのうのものなんですがー!」
そう大きな声を出す。かちゃり、と鍵が開く音がして、扉が開いた。顔をのぞかせたのはやはりあの女性である。
「君は元気ですね……おや、お友達ですか」
首を傾げた彼女に、芥川が「そうです」と告げる。
「芥川龍之介と言います。本があると聞いて」
「菊池寛だ。同じく」
その名を聞いた彼女はかすかに目を見開いた。そして俺を見る。
「ああ、っと、俺は佐藤春夫だ」
「……そう、私は好きに呼んでいいですよ。名乗るよう名を持ち合わせてはいないので」
そう扉をきちんと開けた彼女は、屋敷に招き入れる。ステンドグラスからは光が降り注いだ。
「ここは昔、何かの施設だったんですか?」
芥川が中を見渡して首をかしげる。
「どうしてそう思う?」
「家、というより、もっと大勢が入るみたいだから」
「正解。ここは家じゃないよ」
そう言って女は正面の大きな扉に手をかける。
「ここは図書館」
「図書館?」
「そう、だから、たくさんの本がある」
女がそう言って扉を開けた。その瞬間、俺たちは驚くしかなかった。扉の先には本棚が所狭しと並べられ、そのどれもに本が詰められている。思わずという風に足を踏み入れた俺たちは、その本棚を眺めた。女はやれやれという風に息を吐いたのだが、俺たちはそれに気づくこともなく。
「おかえりなさいって言えばいいのかな」
そんな言葉も俺たちは聞かなかったのだけど。

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「紙だ、メールじゃない」
「いやはや、珍しい」
「まごうことなき手紙だな」
そう紙を覗き込んだ三人の先生に、俺たちは苦笑いをする。あの女ーー俺たちは館長と呼ぶことにしたーーに先生達が来たいと言っていたことを伝えれば渡された紙である。人出が増えたら掃除できるし、君たちが大丈夫だと思う人なら招き入れていいよと言われて、先生の名を告げれば即席で綴られた手紙だ。先生達が手紙を開いたのをよそに俺たちは会話に移る。昨日は日が暮れるまでいて、館長に追い出されてしまった。
「電球なんてもう売ってないよね。僕はもっと篭りたいんだけど。夜になったら暗くて読めないし。というか、あそこに泊まりたい」
「とまるにしても、部屋の掃除からだな。埃がすごい。龍は気にしないだろうが」
「あぁそういや、ちゃんと寮みたいな棟はあるって聞いた。掃除するなら使っていいって聞いたが」
「佐藤くん、それは本当かい!?僕は家出する決心がついたよ!」
「芥川、教師の前で変な決心をつくな」
「じゃあ、住み込みアルバイト。賃金は発生しないだろうけど。佐藤くんは一人暮らしだっけ?」
「あぁ、まぁな……あぁそうか、あそこに移り住めば家賃はかからないのか」
それはひどく誘惑が強い。
「待て、まだ家賃がかからないとは限らないだろ?」
「だから、三人とも教師の前で家出話はやめなさい」
森先生の言葉に俺たちは黙ったが、頭の中はどうやればあそこに住めるのかでしめていた。



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