2020/12/31
大晦日だよ!没ネタ整理!5 赤崎妹
歓声が遠く聞こえる。夕闇が空を染めていく。鳥が羽ばたいていく。ぼうっとそれを見ていれば、給水ボトルを押し付けられた。ほら、と言ったチームメイトにお礼を言ってそれを口に含む。そうして頬を叩いた。私のコンビとも言える彼女の肩を軽く叩き、私はわらうのだ。
「よし、反撃にうつるか、みったん!」
「よしきた、相棒、体力もたせなよ!」
そうハイタッチしてピッチに入る。そうしてまた始まるゲームに私は手を掲げるのである。
さん。
ひきつけろ。そのラインまで。
に。
配置に走れ、バレることなく。
いち。
私の目の前にやってきたボール。
ぜろ。
そうして私はそのボールを蹴り出すのだ。
そのまま人を一人かわし、二人交わしながらチームメイトにパスを送る。うまく通ったパスに私はまた駆け出した。選手たちの動きがゆっくりに見える。もう一度回ってきたボールに、その一点の隙、もしくはその一点のタイミングをつく。計算通りに相手の間から顔を出したキャプテンはそのボールをゴールに蹴り入れた。
キャプテンがこちらにかけてきて私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「赤崎ー!いい子!もういっちょ頼むよ!」
その声に私は頷いて、次に切り替えるのだ。
慣れてくるとそうなるよなぁ、と頭を抱える。そりゃあゲームメイクしてるの私だとバレたら私狙ってくるわ。最近私はいかに怪我をしないか、裏の裏をかけるかということが課題である。体力?体力はつきまとう課題だから!そうクラブハウスで相手チームの試合を見ながらぐだぁ、とする。癖だとかを頭に入れておきたいからオフの日がオフではない。最近タッツにも会ってないんだよなぁとそのままテレビを見つめた。戦略が浮かばない。これは泥沼にはまっている気がする。パチリ、とモニターが消されてなんだ?と思えば監督が苦笑いしてそこにいた。
「赤崎、少しいいかな?」
「はい?」
「チャリティーマッチが開催されるんだ。それで誰を出すかっていう話になってね。君の名前が上がってる」
「えっ、オールスターみたいな感じですか?」
「よくいうとね。まぁ、東京マッチみたいな感じかな」
「悪く言うと?」
「男子の前哨戦」
なるほどなぁ、と思う。男子オールスターの前のマスコットの試合みたいなものだろう。手渡された試合スケジュールを見れば、私は震えた。なん、だと。
「女子サッカーマスコットvs男子サッカーマスコット……!!パッカくんとシババの共演……!これは見るしかない……!!出たらみれますか!?」
「見れるんじゃないかな?」
「じゃあ出ます!」
そうルンルン気分で頷く。いやぁ、シババ(このチームのマスコットで一部ではドMと言われるシバ犬マスコット)はよくあって戯れているが、パッカくんは久しぶりに会える気がする。いやぁ、これは楽しみである。
==
「パッカくーーーん!!!」
そう言って満面の笑みで手を振る。こちらを見たパッカくんは軽く手をあげた。同じくチャリティーにでるチームメイトが若干引いてるが気にしない。マスコミがなんか言ってるけど気にしない。
「パッカくん、久しぶり、元気にしてた?!」
「………」
「うんうん、よかったよー!」
「なんで会話できてんの?」
「パッカくんは彼氏だから!」
ねー?と二人で首をかしげる。パッカくんが頷いた。呆れた顔をしたチームメイトが「アンタあのシバ犬どうすんの」と言って指差す。そちらを見れば何か打ちひしがれているシババがいた。あっ、シババー!と手を振ればシババはこちらにやってくる。走ると尻尾揺れるの可愛いよね!
「シババ、こっちはパッカくん。ETUのマスコットだよ。パッカくん、こっちは私のチームのマスコットでシババ」
そう紹介したらめちゃくちゃパッカくんがシババに塩対応だった。そうこうしてる間にマスコット達のミニゲームが始まるらしく、イエローカード出しちゃダメだよ!と注意しておく。私はチームメイトにずるずると引きずられる。
「あぁ〜、マスコットのミニゲームみたいのに!」
どっちにしろ私は客寄せパンダ的な立ち位置だと思われるし別に見ていてもいいのでは?と思う。準備があるでしょ!と言われたので首をかしげる。準備とは?
どうやらこのチャリティでは他のコスチュームを着ないといけないらしい。しかし私はそんな話など聞いていない。背に腹は変えられないので仕方ない。最終手段だ、と連絡をとる。やってきた兄の服装に私はケタケタと笑うことになるのであるが。
「これって広報さん的にアウト?」
そう聞けば広報さんである立木さんがうーんと考えた。いやでも、ありっちゃあり?と首を傾げられた。チームメイトには(動きやすいから)若干ずるいずるい言われたが、仕方ない、コスチュームを忘れたから!と言えばキャプテンにグーを落とされた。いたい。
「あー!ナツちー!ある意味私とおそろジャーン!」
そう言った相手チームの友人はなるほど東京ヴィクトリーの服を着ている。向こうのキャプテンも頭を抱えていた。
「なになに、それどうしたの?」
「いやぁ、コスチュームいるってきいてなくてさぁ、売店で買った!」
「なにそれ強い」
「ナツちは?」
「私も知らなかったから今さっきお兄ちゃんに貸してもらった。丈が長い」
「なにそれ爆笑なんだけど!」
ケラケラと笑った彼女は向こう側のキャプテンにグーを落とされている。
「ある意味、意味もなく、お互い違う看板背負ってるし、正々堂々がんばろうぜー!ナツち!くたばんなよ!」
「頑張る」
ずるずると引きずられながら彼女は後にする。うん、バランスはとれたぞ。というか、そうかー。変に看板背負うことになるのかぁ。……変なプレーできないのでは?
ヴィクトリーの制服をきた友人が出てった瞬間、恐らくヴィクトリーの応援をしにきてた人達が湧いた。そうすると私でどうなるかというと。
「ナツー!赤崎ーー!」
そういうアナウンスと一緒に中に入ればETU側が湧いた。というか関係者席が湧いた。とりあえず見つけた百合さん(恐らくヴィクトリー側の椿兄と同じく話を聞いてない)に両手を合わせてごめんなさいポーズをしておく。変なプレー出来るだけしないから許して。まぁ、これ絶対テレビの実況席では遼兄の服云々って言われてるきがする。まぁ、女子でここまでのスタジアムでプレーはできないので楽しむとする。
野次は何処にでもいるのである。男子の前哨戦となれば結構余計に。向こう側の友人は野次に爆笑しながら、ありえないんだけどと指をさした。でもこれ次は本気で来るんだよな、この子の場合。ならばこっちも本気で当たるしかない。空を仰ぐ。うん、まだ青空が見えている。あの子は突進というか(まぁチームで突き抜けた能力があるからそうなる)一人抜けてくることが多い。チームはそれに合わせようとする、から、カウンターに弱い。
いつも通りやるだけだ。
さん。引きつける、彼女がそのラインに来るまで。に。味方が察知して走り出す。いち。ラインに達した彼女からボールを奪い、味方にパスをして走ります。ぜろ。そうしてまた私に戻ってきたボールに私はそのまま走り出した。
そのまま敵陣に突っ込む。それと併走する味方、少し先にいる味方の位置を見極める。そのまま一人抜き、二人抜いた時にあの子が来たのが見えたのであえてあまり公式戦ではパスしない方向にパスをした。精度は劣るが彼女は合わせられるのだからいけるはずだ。難なく相手の間から抜けてきたチームメイトは私のボールを受け取るとそのままシュートを決めた。よし!と喜べば友人の目がつり上がっている。いやぁ、これはやばい。彼女にゲームを作られてしまうし私のガードも強くなるので困る。でもどうにかするしかないんだよなぁ。ぐしゃぐしゃと撫でなられながら考える。突破口は何処だ。
これはまいったなあと空を見上げる。私のガードが強くなった。ため息をつく。どうかわして行こうかな、と思っていればキャプテンが私にデコピンをした。
「ナツ、私がボールを中心になって回してくからアンタはゴール狙いな」
そう言った彼女を見る。ボール持たなきゃ裏かけるでしょ、アンタなら、と私の頭にグーをおとす。その言葉に目を瞬いて、笑う。よし、と頬を叩いて頷いた。
「頑張る」
そりゃそうだ。私は一人でここにいるわけではないのだから。
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試合後にくたばってたら友人に引っ張り起こされた。
「ナツち、体力なさすぎ、超笑えるんだけど」
「これでもついたんだよ」
とりあえず自分のチームのサポーターに挨拶しなければなるまい。あとETUのサポーターにもお礼を言わなければ。とりあえず二人で回れよ、ということなので二人でお礼参り(なんか違う意味になるけどそこは気にしない)をする。
「ナツちのあれしたい」
「えー、してくれるかなー」
そう言いながら彼女のチームのサポーター、東京ヴィクトリーのサポーター、ETUのサポーターと周り自チームのサポーターの前に立つ。3、と指をすれば察した彼らはメガホンを手に取った。2、手を叩く。1、声を上げる。レディーゴー、トーキョーサンライズ!と決めポーズを決めた彼らと私、友人に私と友人は笑った。友人のチーム以外の他のサポーターは唖然とした。笑うわ。
「ETUの応援もお願いしまーす!ありがとうございましたー!」
そうお辞儀をしてピッチをあとにする。さて、後は兄達のをみて爆笑するだけだ。
「おー、ナツ、お疲れさん」
そう言ったタッツに久しぶりー!と抱きつこうとしてやめる。今の私は汗臭い。さすがなかだめ、絶対。まぁタッツは気にしていないらしく私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「元気そうでよかったよ、そっち移籍してから顔出さないだろ?」
「うーん、色々考えて身動きとれなくなって研究に没頭してたんだけど」
そういえばタッツは私の頭に軽くグーを落とした。いたい。
「それは監督の仕事だぞ」
うーむ、それもそうだ。
「……で、解決したのか?」
「うん、私のガードが酷いからどうするかなって思ってたんだけど、周りを頼っていいんだな、ってわかって解決の足がかりは掴んだよ」
そういえばまたぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。なんだ?なんだ???とはてなを飛ばしまくっていれば、いーや、とタッツは口を開いた。
「ナツも大人になったなぁと、」
「ふふん!もう二十歳超えましたから!」
「『まだ』二十歳だろー?」
「大人だもん、大人!お酒のめる!」
「大人は大人だって言わないからな。でも、んー、たまにはメシにでもまた行くか」
「!いく!!絶対いく!!」
ひゃっほーい、とはねて喜んでいたら広報さんに首根っこ掴まれた。解せぬ。
「赤崎!?何してるんだ!?すいません、達海監督」
「いーや?」
「ETUでバイトしてたから達海監督とは知り合いなんです」
「そういうことだから気にしなくていいよ」
そう軽く言ったタッツに広報さんが赤崎がお世話に!と言ったけれど彼は私の親か何かだろうか。
「ま、ナツ、お前すぐ体調崩すんだから着替えとけよ。そのあとまた顔出せばいいし」
「みんなと写真撮りたいから絶対いく!」
ずるずると引きずられながらまた後でと手を振った。
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