2021/02/13
↓続き??
「名無姫?」
呼び止められて振り返る。そこにいたのは恐らく張遼殿である。恐らくというのも、彼はみおぼえがある出陣服でも平服でもなく、スーツをきていたからである。張遼殿?と首を傾げれば彼も私と理解したのか彼はこちらによってきた。
「名無殿、どうしてこちらに?」
「今日はお父様に呼ばれたのですが、慣れない場所で迷子になってしまって」
「そうでしたか。ならば私も今から向かうところです。ご案内いたしましょう」
「ありがとうございます。張遼殿のスーツ姿はとても新鮮ですね」
「違和感がしますかな?」
「いえ?似合ってらっしゃるなと」
鍛えているからこういうカチリとした服が似合うのだろうな、としみじみしていれば彼は口元を緩めたが。
「名無姫は人を煽てるのがお上手だ」
「煽てるなど……でも、そういう服を着てらっしゃると、張遼殿であれ孫呉の将であれ、違うのだなとも思います」
「違う?」
「私が知る貴方達と違う人生を途中まで歩んでいらっしゃったのだな、と」
それが少しだけ寂しいとは決して言わないが。彼らは彼らであるが、彼らではないのだ。ましてや、私は昔からそのコミュニティにいたわけでも、他の兄姉のように父様を実父として生まれているわけでもない。それに加えて私は日本で生まれ育った身である。
「……私は以前警察に属しておりました」
「警察?」
「ええ。今も似たようなものですが。16の時から前世を少しずつ思い出し、25の時に事件に巻き込まれて意識を失った時に全てを……そこからはかれこれ10年ほど前になりますが変わらないといえば変わりません」
彼の言葉に、私は少し嬉しくなる。教えてくれたからだ。そうだったのですね、と笑みを浮かべれば彼は私をみた。
「姫は今までどちらに?そもそも何故日本に?」
「私もよく覚えていないのですが、幼い頃に海難事故に巻き込まれたらしく、そのまま救命ボートで日本に辿り着いたようです。実父母や親類もおらず、その当時の記憶もない私が本当はどの国の誰であるかは今でも分かりかねます」
そう言って前を向く。
「養父母に引き取られ、日本人の苗字ナマエとして学生生活をしていましたが、ある日前ぶりもなく倒れたらしく、私としては長々と夢を見ていたといいますか」
「そこで思い出されたと」
「はい。そうしたら時間の管轄の組織に参加することになり、甲斐姫と出会い氏康様に謁見し……お父様と再会することができました」
「……そうでしたか」
「……氏康様にも、お父様にも黙っているのですが、張遼殿に少しだけ会いにも伺いましたよ」
よく眠っておいででした。
そうちょっと悪戯っぽく笑ってみる。彼は目を見開いてこちらをみおろした。
「いつ?」
「秘密です」
「名無姫」
「内緒です」
ふふふ、と笑えば彼は少し眉間に皺をよせてじっとこちらを見たが私は別に怖くないので彼の手を取ってみる。
「睨まれたって私は怖くありませんよ。私も虎の子ですからね」
「……」
名無、と尚香姉様の声がしたため手を離す。彼は少し息を吐いて「孫呉と合流できるようですな」と告げた。
「ありがとうございました、張遼殿」
「いえ」
「……またお話に伺ってもよろしいでしょうか?」
「私で良いのであれば」
「約束ですよ」
そう言って再度頭を下げる。そのまま尚香姉のところにかけたが、曹魏の会議場は別フロアというか別の場所だったと聞いた。お礼を言わねば。
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追記はバグネタ
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「敵の妖術で愉快なことになってしまってね、まぁ一種のバグみたいなものなんだけれど」
「孫呉でも同じことが起こっています。一部の将に犬耳が生えて、ふさふさのしっぽが生えていました」
ちなみに私のお気に入りは甘寧殿のしっぽである。ふわふわのふさふさなのだ。触ると本人は「!?」となるが、私だとわかると我慢してくれる。
「恐らく同じ戦場にいたからそうなったのかもしれないね。蜀にも被害がなければいいのだけど。まぁ、曹魏の将は解決するまでは休みを当てられることになってね」
「?はい」
「張遼殿を引き取っていただけるとありがたい」
「引き取る?」
はて?と首を傾げる。殿、緩和剤連れてきましたよ、と郭嘉さんが扉を開ければ于禁殿と張遼殿が抑えられていた。なんでだ。あ、張遼殿には黒い猫耳、于禁殿には白い猫耳が生えてる。
「おお、名無姫か」
「お久しぶりです、曹操様」
私がそう言った瞬間ぐるりと二人がこちらを見た。まぁ于禁殿はめちゃくちゃ警戒してる風に毛を逆立てるのであるが、張遼殿は警戒してない。うむ?
「ははぁ、わかりました、うちの甘寧殿と凌統殿のように中身までも近づいてるのですね」
まぁ、一応人としての生活はできているらしい。トイレとかお風呂とか。でもボール投げてくれってくるからちょっと面白く、呂蒙さんが世話をしていたが。
「やはり孫呉も被害がでているか……蜀にも通達を出した方が良いな」
「他にも数人が?」
「まぁな。だが、二人よりはマシだ。なにやら折り合いが悪いようでな、張遼の面倒を見てくれないか。褒美はだそう」
「構いません。褒美も特には。いつも張遼殿にはお世話になっていますから」
「そう言ってくれると助かる」
「……張遼殿、張遼殿はしばらく私の近侍だそうです。私の居城に向かいましょう」
そう促せば夏侯惇殿に手を離された張遼殿は私のそばにやってくる。こちらを見下ろした彼に、行きましょうと手を引けば嫌がることなくついてきた。一応、では、と頭を下げる。曹操殿はクツクツ笑っていたが。
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猫だ。人懐っこい猫だ。私を抱き抱えてすりと首すじに顔を擦り付けてくる。可愛い。あの張遼殿がこんなになるとは。しかしながら仕事が進まない。刀剣に影響がうつるかもということだから一応人払ならぬ刀払いはしているのだが。
「名無殿」
「なんですか?」
「いや」
「張遼殿、お仕事がしたいのですが」
「そうか」
「そうです。私の部下と手合わせでもされますか?」
「いや……甘寧殿の匂いがするな」
「張遼殿に会う前に甘寧殿と遊んでましたからね。鈴をぽーん、と投げれば追いかけていきます。面白かったです」
「まるで犬ですな」
「今は犬ですね」
もう諦めて彼にもたれかかる。いい椅子だこれは。しばらくゴロゴロと私に頬擦りしていた彼がピタリと止まったので、おや?と私がそちらを見る。張遼殿と見つめあって数秒、彼は顔の前に片手を当てた。そしてまたこちらをちらりと見下ろして回されていた手をパッとはなした。戻った?
「名無姫」
「如何されましたか?」
「嫁入り前の姫がこのようなことは……」
「覚えてませんか、張遼殿がひょいと私をだきあげてこのように座らせたではありませんか」
「は」
「まぁ、曹操殿曰く、妖術か何かに当てられて猫に近くなったそうですよ」
「……猫?」
本気に戸惑っている彼に私は彼の猫耳をフニフニする。今思うと耳が四つあるな。びっくりした顔をした彼に私は先程はまでと同じように首元を撫でる。ごろ、とないてすぐに私の手を掴まれたが。握力が強い。
「事態は把握しました。私は魏軍に戻ります」
「曹操殿はその耳がとれるまでこちらにいるようにと」
「……」
「なんでも、同じように重度に猫化してしまっている于禁殿と李典殿が張遼殿に反応してしまうから個別にしたいとか」
「…………」
「たしかに私が呼ばれて向かえば、于禁殿が威嚇をしていらっしゃいました。私にも威嚇されました。猫でしたね」
李典殿は楽進殿が様子を窺うとか。
そう付け足せば彼は深く深くため息をついた。
「ちなみに、孫呉でも一部に犬の耳と尻尾が生えてしまっていました。甘寧殿と凌統殿はまるで犬です。そのメンバーとなると、合肥だと思うのですが、何かあったのですか?」
「ええ、あまり妖術を使う輩は遭遇しないのですが、不意を突かれて妖術を使われてしまい」
「皆さま動物になったと」
「恐らくは」
「まぁ、張遼殿もここにいるとお暇でしょうから、刀剣達の相手をしていただけると助かります」
「刀剣?」
そう首を傾げた彼に、ああたしかそうだった、と陸遜の言葉を思い出す。彼らは特殊な土と特殊な水で作られる兵馬俑ーー正しくは土人形を出陣の際に人としてひきいている。こちらの氏康さま達も似たようなものらしいが。
「私は今正しくは氏康様や孫呉の皆と同じような方法で出陣しているわけではありません。刀剣に宿った付喪をおろし、私の代わりに時代に赴いて戦っています。言ってみれば個別の意思がある式神のようなものでしょうか」
「となると貴女がたまに連れついる近侍は」
「刀剣です。兵馬俑が壊れて動かなくなるように、刀剣達も折れてしまうといなくなります。その為道場で手合わせをさせたり……まぁ、血気盛んな刀剣もいるので貴方と手合わせとなれば喜ぶでしょう」
そこまで言って、いや?と思う。
「もしかしたら、張遼殿に振るえと詰め寄るかもしれませんが……まぁ双鉞がやきもちを焼くからダメとそれとなく伝えましょう」
「双鉞が」
「はい」
「やきもちを」
「はい」
ちなみに一度そうだろうと思われることが孫呉であり、刀剣達もそりゃヤキモチ妬くよね!的な感じで諦めたらしい。
「名無殿は鍛錬をしないのですか?」
「?つけていただけるのなら嬉しいです。孫呉の皆はやらせていただけません」
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一撃が、重いん、だよなぁ、と、張遼殿の薙刀×2の猛攻を木刀×2で受け止めながら思う。その重さを利用し流した上で蹴りを入れたら彼はそれでバランスを崩した、ので、こちらで攻勢にでる。カンカンとテンポよくやっていたが、まぁ張遼殿に一つ弾かれて木刀は宙に舞った。もう一本で突きをし一本を片手で構える。まぁ、それも弾かれて首元に薙刀を持ってこられるのだが。
「ううん、参りました」
そう言えば彼は薙刀を退かせる。
「勘は取り戻りましたか?」
「少しは。しかし、これは体力などの問題のような」
「……私に刃を向けられ怖くはありませんか」
「張遼殿なので」
そういいつつ、どうすればいいのかを考える。彼は私が違うことを考えているのが分かったのだろう。
「貴方は一手になった時、躊躇なく踏み込んでくる。それは不意をつく利点にはなるが、同時に自分を窮地に追い込んでいるようなものだ。癖ならば直した方がいい」
「はい。しかし、一振りを弾き飛ばされた時にどう対処すれば良いかわからなくなります。頭に血が上っていると余計かも知れませんが」
「引いてみては如何か」
「追撃が来そうで。追撃されればされるほど、軽い斬撃しかできない私は不利になります」
「ならば一刀の扱い方になれるか、ですな」
ふむ、と頷く。父様達の動きというわけか。
「もう一度お願いできますか?」
「喜んで」
==ネタ尽きた
「文遠さん」
「どうした?」
「……あまりいい夢見ではなかったので、少し落ち着くまでそばにいてもよろしいですか?」
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