2021/03/24
↓の没2
・妹/ハク……ナマエと馬超の間の娘。外見ナマエなのに中身が馬超なのでいかんせん会う人会う人に詐欺だと言われる。当たり前のように馬にのり、当たり前のように槍を扱える。馬超がバツ2(正しくは死後逆トリであることを知らせておらず正室側室がいたという表現をさけるためにナナシがそう表現した)と判明した時は何故かガチギレし父親と一騎討ちして仲直りした。(後にいう一騎討ち事件である)兄を振り回す係。馬岱はもはや歳の離れた兄だと思っている。時々色々面倒くさくなると馬姓を名乗る。
・兄/シン……ナマエと馬超の間の息子。外見馬超なのに中身がナマエなので(以下略)当たり前のように馬に乗り、当たり前のように槍を扱えるが妖筆の方が得意。もっと言えば機織りや絵を描いたり裁縫が好きでそういう学校に通っている。バツ2騒動/一騎討ち事件のときは出かけていた母親にコンタクトをとり、馬岱を呼びに行くなどをした。馬岱を兄みたいに慕っている。父親の知り合いには馬姓で名乗る。
・ナマエ……無双(遠呂智)世界に何回か迷い込んでるからか無双ルールが発動し外見があまり変わらなくなった。水墨画で有名な画家になったが、機織りや小物も相変わらずつくるしジョーイと自然をかけたりする。逆トリしてきた馬超とくっついた。馬超がどういう扱いかわからないため籍はいれていないが実質夫婦。何かと存在が不安定なのか、馬超だったり馬岱だったりを引き寄せているのはナマエらしいがお互い特に何も思ってない。(そもそもナマエの家にはテレビがない上に街から少し離れた場所に住んでいるが故にあまり外界と繋がりがないため、現在の国がどうなっているかわかりづらいということもある)
・馬超……死んだと思ったらナマエの世界にきた。推定47歳以上であるが外見は変わってないというか多分外見年齢二十代。身分証は何故かある。ナマエと暮らして馬の世話をする穏やかな生活をしていたはずが、ナマエの代わりに地元の小さな競走馬の大会で初出場初タイトルをとった他、神社の神事や祭りなど何かと馬に乗る行事に駆り出されることになった。バイクも乗れるが馬の方が好き。娘を連れて行こうとした役人にマジギレした。
・馬岱……死んだと思ったらナマエの世界に来て馬超と再会した。身分証は何故かある。兄の心が二歳の時、馬超と散歩しているときに森で発見され、そのまま一緒に暮らすようになった。ナマエと一緒に絵を描いたり、馬超と一緒に馬に関することに参加したりして穏やかに過ごしている。
・役人……前担当が妹を上来のやり方で連れて行こうとしたところ、馬超に殺されかけたのを見てめちゃくちゃ怯えていたが、今は馴染んだ。
==
その切先が、上司の首元皮一枚を切った状態でとまる。構えられた槍を一瞬にして扱った男は見るからに激昂していた。
「それで成人にも満たない娘を連れて行っただと?」
確かにそれで怒る人は何人も見てきた。何人も見てきたのだが、皆諦めた。というのも上司はそういうものを国という言葉でねじ伏せてきたからだ。こういうことは起きなかったのだろう。
「ふざけるな!」
そう声を上げた男の発言は正しかった。何も説明のないまま連れ去り、本人の承諾もないまま審神者になってもらう。それが上来のやり方である。
「孟起さん、孟起さん、いくら家の後ろが樹海だからってダメです。ダメ」
そう言った女性が槍を構えた男を宥める。槍を微かに離した男性は女性をみた。
「しかし、ナマエ!」
「ちょっとちょっと、若!どうしたの?だめだよ、槍なんかだしちゃ」
部屋を慌てて出た青年に連れられ後から顔を出したもう一人の男性が、惨状を見て目を瞬いた。
「しかし!コイツらはハクを連れて行ったんだ!それももう帰ってこないだとか戦に参加するだとか言ってるんだぞ!」
「ええっ?!どういうこと!?」と言いつつ、後からやってきた男性が上司の肩をポンと叩く。女性が「きっと戻してくれますよ」と困った顔をしている。その言葉に男性は槍を離した。
「そうだよー、若の勘違いなんじゃない?ねぇ?」
うっわ、こわっ。上司は震える声で、対応を相談します、と告げた。ちゃっかり、きちんとした連絡先をと言ってくる青年はしっかりしているし、もう一人の男性がにこやかに片方には残ってもらった方がいいんじゃない?などと言った。逃げるつもりだった上司に俺はまた乾いた笑みが溢れる。まるで人質である。そして多分自分達には逃げ場がない。
「俺ちょっと相談しますね」
そう言ってスマホを取り出し、上司の上司に当たるであろう他部署の審神者に連絡をする。彼は笑いに笑い今から行くわと言って通話をきった。
「さらに上司がすぐに来るみたいですのでお待ちいただけますか?」
「話がきちんと出来る方だとありがたいです」
女性はホッと息を吐いてそうつげる。俺もそう思う。
やってきたのは上司の上司は刀剣をつれていた。菓子折りを持って差し出し、上司と一緒に頭を下げた。
「部下が申し訳ございません」
「いや、俺も頭に血が上った。槍を向けた無礼はお詫び申し上げる。だが、娘をいきなり連れ攫われ、詳しい説明もないまま戦場に出すからもう会えぬというなどとは如何なものなのか。これではいくら国のためとは言え貴殿らが行うのはただの誘拐だ。それを貴殿達は理解してやっているのか」
先程よりは抑えられているが、ふつふつと怒っているのはわかる。
「誘拐?そんなことはない!我らは国の為に」
「お前の答えは論外だ。国の為に謳うならば何故お前がその場に立たない」
「お前は口を挟むな。死にたいのか」
==
「いや、オタクの本丸がおかしいだけですからね」
そう告げた役人に、はて?と首をかしげる。役人に「もうやだこの親子」とぼやいた。
「誰が小学生が馬乗り回して槍振り回せると思うんだよ……」
==
ぐっさりと刺された槍に、遡行軍は動きを止めて砂塵となる。
「敵将討ち取った」
その声に呆然と見上げた子供に、その先にいた人物は子供を見下ろすと、すぐさま「大丈夫だったか!?」と子供の肩を掴んで口を開く。
「よし、怪我はないな、槍を握ったのか?」
「父上?」
「あぁ、そうだ、よく頑張ったな、白」
無事でよかった、と抱きしめたその人に子供はぼろぼろと泣いた。父上、と呼びながら泣いた子供は怖かったにちがいない。なのに、振るえるものがいないからと先に立っていただけなのだ。
「もう大丈夫だ、」
「えっ、と、父君、単騎でここに来たんですか?」
「お前もいたのか……まぁ仕方がない、お前は弓も握れぬ男だからな」
「ははは」
「単騎といえば単騎だが、違うといえば違う。ナ……妻の力を使った」
「母君の?」
「あぁ。もうじき他も来る」
「あちゃあ、やっぱり若が一番乗りだったかぁ」
「岱おじさざん゛!!!」
「はいはい、俺もいるよぉ、怖かったねぇ、大丈夫だよー。外にいた怖いのは南にいたのも西にいたのも東にいたのも北にいたのもぜーんぶやっつけちゃったからねぇ」
==浮かばぬ
「ここで一番強いのってやっぱり父君なのか?」
「父上が一番強いぞ!ただでさえ強いのに母上が絡むともっと強くなるのだ!この前、母上が森で迷子になった時は手のつけられないほど暴れていたらしい」
「えっ、審神者さんの母君は入院したんじゃないのか?」
「入院する前に迷子になっていた。爺ちゃん達に聞いたら昔からフラッといなくなると聞いた。今回は父上も追っていなくなり、現れたらぼろぼろの母上を抱えて帰ってきたらしい」
「は?」
「そうだ、父上は今機嫌が壮絶に悪いらしいから、あまり部外者は近づかんほうがいいと伝えてほしいと言われていた。伝える!」
==
「で?アンタはその女に謀られたんですか。馬鹿じゃないですか?毒とわかってそれを食すなど、正気の沙汰じゃない」
「ははは」
「笑い事じゃないんですよ」
「でも、法正殿、食べてなかったら打首だってあり得たわけだし……」
「若が見つけなかったら放置されて死んでたんだよぉ」
「……」
「ほらー、ナマエ殿、若はすっごく怒ってるんだからね」
「ナマエに怒っているのではない。ナマエが無事で俺は安心している」
「じゃあ誰に怒ってるんですか」
「あちらの世界の俺に、だ!」
「国全員が騙されてるなら仕方ない気はしますけどね。やり手ですね」
==
「あぁ、貴殿は生きている時間から来たのだな」
そう声をかけた馬超さんに、はて?と首をかしげる。よくよくみると髪が結ばれているようだし、兜の形が違った。となれば、私が毒を飲んだ世界の馬超殿だろうか。彼は私と少し距離をとったまま私を見つめた。花をつんでいた私に声をかけた彼ではあるが、敵意はないように見える。じっと見つめた彼に、私は声を出さずそのまま一礼をして立ち去ろうとすれば、待ってくれ、と悲しげな声で呼び止められたが立ち止まる義理もないので立ち去るとする。目の前から現れた馬超さんが私の知るいつもの馬超さんだろう。ナマエ、どうした?と尋ねた彼に私は少し走りよって彼の手と手を繋ぐ。む,と少し照れた彼に笑ってそのまま家路についた。
「大変なことになってしまった」
家の中に入ってから告げた私の言葉に周りは私を見た。となりにいた馬超さんも私を見上げる。
「何がだ」
「多分遠呂智世界に巻き込まれてる」
「は?」
「一から説明してほしいな」
「馬超さんがいたと思ったら私が毒殺されかけた方にいた馬超さんで」
「は?」
「生きてる時間から来たんだなって言われたから、多分遠呂智世界に組み込まれてる気がする」
「待って待って、若飛び出して行こうとしないで。若が二人とか超絶ややこしくなるから待って」
「そもそもどのタイミングなんだろう。妖蛇騒ぎとか、ギリシャ神話とかいろいろあったけど」
徐庶さんの言葉に私はうーん、と考えた。それを確認するにも外に出るしかないわけですけど。でもそっくりさんしかいないわけで。それもそれで妖魔騒ぎになる気がするのだ。
「ってなると、やはり私が知らないふりをして聞きに行くしかないのでは」
「待って、ナマエ殿。どーしてそうなるの」
「そっくりさんこそ妖魔うんぬんってなりません?というかありませんでした?」
「あった、きがする……」
そこで議論は止まる。髪色を染めたりカラーコンタクトを入れたら良いだろうか。
「やっぱり私が行くしかなくないですか?」
「母上、何かあったのですか?」
そう尋ねた心と顔を覗かせた白に五人で目を見合わせる。そっちも巻き込まれていたか。
==
「すっごいすっごい強いお髭のおじさんがいた!!」
手合わせしてくれた!!!
誰だそれは。どうやら興奮している娘の話を聞くに、恐らくは興行の手伝いが何かをしていた将兵だろうことはわかる。ただ、それが関羽殿なのか他なのかで話が変わる。娘について布を売りに行ってきた息子は少し苦いかおをしていた。白がどうしても手合わせしたいと言って、布を一巻き渡してしまいました。そう言った息子に気にしないで良いと首を振った。布も糸も山ほどある。とりあえず、娘に尋ねる。
「お髭のおじさんは何色の服をきてましたか?」
「青!」
ということは、である。
「張遼殿かな?」
「あー、青でお髭のおじさんならそうかもねぇ。怖くなかった?」
「すっごいつよくてかっこよかった!!白もああなりたい!!」
それはちょっといただけない。話を聞いていた周りは皆ちょっと顔をしかめたが、馬超さんだけはそうか!と頭を撫でた。
「母上達にいろいろ聞いていたのですが、あまり釣り合うものなどもわからず……私達が出向いた栄えた場所は長安ということと、何やら遠呂智という化け物を一度は退けたやら国が戦の準備をしていたやらは聞きました」
「それだけ聞ければ十分だよー、ありがとうね」
「しかし、参りましたね。よりによって魏領ですか。豊臣領ならまだマシだと思いましたが」
「あ,待っててください。この世界の地図あるかも」
「えっ、本当?」
「確か昔、月英さん達にこっちはどうだとか聞いた覚えがあります」
そう言いつつ自分の部屋に戻り巻物を探す。確かこの辺りに、と巻物を取り出してそのまままた部屋に戻った。
「やっぱり、長安は相変わらず魏領、恐らくあの馬超殿は白帝城から来たとすると、ちょうど国境あたりでしょうか」
「きなくさい位置に取り込まれましたね。戦が起これば落ち延びた兵士達が増えそうだ。最悪、撤退した将兵がこちらに伸びてくる」
「何処かの国の都移り住みますか?」
「それはダメだ!小田原や上田のあたりじゃない限り妖蛇出現の時に呑まれる!」
「そこにしても一回は妖魔にやられちゃうしねぇ」
「案外ここが安泰かもしれませんし、様子見しますか。どちらにせよ、俺たちはそっくりさんがいるわけですし」
「そうですね、そこが一番の問題だ」
うんうん、と全員で頷いていれば、白が首を傾げた。
「父上のそっくりさんもいるの?」
「うん?あぁ、そうだ」
「おじのそっくりさんなら見たよ!都で!」
「えっ?しゃべった?」
「貴方だと使者になるのか間者なのかわからないのがまた……」
「先程の言葉を教えてくださったのは、その方とお髭のおじさんだったのです。言われた理由を話せば二人とも教えてくださいました」
それは……うーん。馬岱さんが扉を開けてまわりをみ、法正殿や徐庶殿も周りを伺いにはしる。うーん、ある意味四面楚歌なこの状況なんとかしたい。
==
白が花畑で駆け回っている。その姿はそこらにいる子供と変わりないのに、槍を握れば自分より強い。教育方針どうにかしてほしいよねぇ、とは岱さんの台詞である。でもお姫様お姫様してる妹はちょっと想像がつかない。花を摘んでは籠に入れていく。その様子を描いていれば、遠くの方から武者が見えた。白、と呼びかければ、白はこちらに寄ってくる。そのままそこを後にしようとすれば、ちょっと待って、と声をかけられる。とりあえず何かあれば押す様に言われた通報装置を押してその人をみた。
「この前の……この前はありがとうございました」
「いいのいいの、俺も長安にお使いに行ってただけだしね。君たちはこの辺りに住んでるの?」
「住んでるぞ!」
そう背から飛び出した妹にため息をつきたくなる。彼は妹を見て目を見開いた。俺とは逆で妹は父の色を宿しているが母上に似ている。
「……君の、お母さんの名前は?」
「父上とおじに言うなと言われてるから言わん!だが、なんで白の母上を知りたいのだ?」
「君のお母さんに会いたいんだけどなぁ」
「会わさん」
第三者の声に振り返る。そこにいたのは父上である。槍を持った父上に彼は目を見開く。
「えっ!?若!?」
「貴殿に若と呼ばれる筋合いはない。誰かと間違えていないか」
「えっえっ?」
「それに、俺の妻に何のようだ。何故会う必要がある」
そう言った父上をみて、白は口を開いた。
「父上が怒ってるぞ!にげろー!」
きゃーっと森の中に逃げた妹は岱さんが捕まえた。手招かれたのが見えたので俺も一礼してそちらに向かった。
==
「若、だよね??」
「何の話だ」
「馬岱、ナマエ殿はいたーー」
いたか。そう尋ねようとした馬超は口を閉じた。馬岱が自分にそっくりな男と向き合っていたからである。妖魔か?と眉間に皺を寄せたが、男は余計に眉間に皺を寄せた。
「ええ??若が二人??」
「だから何の話だ」
「……貴殿は、ナマエ殿の」
「夫だ」
そう告げた男に、ああだからかと理解する。恐らくは、似ていたからだ。似ていたから声をかけ、似ていたから笑いかけてくれただけなのだろう。
「……ナマエ殿は、お元気だろうか」
「それは貴殿達が気にすることなのか」
それはそうだ。自分達は彼女を殺した。形はどうであれ。彼女が謀られたにしろ、そうでないにしろ、殺した。見殺しにした。それはよくある形だ。この乱世では。しかし、時々それを思い出しては胸が痛むのだ。男はじっと馬超を見つめて息を吐いた。何かを察したように。
「妻は元気だ。貴殿らが心配しなくとも」
その言葉に二人は男をみた。
「俺が見つけてからしばらくは床に伏せていたが、良い医者に巡り会えて、今は布を織るほどには元気になった」
「教えてくれるのか?」
「貴殿らが妻の無事を案じてくれているのはわかった。だが、会わすことはできん」
男は真っ直ぐにそう言うと、ではな、と言って茂みをかき分けてその奥に消えたのだが。
==
「若ー!何教えてるの!」
「む、しかしな……」
「生きてるってわかって殺しにくる可能性もあるんだよ!」
「俺が心配している相手を殺しにくると思うのか?」
「それは……えっ、こっちの若も?」
「知らん。だが心配しているようだった。あの俺はナマエが謀られたのだとわかってる」
==
「お髭のおじさん!勝負してください!!」
そう張遼殿目掛けてかけていった娘を見送る。怖がるどころかすいているのがなんというか。作った布を売りに来たのだ。魏の方面ならばいいのでは?と思って交渉した。馬超さんが付き添っていた。息子と法正さんは白帝城の方に売りにいっている。魏にしろ蜀にしろよく似た他人で通すらしい。
「む?お前はこの前の……」
「白は父上と鍛錬を頑張りました!ぜひぜひ!勝負をば!」
ぴょんぴょん跳ねる娘を、私と馬超さんは食料を買いつつ眺める。
「あとは馬をもう一頭か……む、ナマエ?どうした?」
「いえ、白が例のお髭のおじさんに勝負を申し込んでいるので」
「なんだと?邪魔をしてないか」
「頼まれて興行手伝いしてるみたいですけど」
槍を渡された娘はぴょんぴょんと張遼殿と手合わせをしている。それを確認した馬超さんは馬を買ってくるとそばを少し離れる。うーむ、きちんと手を抜いてくれているあたり、彼は良い人だ。しかし、跳ね飛ばされた槍に一瞬で間合いをつめた彼に、白はムスッとした顔をした。
「ぐぬぬ……こーさん!します!」
「精進されよ」
「は〜い!」
そう起き上がり、服についた砂を払ったナマエに彼は口を開く。
「お前は長安に住んでいるのか?」
「住んでないよ!山の方に住んでて、母上が織った布を売りにきた!」
「山」
「あっち」
そう指差した娘に、私はあちゃあ、と頭を抱える。馬超さんが馬をもう一頭連れてきた。可愛い。お爺ちゃん馬である浮雲は若い馬を見たが、若い馬がずいっと顔を近づけたのをみて顔を近づけて挨拶した。なるほど気はあったらしい。人懐っこいのか私にも寄ってきたので私も撫でたが。可愛い。
「浮雲だけだと心配だからな。もう一頭買っておいた」
「足りました?」
「あぁ、お前が織った布は質がいいからか皆快く変えてくれる」
そう言って馬超さんは娘をみた。
「勝負はついたか」
「負けてました」
「だろうな」
そう二人で会話していれば白がかけてくる。
「父上だー!あ!馬が!増えた!」
「あぁ、新しい家族だ。浮雲一頭に負担をかけるわけにはいかんからな」
「お爺ちゃんだもんねぇ、浮雲」
うむうむと頷いた娘に浮雲が鼻でつついた。お爺ちゃんではないと言いたいらしい。馬超さんはひょいっと馬に白をのせる。そしてそのまま長安を出ると新しい馬に跨り、私は浮雲に跨り野をかけた。
==
・穏やかに過ごしてたらおろつに巻き込まれた。
「父上ー!母上ー!大変!大変だー!おっきい蛇がみえた!」
そう言った娘に、そこにいた全員が娘と息子をみた。慌てて駆け込んできた二人は口を開く。娘は身振り手振りでその化け物の大きさを表そうとしているのだろう。
「こーんなにおっきい蛇が!ぱっくりと!長安食べちゃった!」
「本当です!母上!まるで龍のようなものが現れて……」
「やっぱりおきちゃったねぇ」
そう告げた馬岱さんに刻々と頷く。来る日に向けて準備をしてはいたが、起きないのではないか、と皆で言っていたのだ。うーん、起きてしまった。
「とりあえず逃げてくる民に場所を提供するとして、同じように引き連れて将兵があらわれたりしないですかね」
「あぁ、ありえますね。しかし、主力は恐らく織田との戦の最中に巻き込まれているはず。居留守役が長安を離れるとは思いませんが」
「おっきな蛇はこっちに来ないかな……」
「さぁ、どうですかね。この混乱を機に妖魔達の動きも活発になるでしょうし」
そんな会話をしていたら、徐庶さんと馬超さんが入ってくる。
「妖蛇が出た、が、こちらには見向きもしていないよ」
「時期に妖魔が各地に現れるようになるだろう。とりあえず、民を放っておけはしない。逃げてきた民や兵は幾らかは引き受けられるだろう」
==
民を率いて逃げてきた将兵と合流し、あらかじめ森を切り開いておいた家の付近に簡易な野営を作ったのだが、寒くはないだろうか。とりあえず織っておいた大きな毛布をそこにいる人達に与え、気を少しでも落ち着かせるために暖かな梅酒、子供には少し甘い飲み物をいれて配る。同じようにそこにいた李典殿と楽進殿に飲み物を渡す。この二人がいてなんというか、張遼殿がいないのは不思議な感じである。
「ありがとうございます」
「いやー、こっちに逃げたらいい予感はしてたんだよな」
そう言って杯を両手で持った彼らに、あ、毒見,と思ったがそのまま飲んでいるあたり大丈夫だったのだろう。
「酒ですか?」
「果実酒でございます。……あ、お酒飲めました?大丈夫ですか?子供は別のものを」
「えぇ、大丈夫です。何から何までありがとうございます」
「いえ……娘が長安に大きな蛇が現れるのが見えた、と言っていたのですが、何かご存知でしょうか?」
「ええ、大きな蛇が現れ、長安の都ごと丸呑みに。殿達は行方知れずのため、俺たちが城を守っていたのですが……」
と,言うことは自分達が見えていない、噂も遅いためにこちらに情報が入ってないだけで各地にあれはもう出たのだろう。
「それは蜀の方も?」
「わかりません」
「が、嫌な予感はしてるから蜀も多分ダメだ。アンタはここで一人……」
「母上ー!配ってきた!」
そうかけてきた娘の頭を撫でる。李典殿はそれを確認して口を開いた。
「……家族で暮らしてんのか?」
「えぇ、家族と親類とで布を織ったりして……」
「噂の方でしょうか?」
「噂?」
「あぁ、山のあたり質のいい布を売りにくる夫婦がいるって話な。なんでも夫が蜀の馬超にそっくりだとか……」
違う世界のその人です、とはお口にチャックだろう。
「ナマエ、向こうにまだ毛布はあるか?蜀の方面からも民が数人逃げてきた……む?」
そう二人を見下ろした馬超さんに、二人は驚いた顔をする。
「は?馬超?」
「あ、もしかして噂の馬超殿のそっくりさんでしょうか」
「……恐らくな。山を降った南の方に俺と似た人間がいるのは見たが。貴殿らは魏の将……だろうか?」
「ええ、そうです」
「蜀の将も今民を誘導してきたが、喧嘩はしてくれるなよ」
「こんなところでできるわけないですよ」
==
妖魔がくる→馬超殿が援軍引っ提げてくるってことは一回全滅したのでは?と思ったが、そう言うことでもなさそうである。向こうは戦力が欲しいのだろうし、まぁ馬超さん達も協力するつもりではいるようだが。そっくりさんが四人にいる形になるが大丈夫だろうか。というよりも、私がいることで蜀の将兵のメンタルが大丈夫だろうか。私は大丈夫である。彼らは彼女を信じただけであり、悪いのは彼女だろうからだ。私もさっさと見切りをつければよかった話であるし。
「ナマエ殿!」
ぱあっと目を輝かせた馬超殿は、無事であったか!と寄ってくる。私はその目に弱い。とても弱い。まぁ、娘が割り込んだが。
「父上にそっくりな人!!だめだぞ!!母上は父上のだし、父上は母上のだからな!!そして白と兄上はふたりのだ!」
通せんぼした白に、馬超殿がとまる。そうして、目を一度伏せると、うむ、とうなずいた。
「そうだな」
「わかったならいい、父上にそっくりな人!」
うむ、と白が頷く。うーん、やりとりが可愛い。とても可愛い。ふふ、と肩を揺らして笑う。クスクス笑えば、娘がぽこぽこ怒りながら私をみあげてほおを膨らませた。それを見た一部が何か驚いて見せたが知らないふりをしたのだが。
==
「貴方達は彼女を信じただけですし、誰が犯人なのかは私はわかりません。他の人が彼女をそうしようとして、たまたま私と勘違いされた可能性だってありますから」
そういえば彼らはなんともいえない顔をしたのだが。いやだって事実だし。彼らは私ではなく、彼女を信じた。正しくは彼らの多くは彼女を信じた。少しの温情として馬と路銀を渡し、騒ぎを丸く収めるために私を外に出したのだ。馬岱殿は変な顔をした。
「覚えてたの?」
「許します、というよりも、覚えてないふりをしていた方が気が楽でした?」
梅酒を注ぎながらそう尋ねる。彼は眉尻を下げる。これは困った顔だ。
「うーーん、俺は、これでいいよ。やったことはなかったことにならないしね。キミを見て苦しむ蜀の将兵がいるのは確かなんだけど、でもそれってさ、結局は自分が悪いんじゃない。だから、これでいいよ」
「そうですか」
「でもびっくりしちゃった。ナマエ殿も他の世界から来てたんでしょ?」
「その話も彼女から?」
「まぁね、ナマエ殿は一切そういうことは俺たちには言わなかったけど、あの子は結構色々言ってたのよ。他の世界から来た、とか、色々ね。あたったり、外れてたり色々してたけど……ナマエ殿の旦那さんが若にそっくりなんだもんなぁ。それどころか、俺たちにそっくりな人もいるし。そりゃあ対応違うよねぇ」
はぁ、とため息をついた彼の頭をくしゃくしゃ撫でる。子供じゃないんだけどなぁ、とぼやきながらも払い避けない彼は嫌ではないらしい。
「馬岱殿は苦労人ですね」
「わかっちゃう?俺って結構苦労してるのよね。間に挟まれたりとか、若のお世話とかさー。でも、君のお世話は嫌ではなかったよ」
Comment(0)
次の日 top 前の日