2021/06/21
↓改変
なんか知らない場所にでた、とふよふよする。私の住んでいる研究所跡地の穏やかな牧場のあたり一体に霧が出たと思えば恐らくは全く知らない場所にドッキングされた。森はいい感じであるが、なんせ血生臭いというか平和っぽくない。そもそも私に融合したモノは平和な森にしか現れない気質であるので、私はこの場にそぐわないというわけだ。撤収、撤収ー、と宙返りを決めたところで誰かと視線がかち合った。人間である。いや、私も人間だが、人間じゃないというか、なんというか。武器を構えた人間は怪我をしているようである。事情も聞きたいし、そのまま地面に降りて、ととととかけてみる。ぐるぐると周りをうろちょろし、私の時代の人間じゃないな!と納得した。ずいぶん昔にいた世界の中華服系に似ている。
「敵意はない,のでしょうか」
「あぁ、ごめんなさい。珍しい服装してるからみてしまった。こんにちは」
そう声をかければ彼らは驚いたような顔をした。わぁ,イケメンばっか。その中にいる金髪っぽい男性がにこりとわらった。
「こんにちは、お嬢さん」
「私はナマエです。よろしくおねがいします」
手を差し出せば彼らは目を瞬いて、首を傾げた。握手の概念がないのかな?と思っていれば同じように手を差し出したので手を握ってふっておく。
「私のいる場所での挨拶です。これからよろしくお願いしますってことです」
「素敵な挨拶だね」
「お兄さんたちは酷い怪我してますね。やっぱり何かあるんですか?」
そう言って破けている服から覗く怪我をつつく。治るんだな。金髪のイケメンは目を少し見開いた。
「逆に……貴方はどうしてここに?」
「気付いたら家ごとこの世界にいました。家から少し離れてみれば物騒そうなので家に撤収しようとしてたところです。まぁ,こんな場所ではなすのもなんですし、お兄さんたちもきますか?」
「それは助かる」
「この森は迷いやすいので気をつけてくださいね。あ、歩けます?」
結構怪我がひどい人がちらほらいるんだよなぁ、と様子を伺う。森の中を歩くと面倒だからテレポートしてもいいのだが。大丈夫です、と、よろよろと立ち上がった男性に無理は良くないんだよなぁ,と思う。あと嫌な感覚がびしばしくる。ということは、テレポートするのが正解か。
「ふわっとする感覚大丈夫です?」
「ふわ?」
「なんだろう、浮遊感?まぁ、嫌な予感しますし、サクッと移動しますね」
そう言いつつ五人の服を掴む。そのままテレポートの予備動作に移れば体が浮いた。は、と驚いた彼らにそのままテレポートで私の家の近くに飛ぶ。言うなればジャンプの着地の感覚である。さてさて,家に帰ってきたぞ、と門を開ける。
「怪我してるしこっちどうぞ」
そう尋ねれば、彼らは唖然と私を見た。うん?ポケモンの仕業と普通はみんな聞くのだが、彼らはそうではないのだろうか。
「ねぇ、キミ,今のどうやっ……いててて」
「どうって、ポケモンのテレポートですよ」
「ぽけもん?てれぽ?」
「おっとこれはまさかの展開がでたな……まぁ、とりあえずどうぞ」
私はもう中に入るぞ。とりあえず門と扉を開けたままにすれば中に入ってきた。なんかこそこそ言ってるが知らん。くつはちゃんと脱いでくれている。
「そこのソファに座っててください」
「そふぁ?」
「うーん、ながいす?」
そう言ってソファを指差す。理解したのか、怪我のひどい人を先に座らせた。いや、一番怪我がひどい人が一番ワクワクしてるっぽいけど。
「いやぁ,見たことがないものばかりでワクワクするね!……いててて……」
「お兄さん一番重症っぽいのに元気ですね。手当てあとでいい?」
「そこは別で頼みたいなぁ」
そう言った彼の腕の傷をつっつく。うーん、治りが悪い。これは私じゃない方がいいな。タブンネちゃんとルカリオに手分けして頼もう。
「ルカリオー、タブンネちゃん、怪我人治すの手伝って」
廊下に向かって声をかければルカリオがやれやれというふうに顔を出す。
「え、なに、そこにいたの?」
刻々と頷いた彼に、これは多分インテレオンとゲッコウガも廊下で待機してるなと思うが、まぁそれは良い。彼らは心配性五大ポケモンのうちの三匹である。あとお兄さん達が警戒した。
「……獣?」
「うーん、そういう反応するっていうことはやっぱりお兄さん達の世界にポケモンはいないのかぁ。まぁ、いいや、ルカリオー、癒しのはどうでお兄さん手当てしてあげて」
そういえばちらりとこちらを見る。大丈夫大丈夫と言えば彼はため息をついてお兄さんの傷に手を当てた。青い光がともりお兄さんの傷がだんだん治っていく。まぁ、流石に全部は治らないようだが。タブンネちゃんとフシギダネが救急箱を持ってやってきた。
「ありがとう、タブンネちゃん、フシギダネ。タブンネちゃんも他の人の手当てお願い。フシギダネは救急箱私に頂戴」
そういえばタブンネちゃんは鳴き声をあげて、座ってるもう一人に手をかざす。フシギダネが救急箱を蔓でつかんでやってきた。
「これは凄い!怪我がほとんど治ってる!」
「ダネフシ!」
「ねー、フシギダネ。包帯巻きたいのに、困ったお兄さんだねー?」
「ダネダネ!」
「見たことがない生き物ですね」
「うーん,じゃあやっぱりお兄さん達の世界にポケモンはいないんだね」
「ぽけもんとは?」
「この子達みたいな……動物のことです」
フシギダネとタブンネちゃんが不思議そうに首をかしげる。
「この人達の世界にはポケモンがいないんだって」
「ダネ?ダネダーネ?」
「タブンネー?」
「そうそう」
そう言って相槌を打てば、フシギダネが蔓を伸ばす。掴んだのは本のポケモン図鑑だ。ずいっとそのまま近くにいたお髭のお兄さんに本を差し出す。
「ええっと、これは」
「図鑑を読んで自分達のことを知ればいいよってことだと思います」
「ずかん、ですか」
「んんー、見たことがない文字だね、こりゃ。倭の国の文字でもないのを見ると……本当に知らない世界のようだ」
「あー、まず文字の壁があったか。ええっとここにのってる動物達をポケモンといって、私の世界では一緒に暮らしています。不思議な力を持っていることが多いです」
「傷が癒えたのも不思議な力というわけですか」
「そういうことです」
私は頷いて軽くなった怪我に包帯をまいていく。うずうずワクワクとしているお兄さんに動かないでくださいよー,と言っておいた。
「先程、いきなり場所を移動したけれど、アレはどこにでも行けるのかい?」
「いえ、私が行ったことがある場所しか行けませんね」
「ということはお嬢さん達は先程の術で移動しても、先程私達があった場所までしかいけないんだね」
「そうですね。あー、お兄さんたちが帰る術かぁ。うーん、街に帰るなら空を飛んでビューンと移動してもいいんですけど」
「は?」
「空を飛ぶ!?」
ずいっと顔を近づけたお兄さんはうーん目をキラキラさせてらっしゃる。
「キミの世界では空が飛べるのかい!?」
とびたい、と目をキラキラさせてらっしゃる。
「ところで、お兄さん達高いところ大事なんです?」
「高いとは、どれくらいの距離ですか?」
「どれくらい……ううん、どれくらい……雲ぐらい?」
そう首をかしげる。想像があまりつかないのですが,と困り顔でつげた彼らに、いやうーんと困った顔をした。配慮するのが面倒だ。
「まぁいいか、空飛んで近くまで帰って貰えば」
こっちこっち、と手招いて飛行ポケモン達がたくさんいる場所にむかう。いくいく!とワクワクしたように続くお兄さんは冒険向けである。
とりあえず飛行ポケモンがたくさんいる場所は植物園みたいな場所を抜けた先である。天井が開け放たれたそこにいるのは比較的小さな飛行ポケモンである。なんだなんだと私の頭に止まったり、誰だ誰だとお兄さん達を見つめているポケモン達は置いといて。とりあえず近くに置いてあった籠をみる。たまに使うからメンテナンスはしっかりしてるし大丈夫だろう。籠を触っていたからか察したようにバサバサとアーマーガアやピジョットが空から降りてきた。みんな一緒ということはお散歩してたのかも知れない。
「アーマーガア、悪いんだけど、そこにいるお兄さん達を元いた場所に送りたいんだよね」
アーマーガアを撫でる。了解した、という風にないた二匹にお兄さんたちをみる。
「まさか、その籠に入るのですか?」
「はい。私の世界の、地方によってはこういうふうに空を飛びます。まぁ、ここでなんやかんや言ってても始まりませんし、サクッと行ってサクッと帰らないとお兄さん達の知り合いが心配なさるのでは?」
「あっはっは!それはそうだ」
「乗るしかないのですか……」
若干がっくりとした一部の彼らに私は首をかしげる。しかし、まぁ、了承したのか若干渋々やってきたが。
「ううーん、お兄さん達はポケモン知らないですもんね。そりゃあそうなるか。この子達はとても賢い種族です。大丈夫ですよ」
とりあえず籠にそう言いながら押し込む。さすがの大人数向けタイプであるが、さすがに大人五人は無理だったか。
「身長高いお兄さんは一回降りて」
「ええっ」
「貴方は空を飛ぶのが怖くなさそうなのでポケモンの背中です」
そういえばピジョットがやってくる。
「ピジョット,このお兄さん乗せれる?」
了解、みたいにないたピジョットに、一応ハーネスつけていい?と聞けば頷かれた。まぁどこ捕まればいいかわからないからな。
「この手綱を掴んでおいてください」
「わかったよ」
「とりあえず会った場所までテレポートで飛びます。そこから空を飛びますね」
そう言いつつ頭に乗ったポケモン達をおろし、テレポートでそのまま会った場所に向かった。よし。ピジョットの背中に乗ったお兄さんをみ、私はアーマーガアにのる。
「浮遊感しますけどそこは我慢してくださいね」
そう言って宙に浮かぶ。そのままグングンと空に浮かびあがり、森を抜け、雲ぐらいの高さまで上がる。
「お兄さん達、どっちに……」
そう尋ねようとすれば、お兄さん達が感傷に浸っているらしいのがわかる。ピジョットが隣にスイスイとやってきた。
「お兄さん達の家はどちらです?」
「北のあたりに向かってくれないかな?」
下から聞こえた声にじゃあこっちかとそちらに向かう。うーん、陽が沈みかけている。
とりあえずついた場所は街っぽかった。でも多分かなりふるい。時代が昔のようである。時をかけちゃったらしい。流石に街の中に入るのはどうかと思ったので少し郊外に降りる。ピジョットに乗っていたお兄さんは楽しかったのか目をキラキラさせている。籠から四人を下ろしていれば、興奮気味に口を開かれた。
「これはいいね!初めて空を飛んだよ!というか私達の世界で初めて空を飛んだのは私達にちがいない!」
「あははは。そうかも知れないですね。じゃあ私そろそろ帰りますね」
「おや、つれないね。私達を救ってくれたんだ、一緒に食事でもどうかな?」
「うーん、みんなが心配するのでそれはまた今度。じゃあまた」
そう言ってひらりと手を振ってポケモン達とテレポートして帰る。さて、ご飯!である。
==
物騒だから出あるかねぇと決めていたのだが、うっかりちょっと散歩した先に綺麗な泉がある場所を見つけてしまった。うわーい!お気に入り!である。水の中にはずいぶんと昔に見たような普通の魚達が泳いでいる。わーい、と水遊びしていれば、茂みが揺れた。なんだ、とそちらを見れば、顔を覗かせたのはまたボロボロの人である。緑色の服を着た人は武器を構えたが私しかいないとわかったんだろう。「……子供?」と言いながら武器を下ろした。物騒だなぁ。
「キミは……この辺りに住んでるのかい?」
「ちょっと先のほうですけど」
そういえば助かった、とため息をついた彼に,迷子か,と思いながら足で水をチャプチャプする。
「お兄さん迷子?」
「ええっと、そう、なる、かな」
項垂れたお兄さんに、まぁこの辺り迷う感じの森ですもんねと言っておく。多分迷いやすいのはルミナスメイズの森よろしくポケモンの仕業もあるだろうし、私の家のあたりが悪しきものを寄せ付けないという話だからだろう。
「まぁ、がむしゃらにいっても迷うだけだし、ちょっと休憩していけばいいですよ」
そう言いながら隣を叩く。彼は大きくため息をついて、そうかも知れないとぼやきながら隣に座った。まぁ、そっと目を逸らされたが。
「……あまり女性が足を見せない方がいいよ」
「水が気持ちいいんです。お兄さんもしたら?」
そう言えば彼は寸分迷って靴を脱ぐと同じく足をつけた。
「あぁ、確かにこれはちょうどいいね」
「でしょう?お兄さんはどこからきたの?キョショウっていうところ?」
「いや……どうしてそう思ったんだい?」
「この前何かに追われてた人は許昌から来たって聞いたから、みんなそこに住んでるのかなって」
鞄からマゴの実を取り出して食べる。うむ、甘い。
「お兄さんも食べる?」
「見たことがないけど……きのみかい?」
「マゴのみって言うきのみです。多分お兄さんの世界にはないんじゃないかなぁ」
はい,と渡せば彼は恐る恐るかじった。
「美味しい」
「でしょ」
「俺の世界にないって言うことは、キミは倭の国から来たのかい?」
「ワノクニ?」
「ええっと、日の本?」
今の私は違うので首を左右にふる。彼は目を瞬いた。
「気づいたら家の周辺ごとこの森の中に移動してました」
「えっ」
「でも平気です」
ポケモン達もいるし、と思う。きのみを食べながらお兄さんは眉尻を下げた。
「危ないよ、妖魔だっていつ攻め込んでくるかわからないし……」
「ヨーマ?」
「ううん、いざ説明となると難しいな。とにかく、戦場になるかも知れないんだ。危ないよ」
「ううーん、ちょっと対策考えますね」
「あぁ、そうしたほうがいい。なんなら成都に来るかい?劉備殿なら恐らく保護してくれると思う」
「それも考慮にいれますね」
うーん、やっぱり物騒な世界だ。外に出たい欲と出たくない欲がせめぎ合っている。
「お兄さんはセートからきたの?」
「そうだよ」
「西側にある森の中にある街?東側の海沿いにある街?」
「東側の海沿いにあるのは恐らくは呉かな?成都は西側……になるのかな。この森の位置がいまいちわからないから明確には言えないんだけど」
「キョショウのあたりならこの前行ったから連れて行ってあげれるけど、そっちは行ったことがないからなぁ」
「森から出ることは?」
「それはわかりますよ」
そう言いつつ草原に寝転ぶ。見えている空は澄んでいる。
「うーん、穏やかないい天気ですね」
私の言葉に男性は穏やかな表情を浮かべて「そうだね」と空を見上げた。
まぁ,陽が落ちるまでにはお兄さんをちゃんと送り届け,私は家に帰ったのだが、ポケモン達に心配されてしまった。気をつけよう。
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海に行きたくなったので夜にこっそり空を飛び、明け方の海の方までやってきた私である。今回はきちんとモンスターボールもってるから許して欲しい。とりあえず綺麗な貝殻を拾い集めて貝殻の鈴を作るとしよう。いくつかの貝殻を拾い、鞄に入れる。あとは海に足をつけながら知り合いにもらった笛を奏でてみる。これ元の世界だと知り合いとルギア現れるがそう言うこともなさそうだ。くるくると周りながら笛を吹いていれば、子供?みたいな声が聞こえたのでやめた。しまった近所迷惑だったか。こちらに寄ってきた彼は申し訳なさそうにこちらにやってきた。
「悪い、邪魔しちまったか」
そう言った彼に首を左右に振っておく。近所迷惑はこちらである。
「見かけない顔だな、商人の娘か何かか?」
「ショーニン?」
「違うのか?」
「多分違いますねー。今日は海を見にきたんですよ。ついでに綺麗な貝殻拾いしてたんですけど、あまりの綺麗さに嬉しくなって笛を吹いてしまいました」
時代が昔だからか汚染も何もないんだろう。朝日が登ってキラキラ光る海を見つめる。うーん、綺麗だ。森の美しさとはまた違う景色である。
「見慣れた景色だがな」
「そう?勿体無いなぁ」
「勿体無い?」
「見慣れるのって損だよ。すごい綺麗な景色なのに。それに毎日景色って同じようで違うんだよ」
そう説明すれば彼は私を見下ろした。
「波の音とか風の音、天気や雲の数、空の色とそれを映した海の色。毎日同じなんてないと思う」
「……そうかもしれないな」
彼はふっと息を吐いてまた海を見た。私ももう少し海を眺めていたいがそろそろみんなのご飯を手配しないといけない。
「そろそろ帰る。じゃあね、お兄さん」
ばいばいと手を振る。彼もまたひらひらと手を振った。そのまま人気のない場所でテレポートして帰る。ご飯を食べたら鈴の量産である。
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私が貝殻の鈴をつくると漏れなく癒しの鈴効果も付属されたりする。便利だからと知人の中では好評である。この間拾った貝殻でたくさん作れたのはいいことだ。
まぁ、そんなこんなでキョショウである。市井の品とかきのみとかを見にきたのだが、お金がないことに気づいてしまった。ああ、もーもー、と思いながら羨ましげに桃を見つめる。ぐぅ、となったお腹に隣にいた人が苦笑いした。
「お嬢ちゃん、貴石はもってるのかい?」
「きせき?」
そう首を傾げれば彼は苦笑いし、店主は目を瞬いた。
「わからないのか?銅銭のかわりだよ」
「うーん、もってない」
「なら物々交換だな」
物々交換……と鞄の中を見る。うーん、つくった貝殻の鈴とかしかないや。
「こんなのはあるよ」
そう言って貝殻の鈴をみせる。揺らせば綺麗な音が鳴ったそれに、奥にいたお婆ちゃんが「おやまぁ」と告げた。
「美しい音だねぇ」
「貝殻の鈴だよ。私が作ったんだ〜」
えへへ,と笑いながらお婆ちゃんに鈴をみせる。揺らしてもないのに、もう一度鳴った鈴の音に、おや?と思う。
「お婆ちゃん、どこか体が悪いの?」
「もう年だからねぇ、仕方ないのよ」
「そうなの?うーん、じゃあ、お婆ちゃんにこれあげるね」
「おやまぁ、いいのかい?」
「いいよ、鈴は作ればいいし、きのみはまた今度でもいいし」
この世界のお金の代わりである貴石とやらを持たない私が悪いのだ。揺れてもない鈴は美しい音をまたたてる。
「本当に綺麗な音ねぇ」
「母ちゃんが、喋った……?」
うん?と首をかしげる。店主がかけてきて、母ちゃん、とお婆ちゃんを見て手を握った。どうしたんだい?と店主の名を呼んだお婆ちゃんに、彼は泣いた。うーん?と首を傾げる。周りがなんだなんだとこちらを見るあたり何かしてしまったようだ。私の近くにいたあの男性が私を手招いた。
「お嬢さん、こちらにおいで」
お店の裏側に回った彼について行くことにする。そのまま彼に手を引かれて細い路地を抜け、大きな建物の前にたどり着いた。おお。
「すごい!おしろだ!うん……お城?まぁいいか、お城だ!」
「……お嬢さん、先程の鈴は?」
「貝殻で作った鈴だよ。なんでかわからないけど、私がつくると体が悪い人がいると揺らしてないのに鳴るんだ。おじさんもいる?」
そう言ってもう一つ鈴を取り出す。おじさんには音が鳴らないということは状態異常でも怪我をしているわけでもなんでもないのだろう。不意に鈴が鳴る。あれ?と思えばお城の方からこの前の金髪のお兄さんが現れた。
「おや、華佗先生とこの前のお嬢さんじゃないか」
「お兄さん、こんにちは」
「こんにちは。許昌にようこそ」
そう言った彼にもう一度鈴が鳴る。うーん,なるほど、反応してる。
「お兄さんにこの鈴あげる」
「?いいのかい?」
「いいよ、まだたくさんあるしね。おじさんも、はい」
そう言って二人に鈴を渡す。お兄さんは「ナマエ、だったかな?」と首を傾げた。
「ナマエはどうしてここに?」
「キョショウの街を見にきたよ。おいしそうなきのみを見つけたけれど、きせき?をもってなかったから買えなくて……色々あって、いま」
「おや、ではこの前のお礼もあるし、一緒にご飯を食べに行こうか」
「やったー!でも、お兄さん、私きのみとかお野菜とか甘いのしか食べれないよ」
「君の世界の人間はみんなそうなのかい?」
「ううん、私だけ」
好き嫌いと思われるかもしれないが、それは仕方ない。じゃあ、行こうと手招いた彼に私は男性に手を振ってからお兄さんの隣に並んだ。
「センセイっていうことは何か教える人?」
「いや、彼は医者だよ」
「お医者さん!」
ははぁ、なら鈴を渡して正解だなと思う。先程と違う通りに行けば美味しそうな匂いが漂ってきてテンションが上がったのだけど。
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きのみが美味しくて、なおかつ桃包が美味しかったのでテンションが爆上がりしてしまった。貴石はまぁなんとかなるというか、言ってくれたら一緒に買いに行くと言ってくれたお兄さんこと郭嘉さんは良い人である。あとあの人鈴が結構な頻度でなるから体悪いんだと思う。
そんなこんな、桃包が食べたくなって郭嘉さんのところにテレポートしたら血のにおいがすごいした。うえ。そして私が現れたことに周りが騒然とする。
「貴様、何者だ!!」
そう言って向けられた武器に私は半泣きである。うぇぇ、暴力反対,どうしようと、と思っていれば、誰かが武器をそっと降ろさせた。
「貴方はたしか、ナマエですね」
「この前のお兄さんだ!」
そう言って彼の後ろにまわる。そうしてまわりをみた。うええ、怪我人ばっか。彼は私を見下ろした。
「どうやって、は、愚問ですね。ナマエはどうしてここに?」
「郭嘉さんに桃包もらいにきた……」
私がそう言えば彼は桃包,と繰り返す。なんだ、おいしいじゃないか。私は気に入ったよ。
「荀攸、その子供は。どこから現れた」
「敵ではありません。この子の場合、いつも神出鬼没です」
「妖魔ではないのか」
「この子は害をなす子供ではありません、郭嘉殿を尋ねてきたようです」
「おいおいこの戦の最中に?」
「この子は世間に疎いようですので」
「戦だとわかってたらこなかったよ」
そう怪我だらけの人を伺うように告げる。ううん、怖い人ばっかりである。帰るかな、と思っていたら目の前のお兄さんが私をみた。
「郭嘉殿はこちらです」
「おい、荀攸」
「心配ありません、この子はすぐに帰ります」
おいでと手招いた荀攸さんに私は彼の隣に並んで裾を握って怪我人の間をすすむ。負け戦と呼ばれるものに近いんだろうか。テントのようなものに近づけば、リーン,リーン、と貝殻の鈴が鳴っているのが聞こえた。
「この中です」
そう言ってテントの中に入れば郭嘉さんが手当てをされて横になっていた。リーン、リーン,と美しい音がなるのは私のあげた貝殻の鈴だろう。私は彼に駆け寄ってみる。意識はないのだろう。真っ白な顔だった。
「ひどい傷だね」
「ええ」
「寝ているの?」
「……このまま起きないかもしれません」
そう告げた荀攸さんに私は彼を見上げる。表情は変わらない。そのままもう一度郭嘉さんをみる。リーン、リーンと鈴が鳴っている。寝ているわけではないということはこの人は死んでしまうんだろうか。そう疑問に思ってもう一度荀攸さんを見上げた。
「郭嘉さん、死んじゃうの?」
「……このままでは、否定はできません」
それは悲しいことだ。人間の命はただでさえ短いというのに、彼はその命の灯火をもう消そうとしている。いや、誰かに消されたんだろう。そっと彼の顔の傷をつつく。治ったそれに荀攸さんは何も言わないが、ついてはいってきた人が目を見開いた。りーん、と鈴が鳴る。傷が癒えれば彼は起き上がるのだろうか。手のひらから湧き出た水を彼の傷にかける。何が,と誰かが口を開く。荀攸さんも息を詰めたようだった。水は彼の体にかかり、そして傷とともに消えて行く。そうして幾度かの『いのちのしずく』をつかって、彼の傷は癒えた。鈴の音色がやんだ。ふむ。
「郭嘉さん、郭嘉さん、おはよう」
そう私が郭嘉さんをゆすれば、彼はゆっくりと目を開いた。そうして私を視界に写した。
「おや……ナマエじゃないか。もしや、またナマエが助けてくれたのかな?」
「うーん、桃包のためだから、仕方ない!」
私はそう言って彼から離れる。彼は笑っただけである。起き上がれる?と聞けば彼はゆっくり起き上がった。
「奇跡としか」
「嘘だろ嘘だろ、あんな傷死んでもおかしくなかったんだぞ。何が起こったんだ?」
「李典殿、楽進殿、ナマエは俺たちとは違う世界の存在です。俺たちの常識にあてはめてはいけません」
荀攸さんはそう言って、私の頭をなでる。はっぴーである。私は彼らの周りをくるくるとまわる。
「ねぇねぇ、なんでみんな怪我してるの?」
「妖魔が攻めてきてね。三国や倭の国があつまって守っていたんだけど、この有様さ」
「どうして攻めてきてるの?仲良くできないの?」
「仲良くできたらいいんだけどね、妖魔は人間を敵視しているし、戦乱を好むから難しいのかもしれないね」
郭嘉さんの言葉に、ふぅん、と告げる。
「ねぇねぇ、もうみんなお家に帰るのはどう?みんなすごい怪我なんでしょ?」
「怪我をしているから帰るのも難しいのです。人を運ぶ馬も傷ついていますから」
「あー,そりゃあそうだよね」
「ナマエ、何かいい案はありますか」
「さっきみたいなのはできないのか?」
「あれはもうちょっとしか使えないんだぁ、ごめんね!でも、まぁ、うーん。この辺りを草原とか木をはやしていいならいいよ」
「草原?」
「このあたりはヨーマはいないの?」
「今のところはね」
じゃあいいか,と思う。みんなが家に帰るためのものだ。テントの外に出る。そのままくるくると回れば、風が吹いた。それに乗じてぴょんっとジャンプすれば足元からまるで波紋のように緑色の光が広がっていくと草原が広がって行く。心地よい風が葉っぱを運ぶ。
「これは……」
そう言って荀攸さんや郭嘉さんがあたりをみわたし、別の人が草に手を伸ばす。すると手先の傷は消えるんだよな。
「ここにいると徐々に回復するけど、多分時間経てば効果は無くなるよ。元気が出たら、みんなで家に帰れるでしょ?」
「そうだね、ありがとう、ナマエ」
「お礼は山盛りきのみでいいよ」
そんなことを言っていれば周りが効果を理解して騒ぎ出す。うーん,これは一度私は撤収した方がいいだろう。
「近くに食べ物屋さんはないし、一回帰る」
「今回ばかりはそれがおすすめかな」
「また遊びにくるねー」
ばいばーい、と手を振ってテレポートを使う。うーん、家の仕事をしよう!
==
「あ、このまえのマゴのみ一緒に食べたお兄さんだ」
「キミは……」
こちらを見たお兄さんに私は手を振って近づいてみる。彼は私を見下ろして首を傾げた
「まさかあの森から来たのかい?」
「うん、お兄さんがいるっていうことはここがセイト?」
「そうだよ」
「へぇー、キョショウとはまた雰囲気が違うんだね」
そうまた周りを見渡す。緑が多くて大変良いし、たしかパンダもいっぱい山にいるので良い。あと穏やかなんだろう。私が好きな街だ。キョショウは穏やかというより賑やかだしな。
「ええっと、」
「あ、名乗ってなかった。私はナマエだよ」
手を差し出せば彼は首を傾げ、同じように手を差し出したので握手する。
「徐庶……徐元直だ」
「じょしょ……じょげんちょくさん?全部が名前?」
「あぁ、そうか、キミの世界には字の文化がないのかな?」
あー、なんかあったな、そんなの。そう思いながら「ないね!」と頷いた。あと、徐庶さんでいっか!と言えば彼は困った顔をする。あと字云々を教えてくれる彼は良い人だと思う。屈んでくれてるし。元直さんって呼んだ方がいいのか。
「ねぇねぇ、元直さん、元直さん、セート案内してよ」
「そうだな……いいよ。丁度俺も手が空いているから」
やったね!とぴょんぴょん跳ねる。彼はゆるやかに笑んで手を招いたのだけれど。
じいっとお兄さんを見つめる。彼もじいっと私を見下ろす。うーん、と首を傾げれば彼も首を傾げたのだが。のんびりしている。草タイプかフェアリータイプじゃないのか??
「見かけない子だなぁ」
「森から来たからね!今は元直さんとセートの街を回ってるよ」
「なるほど、そうだったのか」
「お兄さんはこの街の人?」
「そうなるなぁ」
のほほんと笑った彼に私は「ほーん」と思う。いい服を着ているあたり偉い人ではなかろうか。元直さんは桃買ってくれてるから待機である。
「お兄さんは何してるの?」
「隠れている」
「どうして?」
「うーん、鍛錬は苦手なのだ」
そう困った彼に、苦手なことってあるよねぇ、と私も頷いた。
「私も誰かをえいやって攻撃するの苦手だよ」
「そうか、私も同じだ」
「あとねー、戦も苦手。みんな仲良くしたらいいのにねぇ」
「そうだなぁ、それができたら私も鍛錬をしなくてすむ」
「不思議だねぇ、なんで戦なんてするんだろうねぇ」
「……そなたはどう思う?」
「うーん、お腹すいてるから?」
「そうかもしれないなぁ」
「でも、この前友達にいったらねぇ、人間の大人は難しいんだよ、って言われちゃった。子供はすぐ仲良くできるのに、不思議だねぇっていっつも思ってる」
私はそう言って段差に座って足をぶらぶらする。彼はまた不思議だなぁ,と目を伏せた。
「お兄さん名前なんていうの?あ、私はナマエだよ」
「ナマエか。私は……阿斗という」
「アトさん?」
「あぁ」
「よろしくねー、アトさん」
そう手を差し出せば,彼は目を瞬いてから、あぁ、よろしくたのむ、と同じように手を差し出したのだけど。
しばらくしたらアトさんは追っ手がくるからとそこから離れ、別の人が別の人を探しに現れた。なんだったんだ??とハテナを浮かべていれば元直さんが桃を買ってきた。どうやら何かお店の人とお話していたらしい。はい、と渡された桃に目をキラキラさせる。わーい!とかぷりと食べたら元直さんも笑ってかぷりと食べた。
==
「郭嘉さん、こーんにーちはー」
そう言って郭嘉さんの後ろから抱き付けば、郭嘉さんじゃなくて荀攸さんが一番びっくりした。なんでだ。
「おや、ナマエ。久しぶりだの。あの後すぐに来るかと思っていたけれど」
「あの後はルカリオたちが危ないからそっちに行っちゃダメって言ってたから」
いやぁ、戦場にいたとばれた瞬間怒られた。めちゃんこ怒られた。心配をかけてしまった。すまん。
「あー!この前の子じゃないか!聞いたよ、また不思議なことが起こったとか。是非とも私がいる時にして欲しかったね!あとキミが持っていたずかんを読みたいんだけど文字が全くわからなくてまいっていたんだ。書かれてる絵だけでも面白いんだけどね、文字と一緒にかかれているあの印はなにかきになるし」
マシンガントークである。身長高いお兄さん興味もったらわ4っくわくなんだろうな。わかるー。
「あっはっは、満寵殿、お得意の会話はいいが、その子が困ってしまっているよ」
「おっと、ごめんよ。まぁ、とりあえず私は君にあいたかった、というわけだ!」
「なるほどー、でも、私もお兄さんとお話ししたかったよ。でも、文字は私の世界は地方によって文字が違うからややこしいかも」
「持ってくるよ!」
そうたったっとかけて行く彼を見つめる。うーん、戻ってくるまできのみや桃包はお預けか。
「ナマエはいつもあの森の中に?」
「うーん、最近は、セートに行ったり、海に行ったりしてるよ。海の近くや大きな川の近くの街も行きたいなって」
「流石の行動範囲だねぇ。一日二日、下手をすれば何週間もかかるのにお嬢さんとお嬢さんの連れている動物にかかれば一瞬だ」
「郭嘉さんたちは何で移動するの?」
「馬が多いですよ」
「うま?ギャロップやバンバドロみたいな?」
「ナマエの世界の馬ですか」
そんな会話をしていればお兄さんが別のお兄さんと一緒にやってきた。この人も前いたな。
「こんにちは、このたびはまたあなたのおかげで助かりました」
「いいよ、郭嘉さんはお友達だしお兄さん達は郭嘉さんのお友達だし、困った時はお互い様だから」
「お友達……」
そう止まった彼らに私は首をかしげる。お友達じゃないの?って聞いたらお友達だよ!と図鑑を持ったお兄さんがいった。
お兄さんが持ってる図鑑をみる。うん、カントー版だからカントー語である。
「お兄さんが持ってる図鑑、カントー語で書かれているけど一番簡単だよ」
「カントー語、というのかい?」
「ジョウト地方と、カントー地方と、ホウエン地方と、シンオウ地方でかく言葉。単語がなくて、音を示した文字だから」
そう言ってカバンから紙を取り出し、五十音とかを書いて並べたところで、郭嘉さんたちの言葉がわからないことに気づいた。
「五十音表作ったけど、郭嘉さんたちの言葉がわかんないや」
「五十音表?」
「これが、あ、これが、い」
「ああ、ちょっと待ってこちらも書き写すから」
そういえば彼は別のものに移していく。うーん、漢字がみみずみたいでわからないね!ふむふむと書き上げた彼に私は図鑑を指差す。
「ぽ、け、も、ん、ず、か、ん、ポケモン図鑑」
「1字1字に意味はないのか。倭の国のひらがなやカタカナみたいなものだね」
「よくわかんないけどそう言うことだと思う」
「よし、これで読み進められるぞ。じゃあ、このマークは?」
「最後の方に乗ってるけど、ポケモンには十八の種族があって、最低でも一つはその種族にあてはまるんだよ。種族同士によって相性があったり、攻撃がきかなかったりする」
「ポケモンで戦闘を?」
「ポケモン同士でどっちが強いか戦わせたりはするよ。試合みたいな感じかなぁ。ポケモンと人の信頼関係とか戦略とかそういう感じで試合するの。兵器としてじゃないよ」
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