2021/06/21
花咲く君番外
パンケーキが食べたい。ふと頭の中によぎった言葉に、ナマエは手を止めた。こういうことを考えだすと思い浮かぶのはそのことばかりである。ナマエはため息をついてそれを振り払うべく機織りをするが,どうもパンケーキが頭から離れなくなった。ため息をついたナマエに近くにいた荀攸がナマエをみる。
「どうかしましたか?」
「ううん、一度家に帰ります」
「……」
「あぁ、えっと、公達殿に何かあるわけではないです。ただ、私の世界の食べ物が食べたくなったといいますか……」
「ナマエの世界の食べ物……」
「一緒に食べますか?」
「……食べます。しかし、時間を考えると明日にした方が良いのでは」
「それもそうですね」
確かに一理あるのだ。だから、公達と白と忠と四人で朝から行こうと話をまとめた。ナマエはその時は何も思わなかったのである。
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その時は思わなかったのであるが、人が増えた。いや、べつにいいのではあるが、軍師が一度に休んでいいのだろうか、とはナマエは思う。
「せん殿の隠れ処に行けると聞いて!」
「満寵殿……申し訳ありません」
「いえ、お気にせず。しかし、軍師がほとんど休んでいいのですか?」
「戦の予定はないよ」
「何かあれば仲達殿がいるからね。大丈夫さ」
「殿にも伝えていますので、お気にせず……」
そう言って申し訳なさそうにした荀ケに、ナマエは「ならばいいのですが」と困った顔をした。
ナマエがついたその場所は何もなかったかのように、ではないが、草なども新しく芽生え瞬く花が咲いていた。ナマエが飼っていた馬を離してやれば馬はまた敷地の中をかけていく。そうして湖の近くで草をむしゃむしゃと食べ始めた。
「建物の被害はあまりないようですね」
「はい、助かりました。作業場も無事そうです」
「作業場!」
「満寵殿が期待するようなものではなく、ただの機織り部屋ですよ。糸や布をそちらに一部置いてあるんです」
ナマエがそう説明すれば、満寵はそれでもワクワクしているらしい。先にかけて行った白と忠をおいかけていった。
「ううん、なるほどね。崖に囲まれているから基本的には上から攻め立てることはできずこの道だけが出入り口ということか」
「冬になると北側から出入りできますが、基本的にそうです。やはり、あれは仙術を使えるからそうできたのだと思います」
「しかし、美しい場所だ。迷い込んだ荀攸殿がここをーー」
「郭嘉殿」
そう何かを止めた荀攸にナマエは苦笑いした。子供達が扉を開けてこちらをみる。
「せん!家の中は無事だ!」
「それは良かった」
ナマエはそう言って先に家に向かうとする。心地よい風がふいて、近くに飾っていた風車が回った。それは以前と同じ穏やかな時間だった。
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「せん殿が以前、殿や公達殿、典韋殿と兵をこちらで助けたでしょう?」
そう尋ねた荀ケにナマエはそうですね,と頷いた。やはり冷蔵庫というかそういうものは補填されているようだった。ナマエはとりあえず目的だったパンケーキをつくるとする。
「その時に食べたものが美味しかったと兵達が言っていたのですが」
「ううん、あれはここでなおかつ少数だったからできたことですよ。野営では難しいとおもいます」
「なにを食べたかわかりますか?」
「最初は皆さんを労わる為にたまごがゆだった気はしますが」
後はなにだったかとナマエは考える。そういえば何か記録を付けていた気がする。
「記録をつけていたような気がします。後で探しますね」
「ありがとうございます。何か手伝うことは?」
「いえ、大丈夫です」
「作業をみていても?」
「構いませんよ」
ナマエはそう笑ってまたパンケーキの生地をつくる。叔父甥揃って,と思うのは昔同じように荀攸が眺めていたからだろう。途中で子供に外の竈門に火をつけるような頼み、ナマエは鉄板と生地あとはジャムやバター蜂蜜なんかを持って外に出た。
「これを焼きます」
「焼きます?」
そのまま熱した鉄板にナマエは何枚か分の生地をたらし、焼き上がったくらいにひっくり返す。そのままお皿に3枚ほど積み重ねてバターを落とし蜂蜜を上からかける。木でできたナイフとスプーンを持った子供達が嬉しそうな、ワクワクしたような顔をした。
「ぱんけえきはこれで完成か!」
「完成です」
「せん様!食べても良いですか!」
「はい、どうぞ」
子供はパンケーキを切り分けて、ぱくりと口に含む。その瞬間目が輝いた。
「うまい!」
「おいしい!」
「ちょっとちょうだい」
「満寵殿のちょっとはちょっとじゃないから嫌だ!」
「ええー」
「はい、満寵殿の分です」
そう言ってナマエは満寵の前にパンケーキをおく。大きな鉄板で焼くと数人分一気にできるから楽であるが少し難しいのも確かだ。そのまま大人の前にバターをのせたパンケーキを並べた。
「あれはかけてくれないのかい?」
「甘いものが好きかわからなかったので」
「大丈夫、好きだよ!」
「そのままでは食べられないのですか?」
「そのままでも食べれます」
その言葉を聞きつつナマエは四種類の小皿をおいた。
「こちらは好きなものをお好みで」
その瞬間、荀攸の手が琥珀色のものーー蜂蜜に伸びた。ナマエは慣れているのでいつもの通りお茶を杯に注いだ。郭嘉は頬杖をついて荀攸をみた。
「荀攸殿、はやいね」
「……、……せん殿の家には甘いものが多々ありますが、この琥珀色は知ってます。蜂蜜です。ちなみに赤は木苺、黄色がみかん、中央が林檎です。どれも美味です」
「さすが詳しい」
「蜂蜜……高価なものを良いのですか?」
そう尋ねた荀ケに、ナマエは頷いた。
「はい、大丈夫です。あぁ、そうか、目の前で毒見した方が……」
「せん殿、毒見というよりは味見かと」
その言葉に,ああなるほど、とナマエは納得した。見慣れないものなのだ。味見は確かにいるだろう。ナマエは空いている皿の端に少しずつのせる。
「指ですくってもらえれば」
そう案内すれば、満寵が興味津々という風に赤い木苺のジャムを指で掬って、子供のように目を輝かせた。
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「そういえば風の噂でせん殿の家を訪れると良い酒がもらえると聞いたんだが、そこのところどうなんだ?」
「その噂の出どころは十中八九蜀の気がします。蜀の方は私が成都に布を売りに行くと帰りに送ってくださっていたので、お礼に渡していました。良い酒かはわかりませんが……飲むにしても家についてからの方がいいような」
酔ってしまえば最後、ナマエには全員を魏まで運ぶことはできかねる。夕方には帰った方がいいだろう。流石に何かあったのではと心配される。
「酔いやすいお酒
==史実ネタ改変。遠呂智世界ってどこまで記憶あるんでしょうね。
「ん……んん?えっ?」
そう目をパチクリと瞬く。いや、えっ?正妻とは??どういうことだ??とハテナをたくさん浮かべながらかれをみた。話を聞けば、どうやら私が元の世界に戻ったのか死ぬ→他の女性と添い遂げるだか面倒をみる→公達殿が先が死ぬ→その女性が他の人の正妻になるみたいな話、らしい。らしいのだが、私には公達殿と結婚云々の記憶はない。公達殿にあるのだろうか。女性は私をみて、話に聞いていた通りの人ですね、と告げた。
「ううん、すいません?私が公達殿を独り占めしている状態では?」
「いいえ、構いません。荀攸殿は私は面倒を見ていただいてだけですので、他とは違います」
その言葉に私は首を傾げる。ううん、何か、見覚えが、あるような?と首をかしげる。
「私は以前貴女に会ったことがありますか?」
「!」
「うーん、貴女のような、子供を,見たことがあるような」
うーん、と私は見ながら彼女をみる。彼女は嬉しそうに目を輝かせて私を見た。
「思い出していただきましたか!」
ええっ。
==
「単刀直入に聞きますが」
「何でしょう」
「公達殿は私とどこまでいた記憶がありますか?」
寝台に腰掛けてそう首をかしげる。着替えていた彼は振り返って首を傾げた。
「どうかされましたか?」
「いえ、少しとある方とお話ししたのですが、私は公達殿のですね」
「俺の?」
そう言って彼は隣に座って私の手をとる。うーん、目を逸らしたい。
「公達殿の、お嫁さんだって聞いたんですが、」
ぽっぽとする。顔が真っ赤な気はする。恥ずかしくないか??めちゃくちゃ恥ずかしいぞ、こっちは。
「はい、そうです。やはり、貴女は覚えていませんでしたか」
公達殿はそう言って私を見下ろした。
「構いません。貴女は変わりません。俺も気持ちもなにも変わりません」
「う、え、」
「貴女の隣は俺のものです。誰にも譲りません」
そんな言葉に顔を隠そうとしたが、どうも手を押さえられてできない。
「公達殿、だめです」
「なにがですか?」
「それ以上聞くと心臓が持ちません」
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