2021/12/30

2021年オフラインネタ帳大放出祭20



・他者目線夢主

苗字くんは。
苗字くんは施設に来た時、女の子かと思ったのを僕は覚えている。いまよりもうんと細くて背も低くて、くりくりしたまつげに憂いな表情を浮かべていたかと思うと、何人かは確実に一目惚れしてたと思う。女子に聞いたら女子は女子で美少年がきた!と騒ぎになっていたらしい。まぁ、男子は夜のお風呂の時にひどい騒ぎになったのは言うまでもない。

「そかそか」
昔から苗字くんはよくこの言葉を言う。「そうかそうか」「そっかそっか」が短縮されて「そかそか」となっているらしい。普通でも、喜んでいても、泣いていても、怒っていても、年上でも、同い年でも、誰に対しても「そかそか」と最後まで話を聞いてくれて、最後には何か一言言ってくれる。それは、アドバイスだったり、励ましだったり、承認だったり色々だ。たまに言わない時もあって、その時はただそばにいてくれる。これがまたみんなに人気で、みんなで苗字くんを取り合いしてきっペーくんが間に入ったりもしてた。僕も同じように話を聞こうとしたけれど、なかなか難しい。せめて自分の子供にはそうしたいなって思うけれど、できるかどうかは別だ。

苗字くんとの思い出
苗字くんとの出会いは簡単ど、僕が絵を描いていると、苗字くんがやってきてそれをじっとみて、俺この絵すきだなー!と言ってくれたことからはじまる。それからは僕が絵を描いてると覗き見たり、そばで本を読んだりしていた。
夏休みのある日、苗字くんが僕を連れて少し離れた高校に連れて行ってくれたことがある。蝉の声とか部活の音しかしない場所で、苗字くんは美術室と書かれた部屋に入った。せんせー!俺の友達つれてきたー!っと言った先にいたのが後に僕の恩師になる先生だ。僕は先生にデッサンのやり方をおしえてもらうことになり、ナマエくんはニコニコとそれを眺めたり飾られている絵をじっと見て、僕の書き上げた歪なデッサンを見てすげえー!と感心していたのだ。今でもじんわりとした暑さと周りの音を僕は思い出せる。

その後先生に聞けばどうやら苗字くんが個展の外側に飾られていた絵を熱心に見ていたらしい。声をかけると、俺この絵好き!と言ったので中に招き入れたんだとか。その中に飾られた絵をじっくり見てくれるのが嬉しくて話して仲良くなったんだとか。ちなみに苗字くんが好きだと言った絵は今苗字くんのリビングに飾られているのを僕はSNSでみた。

魔法のノート
苗字くんが編み出したノートで、僕らの好きなことや得意なこと、いいことが写真と一緒に書かれている。年上から赤ちゃんまでみんなの分が苗字くんは大人が来るたびにそれを見せたり、子供が増えるたびに作ったり、引き取られた子供の分は友達ノートとして別のケースに大切にしまわれる。実際このノートは参考になったらしく、僕の両親も事前にそのノートを読んで僕の絵を見て僕に会いにきたらしい。
今でも施設長さんによってそのノートはつくられているのだとか。ちなみに苗字くんのページは存在しないらしい。本人に聞いたら「自分のは乗り気がなかったんだよなー」ってケラケラ笑っていた。言ってくれたら作ったのに!


苗字くんとサッカー
きっペーくんは野球がはじまると、だいたいテレビを見ていたし、年上の人とキャッチボールもしていたけれど、苗字くんにそんなイメージはない。



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