2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭25
「浮気されてんじゃん」
そう告げた持田蓮に花森圭悟は頭を抱える。そんなはずはない、とぼやいているが気にしているあたり疑っているんだろう。まぁ、彼とフットボール界の女王様は一回り歳が離れているし、彼が色々拗らせているのは部外者である私にでも見て取れた。結婚して治ったかと思えば、次から次へと彼は忙しい。女の勘としてはどうなの?と聞いた持田蓮に、私は女の勘……とどこか遠い目をする。
「ナマエはそんなタイプじゃなさそうだけどなぁ。嫌いなら嫌い、好きならあのお目目キラキラビーム放って花森くんに話しそうだし」
「あれ憧れとかそっちでしょ」
「初恋誰?って聞いたら、今だから言うけど持田蓮って返された私の身にもなって」
私の発言に、旦那は目を瞬き、花森圭悟は固まった。そしてその次の瞬間、爆笑と共に見る目あるなアイツ!とゲラゲラ笑う。花森圭悟は何処か絶望してから、持田蓮を睨んだ。まぁ、なんだ。私が彼女の立ち位置に生まれ変わってしまったから、多分彼女が「彼女」のままなら私の場所は彼女のものなのだろう。私は「彼女」になったけど、フットボールは下手くそだ。恐らく彼女は生まれ持ったものだけではなく、努力もかなりしたのだとは今の彼女の現役時代の生活を聞いて思ったことだ。
「何故だ……」
「あー、違う問題を宿らせてしまった。ごめん。でも初恋だしテレビでみてとかで花森くんに会う前かも」
「……」
「というか今はお前の嫁の浮気の話だろ。いちいちしょげんな」
持田蓮のツッコミに自分に酔うようなそぶりを見せた花森圭悟は今度こそ頭を抱えた。尾行するか、という話になって解散したが。
結果は何というか拍子抜けするようなものだった。ナマエちゃんが会っていたのは子供だったからだ。6歳くらいの子とうちの子と同い年ぐらいの子だろう。その同い年くらいの子をみて、私は見覚えがあることに気づく。ETUユースにいきなり現れた新星ではなかろうか。そういや、ETUのスタッフに聞けば苗字さんが出入りしている話を聞いている。浮気相手の連れ子みたいな話をする二人をおいて「ああこれは浮気じゃないな」と理解した私は「ナマエちゃん」と声をかけた。振り向いた彼女はそこにいた私達に不思議そうに目を瞬いたが、すぐに持田蓮を見つけて「持田蓮だーー!」と言いながら寄ってきた。兄に懐く妹、というよりは人懐っこい犬が遊んでくれる人を見つけて全力で尻尾を振ってる感じだ。
「かわわ」
「持田蓮、ケーゴくんと姉御連れて何してんの!?今日ケーゴくん予定あるって聞いてたけど、持田蓮に会う予定だったの!?」
「ソーネ。お前は何してんの」
「付き添い!」
「何浮気相手の連れ子?ハナに飽きた?」
そう言った持田蓮に彼女はポカンと彼を見上げた。めちゃくちゃ不思議そうな表情である。ことばにすれば、浮気とは?という感じだ。しばらく考えたのち、彼女は理解したんだろう。
「なんで最近ハナちゃん選手がウジウジしてんのかなって思ったらそれか!!」
「お前が原因だよ。鬱陶しいからなんとかしてくんない?」
「ケーゴくん、違う違う!今日ケーゴくんが予定なかったら紹介するつもりだったんだけどさー。んー……子供拾ったから面倒みてる!」
おっとこの子面倒くさいから過程飛ばしたな。たまにインタビューでも見られた言動である。花森圭悟は頭を抱えて詳しく話してくれとぼやいたのだが。
「家でいい?」
「……構わない」
「大河ー、今日はお母さん達帰ってきそう?」
その問いかけに彼は首を左右に振った。なら仕方ないか、お巡りさんにも言ってるし、となんともないように告げた彼女は「晩御飯食べにおいで」と家主の許可なくあっけらかんと言い放ったのだが。
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泥だらけで花森家にいくのかと思えば着替えをちゃんと持ってきていたらしい。花森家につくなり風呂入れー!とせかされた上二人の子供を見送り、シャワー室使われてたのはコレかと再確認する。
「ナマエちゃん、子供は犬猫じゃないんだから。どこで拾ったの?」
「えっ、家の近所。なんか朝から晩までこのちっこい妹とあの子が一緒にアパートの一室の前から動かないから、どうしたの?って聞いたら親が帰ってこなくて餓死しそうっていうから……それは大変だってお風呂いれてたんとご飯を食べさせた。お腹空いたらいつでもおいでって言ってたら、ケーゴくんいない日に来るようになって……」
「なって?」
「これはいい加減おかしいぞって思って、私から二人の親に録音しながら電話したらアンタが育てたら!?ってガチギレされて以降音沙汰なくなっちゃった。一応ドイツにいる両親に相談したら本社通してメルセデスジャパンの法務部の人に連絡してくれた。今弁護士さんと警察と児相が動きつつ様子見ってなってる」
そう言ったナマエちゃんに花森圭悟がなんとも言えない顔をした。報・連・相は大事だよ、と言えば、ケーゴくんいそがしそうだったから、とナマエちゃんは返す。反省をしていない。ところで、だ。
「ナマエちゃん、あの子ETUユースに最近入った子だよね?」
「え、うそ、ヴィクトリーの広報まで噂いってる?」
「きてる」
「悪目立ちのほう?」
「いや、悪目立ちではないかな。でも噂は聞いたよ。ETUのユースに今まで目立った経歴ないのにヤバい奴が入ったって」
「セレクション放り込んで一発合格からのスタメン奪い取るだけのことはあるよね。でもチームプレーはダメダメだからなぁ」
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