2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭26
「はーい!はーい!人数足りないなら私はいる!」
ぴょんぴょんと跳ねながら口を開く。なんとも楽しそうだったから仕方がない。誰おまえみたいな雰囲気は気にしない。そんな空気は読まない。
「えっと……」
「私、が……旅行でこの辺り来てたんだけど、女子サッカーの試合でしょ?私もサッカーしてるし、人数少ないなら混ぜて混ぜて。楽しそう。ポジションは……まー普段ミッドフィルダーだけど余ったとこでいいし」
そういえば相談、のちにいいよというゴーサインがでた。やったー!と鞄からスパイクを取り出して履き替えビブスをつける。サイドバックなら何回かやったことあるし、DFもやりたい、と思ったら慣れてるMF位置あたりにおかれた。
なるほどなー、と様子見する。どの子がどういう動きを好むかはなんとなく理解した。なるほど。まぁ一人恐らくは気分屋みたいなのがいるが、それはやる気を出させるしかない。一応シュートまで持っていったがゴールから外れたそれにおぉと手を叩く。
「いいね!いいね!今の攻撃の流れ!ひゅー!もう一回やろ!」
「笑い事か!!こっちはカウンターくらってんの!」
「大丈夫大丈夫、ちょっとボール奪ってくるし」
そう言ってそのまま相手に走りパスコースを無理やり断ち切ってそのままターンする。ケラケラ笑いながら彼女らをみた。
「ほらほら、カウンターいくよ」
その瞬間瞬時に判断して切り返した10番のスピードは速い。しばらくボールをキープしてから、彼女にボールをパスする。彼女がシュートを撃つがそれはキーパーに弾かれたのでセカンドボールをもらい、8番にボールを渡せば彼女がシュートをうった。真っ直ぐに飛んだボールはゴールネットを揺らす。
「おおっ、決まった!やったぜ!」
イェーイ!と8番にハイタッチ要求すれば彼女も恥ずかしながらハイタッチした。かわわ。
「10番〜今の流れいい感じだったからまたやるし前にいてくれると嬉しい。8番もめちゃくちゃいい位置にいてくれたからやりやすかったよ!」
「……わかった」
「9番と5番も後方支援ありがとねー!またサポートしてくれると嬉しいな!あとロングパスくれたらもっと嬉しい」
ケラケラ笑いながらそうつげる。6番その調子でガシガシいこうぜ!って言ったらうるせぇ!って怒られたが。最後にポニーテールな11番をみつめる。
「11番は……この瞬間を楽しもうぜ!フットボーラーはどんなゲームも楽しむべきだと私は思うよ。楽しまないと相手に失礼だし、楽しんだ方が勝つって私の辞書には書いてある」
「えっ」
「さてもっと得点奪いに行こうぜ!!」
いえー!と言えば敵チームに若干睨まれたがしらん。あとこっちの点数が偶然だっておもってるならそこまでの実力ってだけだと私は思う。
こんな筈じゃないという顔をしている相手に私は首をかしげる。もしかして、自分がこの国で一番だっていう自負があるんだろうか。おかしな話だ。実は人生二回目な私もまだまだ一番にはなれないのだ。まだまだ、ハナちゃん選手達一流男子選手には叶わない。だから、まだそんな歳で一番上手いという自負はいらない。このままそんな考えを壊してしまえ。
ボールを奪って相手を突破する。そのまま一人をターンでかわし、二人目をドリブルでひらりとかわし、三人目はフェイントをかけてかわし、滑り込んできた四人目はボールを浮かしてかわす。キーパーしかいないそこに、そのまま胸元でボレーをしてから足を振り抜いた。ボールは真っ直ぐにゴールネットを揺らす。
「ははっ」
笑う。唖然としてる相手を、自惚れそうになる自分を。まわりは静かだ。なんで?と首をかしげる。いやこれ味方も引いてないか。そんな沈黙をよそに、またプレーが始まる。相手にはすごい顔されたままだし、そろそろバテてきたのかめちゃくちゃ私が遊べるようになってしまった。私のお立ち台だけにはしたくないので周りを結構使ってみるが、周りもちょいバテてる。そうして最後には審判が笛をならした。見事に勝利!であるが、私がやり過ぎた感がすごいする。うーん、調子にのりすぎてしまった。やっちまった。相手の自尊心砕いてしまった気はする。そう考えつつ、相手に握手しようと手を伸ばす。
『すっげー楽しかったよ!君のドリブルすごいね!!スピードはやいし、ビューーンって!また一緒にフットボールやろ!』
「……?」
あれ?通じてないな、と思ったが、今英語かドイツ語だったんだろうか。そういやここは日本だった。とりあえず両手で無理矢理相手の子の手を握ってブンブンする。
「君のドリブルすごいね!スピードはやいし、ビューーンって!また一緒にフットボールしよ!今度は味方がいいな!」
そう言ってたら「こーーらーーー」という聞き覚えがある声がした。なんだ、とそちらを見れば能見のあねさんである。
「あ!あねさんだ!!あねさーーん!!」
「こんの、人たらし!アンタなんでここにいんのよ!!」
ゴツん!と頭を殴られる。『いたい!』とドイツ語を溢せばそのままぐりぐりされた。いたい!
『あねさん痛い!痛いって!馬鹿になる!せっかくの再会なのに、なんでナマハゲモードなの!』
「日本なんだからドイツ語じゃなくて日本語喋りなさい!というか、アンタ本気でなんでここにいんのよ!」
「あねさんが今このあたりにいるってななのん選手に聞いたから会いにきた!」
かわいこぶっていってみる。しかし、さすがナマハゲ能見。ハナちゃん選手と違って動じない。そのままムニっとほっぺたを引っ張られる。いたい。
「アンタが国内いるってことは事前合宿でしょうが!」
「合流明日からだもーん。ヘルタの試合日程と休みの関係と、ハナちゃんの試合日程の関係で、ハナちゃんにくっついて一日早く日本にきた。あねさんにも会っときたかったしね。そしたら同い年くらいが、サッカーしたいけど人数たりてなさそうだったのみかけたから……私だってたまには同い年くらいとサッカーしたいしさー」
「あんたねぇ……男子並みに出場制限とかあるでしょ。野良試合に加わって怪我したらどうすんの!」
またもう一度ほっぺたを引っ張ったあねさんに「いひゃいー」と口だけ抗議する。いや、あの、はい。それを忘れてた私が悪いね!大人しく受け入れるしかない。
はぁぁ、とため息をついた彼女はだからって最後のアレはやりすぎとドイツ語でいわれたが。
『いやー、だって私達が一番ですって顔に書いてあったから、上には上がいるってこと教えないと代表きたとき痛い目見るのあっちじゃん』
『だからってアンタあの惨劇再びしなくてもいいでしょ。あれ結構年上からしたらこたえんのよ』
『うーん、……でも、ごめんね、やり過ぎちゃったって謝っても火に油じゃん』
『それもそうだわ』
『まーでも同い年くらいとサッカーするの楽しかったよ!滅多に機会ないしね!』
ヘルタのチームには私ともう一人ほどよく歳が近い友人がいるのだ。そんなことをいっていたら、あねさんがちょっとしんみりした。なんで。首を傾げていたら、そうね、とだけ言って私の頭を撫でられたが。おじいちゃんみたいな人が私をみる。ニコッと笑っとこ。
「こんにちは!」
「……ヘルタの10番か?」
「はい。代表合宿に行く筈なんですけどね」
「誰?」
「強豪校の監督の鷲巣監督よ」
「へーー!!噂に聞く人かー!ねぇねぇ、誰が鷲巣監督のチームの子で、誰が姉御のチームの子?」
そう言ってさっき一緒にいた選手たちをみる。
「10番9番と、8番五番あたりは違うチームでしょ?どっちがどっち?」
「わかるの?」
「うん。パスの通る回数が違うから違うチームなんだろうなって思って。その間の連携は慣れてるけど、それ以外は慣れてなさそうだったから。で、どっち?」
「……私のチームが8番5番だな」
「へぇー!ってことは、10番と9番が姉御のとこの子か。11番は?」
「それもこっちよ」
「あの子よくわかんないね。下手ではなさそうなのに、気分のムラがすごそう。乗り気じゃないゲームにはとことん乗れなさそう」
そうはっきり言えば図星みたいな顔をされた。やっぱりか。
「姉御、あの子をプロに送るなら送る前にアレ直した方がいいよ。対面してる相手にも失礼だし、仲間にも失礼だしね。まぁでも、よくわかんないけど、学生っていう括りなら許されるのかな」
ケラケラ笑いながらそう言えば、鷲巣監督がこちらを見たが。
「お前だって乗り気じゃない試合もあるだろう」
「そりゃあありますよ。姉御は知ってるけど私が初招集された時とかはっきりいって乗り気じゃなかったですし」
肩をすくめれば彼は私を少し驚いたように見た。姉御は思う節があったのか、苦笑いを浮かべる。
「でも、私はプロだから、乗り気じゃないからってゲームを投げだしてはいけないし、いくらつまんないゲームでもサポーターにとって面白いゲームをつくらないといけない。だから私はどんなゲームであれ、全部楽しむことにしてる。楽しくなかったら、見てる方も楽しくないでしょ?」
良い子ちゃんのセリフだ。建前のセリフだ。自分に釘を刺すセリフだ。2回目の記憶がなかったら今がとても楽しいのだろう。でも、どうあがいても、私がいたあの頃のレベルなんかじゃない。もっと、胸がグツグツと煮えたぎるような勝負がしたい。こんな生温い勝負ではなく、ピリピリとした勝負に私は飢えてるあたり、持田蓮ににているという一部の評価は正しいのだ。まぁ、話を離れた場所で聞いていた男性が口を開いたが。
「優等生みたいな台詞だな」
「女子のシロニシって呼んでいいですよ!」
「それ、本音か?本音ならとんだ綺麗事野郎だな」
「あっはっはっ!野郎じゃないよ!あと、本音のわけないじゃん。私が私に釘刺してる言葉だよ」
自嘲する。そうだ、これはただの自戒だ。
「私がヘラヘラ笑う余裕もなく本気でやる相手は日本の女子では姉御だけだったから、姉御引退してほしくなかったんだけど。だって、いきなり姉御レベル連れてこいって言っても無理でしょ?」
何様のつもりだ、と誰かは怒るだろう。でも、姉御がなんも言わない。ふざけて私がそう言って、アンタねぇと戯れるように姉御が叱ることもない。鷲巣監督達が叱るかと思ったがそうじゃない。
「その点、さっきあげた番号の子とかはいい線いってると思うんだよね。だから指導者さんはきちんと育てて青まで連れてきて欲しい」
「待つってか?」
「待つわけないじゃん。時間は有限なんだし。人生は短いし、フットボールのプロでいれる時間はもっと短い。私は私の夢のために先に行く。誰かがついてこようが隣に並ぼうが遠く離れてようが私は知らない。私は私が目指す場所の為にもっと上手くなりたい。上手くなって全部黙らせる。身勝手に私が男であればいいとかいうやつとか、女子のレベルが低いとかいう奴とか、大好きな人と一緒にフットボールしちゃダメだとかいうやつ、全員結果で黙らせる」
そんなことをいっていれば、キラキラとした目をした11番がよってくる。
「コーチ、知り合い?そいつ誰!?どこのチームのやつ!?」
「……アンタ、名乗ってないの?」
「うーん……名乗ってないよ」
「さっさと名乗りなさい」
「んーあんまり名乗りたくなかったのに」
そう言って彼女らをみる。
「あっ、でも、私もみんなの名前知りたいから教えてほしい」
「私、恩田希!!よろしくな!」
「私は曽根崎緑。よろしく」
「……周防すみれ」
「佃真央。まぁ、よろしく」
「井藤春名です。よろしく」
「のんのんにそっしーにすみれにまおまおにはるちゃんな!オッケー!覚えた!」
「アンタの名前は?」
「この辺じゃないっしょ?関西とか、クラブとかそっち?」
そう尋ねたそっしーに、私は帽子のつばをあげる。
「私はクラブだよ」
「えっ、どこ?」
「ヘルタ!」
「えっ」
「私はヘルタの苗字ナマエ!よろしく!」
「えぇーー!?!?」
耳がキーーンとする。わわっと声をあげれば、彼女達は「嘘でしょ!?」と声を上げた。
「ヘルタ?」
「知らないのアンタ!?ドイツのヘルタ!ブンデスリーガの!プロクラブ!」
「私達と同世代のA代表!!」
「A代表……ええっ!?まじで!?」
ほーらこうなる、とがっくしする。
「こうなるからなのんの嫌だったんだよー、日本でももっと気軽にフットボールの話したり一緒にできる仲間が欲しかっただけなのに」
「アンタの気軽はだいぶ違うし、問題なのよ」
「なんで」
「アンタほどのサッカー馬鹿みたことないわよ。付き合わせられる身になりなさい」
次元が違うって言われるもんなぁと頭をかく。ハナちゃん選手はやってくれるんだけどなぁ。
「でもさー?普段というかさー、昔っから一年のほとんどドイツだしさー?A代表の人、年上ばっかじゃん。私は!日本に!同い年ぐらいの!友達がほしい!ってことで、友達になって欲しい!」
イエーイと言いながら全員の手をとって、ブンブンふる。
「というかもう一緒にフットボールしたし友達じゃない?はい決めた!君たち私の日本の友達!どこ住み?ライン教えて!!」
「やめなさい!」
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「やほー!のんのんー、すみれー、みどりん、さわわー、たせちゃんぱいせん!」
ひらひら手を振れば、部員全員が私を見て固まった。なんでだ、と思ったら叫ばれた。うるさ。
「苗字選手!?」
「なんでここにいんの!?」
「オフシーズンだから、じっちゃばっちゃにあいに日本帰ってきてんの。でもこっちにいても暇だからさー、姉御に聞いたけど、明日ぐらいから練習休みでしょ?暇なら遊ぼうよ」
「あそぶ……?」
「私みんな以外に日本に知り合いも友達もすくないし、代表の人達全国海外津々浦々だったり帰省してて遊べないし」
そう言って伸びをする。
「遊べそうだったら、明日のお昼の2時に動きやすい服でスパイクと……あ、英和か和英辞書も一緒にもってきて!」
「えっ?」
「集合場所はねー、東京ヴィクトリーの本拠地前で!」
「ちょ、まっ、え!?」
「じゃあねー」
それだけ言って手を振る。ええー!?みたいな叫びは知らん。
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「それで?東京ヴィクトリーのコート貸し出したの?あのガキンチョに」
「だって……可愛い顔でお願いされたんだもん!!」
「ぶはっ!!ハナといいお前といいちょろすぎるだろ!!」
「うるせー、こちとらあの子のファンなんですよ!!!三大選手に入ってんですよ!!そんな子にお願いされてみろ!!許可するしかないじゃん!!」
「使われてんねー、お前」
「そういう蓮君だってなんやかんやあの子に甘いじゃん!!」
「あ?」
「絶対甘い。煽り愛してるし、普通の女子高生にあんな対応されたらキレるじゃん。純粋キラキラお目目褒め言葉でノックアウトされたんでしょ!おら!!すなおにはけ!」
「まー、アイツ俺のファンだし?俺に及ばないけど才能あるしな」
「待って、花森くんに送るから最初から言って欲しい。絶対面白いことなる。花森くんあの子の過保護拗らせてるから」
「……やっぱお前も大概だよ」
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「あ、やった、全員揃ってる!フーー!ってことで、ごちゃ混ぜフットボールしようぜー!」
ケラケラ笑いながらそう言えば、全員がは!?みたいな顔をしたが。いや、なんでさ。
「動きやすい服でスパイク持ってきてって言ったじゃん」
「いや、でも遊び」
「??遊びでフットボールするんだよ??」
「そういや苗字選手って」
ドがつくフットボール馬鹿だった。
「え、でも、英和辞書は」
「それあった方がコミュニケーション取りやすいかなって」
そう言いながら振り返って手を振る。
『おーい』
『その子たちがナマエの友達?』
『そうそう。せっかくこのメンツいるからみんなでサッカーしたいじゃん。でも人数足りないし。シャッフルしてゲームしよ、ピッチ知り合いに借りたし』
『いいよー、楽しそう』
『ナマエのことだからそうなると思った。英語喋れるの?』
『んーー、挨拶くらいならわかるんじゃない?辞書持ってきてもらったけど』
「???なんで??どこでやってもどこの国でもフットボールのルールは一緒なのに?別に言葉通じなくてもいいじゃん。そんなローカルルールがあるわけじゃないのに。それに、あんまり海外の人とフットボールしないんでしょ?楽しいよ」
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