2021/12/31

2021年オフラインネタ帳大放出祭28




「んーー、興味がない」
ズバリ、と言えば彼女はピタリとかたまって、顔を怒りの形相にする。興味ないって、あんたねーー!と私の頭をぐりぐりとした能見さんにいでででで、と言いながらその腕をたたく。
別に代表が弱いとかそう言うのが気がかりと言うわけではないが、もう一度代表を立て直すと言う作業が面倒くさいのである。今の状況で結構満足しているし。あと、代表のフットボールが面白くないのだ。監督の戦術が肌に合わないのである。いや、多分監督の戦術をするには選手のレベルが合わないのかもしれないが。
能見奈緒子は日本女子サッカーのレジェンドである、らしい。らしいというのは私は海外に住んでいたため彼女のデビュー当時も知らず、また女子サッカーがあたり特集されないがためブンデスリーガになった彼女からしか知らないからだ。上手いとは思う。攻撃的な選択肢を多数持つ彼女は日本の得点の要なのだとはわかるし、フランクフルトfCでも結構活躍をしている。私にとっては同じリーグにいる敵チームの日本人という感じである。はぁ、と私を解放しつつため息をついた彼女はそうよねと言葉をこぼした。
「金メダル取ったのも過去のことだし、日本の人気もこの国よりも全然ない。最近は勝ててないし」
「のーみ選手、言っとくけどヘルタの動員が多いのは私がいるからだかんね。私が客寄せパンダしてんの」
そう言ってシェイクを飲む。ビールを持つ彼女は私を見た。
「私がヘルタのスクールいる時、幼馴染みと二人で日本のやべえやつとして噂になってたんだけど、飛び級ユース、飛び級プロ。途中出場した初戦でひっくり返してから、ハットトリック連続達成。そんな天才児をみんな見にきてんの」
まぁ最近やっと他の選手に目を向け始めてくれたけど。前と変わらず客寄せパンダしてんのね、とは幼馴染みそのAに成り下がった存在の言葉である。
「日本じゃ私知られてないから集客望めないと思うよ。というか、今の日本女子代表の監督の戦術が好きじゃないからな〜。意見の不一致してまで代表いってもなぁ〜って感じ」
「……監督変わるわよ」
ソーセージを齧りながら彼女は告げる。私は目を瞬く。
「嘘、誰?」
「アンタは知らないと思うけど、前までコーチしてた稲瀬っていう……」
「えっ!!マジか!!」
そう身を乗り出す。嫌だってさすが共犯者というのか、私は彼とフットボールにおける相性がかなりいいのだ。この世界だと稲瀬さんのプロの時間ちょっと長いし、ベレーザの監督してもないから、監督業してないと思った。
ノーミ選手は目をパチパチ瞬きながら私を見る。私は気にせず、頷く。
「そかそかー、監督、稲瀬さんにかわったのかー。稲瀬さんのお誘いは断れないなー」
「知り合いなの?」
「前世で会った!」
そういえば彼女は?をたくさん飛ばしたのだが。とりあえずビールを流し込んだ彼女は目を少し閉じた。
「まぁ、アンタが来てくれる決心をしてくれたのはよかったわ」
「なんで?」
「私、今季で引退するのよ」
彼女の言葉に私は目を瞬く。年齢の問題か、婚姻の問題か、それとも子供ができたとかそう言うことだろうか。
「じゃあ余計に行くよ。ノーミ選手とフットボールしてみたかったしね!」
そうニコリと笑う。彼女は彼女で、私もよ、と頷くのだが。


==

「と言うことで代表言ってくる」
そう言えば家が隣の幼馴染みその@が目を瞬く。ヘルタの練習帰りなんだろう。私と同じようにかなりステップを除いた彼はもうすぐでプロになりヘルタのチームに加わる。ちなみに幼馴染みそのAは日本にある海外チームのスクールから飛び級を繰り返しその本拠地のイタリアにいたりする。そっちももうすぐでプロ入りだ。柔軟しっかりしろ、怪我すんなよ!と言えばお前は検診怠んなよと言われたが。前世を考慮した、的確すぎるアドバイスである。
「は、省くな……ナマエの悪い癖だ……」
「日本代表の監督が稲瀬さんになったらしいから行くしかないなって」
私の言葉に彼はアァと一瞬納得した顔をしたが、すぐに眉尻を下げた。
「いいのか……?」
「ぶっちゃけチームの立て直し面倒くさいなって思ってたけど、前世の共犯者だから協力するしかないなって」
「……そうか」
「今度は三人揃ってオリンピック入場したいね」
ニコーと無邪気な笑顔を向けてみる。彼は相変わらず「それは持田に言え」と言うのであるが。

私には前世の記憶がある。女子サッカーの女王様だったけど病気で足切ったとか、アンプティサッカーのアンダー代表監督して世界一にしたとか、あと結構若い歳で死んだとか、そんな記憶だ。思い出したのは3歳の頃に遡る。となりに日本人夫婦が引っ越してきて、同い年の子供に会った時である。お互いに三日間寝込んだ。三日間寝込んだあと、お互いボールを持って、フットボールしよう!と誘い合ったのはいい思い出である。そんなこんなでこの世界では先に同い年になった幼馴染みその@ハナちゃんこと花森圭悟にも前世の記憶はあった。二人は双子!と言う風に二人で遊び、二人でヘルタのスクールに入り、記憶とかをかるく駆使して二人で天才児として一番あたりにいた時である。父親が職場というか日本支社の友人一家を招いたのは。そこにいたのは幼馴染みそのAとなる同い年の子供だった。目をまん丸に開いた彼は私とハナちゃんのようにぶっ倒れることはなかったが、私を見てぐしゃぐしゃに泣きそうな顔をしたのである。それを見て私は確信した。多分私達と同じだと。どうしたの、と告げた彼の両親に、彼はなんでもないと返したのだが。まぁ、それを見て私は手を引いてフットボールに誘って親達から離れた。ナマエ、と呼んだ彼に私は振り返ってなぁに?と尋ねる。蓮、また会えたね、と言ったところで彼は小さな腕で私を抱きしめ、私も泣いたのだが。ちなみにハナちゃんと私の近況を話せばすぐに親にスクールに入れるようにおど……頼んだらしい。ヴィクトリーではなく海外チームの下部育成スクールに入り、トップになってて笑った。その年の国際的な合宿で三人揃い、ハナちゃんと再会して二人がなんやかんや口で言いながら嬉しそうなのが可愛かったのは余談だ。まだ子供だからね!!!まぁ、とりあえず前世と同じで相変わらずなわけであるが。

ノーミ選手ことアネゴにドンピシャパスをだす。アネゴは飛び込んでゴールを奪った。私うまーい。さすがー、ひゅー!と思う。やっぱり天才じゃないか私。アネゴとハイタッチしにいく。
「やっぱり私天才じゃない?」
「この生意気め!」
そう言いながら周りにぐしゃぐしゃに潰されるのだが。うーん、稲瀬さんまずは適当に当てはめたとかいうけど多分これドンピシャなあたり適当ではない。戦術もあんまり言わなかったあたり、好きにしろということだろう。
「でもそろそろアネゴ方面警戒されっからナナノンパイセン達にもボール振るし、私ボールもったら飛び出して欲しい。ディフェンスは私が食い止めれる分は食い止めるけど無理だったらごめんネ!」
そうひらひら手を振ってポジションに戻る。さて、どうして行くかなとは思うのだが。

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まぁ順調に勝ち進むに連れて私の周りに対する理解も深まるし、私の周りが警戒されだすのだが、まぁそんなこたぁいい。幼馴染み二人が見てる時に無様な試合を見せれないというか。私だけでも突破できるんだよな。と、思いながら、周りの相手が私のパスの選択肢を潰した結果ドフリーになったのでミドルを決めてみる。はっはっは、君らが私じゃなくて周りにつくから悪いんじゃん。ヘルタの私の試合みてから切り替えしてこい。まだまだ少ないサポーターが湧いてら。応援ありがとうかつハナちゃんと蓮に向かって手を振ってみる。まぁ、煽られたから腹立つしもっとやるけど。ボールを奪って軽やかにかける。何人かを交わし、もう一発うっといた。あとはアネゴに花を持たせねばならない。そろそろ周りが私にへばりつくだろうし。そろそろアネゴ達にボール振るよ、と言えば彼女達は頷いた。完璧私のチームになってしまったがまぁ仕方ない。この大会の私のとりあえずの目標はアネゴのコメント『勝ててよかった』からのどれだけ変わるかである。予選の最初の試合で勝ててよかったとかアネゴがいうから。

予選2。
「勝ててよかったでーー」
「勝てて当たり前じゃーん!アネゴと私いるんだし!」
「コラッ!苗字!人のインタビュー割り込まない!!」
予選3。
「勝ててよかったーー」
「勝てて当たり前じゃーん!攻撃陣いい動きしてたんだし!」
「苗字!!」
予選4。
「勝ててよかっーー」
「勝てて当たり前じゃーん!ディフェンス陣もキーパーも神セーブばっかだし!」
「こらーー!アンタね!!」
決勝トーナメント1。
「勝ててよーー」
「当たり前じゃん!稲瀬監督の采配が光ってたし!アネゴミスったけど」
「苗字、アンタいい度胸してるわね」
準々決勝。
「勝ててーー」
「当たり前じゃーん!みんな動きよかったし、さすが私でしょ」
「さすが苗字だわ」
準決勝。
「勝てて……」
「当たり前じゃーん!日本女子の精鋭だし。まぁ、私はミスったけどな!!ごめんなさい!!自分のミスは自分の得点で補ったから許して欲しい!」
「反省してるなら良し」
そんなやりとりがちょっとした人気になりつつあるのだが。決勝で勝つじゃん。最後の逆転をアネゴに花持たせるじゃん。
「勝てて……あれ?苗字?」
「なにー?」
「今日は割り込まないの?」
「えー……今日は姉御の口からどうぞ。勝てて?」
「……勝てて、当たり前です」
「なんで?」
「私達が……私達が、アジアで一番だからです」
そう言った姉御に、そうでーーす!!と騒いでインタビュアーをすり抜けようとしたら広報さんに捕まって次インタビューって言われた。マスコミ苦手ーといっても解放されなかった。悲しみ。
「だって、姉御がさー、勝ててよかったなんてネガティブなこと言うんだもん。まぁ日本女子の重圧からそう言ってたのかもしれないけどさー、日本女子の重圧とか知るかって私は思うんですよねー。よくこれからの日本女子を背負う立場とかさー、みんな言うからさー、私あんまり代表乗り気じゃなくて今までも何回か招集かかってたけど断ってたんですよねー」
ケラケラ笑いながらそういう。そうなんですか!?とびっくりしてるインタビュアーに私は口を開く。
「だってさー、そんなこと言ってると見てる人もそう思っちゃうし、楽しくなさそうじゃん。私が思うにフットボールは楽しんだ人が勝つんだよ。それにやってる方が楽しくないと、見てる方も楽しくないでしょって思うし。稲瀬監督の戦術超楽しいのに、姉御達悲痛な顔してるんだもん。なんか姉御達にフットボール楽しんで欲しかったから、私は頑張った。それだけ」
そう言えば生意気めー!と周りに言われたが。じゃあ最後に一言!と言われたので口を開く。
「サポーターのみなさん、これからよろしくお願いしまーす、ブンデスのヘルタの苗字ナマエでーす、15歳でーす。これから色々楽しんでこうぜー」
ゆるゆるでそう言っておく。あわあわしてる広報さんには悪いがマスコミ面倒くさいんだもんよ。

==

オフシーズンである。母方のじっちゃばっちゃの家に来たのはいいが、暇だ。ハナちゃんも母親の祖父母が横浜だし、蓮は両方東京だし。まぁ、集まればいいんだけど。近くでフットボールできるとこないかなー、と探していれば学校を見つけたので忍び込む。いやー、15歳だからいける。大丈夫大丈夫。グラウンドのゴールの前に女の子がいた。ボールが散らかっているのをみるに、フットボールの練習をしてたらしい。私もスパイクに履き替えて近くに転がっていたボールを彼女に向かって軽く蹴った。こつん、と当たったボールに彼女は振り返った。
「フットボールの練習してるの?」
「え……」
「違うの?練習なら混ぜてって言おうと思ったんだけどなぁ」
そう言って近くに転がるボールを足で手繰り寄せ、軽くリフティングしてからゴールに向かって蹴る。ネットを揺らしたボールに彼女は目を瞬いて私を見た。というか目をキラキラさせた。
「サッカーできんの!?」
「できるよ。一緒にやろ。二人でやった方が練習の幅広くなるし、なにより楽しいよ」
そういえば彼女は大きく頷くのだが。


うーん、この子上手いな。感覚がいいし、ボールコントロールも申し分ない。もしやじっちゃばっちゃの近くの中学校は女子サッカー部があるんだろうか。そう思いながら一対一で遊んだりコーナーからの連携で遊んだりする。いやでもハイテンションなあたりあんまりこういうフットボールしたことないんだろうか。
「もう一回だー!」
「いいよー」
「恩田、と……」
そんな声が聞こえて振り返る。同い年くらいの女の子と、教師だろうか。監督、といった彼女に私は彼を見たのだが。
「……学校では見たことない顔だな。他校の友達か?」
「知らない!」
「まー初対面だしねー」
ケラケラ笑いながらそう答える。
「そういや何年?」
「同い年ぐらいかな?私今15歳だよ」
「えっ、見たことない気がする」
「まー、忍び込んだし。じっちゃんばっちゃん家に遊びに来たんだけど……フットボールできる場所さがしてたらそこに学校があったから」
「都内か?」
「んや、もっと遠いとこ……女子サッカー部の監督?」
そう首を傾げれば、彼は首を左右に振った。
「いや、この学校には女子サッカー部はない」
「なんだー、上手い子いるからあると思った。あー、なるほど、男子にサッカー混ざってんのか。だからボールテクニックが上手いんだ」
ぽん、と手を叩く。わかるわー、とうむうむと頷く。わかる?と首を傾げた彼女達に、私は口を開く。
「結構鍛えても、男子にフィジカルで勝つのは難しいからボールテクニック極めて補うしかないとは私も常々思ってる」
「えっ、もしかしたら男子に混ざってる!?」
「いや、昔はやったりしてたけど今はほとんど女子サッカーだよ」
「女子サッカーなの!?」
彼女は固まったなんでだ。監督は彼女を見下ろした。
「この際だから恩田、聞いといたらどうだ?」
「……女子サッカーでレベル落ちないの?」
「あー、わかる。わかるぞ、その気持ち。めちゃくちゃわかる。わかりみしかない。……でも、男子と一緒。女子でもレベル高い子は高いし、低い子は低い。それはどこでもどんなスポーツでも一緒。上手いやつに求められるのは、周りに流されずいかに高いレベルを維持しつつ向上させるかって話だしね」
「???」
難しい話だっただろうか。ハテナをたくさん浮かべた彼女に私はあたまをかいた。
「女子サッカーに加わったことある?」
「ない」
「じゃあ一回加わってみなよ。日本の高校なりクラブなり関東ならそれなりにチームはあるしね。まずは一年とかやってみて、それで合わなかったら、その時は男女混合でできるチームとか探せばいいんでない?公式戦はなんやかんや楽しいしね」
そうバンバン彼女の背中を叩く。彼女はこちらを見上げた。
「……女子サッカー行ったら一緒にまたサッカーできる?」
「君がそのまま女子サッカーしてたらね。多分君なら登ってくるでしょ」
私の言葉に彼女は目を瞬いた。じゃあまた一緒にサッカーしたいから、女子サッカーやろうかな、と零した彼女に「そかそか」と私は頷いた。
「名前聞いとこ。私は……苗字ナマエ」
そう告げたら監督が目を見開いたあたり私を知ってるなこの人。
「君は?」
「恩田希!」
「そっちの子は?」
「あ、えっと越前佐和です」
「のんのんとさわわね。オッケー覚えた。じゃあ私そろそろ帰らないと夕ご飯のすき焼き間に合わないし、帰るわ」
ひらひらと手を振ればのんのんは不満そうな声をあげたが。仕方ない。じっちゃばっちゃは門限があるからな。
「じゃーね、次は最高の舞台で一緒にフットボールしよ」
「する!絶対!」
キラキラしてんなぁ、と年寄りみたいなことを思うのは仕方ないと思うのだ。

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いや別にイチャイチャしたいつもりはないのであるが。というかなんだ。夫婦生活はまぁ私の寿命の関係で短い形ではあったのだが。手を繋いでポケットに入れるとかそう言うことしますか持田蓮(15歳)は。そうですか。いや君旦那の時も平然とやってましたけども。そういや多分こうなってるのも流れだし、私が死んだ後の話は聞いたことがなかった。再婚したかぐらいは聞いていいだろうか。いやでもなんかもやっとするな。
「何」
「別に〜??持田蓮はすぐこう言うことすんな〜って思っただけ」
「お前だけにはね」
ほらすぐそんなことをいう。私はネックウォーマーに顔を埋めあ。くっそ、手のひらで泳がされてる感じが凄いヤダ。顔赤いから見られたくないための抵抗であるが、あまり意味はないかもしれない。ふはっ、と笑うような息が聞こえたからだ。
「何?照れてんの?」
「うるさい」
「ウブだねー。精神年齢ババアなのに」
「それは言っちゃいけないことでしょうが」
そう言ってから少し黙る。足元をみつめて、そうして口を開く。
「……蓮は、私でいいの?」
「何それ」
「……違う人も選べるじゃん」
そう言いながらも少しだけ、繋いだ手に力が篭る。彼はフハッと笑った。
「……お前やっぱ俺のこと好きだよな」
ああまたこの言葉だ。もういい。見かけは15歳なのだ。自嘲のような笑みを浮かべた彼を見上げて、口を開く。
「好きだよ」
そのたった一言で、彼はそんな笑みを浮かべるのはやめた。
「好きだよ。私がいなくなったあと、誰かと再婚したとか聞いたらもやっとするくらい好きだよ」
あの時は、あまり、伝えられなかったから。恥ずかしいけども、仕方ない。
「私は蓮が思ってるよりも、蓮がずっと大好きで、愛してるんだよ。今までも、これからも」
私の言葉に彼はぐにゃりと表情を歪ませた。でも見えたのは一瞬だけで、すぐに抱き寄せられて見えなくなる。あったかい。そうかいという照れ隠しで終わるかと思った。
「別に、お前以外いらないから。昔も……今も」
そう言った彼は頬を撫でる。そのあと、かち合った視線に。

==

「へー、姉御コーチやってんの?」
「あぁ」
新しい年度に入り私はヘルタから代表戦での出演時間制限をくらった。うーん、仕方ない。ヘルタでのパフォーマンス第一ということだろう。蓮達もアンダー代表候補に名を連ね、サクッとスタメン入りを果たしていて笑った。さすが天才児と言われるだけある。まぁ、そんなこんな、私の代表戦である。海外でやったり日本でやったり色々するが、とりあえず今回のワールドカップ予選最終は日本での試合だ。日本に帰国して、代表が集まってグラウンドで練習していれば不意に姉御の話になったのである。
「姉御、超攻撃型じゃん。指導できんのかなぁ」
「コーチだから大丈夫だろ。監督じゃないし」
「姉御の学校強豪なの?」
「いいや。埼玉の大会では予選リーグも勝ち残れないような学校だったが、今は違うな。今年は特に能力的にもいい選手揃ってる」
そう言った稲瀬さんにへーと相槌をうつ。
「いつか代表くるんだよね。楽しみだなぁ、同い年ぐらいとフットボールするの」
ワクワクしてたらコーチが口を開く。
「そういや苗字、次の親善試合は高校生を招待するっつってたから能見も来るんじゃないか」
「えっ、マジか!!下手な試合できないね!!ね!!さんちゃんぱいせん!!」
「ぐっ。プレッシャーかけないで……」
「さんちゃんパイセンはプレッシャーかけた方がプレーにキレがでるからどんどんかけてくよ!!」
ハナちゃんと同じタイプだかんな。バシバシと背中を叩けば変な顔をされたのでケラケラ笑っておいた。

最近私達の活躍が著しいからかまたサポーターがじわじわ増えつつあるのだが、今回は高校生をよんでいるからほぼ満員らしい。わー!と思いながらちょっと顔を出して周りを見る。まぁすぐ後ろに下げられたけど。ワクワクするね!!と周りの背中を叩いていれば相手チームが私を見たのでニコニコしておく。とりあえず視線がかち合ったので握手の手を差し伸べる。
『お互い楽しいゲームにしましょう』
そういえば握手に殺到して笑った。年長の人が握手してくれたけど。


「早く試合出たいなー」
そう稲瀬さんの背中に投げかける。まぁ私は客寄せパンダだかんね、出すことは出すだろうけど。最近私がベンチスタートだったりするから怪我してるのでは説出てるらしい。おいこらヘルタは理由を説明しろ。私は今シーズンも調子が良いんだぞ。だがまぁ、稲瀬さんの配置は悪くないし、私がいなくても強くなったのだ、このチームは。私が教えたからもあるけど。でも、常に勝ち続けられるかといえばノーだ。私も個人だと負けなしに近いが、チームとして負けることは多々あるし。まぁ私がいないと舐めて来るチームと、他も警戒をすべきとそうではないチームの差はでかい。今回は後者なんだろうとは思う。どこからどうするのが一番いいかを考えて、ああこれは多分最近やったやつが一番良いのではないかと思う。でも、稲瀬さんはいい意味でずっと模索するような人だ。恐らく私がいない時、ヘルタが私の召集を拒んだ時の想定でこのゲームは動いている。本当なら海外から試合のたびにポンポン呼び戻すのも難しいだろうし。日本は強豪になりつつあった。でも今日の相手はずっと強豪だった。しかもなめることなく挑んでくる感じの。チャンスは何回もあるが、決めきれないのが今後の課題かもしれない。それは向こうにも言えるが。
「やっぱり試合出たいなー。蓮とハナちゃんにお前招集されといてそれかって爆笑されてしまう」
そう言いながらも中にいる選手にひらひら手を振っておく。でもそのまま頑張れるなら頑張ってほしい。

==

「苗字、後半いくぞ」
「もういいの?」
「もう一つ強豪国相手に試したいことがあるからな。山南の体力も心配だ。最初は山南の位置に入れる。フォワードの消耗が激しいようならそれを試す」
「はいよー。まぁそうなったらよっちんパイセンとかんちゃんパイセンお願いしまーす」
そう言えば二人は頷いた。
「お前達は女王だ。意味のない敗北は許さない」
稲瀬さんはこう言う人なので、私と相性がいいし、昔はヴィクトリーを女王の立場にしてたのだが、それは余談である。


うーん、フォワード多用しつつ得点取ったらそろそろフォワード人の体力がなくなってきた。ので、巷で噂のゼロトップになりました。ヒュー!私が動くしかねぇ!!ハードワークハードワーク!とワクワクしながらフットボールする。上手い人みんな私の相手してくれんの最高じゃないか!?と言う風にガンガン攻める。マークを外しちゃいけないと言うのに一瞬でも外しちゃった相手に、無慈悲にシュートを打てばゴールネットを揺らした。フリーになった瞬間隙があった瞬間突っ込む私だからな。まぁこっちもこれだけ激しいゲームだと削られてるから隙多いけど。とりあえず体力的にきつくなるともっと盛り上がりが欲しくなるのでゴールパフォーマンスついでに盛り上げてとサポーターを煽る。こういう時のサポーターの応援は力になるのだ。うるさいほどの声援が広がっていく、私はそれを見て、フハッと息を吐いて笑った。
「いいね、いいね。この感じ。フットボールはこうじゃなくっちゃ」
その時の私の顔はめちゃくちゃ悪どかった、とはのちに相手チームのルーキーちゃんと自チームの先輩達に言われたことである。うるせぇ。

==

「ナマエちゃん、インタビュー」
「インタビュー、拒否!」
そうバッテンをしてたら広報さんに背中を押されて簡易にセッティングされたインタビューパースに向かうことになった。くそう。マイクの前に立たされたのでマイクをつんつんする。
「んーーー……楽しかったしかいうことないからインタビュー終わっていい?」
「ダメです」
ということで苗字選手のインタビューです、じゃないんだよなぁ、とあたまをかく。歓声をあげるサポーターに、やれやれと息を吐く。いつものように素晴らしい活躍でした、と告げたインタビュアーに内心ため息をつく。
「新しい体制での起用でしたがいかがでしたか?」
「フォワードいてくれた方が私的には楽だし色々考えれるので好きですけど、まぁ、楽しかったですね!!パスもうちょっと極めようと思いました!いつも振り回してごめんね!フォワード陣!」
「前半は珍しくベンチからスタートでしたが……」
「まー、私がいない時の体制でどれだけ強豪に牙向けるか試したかったんじゃないですか?今の監督、勝つ方法を色々考えながらタイプなんでね。新しいこと色々試したいんじゃない?」
「そうだったんですか。しかし、不調という噂もありますが実際はどうですか?」
「あれだけ動き回ってアシストきめて自分でゴール奪ってんのに私が不調に見える人は眼科行った方がいいと思うんですけど、どう思います?」
質問に質問を重ねる。広報さんにコラッと言われたので、とりあえず心配してもらえるのは嬉しいですありがとうと返しておいた。今回はたくさんの高校生が見に来ていますがとインタビュアーは苦笑いして話を変える。
「知ってる。この前稲瀬さんやコーチにお前の代は豊作って言われて喜んでたところ。なんか各地で色々楽しいことが起きてるらしいし」
「では、その高校生に何かコメントをお願いします!!」
「……えー……高校生の皆様……私は先に行きます!私とフットボールやりたいやつ、私をぶっ倒したいやつ、私に憧れる奴は少数かも知んないけど、まぁ、色々いると思いますが、私は君たちを待つ気なんてありませんので!!A代表でお会いしましょう!!まぁ私と交代かもしれませんけど!!」
ケラケラ笑いながらそう言えば、ワーと声が上がったので手を振る。これで終わりかとおりようとしたら、インタビュアーが引き止めた。
「では最後に決勝リーグの意気込みをお願いします」
「……優勝はしたいですね!でも他のチームが私対策して来るから難しいかも!」
ケラケラ笑いながらそう告げる。周りはそんなことないぞーとかこらー苗字ーとか怒る。私はフハッと息を吐いてから前を見た。
「でも、私は今からめちゃくちゃワクワクしてるよ。どんなふうに向かって来るかってね。それに、女王様一人の試合なんて面白くないでしょ。去年は私と姉御が結構迎え撃ってたけど、今は違う。私達は全員女王様だから、全員で迎え撃つ。私達はこの国から寄せ集められた紛れもない強者だから」
ナマエは年々持田に似てきたな、とは、みていたハナちゃんから言われることである。えっ、やだ、といえば蓮に扱かれたが。

==タイムラグ見つけたのでぼつん



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