2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭33
新しい地方に引っ越すことになったらしい。いつもは短期で住んでいるカロス地方から他の地方に出向くのであるが、今回は長くなるからということで引っ越すことになったらしい。慌ただしく出入りをする業者を見ながらナマエはそっとため息をついた。アルトマーレを離れる時も寂しかったが、この街をーーミアレシティを離れることも寂しい。特にナマエはよくプラターヌの研究所に出入りをしていたし、シトロンをはじめとするジムリーダーやカルネや四天王、バトルシャトーにいるトレーナー達と親交があったから余計だろう。離れたくない、とは口が裂けても言えないことであるが。ピカチュウが心配したようにナマエを見上げ、フライゴンが擦り寄った。
「ナマエちゃん、準備はいいのかい?」
「プラターヌ博士……」
「悲しそうな顔をしているね。大丈夫さ、永遠の別れなんかじゃないんだから」
プラターヌはそういってナマエを見下ろした。ナマエはその言葉に息を詰めた。同じ言葉を聞いたことがあったからだ。もう朧げになりつつある記憶の中で、モトナリという男性がナマエに告げたのである。
ーー大丈夫、これは永遠の別れなんかじゃない。いつか、きっと会えるさ。
その言葉をナマエは信じているし、ヴィセンテもお礼を言うのだとその地方の手がかりを探しているが見つかっていないのだ。ついにはハラハラと涙を流したナマエに、プラターヌは穏やかに笑った。
「またいつでも帰っておいで」
きっと、ヴィセンテが資料がどうのって帰ってくるよ。
そういって頭を撫でた手をナマエは握って小さく頷く。ナマエの父親ならありえることであるし、そんなに長くはいないかもしれないからだ。真夏の日差しがいくぶんか和らいで、研究所の中を照らす。カロス地方には秋の気配が近づいていた。
ナマエと家族、そのポケモンが引っ越してきた場所はハロンタウンという穏やかな街の郊外だ。森がすぐ近くにあるほか、畑や牧草地に囲まれていてポケモン達がのんびりと過ごしている。見たことがないましろでふわふわなポケモンに、ナマエは小さくわぁと声を上げた。草を食べながら、ぐめ、と鳴いているポケモンは初めて見るポケモンである。ナマエはそっと、ピカチュウとフライゴンも驚かせないようにゆっくりとポケモンに近づくとポケモンに挨拶した。ナマエもそれに習って挨拶すれば、ぐめー、とにっこり笑いながら告げたポケモンは可愛らしい。よろしくね、とナマエが告げれば、ポケモンはもう一度鳴いた。なるほどおとなしいポケモンらしい。
「ナマエー、こっちにきてみろ」
ヴィセンテにそう呼びかけられて、ナマエは返事をしてヴィセンテの元へ向かった。ピカチュウとフライゴンが後を追うようにやってくる。ヴィセンテはそれを確認して、ゆっくりと家の裏側へ向かった。庭をぬけて、ちょっとした小道のような場所をぬけ、そうしてたどり着いたその場所にはまるで植物園の温室ような、ドームになっている建物がある。
「一応このあたりは柵がある場所までは家の敷地だ。まぁ、野生ポケモン達がみんな入って来てるんだけどな。で、これだ」
ヴィセンテはそう言って扉を開けた。ナマエが中に入ると小さく歓声を上げるのは仕方がない。まるで室内庭園だ。さまざまな種類の木が聳え立ち、花が咲き、草が生えている。どこかに向かって引かれた水路の水をピカチュウと覗き込めば、水は澄んでいて水ポケモンが喜びそうだ。フライゴンが上機嫌に空に舞い上がる。天井の真ん中はまるで穴が空いたように空と行き来できるようになっているようだ。ピカチュウやフライゴンと水路を辿れば、噴水がある広場のような場所に辿り着く。まるでアルトマーレの『秘密の園』のようだ。
「すごい、すてき……」
「だろう?ここならナマエの友達も自由に過ごせる。ここは、ナマエの好きにしていい場所だ」
「ほんとう!?」
ナマエはそういってヴィセンテを見上げる。ヴィセンテは頷いて、持っていたトランクケースからモンスターボールを取り出すとポケモン達を外に出す。次々と現れたナマエのポケモン達に、ナマエはそれに駆け寄ってここが新しい家なのだと告げた。ポケモン達も嬉しそうに周りを見たり駆け回ったりしている。その様子を見て、ヴィセンテはホッと息を吐いて近くの花壇に腰をかけた。
元からこう言う場所をナマエに提供しようとはヴィセンテは考えていたのだ。ナマエの友達ーー仲良くなったポケモン達も徐々に増えプラターヌの研究所を間借りするのにも少し無理が出てきた。まぁ、プラターヌは嫌な顔などしないのだが。場所はカロス地方で探してはいたのだが、かなりひさしぶりに実家に呼び出されたと思ったら、散々嫌味を言われた後にこの地方に住めと言われ親族が放置していた建物を押し付けられたのだ。それがこの古びた屋敷とポケモン達を恐らく鑑賞するために作られたこの場所だったのである。ナマエが笛を取り出し、音を奏でるのが聞こえる。アルトマーレでよく聞いた曲だろう。ヴィセンテはそっと目を伏せて、その曲に耳を傾けた。
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ヴィセンテが自身の研究の為に家に戻ってしばらくたった頃である。かさり、と言う音が聞こえてナマエは笛を吹くのをやめる。ルカリオとゲッコウガが物音がした方向をじっと見つめた。ガサゴソと言う音に張り詰めたような空気になった瞬間である。茂みから、ぐめーという声と共にポケモンが顔を出した。それと共に、あ、だめなんだぞ、ウールー!!という声がして同い年くらいの男の子が現れた。ナマエがキョトン、と首を傾げる。ゲッコウガとルカリオはなんだ子供かと警戒をといた。
「え、えー、と、ここはお前の家なのか?」
「うん、そうだよ」
「へー、知らないポケモンばっかでワクワクするぞ!俺はホップ!こっちが相棒のウールー!近くに住んでる……というか、お隣さんだぞ!ちょっと距離離れてるけど!」
そう笑ったホップにナマエも笑う。
「私はナマエだよ。ここにいるのは、私のお友達なの」
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「連れていきたくない……」
「ヴィセンテくん、腹括るしかないわよ」
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嫌味なことを言われているな、とはナマエもなんとなくわかる。煌びやかなそこには変わった髪型の人や綺麗なスーツやドレスを着た人がいて皆どことなく気品があるのだ。ナマエの母親のリザに対しても、父親のヴィセンテに対してもここの人達はたくさん意地悪なことを言うのだ。そして、それはナマエに向かっても言われる。確かにナマエは御伽話でお姫様が王子様と踊るようなダンスは踊れないが、アルトマーレの曲に合わせてポケモン達とダンスを踊ることができるからナマエにとってはそれでいいと思っている。そんなダンスを踊る必要がナマエにはないのだ。怒ったようなヴィセンテと堂々としてるリザに逃がされるように、ナマエは少し離れた場所でそっと息を吐いた。ボールの中にいるポケモン達が心配して揺れる。それを感じてナマエは大丈夫だよ、とそのボールを撫でた。
ヴィセンテに連れてこられたのはまるでお城だった。カロス地方にもいくつかお城は残っているが、それよりもどこか重厚感がある。なんのパーティーなのかナマエにはさっぱりだが、なんとなくヴィセンテが戻ってきた理由には含まれるのだろうとは理解できた。たくさんの人が何かを祝っているのも。何かをお祝いしているのに、どうして意地悪な言葉を吐きかけられるのかナマエにはよくわからなかった。決してそこはおめでとう、という空気だけじゃなかったのである。もっとドロドロしたような。ポン、と言う音がしてボールからピカチュウとフライゴンが現れる。心配そうにこちらを見上げたピカチュウとフライゴンに、ナマエは大丈夫だよ、と二匹を抱きしめた。
しばらくして、がさりと音がしてそちらを見れば小さなポケモン達が見つめていたのにナマエは気づいた。ナマエは笛を取り出して、そっとアルトマーレの曲を奏でる。小さなポケモン達が寄ってきて、ナマエを見上げた。キラキラと月の光が降り注ぐ。ポケモン達が聴き入るのをみて、ナマエは音を奏でることに集中した。
しばらくたって、ナマエが笛を離した頃だ。凄いな!と言う声が聞こえてナマエはそちらを見た。そこには一人の青年がいる。ナマエを囲んでいた綺麗なスーツではなく、どこかスポーツをする人のような格好をしている彼は周りを見渡した。
「ここにいるのは、全部君のポケモンか?」
「いえ……私の友達はフライゴンとピカチュウだけで……みんな集まってきてくれたみたいです」
「そうなのか!よっぽど君の笛の音色が気に入ったんだな!」
「ぱぎゅあ!」
ニカリと笑った青年にリザードンも笑う。ナマエはその笑顔に安心した。先程までの人達とは違う人であるし、最近よく遊ぶホップによく似ている。膝の上にやってきたアブリーをみて、緩やかに笑う。アブリーや足元にスボミー達もニコリとわらってみせた。
「そうだといいな」
「きっとそうだ。俺のリザードンも聞き惚れていたからな」
「本当?」
「あぁ。でも、知らない曲だった」
「アルトマーレっていう島の民謡なんです」
「アルトマーレ?」
「ジョウト地方の南のあたりにある島で、私がもっと小さい頃に住んでた街なんですけど」
へぇ、と青年は相槌をうった。きっと綺麗な街なんだろうな、と。ナマエはその言葉に頷く。アルトマーレは水路が巡る綺麗な街だ。そして悲しい街だ。口に出しはしないが。
「そういえば、君はピカチュウとフライゴンを連れているがトレーナーなのか?」
「一応は……」
「話を聞くに他の地方から来たんだろう?よければバトルしないか?」
そう首を傾げた青年に、ナマエが返事をするよりも先にピカチュウが「ぴっかー!」と返事をする。フライゴンもグイグイとナマエの背中を押した。
「お、二匹はやる気満々みたいだな!」
「わ、わかりました……でも期待しないでくださいね」
「いや、期待してるぜ!」
そうニカリと笑った青年は、こっちだ!と足を踏み出しーーリザードンにそっちじゃないという風に引き止められた。その様子を見てナマエはクスクス笑う。この人はリザードンととっても仲良しだ。
連れてこられた場所はスタジアムのようになっている。カロス地方のポケモンバトル用のコートよりもうんと広い。三体と三体のバトルということで、ナマエはボールの中を確認する。フライゴンは応援モードで、ナマエの後ろでがんばれがんばれという風に揺れていた。ギャロップも時間が時間だからか、眠たそうだ。でも、ピカチュウはやる気満々であるし、ルカリオとゲッコウガも自分はいけるという風に頷いた。
「よし、いけ!オノノクス!」
「ルカリオ、頑張って!」
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「ルカリオ、りゅうのはどう!」
「オノノクス!
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「ゲッコウガ、そのまま全員で水シュリケン!」
「ドラパルト!ドラゴンテールで撃ち落とせ!」
「ゲッコウガ、そのままふいうち!」
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「ピカチュウ、そのまましがみついてかみなり!!」
「リザードン、落ちる前に叩き落とせ!」
雷雲が立ち込めた瞬間、雷が落ちる。寸前で振り落とされはしたが、それでも雷は相手に多少は当たったらしい。地面目掛けて落ちてくるピカチュウにナマエは口を開く。
「ピカチュウ、エレキネット!」
「リザードン、火炎放射で追い込め!」
そのままピカチュウが空中にネットを張る。びょん、と伸びたネットに、リザードンは火炎放射を浴びせようと炎を蓄えた。
「ピカチュウ、そのままボルテッカー!!」
ピカチュウが電気を纏い、勢いよくリザードンにむかう。リザードンの口から炎がはかれ、炎と電気がぶつかったあと、光の一閃がリザードンにぶつかった。リザードンがふらりと倒れて、ピカチュウもフラフラと倒れる。先に立った方が勝ちだ。リザードンがなんとか起き上がり、ピカチュウも起きあがろうとしたが「ちゅー」という声と共に目を回す。ダウンである。ナマエはピカチュウに駆け寄って、おつかれさま、とピカチュウを抱き上げまた。フライゴンがナマエのカバンから回復用のアイテムを取り出し、ピカチュウにあたえる。元気になったのか、ピカチュウはゆっくりと目を覚ましパチパチと瞬いた。青年にも回復薬をわたさないと、とナマエが青年を見れば、青年は目をキラキラと輝かせてナマエの手を取った。
「キミはバトルがつよいな!こんなワクワクした戦いができるとは思わなかった!」
「ぱぎゅあ!」
「次はダイマックスもとりいれてしょうぶしよう!そうだ!チャレンジリーグに興味はないか!?」
「えっと……」
「こーらーー!ダンデ!!!」
そんな声に青年は声が聞こえた方をみた。別の青年がいる。
「キバナ」
「お前、祝賀パーティーにいないと思ったら!俺のスタジアムで勝手にバトルしやがって!」
「いや、祝賀パーティーと言っても俺が何をするわけではないしな。スタジアムに関してはすまない!彼女とバトル場所がここしかなかった」
「反省してない顔だな」
「ああ!楽しかったからな!」
「反省しろ!」
ぽんぽんとかわされる会話である。フライゴンが二人を見比べて首を傾げ、ピカチュウは二人を見上げたままだ。
「というか、キミ、見てたんじゃないのか。出てくるタイミングが良すぎる」
「……みてた。みてたよ!珍しくダイマックスしないし、見たことないポケモンが出てたからな!」
ダイマックスとは?とナマエが不思議そうに首を傾げた。聞いたことがない言葉である。この地方特有のものだろうか。
「やっぱりダイマックスを知らないのか」
「メガシンカみたいなものですか?」
「メガシンカ……ってことは他の地方から来たのか。通りで知らないポケモンを連れてるわけだ」
キバナと呼ばれた青年はそう言ってナマエを見下ろして、人の良さそうな笑みを浮かべた。
「ダイマックスっていうのはこの地方特有のバトルスタイルでな、ポケモンが巨大化するんだ」
「巨大化?」
「あぁ、ビルほど大きくなる」
「だから、ジムのスタジアムがとても大きいんですか?」
「あぁ、そういうことだ!ダイマックスバンドというものでポケモンを大きな姿にする。どのタイミングでダイマックスするか、どう技を使うか、それによって勝負が左右する」
ナマエはふむふむと聞く。ピカチュウがダンデと呼ばれた青年のバンドをくんくんとかいて、ナマエが持っている共鳴石のリングとメガシンカ用の石が嵌め込まれたネクタイピンを指さした。
「ぴかちゅ?」
「ちがうものなんだって」
「ぴっかーぴかちゅ……ぴかぴ!」
「ふぉん!」
ピカチュウがナマエの腕から飛び降りて、フライゴンがナマエの笛をナマエに手渡す。そこでナマエはああ回復!と手を叩いた。恐らくはピカチュウは回復してもらってそのダイマックスが見たいのだろう。
「おいおい、まだピカチュウは戦いたいのか?」
「ダイマックスがみたいんだとおもいます」
そう言ってナマエはひゅるりと笛を吹く。アルトマーレの民謡ではなく、アーシア島の民謡だ。足元にかすかに水の音がして、青白い光が舞う。ひゅるりと美しい音がなって、地面には微かに水が流れる。しばらくすればナマエのボールから元気になったルカリオとゲッコウガが姿を表した。空を飛べるポケモン達がスタジアムの上から覗いている。ダンデとキバナはその光景に目を瞬いた。まるで夢でもみているようである。リザードン達の怪我が治っているのを確認して、ナマエは曲をしめて笛をおろす。水がひき、ピカチュウは元気そうに駆け回った。ポケモン達はしばらく見下ろしていたが、ナマエが手を振ればポケモン達は帰っていった。
「今のは……」
「?」
「ぴかぴ!」
「くぉん!」
ピカチュウとフライゴンが嬉しそうに泣いて、ダンデとリザードンの背中を押す。
「ピカチュウ、フライゴン、だめだよ、迷惑になっちゃう」
ナマエがそう言った頃である。ルカリオがなにかに勘づいてピカチュウとフライゴンに声をかけた。お父さんとお母さんがきた、とナマエに伝えたルカリオにナマエはそちらを見れば、ふらふらと父親のアンノーンのアグリーとフューリーがやってきて、ナマエに助けを求めるようにナマエの周りをとんだ。なるほど、この二匹は父親が怒っているとナマエにこうして飛んでくる。ついでに母親が新たに育てているニャビーもやってきて、伺うようにスタジアムの入り口をみた。
「おとーさんもおかーさんも、おこってるの?」
そう尋ねれば三匹は頷いた。
「逸れたからか?」
「それは悪いことをしてしまったな。一緒に怒られよう」
「うーーん、たぶん、ちがうと思う」
父親と母親が誰かと一緒にきた。怒っている顔だ。怒られてしまうのか、とナマエが眉尻を下げればどうやら怒りはその後ろにいる男性二人にむいているらしい。変わった髪型だ。キバナは「げ、王族」と小さくぼやく。
「キミはこのスタジアムを管理してるジムリーダーだったな」
「ちょっと借りるわよ。この二人をぶちのめさないと気が済まないのよ」
ナマエは二人を見てあわあわする。怒っている。これは大惨事になる。おもに、相手が。そんなことを知りもしないキバナは目を瞬いて、イイっすよ、と軽く返した。
「一戦も二戦も一緒だしな」
「よし、男前ありがとうな」
「あわわ……」
ナマエはあわあわと二人を止めようとするが、二人はナマエに下がってなさいというだけだ。ぽん、と投げられたボールから現れたガブリアスと母親のバシャーモにナマエはがっくしと肩を落とす。これはやばい。二人ははっきりいってナマエよりも強い。その強さはワタルやシロナ、カルネもお墨付きなのだ。二人がリーグやバトルに興味がないだけで公式戦には出ないが。しかも、今日に限って二人とも一番強いポケモン達を多くつれているのである。ルカリオは先輩と慕う母親のバシャーモが現れたからか目をキラキラさせている。こういう時に頼りになるのはゲッコウガであるが、流石にあきらめろという風にナマエの肩を叩いた。
一瞬だ。共鳴石でメガシンカしたバシャーモのカウンター、メガシンカしたガブリアスの流星群がヒットしてダイマックスが解かれたのだ。ナマエはずっとあわあわとしっぱなしである。隣で見ていたダンデが目をキラキラさせており、キバナは驚いたように目を瞬いた。敗れたポケモン達が目を回してボールに回収される。次に出たポケモンはあまりの気迫におされてジリジリと後退し、トレーナーを確認したが未だ戦意を衰えさせていないトレーナーに仕方なく前を向いた。ドークタンが困った顔をして、グソムシャが今にも逃げたそうにしている。
「あわわわ」
ナマエは目を隠した。両親が、相手が、ポケモンに指示を出す声が聞こえ、破壊音に似た音がする。戻される音がして、また新しいポケモンがでたらしい。そうしてまた破壊音だ。静かになったのでそちらをナマエがちらりと見れば、砂煙と一緒に相手のポケモンが倒れていた。瞬殺……とぼやいたキバナは完全に苦笑いである。
「次ヴィセンテくんや私や娘になんか嫌がらせしてみなさい。次は、こうよ」
ガン!とリザが近くに転がっていた石を砕く。身震いした二人は逃げるように去っていった。ちなみにとなりにいたキバナも「こわっ」と小さく呟いた。ナマエは相変わらずあわあわとしながら、二人に駆け寄る。
「おかあさん、おとうさん、やりすぎだよ……ポケモンたち、すっごく怖がってたよ」
「あら、あの二人が悪いのよ。ナマエもたくさんあの二人にいじわる言われたでしょう?いじわるを言う子が悪いわ。私は万人に優しくしてあげようだなんて博愛主義じゃないもの。いい、ナマエ?やられたらやり返す、できたら倍返しっていうのは基本よ」
リザの言葉に、メガシンカをといたバシャーモが刻々と同意するように頷いた。やられたらやり返すはなんとなくわかるが、あまり同意する内容ではないためナマエは困ったように見上げた。ヴィセンテがその顔を見て口を開く。
「まぁ、ナマエには難しいかもしれないな。でも、黙っても何も変わらない。嫌なことは嫌だって言わないとな」
バシャーモと同じくメガシンカを解いたガブリアスが返事をするようにないた。ナマエはいったんは頷いた。が、すぐに口を開く。
「でも、さっきの、半分くらいはうざばらしでしょ」
「そうね!ばれたなら仕方ないわ!ごめんなさいね!」
あっさりと認めつスタジアムの外側に向かって謝ったリザにヴィセンテが苦笑いした。
「さて、君たちも悪かったな。スタジアムも借してもらえたし、娘がお世話になったようだ」
「いえ、こちらも娘さんとの勝負はとても楽しめました」
「俺はヴィセンテだ。こっちが妻のリザ、娘はナマエだ」
「お世話になりました」
そうぺこりと頭を下げれば、ダンデは気にするな!とニカリと笑ってから口を開く。
「俺の名前はダンデ。こっちがトップジムリーダーのキバナです」
「ドラゴンタイプのジムリーダー、キバナです。二人ともバトルが強いんですね。通りで娘さんがダンデといい勝負をするわけだ」
「いや、娘にバトルを教えたのは俺たちじゃない。あまり娘の前で俺たちはバトルしないからな。というか、そもそも俺たちがバトルをしない。俺は遺跡調査してると色々と追い払ったりすることがあるから必要最低限のバトルしかしないし、リザさんは……」
「私はポケモンと格闘技みたりしたりするのが趣味なのよ。バトルは二人ともおまけね。だからそれを生業にしてるジムリーダーやチャンピオンとはあまりバトルはしない主義なのよ」
ごめんなさいね。
ふふふと笑ったリザと、そう言うことと告げたヴィセンテにナマエはなんとも言えない。リザはオレンジ諸島のリーグを制覇した上でチャンピオンになっているし、ヴィセンテもオレンジ諸島と何かのリーグを制覇しているのを知っているからである。でも、二人にとってバトルはついでらしい。何かのーーだいたいは遺跡に入るのや入山の許可を得るためにリーグに挑むことが多々あるからだ。まぁ、今みたいに勝負に応じないこともあるのだが。
がっくし、と肩を落としたダンデにキバナは口を開く。
「まぁ、気軽に勝負を挑んでいい相手ではないよなぁ……」
「あら、気軽に家に来てくれていいし、娘とならバトルしてくれていいわよ。私もヴィセンテもナマエだって歓迎するわ」
そう言ったリザにナマエはリザを見上げた。リザは茶目っけたっぷりにウィンクする。
「家はシュートシティに?それともナックルに?」
「いや、ハロンタウンの郊外だ」
「ハロンタウン!?」
「あぁ、そこの古い屋敷を譲渡されてな。そこに住んでる」
「まさかあのゴーストポケモン達の棲家……」
「ゴーストポケモン達の一部はまだいるぞ。まぁ、元から知り合いみたいなものだしな」
「げんげろげー!」
ヒヤリと温度が下がったと思ったら、ヴィセンテの足元から現れたゲンガーにナマエとキバナがびっくりする。わっ、とナマエがびっくりすればゲンガーはケラケラと笑ってナマエのほっぺをつついた。ナマエはむっとしてゲンガーをみる。
「もー、ゲンガー、すぐにそうやってびっくりさせる……」
「ぴかちゅ、ぴかぴー」
「げんげ!」
ケラケラと笑ってヴィセンテの足元に戻ったゲンガーにナマエはヴィセンテの影を見つめた。にっこり笑ったゲンガーは影に馴染んだ。
「まぁ、あとは知り合いのゴーストタイプ使いが引き取ったり色々だ」
マツバだったり、フヨウだったり、ポケモン達が懐いた相手である。それでもゴーストタイプのポケモンはちらほらいて、夜になるとナマエに悪戯をするのだ。リザにはしない。何故なら見破られて普段食らわないはずの格闘タイプの技をかけられるからだ。その点、ナマエは怒ったり笑ったりするだけなのだ。ポケモン達は相手を選んでやっている。
「娘は基本庭とか奥のエリアにいるだろうし、まだ友達も少ないしな。まぁ、最近は内緒で誰かが遊びに来てるみたいだが」
ゲンガーのように揶揄ったような笑みを浮かべたヴィセンテに、ナマエは首をかしげる。ホップは確かに奥のエリアーーナマエに与えられた場所に遊びに来るが別に内緒というわけではない。リザが通している。
「奇遇ですね、俺もハロンタウンの出身で、弟がいるんです」
そこで、ナマエは思い出す。ホップのお兄ちゃんは無敗のチャンピオンだと言っていた。ということは、である。
「ホップくんの、お兄ちゃん」
「お!ホップとはもう知り合ったのか!もしかして、引っ越してきた綺麗な青い目の女の子はキミのことかな?」
その言葉に目をパチパチとナマエは瞬く。リザが「あら」と口を覆い、ヴィセンテが「ちがう、多分そんなんじゃないぞ、リザさん」とリザに突っ込んだのだが。
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「ごめんね、ナマエちゃん!」
スマホロトム越しにプラターヌがそう謝る。どうしても、こちらでは面倒が見切れないし、君に懐いてた子もいるし、と申し訳なさそうにプラターヌは言葉を続けた。ナマエがよくプラターヌの研究所に出入りしていた頃、トレーナーやブリーダーに捨てられたポケモンが研究所に連れてこられていたのだ。研究材料の寄付という名目でだ。それはいけないとプラターヌが民衆に訴えても、逆に宣伝のように拡散され、連れてこられるポケモンが増えたのである。それをナマエがなんとなく仲良くなって、なんとなく世話をしていたのだ。そもそも、ナマエのポケモン達はフライゴンをはじめとして穏やかなポケモンが多いし、世話を進んでするポケモンも多い。そんなこんなで、ナマエとナマエのポケモンでその保護が成り立っていたが、恐らくはその双方がいなくなってポケモンを世話する人手が足りなくなったのだろう。ナマエは謝罪を聞いてはいるが、ひっきりなしにボールが送られてきては中からポケモンが現れナマエやナマエのポケモンに挨拶するため、プラターヌの言葉は半分きいていない。その様子を眺めていたヴィセンテが口を開く。
「どこの地方でも問題にはなっているが、カロスが一番顕著だな。いや、一番表面になってるだけマシか」
「そうだと思いたいんだけど……」
「ナマエー!って、見たことないポケモンがたくさんいるぞ!?」
入り口から現れたホップに、ヴィセンテは「よ、ホップくん」と手をあげた。あのパーティーのあと、きちんと会ったのだが、ダンデの弟だと言われたらわかる。そっくりだ。
「こんにちは、ヴィセンテさん!これはいったいどうしたんだ!?」
「ナマエがカロス地方でポケモン保護をしてたんだけどな、カロス地方で面倒を見切れないからこの地方でもすることにしたんだ」
「……申し訳ない」
苦笑いしたプラターヌに、ホップがポケモンの保護?と首をかしげる。
「トレーナーやブリーダー達がいらなくなったポケモンを放棄して僕の研究所に送ってくるんだよ」
「そんなのひどいんだぞ!」
「そうだね。でも、まだマシな方だよ。森に捨てたり川に捨てたりするよりかはね」
「野生のポケモンを捕まえたならともかく、卵から孵ったポケモンで野生に適応できるのは少ないからな」
「そう、だから彼らはある意味最後の良心を振り絞って僕の研究所に送ってくれるのさ。少数なら譲渡を見つけたりするんだけどね。年々数が増えてきてしまって、ナマエちゃんに面倒を見てもらってたんだ」
「まぁ、ナマエ風に言えば、そんなこと関係なくみんなナマエのお友達だ」
ヴィセンテがざっくりとそうまとめる。ホップはその言葉に目を瞬いて、じゃあ俺達も友達になんないとだな!とウールーに告げて一緒にナマエに近づいて行った。ヴィセンテとプラターヌはそれを見送る。
「彼はナマエちゃんの人間のお友達かい?」
「知らないうちに仲良くなってたんだよ。歳も近いようだし、あの子も大概ポケモンに懐かれやすいし、悪いやつじゃない」
わぁわぁと子供の声とポケモンの声がする。それを見ながら、ヴィセンテはプラターヌに口を開いた。
「で?俺への俺の用件は?」
「キミにお祝いをカルネさんと一緒に送るんだけど、なにがいい?」
「いらねぇーー」
ヴィセンテが項垂れる。ヴィセンテの周りをアンノーンがくるくるとまわった。
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ひとしきりポケモン達の紹介をした後である。ホップが相変わらずくるくるとヴィセンテの周りを漂うアンノーンをみて口を開いた。
「そういえば、ヴィセンテさんの周りにたまにいるあのポケモンは何なんだ?アイツも見たことないんだぞ!」
「アンノーンっていって、遺跡によくいるポケモンだよ。おんなじポケモンだけど28の形がいて、ジョウト地方の昔の言葉はアンノーンで表現されてるんだって」
「へぇー!でも、普段は何処にいるんだ?」
「おとうさんのお部屋にくっついてるよ。たまにああしておとうさんのそばにくるの」
「へー、いろんなポケモンがいるんだな!」
そうざっくりまとめたホップにナマエは頷いた。本当にいろんなポケモンがいる。
「よーし、俺たちも仲良くやるぞ!ナマエ達の友達だもんな!」
ホップの言葉にウールーがぐめーと返事をする。ナマエはそれを聞いてニコニコと笑った。近くにいたきたばかりのポケモンがホップを見上げて首を傾げ、近くにいたトロピウスがヌッとホップに顔を近づけた。
「うわっ、なんだ!?」
「ぐぉ」
にっこりと笑ったトロピウスはフサを揺らす。
「トロピウス、私が代わりにとってもいい?」
そうナマエが問いかければ、トロピウスがもう一度にっこり笑って頷くとナマエに顔を寄せる。ナマエがトロピウスに実ったフサを取るとホップに渡す。
「トロピウスが『お近づきのしるしにどうぞ』だって」
「たべられるのか?」
「うん、とってもあまいよ。南の方の地方でおやつやデザートにしてるんだって。この地方では、カレーにいれるんだっておとうさんに聞いたよ」
「カレー?ああ!ほんとだ!よく見たらトロピカルカレーにつかうフサパックだぞ!食べていいのか!?」
「ぐぉん」
トロピウスがニコニコと笑いながら頷く。じゃあ遠慮なく!と皮を剥いてぱくりと食べた。そうして目をキラキラと輝かせる。
「うまい!」
「でしょう?」
ナマエがトロピウスの頭を撫でれば、トロピウスは目を細めた。ナマエの後ろからホップの様子を見ていたアマルスは急いでトロピウスのそばに隠れる。甘えるようにないたアマルスにトロピウスは応えるようになくとホップにもう一度挨拶してからのっそのっそと日陰に座った。
「あっちは?」
「アマルスだよ。ひとが苦手みたい。トロピウスが優しいし大きいから、よくトロピウスに隠れてるの。とくに、男のひとが苦手みたいで、おとうさんも最近やっと触れるようになったところ」
「へぇ。じゃあ、俺もゆっくり仲良くなるんだぞ!」
にっこりと笑ったホップにナマエもニコニコ笑った。アマルスはトロピウスの後ろから伺うように二人を見ていた。
==
==
ナマエは目をパチパチと瞬く。手元にあるのは招待状である。チャレンジリーグというリーグに参加するにはジムバッジが必要だが、ガラル地方のジムはジムチャレンジといって招待がないと挑めないとはホップから聞いていた。だから、ナマエが招待されてしまうとは思わなかったのだ。ナマエが招待状を眺めている隣で、ヴィセンテが招待状を届けにきたリーグのスタッフに「一人旅は無理」と親バカを発揮している。リザはその様子を見て、やれやれとため息をついていた。一人娘が昔行方不明になったことが今でも引きずっているのだ。途中で来客に気づき、そこから席を外したが。
「しかし、ワイルドエリアに入れた方が御息女にとってもいいかと……」
「野生のキテルグマがほっつき歩いている場所に娘を行かせるわけが……」
「キテルグマ?」
ナマエはそう言って招待状からヴィセンテとリーグ職員を見上げる。キテルグマといえば、母親の手持ちにいる黄色い大きなポケモンである。本当はピンク色だが、母親が仲良くなったのは色が違うキテルグマであるため、ナマエはピンク色をあまり見たことがない。そもそも野生のキテルグマは見たことがないのだ。リーグ職員はナマエに合わせて少し屈んだ。
「そうです。ガラル地方ワイルドエリアという自然公園があるのですが、たくさんのポケモンが生息しているんですよ」
「ダメだからな。だめ。例えちょっとの間でも、一人旅はダメ」
ヴィセンテの言葉にナマエは眉尻を下げて困った顔をした。
「あら、ヴィセンテくん。それなら二人旅ならいいのね?」
「二人旅ならいい。でも、俺は研究と仕事で忙しくなるし、リザさんも忙しいだろう!」
「あら、誰も私たち家族だなんて言ってないわよ。ね、ホップくん?」
その言葉に、ナマエはリザの方を見た。巻き込まれたホップが目をパチパチ瞬いてリザを見上げる。
「ナマエがね、ヴィセンテさんの仕事の方面からジムチャレンジに招待されたのよ」
「え!!本当か!!ナマエ!?」
「うん……」
「俺応援するぞ!!」
「それがねー、ホップくん。ヴィセンテくんが一人旅はダメって言うのよ。ホップくん、ナマエに付き添ってあげてくれないかしら?」
リザの言葉にヴィセンテが固まる。リーグ職員は「それはいい案ですね!」と頷いた。
「えっ、でも……」
「大丈夫、細かいお金のこととかは私たちに任せたらいいわ。とりあえず、どうかしら?」
「うーん……ナマエはどうしたいんだ?」
ホップがそう言ってナマエに問いかける。ジムチャレンジ。バッジ集め。アーシア島で会って、アルトマーレで再会した友達のサトシがいつかナマエに話していたことだ。ジムチャレンジを話すサトシはとても楽しそうだったのである。招待状をみて、ナマエはピカチュウとフライゴンをみて、頷いた。
「やってみる。ホップくんがついてきてくれると、嬉しいなぁ」
「よし!決まりだな!」
ニッと笑ったホップに、リザがにっこり笑ってヴィセンテをみた。
「二言はないわよね?」
「……ありません」
がっくし、と肩を落としたヴィセンテに、リーグ職員はリザに拍手を送りたい気持ちでいっぱいである。諦めるしかないかと思ったからである。リザはリーグ職員をみた。
「ごめんなさいね、ヴィセンテくんは心配性なのよ。昔から色々と娘が厄介な大人の事件に巻き込まれたり、船から落ちて行方不明になったこともあったから」
「えっ」
「もちろん、ジムチャレンジは子供も参加するでしょうし、リーグの、バックアップは、あるのよね?」
にっこりと笑ったリザにリーグ職員は全力で頷いた。普段からジムチャレンジの期間はワイルドエリアにしろ、街にしろ警備は確かに厳しくなる。それに、今年は一応さらに警備を厳しくする計画でもあった。はぁぁ、と深いため息をついたヴィセンテはちょいちょいとホップとナマエを手招く。
「ホップくん、ウールーだけだと俺が心配になるからポケモンをもう一匹連れて行ってくれないか」
「いいのか!?」
「ナマエもいつものやつを連れてると他とフェアじゃないからな。一匹くらいは新しいやつを入れた方がいい」
「うん、わかった」
「あとはホップくんの両親にも俺たちから説明するよ」
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「やっぱりお前だよなぁ」
そう言ったキバナにナマエは首を傾げた。ジムチャレンジはホップと、途中からホップの知り合いらしいマリィとビートと一緒にやり遂げてチャレンジリーグを制したのだ。そのあとの、リーグである。その控室でキバナはナマエを見下ろした。なんせ今回のジムチャレンジの中で飛び抜けていたのだ。そもそも、公式記録を漁れば恐らくは各地方の強者を招くエキシビションに参加できるほどの実力であるのだが、子供しかも大人しそうであるが為調べていないのでわかられていない。ナマエはナマエでまさかジムリーダー達との勝負になるとは思っていなかった。ジムバッジを揃えた人は四天王と戦って、チャンピオンに挑むものだと思っていたからだ。四天王に挑むか挑まないかは自由だと聞いていたからナマエは挑まずに帰ろうと思っていたのだがずるずると周りに引き止められたり断るタイミングを逃したために今に至る。よろしくお願いします、と頭を下げたナマエに、キバナは「おう」と笑った。
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ダイマックスはともかく、共鳴石を使用してのメガシンカはありなんだろうか。そう思いながらナマエはナマエのリザードンをみた。リザードンはダンデのリザードンと戦いたいらしく、ぱぎゅあ!と共鳴石を持ってアピールしている。ナマエもナマエでダイマックスでの勝負よりもメガシンカでの勝負に慣れているのだ。飲み物を買って持ってきたホップは珍しくナマエのリザードンが外に出てアピールしているのを見て首をかしげる。
「お!なんだ、ナマエもリザードンで行くのか!?」
「うーん、メガシンカで相対したいんだって」
「メガシンカ?」
そう首を傾げたホップとマリィに、ビートがナマエを見下ろした。
「待ってください。この地方ではメガシンカは確認されてませんよ!あれはカロス地方やカントー、アローラ、ホウエンなどでしかできないはず」
「なんでなんだ?」
「あぁ、それはガラル粒子が関係しているんだよ」
降ってきた声に三人は驚いたように、ナマエは少し嬉しそうにそちらを見た。
「プラターヌ博士!」
「ナマエの知り合い?」
「うん、カロス地方にいた時にお世話になっていた博士だよ。メガシンカの研究をしてるんだって」
「あ、思い出したぞ。ヴィセンテさんと話してた人だな」
「そう。キミは……君たちがナマエちゃんのお友達だね」
プラターヌの発言に、ナマエはコクリと頷いてホップも「おう!」と頷いた。マリィとビートが若干固まったが、ナマエが友達というのだから友達なのだろうとプラターヌは思う。
「ガラル粒子があるから、メガシンカができないんですか?」
「ガラル粒子とメガシンカを起こす粒子はよく似ていてね、双方ものとしては違うけれど元を辿れば同じじゃないかって言われたりもしてるんだ。少なくとも、僕やマグノリア博士はその可能性があると思っているしお互いの研究がお互いの研究を参考にしたりもするよ……まぁ、僕が圧倒的に彼女の研究をしてるんだけどね」
苦笑いである。ナマエはふむふむと頷く。マグノリア博士は確か図鑑をもらったソニアの祖母だったはずである。
「じゃあ、博士はマグノリア博士にあいに?」
「それが半分くらい。キミの活躍を見にきたのが半分くらい。残りの少しでヴィセンテに会いにきたんだよ。キミを心配してカロス地方のジムに挑戦させなかったのに、どうしてガラルならいいんだって僕が怒られてね」
「一人旅はいけないけど、二人ならいいよっておとうさんがいって、おかあさんがじゃあホップくんといってきたら?って」
「揚げ足取りじゃないですか」
ビートの言葉にプラターヌは苦笑いした。あの二人はだいたいあんな感じである。
「……でも、どしてこの地方ではメガシンカできないと?」
「簡単に言うと、ガラル粒子が邪魔をしちゃうんだ。それは逆も同じだね」
「なら、どのみちメガシンカできないじゃないですか」
「普通のメガシンカなら難しいけれど、リザードンが持っている石はまた違うものなんだ。普通はキーストーンというものを使ってメガシンカするんだけど、リザードンが持っているのは共鳴石といってね、メガシンカとは違う作用をするはずなのにメガシンカと同じことができる」
「へぇ〜、色々あるんだな!」
「ならば、使えるものは使うべきでは?」
ビートの言葉にナマエは「うーん」と眉尻を下げた。マリィが「何かあると?」と首をかしげる。
「ズルにならないかなぁ。ダンデさん、ダイマックスだけなのに、私はダイマックスとメガシンカだし……」
「アニキはいいぞって言いそうだけどなぁ。ナマエが心配なら、リーグの偉い人に確認するしかないな」
「そうだね、公平に試合をするならそれがいいかな。……じゃあ、ナマエちゃん、僕はそろそろヴィセンテに会いに行くよ。また遅刻かって怒られるからね」
「うん」
「頑張ってね」
「がんばります」
刻々と頷いたナマエにプラターヌは頭を撫でてから人混みに紛れて消えた。
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まだいける、とナマエのリザードンもダンデのリザードンも足を踏み出そうとしたのだが。先に崩れ落ちたのはナマエのリザードンである。どさりと崩れ落ちて目を回したリザードンにナマエは駆け寄るとボールにいれた。それを確認したダンデのリザードンも地面に伏せる。ざわりざわりと周りが騒ぎ、審判が審議にはいる。審議も何も先に倒れたのはナマエのリザードンだ。だから、ナマエは負けたと思っている。改めて先に倒れたのがナマエのリザードンのため、ナマエの負けが言い渡されれば会場は多いにわいた。ダンデと言えば、目を見開いてナマエを見るとあの時のように嬉しそうな笑顔を浮かべる。その笑顔はナマエがカルネと初めてバトルした時のカルネの表情とにていた。とりあえず、ナマエは握手のためにダンデに近づく。ダンデはどこかキラキラした笑顔でナマエを見下ろした。
「君は!すごいな!あの時から君がダイマックスしたらとても面白いバトルができるとは思っていたが!この地方ではできないはずのメガシンカも見事だった!」
「うーん、でも、すこし、ずるをした気分です。ダンデさんはリザードンをメガシンカさせるわけじゃないから……それに、ダンデさんがメガシンカできたらもっと早く負けていたと思います」
ナマエが素直にそう言えば、ダンデは首を左右に振った。
「それは違う。君の戦術は確かだった。あの時も、今回も」
そう言って手を差し伸べたダンデにナマエも手を差し出す。握手をすれば、ロトムがその様子をカメラに映し出した。わぁわぁと歓声が聞こえる。ダンデを讃える声もあれば、ナマエを讃える声もする。それはいつかあのアルトマーレのフェスティバルを思い出した。もしかしたら、ロトムの写すカメラはカロス地方やアルトマーレ、アーシア島やランセ地方にも繋がっているのかもしれない。ナマエはカメラをまわすロトムに小さく手を振って元気だよと小さくつぶやいたが、それはやまない歓声に消えてしまった。
騒乱の後、マリィやビートとまた遊ぶ行く約束をして、空飛ぶタクシーで迎えにきたヴィセンテと、ホップと一緒にハロンタウンに帰る。ホップを家に送り届けて、また明日、と手を振った。疲れているから休めと言われたが、ナマエはどうもその気にはなれずに室内庭園に足を運んだ。そうしてポケモン達に報告をし、庭園の中心部にある噴水向かえばそこにはヴィセンテが佇んでいた。珍しくポケモン達もいない。何をしてるのだろう、と思ったナマエが「おとーさん?」と呼んで近づけばヴィセンテは振り返ってナマエを真っ直ぐにみた。それを見て、ナマエはヴィセンテじゃないと気づく。
「ラティ?」
そう、ヴィセンテじゃない。アルトマーレでナマエがよく遊んでいた、兄や姉のようだった二匹のうちの一匹だ。ラティとナマエが呼んでいたラティオスと、アスと呼んでいたラティアス。ラティアスはよくカノンの姿を利用していたが、ラティオスがよく利用していたのはヴィセンテの姿だ。
「ラティ!」
ナマエがヴィセンテの姿をしたラティオスに駆け寄って抱きついた。温度が低い。やっぱり父親ではなくポケモンなのだと、ナマエは思う。ゆっくりと、手がナマエの頭を撫でる。
「ラティ、今までどこにいたの?アスはここにいるって知っているの?」
そう尋ねてもラティオスはヴィセンテの姿で穏やかに笑うだけだ。そうして噴水の囲いに腰掛けると、ナマエに隣に座るように囲いを叩く。ナマエはそこに座って、あのね、と、今までのことをラティオスに説明するために口を開いた。ラティオスは穏やかな表情でそれを頷いて聞く。穏やかな時間には間違いなかった。
「ナマエ、起きろ」
「ぴかちゅ!」
そう覗き込んだピカチュウとヴィセンテ、フライゴンにナマエは目を擦る。眠っていたらしい。ぼんやりとした思考の中、ナマエはあたりを見渡した。ポケモン達が心配そうにナマエをみているが、そこにラティオスはいない。
「だめだろ、こんな場所で寝たら。風邪ひくぞ」
「ラティは?」
「ラティ?」
ヴィセンテはナマエの言葉に首をかしげる。
「さっきまで、ラティとお話ししてたよ」
その言葉にヴィセンテは目を見開いた。フライゴンが首を傾げて、探してくると言わんばかりにふらふらと周りを飛び、ピカチュウがすんすんと鼻を鳴らした。そうして二匹はあたりにいないことを確認すると、もう一度ナマエを見て首を傾げた。
「ぴーか?」
「くぉん?」
「んー……夢だったのかなぁ」
ナマエはそう言って眉尻を下げた。
「……ナマエにおめでとうって言いにきたんじゃないか」
「そうかな」
「あぁ。きっと何処からナマエ達とラティアスを見守ってるんだよ」
「そっか」
ヴィセンテの言葉にナマエは頷いた。さぁ、ご飯だから帰ろうと言ったヴィセンテにナマエは頷いてポケモン達と屋敷の方へと足を進ませる。アマルスが必死にそのあとを追いかけていた。ナマエがいなくて寂しいおもいをしていたからだろう。その様子を見送ったヴィセンテが広場に振り返れば、そこには確かに透き通ったラティオスがいてヴィセンテにむかってひとなきすると姿を消した。
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遠吠えのような声が聞こえてナマエとホップはそちらを見た。森に面した庭の方からだ。そちらの方は霧が立ち込めているのが伺える。28文字のアンノーン達がヴィセンテに何か告げるようにくるくると周りを回った。近くで何やら仕事に没頭していたヴィセンテもそれを見て、何かを思い出したようだった。
「ナマエ、ホップ」
そう手招いたヴィセンテに二人は首をかしげる。ヴィセンテが迷子にならないように手を繋ぐように告げる。ルミナスメイズの森でフェアリータイプの悪戯によってナマエが迷子になった為、ホップはきっちりとナマエの手を繋ぐ。あとはヴィセンテとも。ピカチュウがナマエの肩に飛びのって、フライゴンとウールーがついていくために立ち上がった。ヴィセンテはそれを確認してシャンデラを連れてその霧の中に向かった。
「ヴィセンテさん、森の中に入っていいのか?俺は入っちゃいけないって言われてるぞ」
「だめなの?」
「うん。昔、子供が入ってひどく怒られたって聞いたんだ」
「俺は大人だからいいんだよ」
その言葉に、ナマエもホップも「なるほど!」と納得した。素直じゃないビートがいれば、「そんなはずはないでしょう」だなんていうだろうが、二人はそのまま納得する。遠吠えのような声が聞こえるたびに霧は深くなる。不意にヴィセンテが足を止めた。
「ザマゼンタ、ザシアン。久しぶりだな」
ヴィセンテの言葉に反応するように、のっしのっしと大きな体が現れる。狼のような姿である。
「ヴィセンテだ。ほら、昔よく遊んでただろ」
その言葉に二匹はすんすんとヴィセンテを嗅いだ。そうして、うぉん!と大きな声で吠えた。
「悪かったよ。色々あって旅に出てたんだ。こっちは娘のナマエと友達のホップくんだ」
その言葉に二匹はナマエとホップに近づいてスンスンと鼻をならした。くすぐったくてナマエとホップが笑えば、二匹はヴィセンテを見上げる。フライゴンとピカチュウ、ウールーも敵意はないと感じたのか挨拶をしていた。
「またこの地方に住むことにした。またよろしくな」
ヴィセンテの言葉に、二匹はまた「うおん!」と吠えた。そうして遠吠えをする。また霧が一段と深くなったと思えば風が吹いて霧が晴れていく。そこは庭園のように少しだけ整備された場所だった。でもしばらく手付かずだったからか荒れ果ててしまっている。奥にある湖は綺麗な色をしていた。手前には遺跡のようなものがあるのがみえた。
「ここ、はじめてみたぞ!まどろみの森の中に、こんな場所があったんだな!」
「まぁな、恐らくガラルの中でも俺達しか知らない秘密の場所だ」
「おとうさん、さっきのポケモンは?おとうさんのポケモン?」
「いや、俺の古くからのお友だちだ。いないとされてるポケモンだよ」
「いるのに?」
「いたのに?」
ナマエとホップが首をかしげる。それを見たヴィセンテは頷いた。
「わるーい大人がいないぞー、っていったから、いなくなったんだ」
「なんだそれ。ひどいやつだな!」
「あぁ、そうだな。二人はたまに遊びにきてやってくれ。まーあの二匹もたまにしか顔は出さないだろうけど、何処かにはいるから」
「うん。私、ここ好きだよ」
ナマエはそういってまわりをみた。感じる空気が秘密の園に似ている。木の上からヨクバリスの親子がナマエ達を見下ろしている。
「笛を吹いたら怒るかな?」
「楽しくなって出てきてくれるかもだぞ!」
「そうだな。怒りはしないと思う。さて、そろそろ昼の時間だ。戻るぞ」
ヴィセンテの言葉に二人とポケモン達は頷いて、そのまま森を後にした。
==
「ソニア、ナマエの家にその手のことが載ってる本が沢山あったぞ」
そう言ったホップの言葉に、ソニアはナマエを思い浮かべる。確か、ホップが図鑑を入れて欲しいと連れてきた女の子で、チャレンジリーグを制しあのダンデに僅差で負けた女の子であったはずである。ハロンタウンの郊外に引っ越してきたとは研究所によく出入りするホップの言葉で、最近よく遊んでいるということもしっている。
「なんでも、ナマエの父さんがいろんな地方の伝説を調べて回ってるって」
と、ホップはいうが、ナマエの父親を知らない。研究者として著名的な人物であるのなら引っ越してきたという噂が立ちそうなのだが。少し前にブラッシータウンで噂になっていたのは、隣のハロンタウンの郊外に変わった王族が引っ越してきたという噂だ。あまりにも変わらないハロンタウンの様子に、やはり噂は噂なのだとブラッシータウンの住民は納得して終わった話である。
著名的な人物ではあるが、他の地方の伝説を調べているのであればこの地方に来てブラックナイトの伝説を調べている可能性はあるし、資料を共有したり議論できる可能性もある。心惹かれるのは確かだ。ソニアが悩んでいると、研究所の扉が勢いよく開く。顔を覗かせたのはダンデとキバナである。
「ダンデくん!?」
「アニキとキバナさん!?」
「よっ」
「帰ってくるって連絡聞いてないぞ!!」
ホップの言葉に、ダンデが「母さんには連絡はいれたんだが、入れ違いかもしれないな!」と笑ってホップの頭をガシガシ撫でた。
「キバナさんは何しにきたんだ!?」
「ナマエから来れるならきて欲しいって連絡がきてな。行こうと思ったんだが、ダンデに途中であって、場所を知らないよなって話になったんだが、お前なら知ってると思ったんだよ」
「ナマエの家……あー、」
キバナの言葉にホップは納得した。ナマエの家にいくつか卵があるのだが、一昨日その卵が一斉に孵ったのだ。ドラゴンタイプのブリーダーが最後の良心でおくったからか、全てドラゴンタイプである。ホップと二人でワァワァと騒ぎながら対応に追われていて、今日もホップは手伝いに行く予定だ。いくらかは他地方の知り合いに譲ったみたいだが、それでも沢山のドラゴンタイプポケモンがいる。
「うん、キバナさんなら適任だぞ」
「……何があったのか?」
「ナマエはポケモンの保護の仕事をしてるんだけど、卵が沢山孵って……全部ドラゴンタイプだったから、仲良くなる人がいたら一緒に連れて行って欲しいなって言ってたし、それだと思う。色々他の地方の人にも声はかけてるみたいだけど」
「なるほどなぁ」
「ちょうど俺たちもナマエの家に行くところだったんだぞ!」
ホップの言葉にソニアは「私行くって言ってない」と言いかけたが、ダンデとホップが「行かないのか?」と告げるものだから腹を括る。行きます、と肩を落として言えば、二人は似たような笑みを浮かべたのだが。
たどり着いたのはハロンタウンの郊外である。ソニアはその屋敷を見上げて目を瞬いた。昔はお化け屋敷だ何だのと言われていた場所である。薄暗く不気味さがあったその場所は今はそんな気配がまったくない。そんな中に、子供の声が響いた。
「わーー!だめだよ、フカマル!モノズは食べ物じゃないよ!タツベイ、キバコ、チゴラス待って!!わわっ!!」
何か転倒するような音だ。ポケモン達が何か鳴いているのがわかる。ガチャリと扉が開いたと思えばルカリオと黄色いキテルグマ、キノガッサが顔を覗かせた。
「よっ!ルカリオ、キテルグマ、キノガッサ!」
そうホップが言えばルカリオはあからさまにほっとした。ナマエいるか?と尋ねたホップに、ルカリオはついてこいとばかりに手招いた。
廊下を進み、ルカリオは目当ての扉をノックする。何か確認のように奥からはポケモンの鳴き声がして、ルカリオが答えるように鳴けば扉が開いた。その先にいたのはゲッコウガである。まぁ、すぐに飛び上がって定位置ーー部屋の中にある螺旋階段の上に座ったが。なるほど、ダイニング兼リビングらしいというのはソニアにもわかった。アンティークな調度品で整えられ、庭に面した広い窓は開け放たれている。庭のあたりには女の子とフライゴン、ピカチュウがいて、周りにはあまり見かけないポケモンが集まっていた。女の子の頭の上にも。リビングのソファに座っている男性が苦笑いしているのもなんあてなくわかる。対面式のキッチンから女性が顔を覗かせた。
「あらホップくんだったの。どうりでルカリオが迎えに行ったのね」
「リザさん、こんにちは!キテルグマとキノガッサが顔を出したからびっくりしたんだぞ」
「ごめんなさいね。ご近所さんでもなんでもない人たちが沢山尋ねてくるものだから、交代で門番してもらってるのよ」
その言葉にキバナとソニアは固まった。周りにある粉砕された石はもしや、脅しとして壊されたものだろうと推測できたからだ。
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