2018/01/05
とりかえばや奇譚 三
・兼任司書の記憶が戻ってる
・第三者と揉めてる感じ
=
陸奥さんと佐藤さんは与謝野さんの異能では治せない。彼らの異能は無効化ではないというのに。怪我だらけて共通の場所にやってきた二人は見るからに重症だというのに。どうして、と眼を見開いた僕らに、ナマエちゃんが駆け寄ってきた。
「陸奥守、佐藤さん!」
「ナマエ、おれは、ちがう、ナマエ、ナマエ」
そう縋るように手を伸ばした佐藤さんからは血の匂いではなく、洋墨の匂いがする。ナマエちゃんはソレを受け止めると、私はここにいます、と告げた。
「少し、おやすみください。そばにいますから」
ナマエちゃんが佐藤さんにそう告げると、佐藤さんは意識を失ったらしかった。がくん、と倒れ込んだ彼をそっとソファにもたれ込ませると、彼女は陸奥さんを見る。
「陸奥守」
「なんちゃあない……」
「なんちゃあなくない」
「ここ、じゃ、なおせんき、なんちゃあない」
「なんちゃあなくない。どうにかするから。佐藤さんいないから守る人云々って話は聞かない」
そういったナマエちゃんに、陸奥さんはため息をついた。わかった、と頷いた彼は刀を彼女に渡す。
「陸奥守もちょっと眠っていいよ」
「おん」
陸奥さんが眼を伏せる。そして、その体が透き通ったと思うと、花びらを残して消えた。
「え、」
眼を見開く僕らを他所にナマエちゃんは少し考える。
「福沢さん、リンタロウ先生、鋼とインクはありませんか?」
「鋼とインク?どうして?」
「……わかりました、説明します。彼らは人に見えますが、人ではありません」
「人ではないということは、ナマエの異能という事かな」
「そういう事です。ただ、私は特定の物がないと彼らを現すことができません。それを直すのに鋼とインクが必要なんです」
「手配しよう」
そう告げた社長に、森鴎外が少し考える。
「彼らが君を探すために探偵社を頼ったのは、君がいないといけないから、という解釈ていいのかな?」
「そうですね」
「君があの両親に引き取られる前、孤児院の前にいた時は彼らと暮らしていたのかい?」
「そのことなんですが、とてもややこしいんですよ。とりあえず、鋼と洋墨ください、ダメですか?」
そう少し上目遣いでナマエちゃんは森鴎外に尋ねる。彼は眼を見開いて、「いいよ!」とナマエちゃんを抱きしめた。
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とりあえず、鋼とインクは手に入れたので、佐藤さんの持つ本と刀の陸奥守を持つ。本来であれば澄んだ水やら木炭やら硯石が必要であるが、今回ばかりは仕方がない。手伝い札割増でどうにかしてもらおう。福沢さんに、ドアの前にいてください、と告げる。ブーイングは無視だ。ねんのため結界を張り、調速機と札を持つ。
「はじめますか」
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とりあえず終わったので札を外して外に出る。恐らくもう少しすれば佐藤さんは眼を覚ますだろう。
「終わったのか」
「おわりました」
刀を抱えたままそう頷く。あと数十分もしないうちに目がさめると思います、といえば福沢さんは私の頭をくしゃりとなでた。
「陸奥さんと佐藤さんがナマエちゃんの異能だなンて」
そうこちらを見た谷崎さんに、そういやそういう話をしていたな、と思う。
「そういや孤児院の話もはぐらかされたね」
さりげなく私の背後に回って逃げ場をなくしたリンタロウ先生を見上げる。
「んー、あの、ですね?」
「うん、」
「私の経歴ってどうなってます?」
「一般家庭から孤児院、私の部下の養子、だねぇ」
「それ、なんですけどね?その一般家庭ってどんな?」
「調べたら本当に普通の家だったみたいだよ、父親も母親も、街にいる人間となんらかわらない」
「そこ、なんです」
「そこ?」
「私、一般家庭の出じゃないんです。何処かにある大きな日本家屋で、陸奥達と暮らしてました。両親も普通じゃありません、神職に関わってます」
「神職というと?」
「神社とかそっちです。孤児院に入った記憶もないんです、気づいたら孤児院でおもちゃを持ってました」
私の言葉にリンタロウ先生は少し考える。
「あの子はよく君に言うね。本当は私だったのに、と」
「はい、佐藤さん達も言ってました。『私』だと思って過ごしていたら、違和感がして、決定的な違いを見つけてコイツは誰だってなったと」
「あの子と君が入れ替わったのか」
「恐らくは」
「なら、納得ができる。君がどうして昔を徐々に忘れていったのか。異能の主である人間を異能である彼らが忘れかけたのか。ああ、じゃあ、彼女の異能はとても興味深いね。他者と丸ごと入れ替わってしまうわけだ」
「ならどうしてもう一度ナマエちゃんと入れ替わらないですか?」
「一回しか使えないとか?自分と人の今までの過去を丸ごと入れ替えるのなら、相当な力だからね。なら、あの子は黒いアレとその力で二つの異能を持つことになる」
「でも、首領、太宰の無効化がき来ませんでしたよ」
「なら、異能じゃないのかもね。いつかの誰かのように」
リンタロウ先生はそうつげて、私の頭をなでた。
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僕らの前に出たナマエちゃんが前を見る。目には怒りを滲ませて。
「あまり、子供だからって舐めないでください。私は守られてばかりにはなりたくありません」
そう啖呵を切った彼女は手を宙に伸ばした。佐藤さんはそれを見て、やれやれと息を吐いた。
「何振りだ?」
「全部」
「は?」
「全部で、叩きます」
そうまっすぐ告げた彼女は言葉を紡ぐ。眼を瞬いている佐藤さんはかなり驚いているらしい。
「あはりや……」
その言葉に聞き覚えなどない。彼女は歌うように言葉を紡ぐ。
「あはりや、あそばすともうさぬ、あさくらに、刀の御神よ、降りましませ」
その瞬間、桜の花びらが舞ったと思ったらズラリと刀が宙に並ぶ。
「え、」
「目標はあの人、他は殲滅、尚且つ、味方の護衛を頭においてください。生死は問いません。好きなようにしてください。どうせ、人ではなさそうですし」
彼女は喋る。何に対してかは知らない。
「刀の御神よ、降りましませ」
その瞬間、強い風が吹いた。眼を開けられないような。
「御意!」
揃った声は皆男だ。眼を見開くとそこには数十の男がいた。
面白くないので没!!!!!
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