2021/12/31

2021年オフラインネタ帳大放出祭59




知らない世界に飛ばされたらしい。でも、元々いた世界に似ているのだろうと思うのは私を雪女という名で呼ぶ人が一定数いるからだ。上杉謙信に仕えた軒猿、その中にいた雪氷の術を扱う一族である氷室一族をそう呼ぶのであるが、ある意味ナルトくんやボルトくんの世界と同じで忌み嫌われる割には珍しくそして売られやすいという厄介な存在である。ボルト君の世界と同じく子供の姿になっている以上、どうしても私もその影響が出てくるので適当に子供の姿に変化をしていれば追ってくるのは落ち着いたのだが。
さてはて、面倒なことになっている。いつもはマゴイチが面倒なことを引っ提げてくるのだが、今回に至っては草間大作という少年と合流したことによって面倒なことになっている。なにやら牢獄から抜け出した彼を助け、サリーちゃんという女の子を助けたのは良かったが、まさかこんなものに巻き込まれるとは思いもしなかった。はぁ、とため息をついて街並みを眺める。中華街に似た雰囲気であるが日本でなく、異国である中国だ。大作くんの父親の遺言状をめぐる話に付き合うはめになり、私も頭領合戦に参加するを得なくなったのである。この世界、この時代に同業者が山ほどいるので、ここにも同業者はたくさんいた。その中には先生達に似た姿もいる。となれば、私が使う術も彼らと同じじゃない方がいい。そうなれば氷室のそれを扱った方がいいに決まってるが、こんな大衆の中で披露してしまえばそのあとが面倒くさいのである。
「アンニュイだねぇ」
そんな声が聞こえて振り返る。そこにいたのは竜作さんと呼ばれていた村雨一家の家長だ。
「アンニュイですねー、まさかこんな事に巻き込まれるとは思わなかったので」
やれやれという風にため息をつく。手元に息を吐きかけるのはこの姿の癖だ。
「竜作さん?が勝ってくれればそれでよくないですか?」
「坊主、それが簡単にいきゃあそれがいいんだけどよ。坊主もなんか食うか?」
「生憎先程すましました」
ははは、と苦笑いしてまた街並みを見る。ぴょん、ぴょん、と屋根を飛び上がって影が来るなと思ったらそれは近くの手摺りに止まる。雑に俵担ぎにされた女の子が、うぇぇ、と吐き気を催してるが大丈夫だろうか。赤い色を靡かせた彼は先生と同じであるが、違う人だ。私はわざとらしく目を瞬いた。
「うぇ、もうちょっと丁寧に運んでくださいよ……」
「……コイツか」
どさり、と落とされた女の子は私をみる。はたりとあった目に、そうこの子!と口を開く。
「この子知らないんですよ!こんな美少ね……こんな子いなかったし!君も違う世界から来たんだよね!」
そう言った彼女は普通である。君、も?と首を傾げれば、彼女は頷いた。
「おいおいおいおい、BF団のしたっぱ!飯食いながらさりげなく聞こうとした俺の作戦がぱあじゃんか!」
「あってるけどその呼び方やめてって言ってるじゃん!村雨一家の雑用くん!」
竜作さんのそばから現れた青年と女の子がきゃんきゃんと言い合いをしている。ふむ、違う世界から来た、という事は彼女達もまた違う世界から来たらしい。私は小首を傾げる。
「では、貴方達もそうなんですか?」
「やっぱり!」
「やっぱり!」
「仲良しですね」
ハモった言葉にそう言えばまた誰が!と言われたが。竜作さんが私を見下ろした。
「坊主もか」
「はい、気づいたら身に覚えのない場所にいて。まぁ色々あって大作くん達と一緒に行くことになりました」
困った顔をする。だから困ってたんだな、と言った竜作さんはおそらくはいい人である。じっとこちらを見つめる赤影さんは探ってる気はするが。悴んだ手元に息を吐きかける。この人の前であまりこういう動作はしない方がいいのだが。
「……冷えるのか」
「冷え性なので」
苦笑いすれば手を取られる。冷えているな、と告げた彼はひと回りもふた回りも大きな手で私の両手を包むとはぁと息を吐きかけた。女の子がぎゃー!と叫び、男の子と竜作さんは珍しいものをみているような目でこちらを見たが。まぁこれ多分雪女の噂が出回っているし、私の体温の上がりにくさとかを確かめてるだけだろうけども。どうも、こうしてもらうのは、バンサイ先生やカカシ先生達を覗くと先生達しかいないので、彼の姿でこれをされてしまうと懐かしくなるというか、泣きたくなってしまう。何度か体温が上がらない事を確かめるように息を吐きかけた彼に私はお礼を言っておく。
「ありがとうございます」
「いや……」
彼のこの思案する顔はバレたなとは思うが無視だ。彼は恐らく他言しないだろう。私が術を使うまでは仮定だから。
「……兄のような、先生のような人によくこうやって温めてもらったんですけど、会えなくなってしまって」
彼から手を外し、ほうっともう一度息を吐きかける。女の子と男の子が頑張って元の世界に帰ろうね!と言っていたがなんというか戻っても会えないんだよな。これボルトくん達の世界に戻れるんだろうか。赤影さんはというと、一言、「そうか」ですました。
「BF団に入るなら口添えしてやるぞ。この煩い軍師見習いもいることだしな」
「考えときます」
「考えないでいいんだよ!BF団入るなら村雨一家入れ!」
そんなやりとりを残してまた赤影さんは雑にあの子を抱き上げると今度は消えた。感覚を辿れば随分と先に着地したようである。竜作さんは私を見下ろして頭をポンっと撫でた。
「考えときます、か。便利な交わし方だこって」
「僕もそう思います」
感覚からして影丸さんも天井にいるんだよな〜、と思いながら宿まで送ってもらったが。

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はぁ、と指先を温める。まとめてポイポイ落とすのはどうかと思うのだ。周りに見れば、殺される姿を見る観戦みたいなものだろう。はぁー、とため息をつき、選別だと言われて彼女が持たされた刀を抜いて相手の鎌から繰り出されるカマイタチを弾き飛ばす。弾けるこの刀はすごい。
「むぅ、この刀、頗る切れ味がいい。弾けるとは」
「え、すごい!!どうやったの!?」
「どうって普通に……」
「ば、前みろ前!」
そう言った彼に見ずとも弾けるんだよなぁ〜と思いながら弾く。
「えっ?お前、えっ?俺たちと同じ異世界人だよな??」
「そうだよ、だから、あんまり目立ちたくはなかったんだけどな……この世界でも僕は珍しいらしいし」
そう言いながら氷遁使おうとしたらクナイが飛んできた。命中させる気もないクナイをキャッチしておく。飛んできた方を見れば高みの見物をしている赤影さんである。
「これはただのお節介だが、この場では決して使うな」
「……ご忠告どうも」
「えっ、なに、なんなの!?その忠告」
さてはて、どうするか、と相手を見る。仕方ないと刀を構える。真似でなんとかしよう。カマイタチを出すときの動きを注視する。そうして飛んできたカマイタチを弾く。それを何度かしたあと、応用して刀でカマイタチを作り出して打ち込む。相手の近くにあった岩が真っ二つになった。
「ふむ、これでよかったかな」
「な、な、どうやって」
「手元を見てたら作り方はなんとなくわかる。あとは刀でどうやるかを考えて落とし込むだけだ。それにしても楽しいね、これ」
えいっ、とカマイタチをだす。サリーちゃんや大作くんに、ナマエ行けー!と言われたのでガンガン打ち込み向こうが防戦一方になったのをみて、隙を見て相手の後ろに飛び服だけを一閃できっておいた。はらりと破けた服に納刀する。あとは一言だ。
「つまらぬものを切ってしまった……」
「ガチでつまらぬものじゃねーか。きたねーもんはみせんな」
「是非とも綺麗なお姉さんでお願いします」
「セクハラですよ、それ」
「このクソガキが!!」
切りかかってきた相手はそのまま刀で峰打ちしておいたが。気絶したのを確かめた誰かは私達の勝ちを告げた。さて、軍師見習いと言われた彼女に返してもいいがこの刀を使ったのは私であるし、彼に直接返すべきだろう。どうやって登るか話している二人の首根っこをつかんで、とんとんと大作くん達のところに登る。手を離せばふぎゃ、と二人で言われたが。
「ナマエ、無事!?」
「まぁ、うん。見ての通りかな。刀を彼に返してくるね」
そう言って赤影さんのところに行こうとしたが、逆に赤影さんが飛んできた。若干大作くんが警戒したが私は大丈夫だという。
「刀、ありがとうございました」
「いや、使えたならそれでいい。お前は筋がいいな」
そう言った彼は刀を納める。そうしてまた私の両手を触った。また冷やしていると言った彼は、温めてくれるらしい。まぁ、ぽんぽん抱き寄せられたのだが。ひえっ、と叫んだ周りは無視である。
「いいか、氷室の術は使うな。この世界では忍界だけでなく一部からは喉から手が出るほど欲しい存在だ。裏柳生の剣術もできるようだが、伊賀の犬が噛み付いてくるぞ」
「どうして忠告を?」
そう言って彼に尋ねる。彼は珍しい忍術を使う同業者のよしみだ、とだけつげて離れたが。ポン、と置かれた手を見上げる。先生はやぱっりどの世界であっても優しいのだと私はぼんやり考える。
「しょ、しょ、しょたこんだーー!!」
そう叫んだ軍師見習いさんは赤影さんに絞められながら連れて行かれたのだが。大作くんがこちらによってきて、サリーちゃんが塩を撒いた。
「ナマエ、大丈夫!?」
「んー、お兄ちゃんって呼びたくなるなぁ……」
そう言って裾の中に手を隠す。多分彼の言う伊賀の犬がやってくる。

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「君は見たことがないけれど、裏柳生の子かい?」
「裏柳生?」
「扱えるのに知らないのかい?」
そう問いかけた影丸先生に良く似た彼に私は首を左右に振る。裏柳生の子と答えたら多分面倒なことになる。教えてくれた人が扱えたので、といえば彼は「そうなのか」と言葉を返した。ただでさえ同業者の目があるのだ。
「赤影と仲がいいが知り合いか」
「まさか。彼が色々気にかけてくれてるだけです。お兄ちゃんみたい」
「お兄ちゃん」
「そういや、さっきも言ってたな。兄弟が多いのか」
竜作さんがそう言って私を見る。稽古をつけてもらっていたもう一人の異世界人ーー疾風さんというらしいーーはへたり込んでいた。
「うーーん、私は末っ子(みたいなもの)で、お兄ちゃん(みたいな人)は六人いました」
「大家族じゃねーか」
「あの人、お兄ちゃんに似てるのでなんていうか、ほっこりします」
「あいつ結構やばいやつだぞ」
「そうなんですか?……貴方もお兄ちゃんに似てます」
影丸さんを見上げてそう告げる。彼は目を瞬いて私を見下ろした。私はにっこり笑っておく。たらしだ……みたいな顔を村雨一家や大作くんたちにされたがしらん。いや、でも赤影先生と影丸先生の顔面は似ているんだぞ。みんな知らないだけで。
「とりあえず、赤影のいうことを鵜呑みにしちゃだめだ。あいつはBF団なんだ」
そう言った影丸さんに、とりあえず頷いておくのだが。


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「この世界は繰り返しているんだ」
そう告げたのは青年とも少年とも取れる人物である。夢ではあるが、恐らくは彼が夢を渡ってきたのだろう。繰り返してる?と私が尋ねれば彼は「ああ」といった。話を聞けば、BF団でも国際警察でも村雨一家でもない輩が異世界経由で現れて全滅したりするらしい。でもそれは本来正しくも何もない歴史だ。だから彼は時間を巻き戻す。しかし、参ったことに周りに記憶は残らない。だから、異世界から疾風くんと軍師見習いちゃんを招き入れ記憶を保持したまま巻き戻させている。
「それを延々と繰り返す限り、僕はまだ起きれない」
「貴方の力で巻き戻っている?」
「そういうことだ。君は、この状態の僕を呼び出せるだろう」
確定と来た。私は恐らくはとかえす。私の中の私を口寄せするのと同じことだ。
「ただ、貴方の強い力は私の持つ力に準拠する。私の力が尽きれば貴方は姿を消すし、時間を巻き戻すなんて代物は私にはできないよ」
「それで構わない。僕が姿を表すことに意味があるし、僕が君と干渉できることに意味がある」
そう言った彼に、なるほどなぁ、と思う。
「では、貴方がビックファイアか連合の頭領か」
「ふふ、そうだね。そうなるが、異世界人の君にはあまり関わりのないことだろう。そうだな、バビルとでも呼んでくれ」
クツクツと笑った彼はただ景色を眺めるように周りを見た。私は頬杖をついて同じように前を見る。
「『先生』と似た魂を持つ人は死なせたくないかい?」
「夢を介して人の記憶を読むのはどうかと思うけれど、それよりも読んでおいてそれを聞くのかい?」
なんとも言えない顔で彼を見る。彼は目を瞬いたのだけど。


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なるほどなー、と思う。ヨミとやらが現れてから疾風くんと軍師見習いちゃんが忙しなく動き始めたり止めたりしてるのを見るに多分ここが一回目のフラグなんだろう。とりあえず大作くんに時空間忍術の楔を持たせておいてよかったなと思う。人間が巨大ロボットをやっつけるってどうなんだとは思うが、人のことなんて言えないわけで。とりあえず安全な場所に彼を連れて行く。大作くんに襲いかかった相手にクナイを持って割り込み、同じく楔をもつサリーちゃんのところに飛んだ。テレポートかとかざわざわするのを見るに珍しいらしい。こちらをみたヨミとやらに私は眉間にシワをよせる。アイツがやばいな。
「韓信さんも軍師見習いちゃんも言っとくけれど、僕にはこの人数をつれてテレポートなんでできないよ。僕がさっきのをするには条件がいるんだ。そしてそれを説明する時間もない。撤退する時間くらいは稼げるかもだけど」
多分ここで彼は呼び出さない方がいい。切り札であるべきだ。ぐるぐると何かを考えこむ二人に背伸びをしてぽんと頭を撫でる。
「はやくみんなを連れて行きなさい。君たちにはやるべきことがあるだろう。僕は大丈夫だから」
そうにっと笑えば、疾風くんはいち早く理解した。軍師見習いちゃんが涙目だが。撤収、と告げた周りに周りは撤収しておく。影丸さんと赤影さんがこちらをみたので笑顔で手を振っておく。まぁ、それからは時間を稼ぎ、稼ぎ、飛行船が飛んで行ったのをみてから周りを一気に凍らせる。ヨミとやらはまぁ簡単には凍らないだろうが。というか凍ったところで復活は目に見えているが。わりと本気で凍らせたのでわりと私が重症化するのが見えてるのだが。小童が、と言いながら凍りついた彼の氷を厚くする。うーん、腕が動かない。どれくらい時間が経ったかも謎である。私も凍ってんなこれ。まぁ、それでもずっと発動してたら、術をとめろ、という声が降ってきたのだが。
「ゆっくり息を吐け」
「く、ぅ、」
「意識はあるな。自分だけの温度をあげろ」
ゆっくりと温度を上げる。
「……雪女の一族か」
「恐らくはな」
「ヨミが壊れている。軍師見習いが言っていたレプリカということだろう」
「……けほっ、」
急に倒れ込んだ体を赤影さんが抱き上げる。レプリカか。あれでレプリカかー、と心の中で遠い目をする。この体で戦うのは難しい。
「……凍傷が酷い」
「連れて帰るぞ、怒鬼」
そう言えば体が浮き上がる感覚がするのだが。懐かしい感覚だ。先生、とぼやけた視界に映る彼を見上げる。彼は私を見下ろしてすぐ前をみたが。


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目が覚めたら飛行船でもなくなんか海上要塞っぽい場所だった。起きた?と尋ねたのは感覚からして多分影一族なんだろう。ここは、と小さく呟けば彼はBF団のアジトのひとつよとつげた。
「まぁ今は国際警察もいるんだけどね」
「……あなたは?」
「警戒しないで。お頭にあなたを見とくように言われたの」
その言葉に包帯が巻かれた手をぐーぱーする。動く無理矢理体を起き上がらせる。痛いが動かせる。
「無理しちゃだめ」
「早いうちに動いとかないと後々に余計に痛くなるし……何かあった時に対応できなくなる」
そう言って寝台から降りる。自分の体を見れば包帯がぐるぐる巻きである。近くにあった畳まれた服を手に取る。私がきていたものは流石に傷んだのだろう。真新しい忍服だ。動いていれば、信じられないみたいな顔をされた。
「これを着ても?」
「いいけど、やっぱり休むべきよ。貴方、いのちを落とす可能性があったほどなのよ」
「僕は大丈夫」
そう言って服をきる。伊賀じゃなくて影一族の忍服はあまり腕を通したことがない。鏡に映った自分の身を整える。あの世界がもし、と考えてそこでやめた。髪をいつも変化してる姿の時に合わせて整えておいた。
「……驚いた、貴方影丸とお頭を足して割ったみたい」
「兄さんの真似をしただけだよ」
ニコリと笑えば、彼は目を瞬いたのだが。
「大作くん達は無事?会いに行きたいのだけど」
そう言えば彼はため息をついて、寝るきはないのね、とだけ告げた。


「ナマエ!!よかった!!目が覚めたんだね!!」
振り返ってそう告げた大作くんに、心配かけてごめんね、と告げる。怪我は大丈夫かと聞かれたので大丈夫だと答える。視線が痛いのは氷室とバレたからなのか足して割った姿をしているからかはわからないが。
「でも、とても痛々しい姿で」
しおらしいサリーちゃんに首を傾げる。記憶が戻ったらしい。それはよかった。
「これくらい何度もあったから慣れてるよ。僕はあんな場所で死ぬわけにはいかないんだ……けど、まぁ、今回は僕のミスだ。時間稼ぎに相手を封じる気でいたんだけど、本物ではなかったんだろう?」
そう肩をすくめて言えば、聞いたの?と言われる。
「赤影さん達に助け出された時意識はあったんだ。その時にレプリカって言ってたし。まぁ、運ばれてる間に意識が落ちちゃったし……本来なら意識は落とさないようにはするんだけど」
ほぅ、と指先に息を吐きかける。余計な癖ができてしまった。
「勝手に出てくる馬鹿がいるか」
上から降ってきた声に見上げる。赤影さんが窓辺からこちらを見下ろしていた。赤影さんだ、と言ってひらりと手を振る。
「青影さんの許可はもらいました」
「お前が言っても聞かないと聞いたが」
「……」
そっと子供みたいに顔を背ける。あぁ、だめだ。やっぱり先生に対してと同じような子供のような反応をしてしまう。
「君が拗ねてる時にそっくりだな」
「馬鹿言え、お前がしでかした時にそっくりだ」
そんな会話は上で聞こえる。どうやら影丸さんも近くにいたらしい。この体温は慣れているはずなのに、指先に息を吐きかける。
「全く部屋で寝てないからそうなる。寝てろ」
「……寝たくない」
「子守唄でも歌ってやろうか?」
子供扱いである。それがなんだか嬉しくて、二人を見上げた。
「歌ってくれるんですか?」
「影丸がな」
「おい。君が言ったんだ、君が責任を取れ」
そう言って窓の奥に消える二人を見つめる。まぁ、口から出まかせというやつだろう。ほぅ、ともう一度手に息を吐きかければ、影丸さんが顔を覗かせる。
「おいで、どうせ何も飲食してないんだろう。白湯を入れてあげるよ」
その言葉に彼を見上げて、頷く。じゃあ後でね、だなんて言いながら木を伝って窓の中に入った。間違いなくそれはあの時のような日々だ。
「影丸さん、手伝います」
「病み上がりのところ悪いね」
そう言って白湯を入れる手順をわざわざ見してくれたり、毒見してから渡してくれる彼は優しいのだ。

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あぁ、それが正しい手段だな、と私は思う。先生たちのそっくりさんがいるように、私のそっくりさんもいたらしい。なんでも服部半蔵と権力を二分する百地に育てられていたが、私はそこで自害したらしい。任務が失敗したから、以上のことを誰も喋らずある意味の謎のまま忘れ去られた。ふむ、と考える。私がわかる範囲でのこの世界と元々いた世界の分岐は、服部半蔵に選ばれたのが逆だったということだ。私のいた世界の服部半蔵は元は百地家の出で、彼は襲名を機にその名を変えた。服部半蔵を名乗っていたから彼は先生達を集めることができた。この世界では私には違う先生達がいて、私は彼らを殺さず自分の死を選んだ。それだけだ。絶対にそれが正しかった。そうすれば忍びの世界は変わることもなくそのままの時を刻んだのだ。そもそも、アレを服部半蔵に選んだことが間違いなのだ。
「僕は……私はそれが正しいと思う」
そう言う。大作くんやサニーちゃんが「どうして?」と私を見た。でも、私はそれに対する解答ではなくて自分に対する言葉を投げてしまうのだ。
「あぁ、それが正しかった。きっと私もそうするべきだった。おかしいな、どうして浮かばなかったんだろう、あの時、」
あの時、影丸先生が、私に殺されたように自分で死を選んだあの時、私がそうすればよかったのだ。生きるんだ、と言われたけれど、そうじゃない。
「全ては私が死ねば、何もかも元通りだったんじゃないか」
簡単だ。どうしてこの世界の君は自害なんかしたんだ、とこの世界で私の先生役だった人に、問いかけた人に、私は口籠る。きっと。
「きっと、なにもかも変えたくなかったんだ」
あの平和な日々が続いて欲しかったのではないか。でもこれは推測でしかない。百地に自殺に見せかけて殺された可能性があるのだ。でも、きっとだ。きっと。
「その子は貴方達とずっと一緒にいたかったんだよ。だから死ぬことを選んだ」
「え、取り憑く的な?」
シリアスだから黙ると黙っていた軍師見習いちゃんが告げた言葉に、私は目を瞬く。まぁ、本人はカワラザキさんに頭を叩かれていたが。私はフッと息を吐いてから、ケラケラ笑う。大作くん達の前でするような話じゃない。
「そう!取り憑く的な!」
「えーっと、日本の降霊術ということですか?」
「まぁね、現にそう言うのもある。きっとこの世界の私は、貴方達が、貴方達と過ごす日が大好きだった。それが変わってほしくなかった」
そう笑いながらいう。軍師見習いちゃんが首を傾げ、疾風くんが首を傾げた。
「お前は元の世界ではどうなんだよ、生きてんじゃん」
「そうだね、僕は生きてる。もとよりいくつか違う点もあるし、そう言うものだよ。いったろ、推測でしかないって。あと、一つ付け加えれば僕は恐らくその人が大嫌いだ。例え違う世界の人間だとしても」
笑いながらはっきり宣言する。彼らは目を瞬くだけだが。


遠くから見つめた先に現れたその人は、やっぱり私の世界の服部半蔵である。私はかなり嫌な顔をして、今やもうなんやかんやと保護者になりつつある二人を見た。
「あの、影丸さん、赤影さん、僕は先日言った通り、彼が大嫌いなわけなんですよ。見たくもないわけですよ」
「と言われてもな……」
「安心しろ、アイツは敵についてる忍だ」
「赤影さん、それってどっちですか」
「裏はない」
そう言った彼になるほど根っから寝返ったのかと理解する。手間暇かけて私みたいなのを育てるより、ヨミのもとでサイボーグ的なの作ればいいんじゃね?という結論に至ったらしい。まぁそれはある意味正しいと思うのだが。被害者が出るわけでもなさそうであるし。頬杖をつきながら彼を見る。一度は殺した存在だ。あの頃はひどく恐ろしい存在に見えたと言うのに、今は力に縋る滑稽な老人にしか見えない。
「滑稽だな」
つい吐き捨てるように言ってしまった言葉に私は後悔する。二人の視線が私に向いたからである。
どうしてあんな奴が怖かったんだろう。どうしてみんなあんな奴の命令を聞かなければならなかったんだろう。閉鎖的な空間だったからか。それしか道がないと思い込んだからなのか。
「そうだな、アイツは滑稽な男だ。でも、里をなくし一つの組織とすると唱えたアイツの意見に賛同する奴も多くいた。現に、そのとっかかりに全ての忍術を扱える忍を育てる気でいた。うちで言う白影がそれに加わっていたが」
「その中にナマエに似た子がいたんだよ。それに、彼の言うことは、魅力的で理想的だった」
理想。全てを一つにするという、何の意味もないだろうに。私は滑稽な老人をみる。
「……僕の世界はアイツが服部半蔵で」
そう切り出せば二人はまた私をみたらしかった。
「アイツの言うことはみんな聞いた」
「じゃあ、君の世界では里を超えて?」
「ある意味は」
いまや、元々いた世界で、きちんとした忍は、全ての流派の術を扱える私しかいないのだから。


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雑多 

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