2018/02/17
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とりあえず医務室にいる人を補修して神社に変える。夢であった石切丸に現状を説明すれば彼は何か考えた。
「いや、ある意味その子の願いは叶ったのではないかな」
「叶った?」
「あぁ、そうか、君は私たちみたいな存在は見えるけど、他は見えないんだったね」
「ほかに誰かいる?」
「君の住んでいる場所の氏神だよ。君を気に入っているようだ。どうやら、君をその町から追い出してほしいと願ったみたいだね。君に会いたくないと、いなくなればいいと」
「なんでそんなに嫌われたかな」
「さぁ、わからない。ただ、氏神はそれをその子がいなくなると言う形で叶えた」
「殺したってこと?」
「いいや、だが、居場所をなくし、君に会うだけで逃げ出したくなるように仕向けたようだ」
そう淡々と告げた石切丸になんとも言えなくなる。なんでそんなに嫌われたかはわからないし、なんでそんなに氏神に好かれたかもわからない。
「ただ、君が思い悩む必要はない。人を呪えば穴二つ、というだろう?」
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朝のお勤めを終えて一息ついていたら、お姉さん!と背中から抱きつかれた。そちらを見れば賢治くんと森先生がいる。
「夢じゃなかったんだね!」
そうギュッと抱きついた彼の手をポンポンと撫でる。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。昨日はすまない。俺だけでなく医務室で寝込んでた奴も補修してくれてるとは」
「人手がいるし、空きのベッドもいるでしょう?」
「違いないな。おかげで図書館は少し慌ただしい」
あぁ、やっぱりか、と思う。司書がいない状態で治れば誰がやったか、ということになるだろうからだ。しかし、こうなっては仕方ないだろう。
「……仕方ありません。全員補修をしましょうか?」
「……いいのか?図書館に戻ることになるんだぞ」
「最悪部屋にこもります、が、私はこちらの務めもあるので、ずっとはいられませんよ」
「俺は構わん」
森先生の言葉に安堵したが、お腹に回された手には力が込められた。そうだよなぁ、賢治くんのことを考えると私が行ったほうがいい、とは、わかっているけれど。
「あの二人に相談か……」
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老夫婦に相談すれば、しばらく図書館にいていいよ、と言われた。なんでも息子さんが神社を継いでくれる方向になったらしい。心配だから週に2回くらいは朝のお勤めと夜のお勤めを変わると申し出てきた。とりあえず、昼間の図書館が怖いので森先生の隣を歩きながら賢治くんの手を引く。森先生が怖くないのは一息に彼が私に関わらなかったから、に等しい。
とりあえず、侵食の状況を確認しつつ全員回復させて、溜まっているだろう書類を片付けていけばなんとかなるだろうか。何処がどうとわかれば、文豪達に少しでも怪我をしたら引き返すことを条件に――っていいことを聞いてくれるとは限らないか。とりあえず文豪が誰がいるかわからないし、文豪を一人でもおろしたい。……そういえば。
「新美先生っていないですよね?」
「新美?」
「新美南吉。童話作家の先生です」
「いないな……あの空欄の一人か」
「空欄多いですか?」
「あぁ、結構――」
森先生がこちらを見る。首を傾げて、あぁ、失言、と思う。
「君は詳しいのだな」
「……前に、してたんですよ」
「していた?」
「貴方達でいう潜書といいますか、わかりませんが。私、いきなり現れたでしょう?」
「……あぁ」
「私、同じ場所にいたはずなんですよね。私のところでは侵蝕者もいなくなってしまって、貴方達もいなくなってしまいましたが、私はたしかに帝国図書館にいましたから」
こちらを凝視する先生に、信じてくださいとはいいませんよ、と首を振る。
「突拍子もない言葉でしょうか」
「館長は知っているのか?」
「いいえ、言ってません。誰にも。あの時、ただの手伝いとして現れてもいい感情をもっていなかったのに、自分の他に同じような存在が来たとなればもっとひどくなっていたでしょう。でも、もっと早く告げていれば、貴方達はこんな目にあわなかった」
「君に責任はない。君のいうことはもっともだ」
そう目を伏せた彼の背を押した。
「森先生、とりあえずやることはいっぱいありますよ。後ろを向く暇まないくらい」
「あぁ、そうだな」
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図書館に入ると朔太郎くんと三好さん、中島さんに中野さんがいた。さっと朔太郎くんを庇った三好さんに、息を吐く。
「不調は無さそうでよかったです」
「……うん、ないよ、ありがとう」
そう笑った中野さんにはあまり敵意が無さそうだ。
「色々と聞きたいことがあるんだけど」
「後にしてもよろしいですか?他の人も補修といけない、でしょう?」
そうやんわりと断れば、それもそうだね、と言われる。
「好きなように過ごしてください。やることがなければ、本がどんな状態になっているか見ていただけると嬉しいです。お昼ご飯は適当に作りますから」
私は森先生にひっついて賢治くんと手を繋いで医務室に向かった。
「こう、あの四人はともかく、そうなると医務室の入れ替えが大変ですね」
「そうだな」
「部屋に強行して部屋で休んで貰った方が良さそうですね。調速機なしで」
「それがいいだろう」
そんな会話をしながら部屋を開ける。ぱっぱと補修をするか、とベッドを見た。あまり、怪我の具合やら、を、見てはいけないし、長時間かけてもいけない。依存されても困る。
「さてと、頑張りますか」
そう言って、一つ目のカーテンを開けた。
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錯乱してる患者は何しでかすかわからないからな、とは前に森先生に聞いた言葉であるし、今の森先生にも聞いた言葉である。縋られ――補修をして寝かし、首を絞めかけられ――森先生が引き離した瞬間に補修をして寝かし、その他、色々。しかしながら、やはり、文豪の数が少ないだけあって比較的早くすんだそれ。とりあえず私の手伝いが森先生と賢治くんしかいないので、有魂書で誰かを呼び出したい。司書室に入ればどこの呪術室だというほどひどいので、とりあえず図鑑を拝借してでる。後で祓って掃除しよう。
草臥れている森先生(彼は何かと庇ってくれたからそりゃあ疲れただろう)をよそに談話室で図鑑を見れば、一つ可笑しいことに気づく。
「徳田先生が乗ってるのにいない?」
「徳田先生?」
不思議そうに首を傾げた賢治くんに、私も首を傾げる。もしかして、絶筆したのか。いや、乗ってるけどいないってことはそういうことだろう。
私の会派でこちらにいないのは幸田先生と直くん、井伏先生だろうか。他はちらほらと抜けているのも多い。よくこんな少人数で持っていたな、と思う。
「とりあえず、新美先生、徳田先生、露伴先生、志賀先生……」
「露伴?幸田露伴か?」
「ええ、」
「確かに彼がいれば助かるだろうが、確実に連れてこれるわけではないぞ」
ああ、そういやランダムだったな、と思う。最初の方は。最後の方は全員がその小説やらの一部を読めばくるとわかっていたからだ。
「ちょっと有魂書何冊あるか漁ってきます。二人は休憩していてください」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫です、まだ皆さん寝てるでしょうし」
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「あれ?ナマエさん?」
そう首を傾げた南吉くんは、どうやら向こうの記憶があるらしい。ちょっと待ってほしい、と端で待ってもらう。
「苗字?ってことは、またなんかあったのか」
そう考えた志賀先生にも記憶があるらしい。ちょっと待って、とまた端で待ってもらう。
「ナマエ?……何かあったのか?」
そう心配そうにした露伴先生に、飛びつく、のを我慢する。我慢。同じく、ちょっと待ってと以下同文。
「苗字?ちょっと、また、おかしなことにまき――なに、これ」
そう頭を抱えてよろけた徳田先生を抱きとめる。
「大丈夫ですか?」
「なんか、記憶がダブってるんだけど」
そう言った彼に、ああやはりこちらで彼は絶筆したんだろうとわかる。とりあえず、話を聞いてもらわねばならない、と三人を手招いた。
「と、いうことは、苗字が連れてきた俺たち以外には記憶はないし、お前以外の司書はいない、侵蝕者はのさぼっている、似たようで違う世界ってわけだな?」
「そういうことです。徳田先生の記憶がダブっているのは恐らくこちらで一度絶筆したからでしょう」
「そう、だと思うな。そんな記憶があるし」
「後、森先生と賢治くん以外からの私への好感度が物凄い低いです」
「それは佐藤からもか?」
「はい」
「何やってんだ?」
「僕が絶筆したのは苗字のせいではないよ。司書が、他にいた」
「司書が?」
「……そこはおいおい話しましょう。とりあえず、転生してすぐで申し訳ないのですが、やることは山のようにあります」
「まず、志賀先生」
「おう、なんでもまかせとけ!」
「みんなのご飯」
「あぁー、士気に関わるもんな……」
「食費は私が持ちますので、人数はそんなにいません。詳しくは図鑑参照」
「新美さんは賢治くんと遊んでください」
「賢ちゃんがいるの?」
「いますが元気がありません。遊ぶついでに本がどうとか色々変なとこ調べてください」
「うん、わかった」
「露伴先生と徳田先生は……ううん、掃除……司書室……館長室……」
「そういえば、館長はどうしたんだ?」
「館長とアカとアオは司書に怪我を負わされて入院してるらしいですよ」
「何だと?」
「異常性、理解してくれましたか?まぁ、その司書さんは飛び出していかれましたが」
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ちらほらと補修した人が動けるようになったらしい。医務室に鍵をかけた森先生と露伴先生、徳田先生と司書室の整理掃除をしていたら、部屋に入っては落胆したり夢じゃなかったんだなと言ったり敵意を向けられたりと忙しい。敵意は無視したし、落胆した人には謝ったりしたけど、やはり苦手意識がどうもあるから疲れてしまう。露伴先生がきたことは本当にありがたかった。甘えれるからである。
「苗字ー、飯できたぞー」
そういう志賀先生の後ろには多喜二先生だ。伺うように見てる多喜二先生に敵意は無さそうである。
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司書室で食べたい、と言ったらダメだと言われた。悲しい。とりあえず露伴先生にひっついておく。右に露伴先生左に賢治くん、右斜め前に森先生、前に徳田先生、左斜めに新美先生、その隣に志賀先生という完璧な布陣だ。味方がいると心強い。
「そういや、お前のとこの勤務形態変わってたよな?」
「9時5時勤務ですか?またやりたいんですよね、それ」
そう言いながらご飯を食べる。美味しい。
「またなんかやってるの?」
「神社の巫女してます。朝のお勤め、夜のお勤めがあるんですよ」
「9時5時?」
「9時から仕事をはじめて、お昼休憩一時間入れて、5時で仕事を終わらせるんです」
「あれ俺も助かりそうなんだよな。しばらく飯当番は三人体制だろ?」
俺、苗字、露伴先生、と言った彼に、そうだなぁ、と思う。
「光忠のお兄さんはいないの?」
「いたら苦労してないんだよなぁ」
「まぁ、昼からはあの部屋の掃除、手伝うぞ」
その言葉はありがたいけど、な、多喜二の部分がいりません、志賀先生。
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紙を引っ張り出して、人気のない食堂に座る。なんか多喜二さんは普通になりました。何があったかはわからないけども、志賀先生がなんとかしてくれたんだろう。
「とりあえず司書室片付いたし、館長の部屋は綺麗だったし、明日からやらないといけないこととかを考えよう」
「潜書するにも被害状況がわからないね」
「さっき、僕と南吉で見たけど、やっぱり侵蝕が進んでたよ」
そう言った賢治くんに、やっぱりかぁ、と思う。
「溜まってる事務処理は私がやりますし、一応私が来る事になった顛末とかは報告書に書いときます。多喜二さんや森先生は辛くなければ私が来る前についてまとめていただければ」
「わかった」
「あと味方増やしたいので明日も二人くらい文豪転生させたいです。できれば白秋先生」
そういえば、あぁ、みたいな顔をされた。まぁ、そうなるだろう。彼ならば牧水さん啄木さん高村さん朔太郎くん室生さんの制止が効くからである。個人的には井伏さんあたりが来て欲しいが、それはまた後で、だ。
「後一人は?」
「坂口安吾」
「芥川じゃないのか。てっきり対菊池も固めるかと」
「菊池先生はクチキカン状態ですが、吉川先生が割と優しくしてくれるので。それより元気がないオダサク先生が元気になる不健全なお薬を頼る前に無頼派でカバーしたいんですよ。でも、太宰くんを連れてくると、今度は佐藤先生が大変なので太宰くんは井伏さんとセットにしたい。だから、坂口安吾」
「なるほどなぁ」
「アンタは、誰か指定した人物を呼べるのか?」
そう首を傾げた多喜二さんに、あ、と私と志賀先生、徳田先生と露伴先生は顔を見合わせた。
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