2022/12/31
2022年度没ネタ整理14
飛んでいった武器に、ふはっ、と笑いが込み上げる。ああ、わかってしまった。叔父さんが何故私との鍛錬の時に愉しそうに笑うのか。命の危機に面しても笑うのか。久秀先生は私にいつかは理解するはずだ、と告げた。私は分かりっこないと思っていたが。
君が、剣聖へと至るものなのであれば/足を踏み外したものたのであれば、いつか理解せざる追えなくなる。
「あはは、」
あぁ、面白い。この人と戦うのは本当に面白い。私より力が強く、リーチも長く、体力も対応力もある。きっと私は注意しなければ簡単に薙ぎ払われる。だからこそ、面白い。
「何を笑っている?」
「あぁ、いや、すまない、決して貴方を笑ったわけではないんだ。貴方と戦うことが、楽しくて、」
そう言って手を見る。我ながらまた化け物になったな、と。そのまま婆娑羅を込めて、棒状のものを回す。そうして婆娑羅が拡散されて現れた宝笏に私はまた真っ直ぐに呂布殿をみた。
「貴方がなを名乗ってなお、私が名を名乗らないのも命をやりあう作法にかけるか。申し訳ない、ややこしい上に私はまだ何も理解していない故に」
宝笏を刃に変ずる。ほう?と呂布殿は目を細めた。
「なら名前を聞かせてみろ!!」
「我が氏は足利、魏の、足利ナマエだ!!」
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「ナマエくんちゃんのテンションヒャッハーってなっちゃってるよ!!上総さん、久通さん、止めなくていいの?!」
「諦めろ。無理だ。ああなった叔父に俺は一回フルボッコにされたからな。言っただろう。あいつもあいつの叔父も特上の化け物だと」
「えっ」
「もう白状してしまうが、本来ならば婆娑羅というのは稀に人に宿る力であるが、そのほぼ全員は一人の身には一つしか宿らない。途中で属性が変ずることはあるが、変ずれば元の属性は特殊な武器を使わねば使うことはできない。例えば私は生まれつき炎であるし、」
「俺は炎から闇に変じたが、もとの炎は扱えない。だが、あれは違う。あれとあれの叔父は複数の属性の婆娑羅を同時に扱い、複数の属性の婆娑羅を持つが故に併発した婆娑羅をも使う」
「あの子は結局いくつあるんだ?」
「小望月」
「一欠けだ。闇の婆娑羅だけ扱えないらしい」
「婆娑羅者の多くがそうであるように、あの子は決して望んだわけではない」
「母親とは物心つく前に病で死に別れ、唯一残った父親には婆娑羅が原因で捨てられている」
「それを俺たちが保護する前に保護したのがあの子の叔父であり足利当主を弟に譲った足利義輝だった、というわけか」
「恐らく病死した母親が足利の出だったのだろう」
「ーー」
「上総?」
「あいつは弟と妹しかいない。妹は年が離れているとも聞いている」
「ーーあぁ、なるほど。父の発言はそう言うことか」
「?」
「あの子は足利義輝の姪だと言うことになっている。母親が足利ではないし、あの子が父親だと信じた者もまた足利ではない。別の父親がいる」
「……義晴公から逃げた妾の子、腹違いの妹か」
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「ごめんなさい」
「?何故謝る」
「だって、きっと皆さん失望した。私は化け物なんだって」
「……」
「きっと曹操様達も衣舞達も、みんな、私をお捨てになる。みんな、私を化け物だと、きっと、きっと……お父さんみたいに、化け物だって言って、いなくなってしまう……」
ポロポロと彼女は涙を流して、子供みたいに蹲る。いい子にするから置いていかないで。婆娑羅だってうまく扱うから。捨てないで。そう、弱々しくつぶやかれた言葉に、周りは目を少し見開いた。いつもの彼女から切り離されたような現象だからだろう。
ーーきっと彼女はトラウマなのだ。
記録では彼女が起こしたことは些細なことだった。家を火事にしたり突風で何かを壊したわけでもない。人を殺したわけでもない。ただ、彼女は部屋の一部を凍らせてしまった。それだけなのに、彼女に向いた視線はきっと冷たいものだったのだろう。父親は婆娑羅を扱うあの子から新しい家族を救うためだったと証言している。血のつながりもない化け物の面倒を見ることなどできないと、父親は彼女を置き去りにして、新しい家族と消えたのだ。それは彼女だけではない話だ。でも、それは何の慰めにもならない。
曹操殿は彼女に近づくと頭に手をのばす。怯えたような彼女に、彼はただ彼女の頭を撫でた。くしゃくしゃと。
「ナマエよ。先の戦働き、大義であった。これからもよろしく頼む」
そう言って彼はぽんぽんと彼女をあやすように撫でた。彼女はしばらくそれを見上げて、またぐすぐすと、泣いた。荀ケ殿と荀攸殿が背をさすったけれど。
「ナマエ、殿の前です。泣いてばかりではいけません」
「その通りです。やることはたくさんあります。泣いている暇はありません」
「おや、荀ケ殿も荀攸殿も手厳しいね。泣いている子にそんなこと言わなくてもいいじゃないか」
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