2022/12/31
2022年度没ネタ整理15
前からやってくる黒い霞の正体を私は知っている。なんだ、とこちらが困惑する前に、私は曹操様や荀攸殿をみる。
「曹操様、荀攸殿、今すぐに兵を下げてください。あの霧に触れてはいけません!あれに触れては普通の兵は直ちに死に至ります!」
そう言えば周りがこちらをみる。荀攸殿は何か思い至ったのだろう。
「殿、今はナマエの言うことを聞いた方が被害は少なそうです」
「毒の霧、かな?」
「いえ、貴方方にわかりやすく言うならば、武器に付属されている吸活と吸生を織り交ぜた霧のようなものです」
そう言えば彼らは理解したのだろう。すぐに撤退の指揮が取られる。それに倣って恐らく他の群勢達にも撤退指示がでる。
「夏侯淵将軍、弓と矢を数本おかしください」
「あぁ?別にいいけどよ、何に使うんだ?」
「荀攸殿、約束を破ります。申し訳ございません。時間を稼ぐには私の持つものを使うより他はありません」
そう言って弓と矢を数本もらう。彼はふむ、と考える。
「貴方の力を使えば、あれは?」
「多少食い止めることはできます。矢を使い防壁のようなものを貼ります。しかし、それも恐らく何重にもした方がいい」
「わかりました。殿、俺はナマエと殿にまわります。こう言う事態を想定していなかった俺にも非がありますから。ご説明はあとで」
そう言った荀攸殿に曹操様は頷いた。私は弓矢を構える。光の婆娑羅を例えばそれは白にも似た光を帯びた。それをまず突出した場所を狙って射れば闇の婆娑羅は拡散した。そのままそれを起点に横に数本射ればそれは壁のように闇の婆娑羅を止めたが。まぁ、じわじわと侵食されているが。その中に見えた人に、目を細める。彼が歩けば光の婆娑羅を纏った矢は飲まれた。恐らくそれが荀攸殿にも見えたのだろう
「人、?」
「恐らくあの人がこの闇の霧を扱っています」
重ねてもう一枚、もう一枚と壁を作り上げ、矢がなくなればそのまま婆娑羅を矢に見立てて射る。真っ直ぐに飛んだそれは朱雀、というよりは鳳凰の形を取るとそのまま相手にぶつかったが。それが当たったのか相手はスタン状態になる。闇の霧だけがまだ前に進もうとしているあたり自発的に出しているものではなさそうではあるが。
「あれでしばらく時間は稼げるはずです」
「わかりました、戻りながら詳しい話をお伺いしても?」
そう言った彼に頷く。馬を指笛で呼んでそのまま二人で陣まで引き下がった。
「私の世界ではバサラという力をごく稀に人が宿します。貴方達でいう宝玉の力が人に宿ると思っていただければ。属性は全部で八つあります。炎、氷、風、雷、光、闇」
「6つでは?」
「いえ、それらが併発した際に現れる震という属性、内面が二分化されたときに現れるとされる感という属性があります。織田にいる上総さんは闇、久通さんは炎」
「貴方は震というわけですね」
「はい。属性は五行のようにお互いに弱点があります。光と闇のみお互いに弱点になりえます。ただ、私の場合光属性が濃い為に闇がそのまま弱点にあたります」
パリン、と遠くで一枚壁が壊れる音がする。
「しかし、現状光の婆娑羅を扱えるのは私だけのため、私が食い止めるのが早いかと」
「……あの霧を触れば誰でも?」
「いいえ、婆娑羅を扱う人であったり、婆娑羅を扱うのと同等の方がいれば彼らはすぐに死ぬわけではありません。恐らく将の方はすぐには死にませんし、それこそ恐らく張遼殿からお聞きしたように武器の属性と似たような扱いになるでしょう」
困った顔で彼をみる。彼は何か考えているようだが。
「申し訳ありません」
「何をです?」
「私が貴方に見せてしまったばかりに」
「いえ、黙るように告げたのは俺ですし、責任は俺にあります」
それが困るのだ。彼は黙っていてくれた、それだけなのである。
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遠くに見えていた黒い闇が白い光に拡散され、消える。よくよく見れば光の壁のようなものが何重にも貼られているのが見えた。まぁ、ピシリピシリとヒビも入っているようであるが。
「ひゃー、光の婆娑羅は初めて見た。あの子婆娑羅者だったんだ」
そうこぼした私に上総くんはため息をついて頭を叩く。痛い。なんで?と思えば高校生たちが固まっていたからである。佐々木さんがそれを見て困った顔をした。一般的には、婆娑羅者は平和な世界に生きる普通の人には危険な存在である。差別される側であるし、度々事件を起こしては怖い存在だと変な認識を与えられるのだ。私たちが怖くないのは同じだから、とは私の同僚の言葉である。坂上先生が、「怖くないよ」とただ真っ直ぐに告げたが。
「あの子が君たちを何か害したことがあったかな?ないだろう?」
「ない!ナマエちゃんは全くない!」
そう言った妹分の頭をなでなでしてしまう。よくいった。久通さんが少し考えて、読みが外れたか、と告げて上総くんをみる。
「てっきり、卿しか闇の婆娑羅を扱う人間はいないと思っていたが」
「俺も原因はあっちに残ってると思ったが、違うらしいな」
そう言って上総くんはタバコに火をつける。不健康だというお叱りはしても意味がない。
「お前の推測は俺が原因だったということか」
「闇の婆娑羅を扱えるのは卿一人だからね」
「あのお嬢は」
「小望月だよ」
「なるほどな」
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