2022/12/31
2022年度没ネタ整理32
「それを誰より聞いたのです。それはこの世界であれ元の世界であれ誰も知らないこと」
剣劇で弾き飛ばし、相手を見る。知りたい?と意地悪そうに笑った彼女に、私は眉間に皺を寄せる。
「前の世であっても、お父様と私の幼馴染みしか知らないこと。お父様も今や生まれ変わり、その頃の記憶もなく元の世界で生きていらっしゃる。それに……」
そう言って、私に相対した相手を見る。黒い軍服で、体全体がまるで影であるかのようだ。まるで刃に広がった錆だ。
「……錆?」
突っ込んできた彼の剣劇をなぐ。振りかぶられた刃を刃で受け止める。襟元についた紋章と胸元に掲げられた紋章を見てからバク転して距離を取る際に彼の錆だらけの剣を蹴り上げた。くるくると回転して飛ばされたそれをリシが取ったらしい。
「おい、化け物!これでお前の武器はないぞ!降参しろ!降参!」
「リシ、それをフラグといいます」
「は?」
彼の影から出てきた剣をとって突っ込んできたそれに、ほらね、とリシを言って庇えば剣は弾き飛ばされた。とりあえず足癖が悪いが蹴りを入れといた。はぁ!?と彼は告げたが。なんと、でもないんだよなぁ、と眉間に皺をよせる。
「なんなんだよ!!」
「妖術の類ですか」
「……リシ、先程の剣を貸して」
「錆だらけの剣でどうやって」
「お貸しください」
そう言ってリシから剣を受け取る。やっぱり手に馴染む。そのまま影のつるぎで切り掛かってくる彼を錆びついた剣で塞ぐ。隙は一瞬である。突っ込んできた彼に、私も突っ込む。そのまま紋章付近の胸元にその剣を突き刺した。髪の毛が犠牲になったが、彼はピタリと動きを止めた。
「私は貴方に再度祝福を捧げます。気高き薔薇よ、無垢な白薔薇よ、どうかこの剣で我らをお守りください」
そう言えば剣は消え、バランスを崩した彼を抱き止めようと、した、が、うお、重い。バランスを崩した私にリシが慌ててきたが、二人して転ぶはめになった。それに伴い周りにいた雑兵達も溶けるように消え、妲己が悪態を吐きながら消えた。
「ナマエ!大丈夫かい?!」
「大丈夫です」
徐庶さんがバタバタとやってくる。私は倒れ込んだ男性を転がした。黒い錆のようなものが消えて、白い軍服へと、元の色へとへんかしていく。
「これは?」
「は?あのまっくろくろすけどこ行ったよ!!」
「目の前にいたのは彼です。一か八かで試しましたが、元に戻ってよかったです。……ユージン」
そう言って譲る。完璧に元の色に戻ったな。
「ユージン、おきて」
「……う……ん……」
うーん、じゃないんだよな。優しい姫様ムーブ終了のお知らせ。はー、と息を吐いて、吸って、口を開く。
「ユージン、いい加減に起きなさい!勲章剥奪しますよ!」
「!?そ、それだけはよしてください、ひめさ、いてッ!?」
ガン!と徐庶さんの頭と彼の頭が勢いよくぶつかる。双方涙目である。可愛いかな??
「いてて……」
「おはよう、ユージン」
「……姫?」
私の呼びかけに彼は目を見開いて私を見る。徐庶さん達がこちらを見たが、まずは彼と話すべきだ。
「正しくはその記憶を持つ別人ですけど、面倒くさいのでそれでもいいです。貴方の捉え方によります」
「記憶を持つ……」
「貴方は『姫』がどうなったか、理解しているはずでしょう」
そう言えば彼はヒュッと息を呑む。見るからに顔色が悪くなった。私は彼の頭を撫でて、「恨んでいません」とかえす。
「貴方は私の与えた役目通り国を守った、それだけのはなしです。私は貴方を許します。大丈夫です。私は貴方を嫌えっこありません」
頬に手を添え、目を合わせて、ね?と微笑む。目を見開いた彼はポロポロと涙を流した。
「嫌いになってください……俺は貴方に選ばれたのに……貴方を……俺なんか……」
面倒くさいスイッチが入っている。リシが「面倒くさい男だなおい」とぼやく。その言葉は徐庶さんに刺さるぞ。はー、やれやれとため息をついてユージンを無理やり立たす。そのまま徐庶さんに距離を取らせ、思いっきり一本背負い決めた。
「っーー!!」
「ひゅーー!一本!!……ところでお前なんでなげれんの?」
「お父さんの知り合いに護身術として習った」
「剣は?」
「あれは今世はやってないけど死ぬ前にやってたから」
そう言いながらツンツンとユージンの頬をつつく。
「ユージン、さっきのでおあいこってことで。私先に説明するし気が済んだらおいで。色々聴かないといけないことがあるから」
「いきます……」
「ナマエ、えっと……?」
「徐庶さん、彼はユージンといいます。私の……お友達です」
「面倒くさいからって省くのはどうかと思いますが。色々聞きたいことがあります。ナマエ姫?」
「もうそんな身分じゃないんで」
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