2022/12/31
2022年度没ネタ整理116
声を聞いてきてくれたらしい達海さんに、目を瞬く。誰かは気づくんじゃないかと思っていたが、この人に気づかれるとはなぁと思いながら涼しいからと言って待機する達海さんに笑ってしまう。いいな、涼しくて、俺たちのとこ暑いんだよと言いながら回転する椅子に座ってくるくるする彼は可愛いというかなんというか。なんでわかったんですか?ときいたら、ここに入っていくの見かけた、と言われた。
「で、足どうなの?」
「リハビリであがいてますねー」
「ふーん、何分持つ?」
「90分はもたないけど、多分1時間以内ならなんとかなると思う。通用するかは別として」
そう笑えば彼はニヤリと笑う。ふーーん、といたずらっ子のように笑った達海さんは、何か考えがあるらしい。俺たちのチーム、なんでか知らないけどお前の名前上がってんのよね、と言った彼に、私は目を瞬く。
「嘘だろ?マジで?俺多分通用しないよ?」
「お前の頭の中のレベルが高すぎんのよ。頭空っぽにしてみろって。あそこでフットボールやりたくないの?」
「やりたい!!!!」
そう言って立ち上がる。いやこれでも鷹丸ナマエとして仕事だと思っていたら、相方別会社Vと上司に許可をもぎ取ったらしいマネさんがオッケーサインをだす。はーー!!と目を輝かせば、お前かわんねぇーなと言われたが私はかなりのフットボール馬鹿だぞ。
「じゃあ行くぞ鷹丸〜」
「鷹丸さん頑張ってください!」
「やった、やった、フットボールできる、やった!」
るんるんしながら続く。スタッフが慌てて準備に走る中、マネージャーさんがにじさんじフットサル用のサッカーパンツとか準備してて笑った。
「あ、でもおまえ隠し球にしたいから後半の枠で交代させるし。周りに許可だすから」
ちょっとまってて、と言われて待機する。はーー、やばい、ワクワクしすぎるんよ!
「ということで、お祭り騒ぎの交代枠一つくれ」
達海さんの言葉に何言ってんの、と思う。この人苗字選手のユニフォーム回収してきたり自由なのだ。誰を?と首を傾げた周りに、達海さんはニヒーっと悪い顔をして笑った。
「秘密」
「し、しかし、形はどうするんだ」
「わかるよ、すぐにな」
そう言った達海さんに首を傾げる。周りも首を傾げただけだ。
苗字ナマエ選手とは、悲劇に見舞われた選手として名高い。達海さんに続いてETUからプレミアリーグに移り、そして第一線、最前線にいるような人物だった。その実フットボール馬鹿のブラコンシスコンであるとは私がETUに出入りしているから知っていることである。日本代表を勝ちに導く人物とはヨーロッパで話されることだ。しかし、契約をどうするかと言う話になっている時に、子供を庇って事故に遭ったのだ。そして選手生命である足を潰された。フットボールはおろか、動かせるようになるかもわからない。そんな状態で彼は所属していたマンチェスターと契約をたち、事故の発端になった子供を責めないようこれからの幸せを願って、行方知らずになったのだ。自分のサッカー人生よりその子の人生のほうが長いだろうから、子供の可能性は無限大だから、と。しかし、そのあとの日本フットボール界は揺れに揺れた。調子を落とす選手もたくさんいたし、何より天才がいないのであれば勝てるものだと海外メディアに騒がれ、ミーハーなサポーターも離れはじめたのだ。一人のファンタジスタの喪失、それだけとも、おおきなこととも言える。今回、彼の名前が入ったのも、そう言う流れを汲んで、だろう。達海さんのユニフォームを下げると言う行為に、サポーターからも非難が上がるだろうし、下手したらスポンサーからも非難があがる。はーー、その苦情処理、と考えてたら、何その顔と言われたのだが。ユニフォームは別のスタッフに渡される。
「タッツミー、流石にスポンサーから非難がくるのでは……」
「なんで?コイツ死んだわけじゃないんだし」
「いや、そうなんですけど……」
佐倉監督が困っている。平泉監督が達海さんを見て口を開いた。
「何かあったのか?」
嬉しそうだな、と。達海さんは小さく答える。秘密、と。
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達海さんが一度控え室の方に引っ込むと、誰かを連れて戻ってくる。その人を理解した瞬間、周りはざわついた。選手たちも、監督勢も、メディアもサポーターも。苗字と書かれた七番を身につけたその人は、苗字ナマエその人だったからだ。それはもうスタッフの一部もざわついた。誰一人、聞いていないのだ、私たちは!!
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達海さんと一緒にスタジアムに行けば、相変わらずワクワクする世界が広がっている。スタジアムを埋め尽くすサポーターに、選手たち。違うのはそこに驚きがたくさん含まれていたからだ。苗字?苗字選手?とざわつく周りに手を振って、ベンチに向かう。
「はーー、ドキドキするけどワクワクする。つうじっかな!!」
「通じなかったら即交代するから」
「ひでーー!!」
そう騒いでいたら、平泉監督が口を開いた。
「驚いた……サッカーができるまで回復したのか?」
「プロで通用するかどうかはわかりませんけどね!リハビリ頑張ってんので!」
ケラケラ笑いながらそう言えば、どこのチームにいるんだ的なことを言われたので首を左右にふる。
「今はどこにも所属してないっすよ。通じないし雇うとこないだろうしリハビリ途中だし。今は近所の学校の高校生とか中学生とか小学生とリハビリがてらするくらいなんで」
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「やっぱりさ、フットボールって楽しいよなぁ。今日改めて思ったわ、すっげーフットボールって楽しい。」
「だからさ、わかるんだよ。今の俺やっぱまだ使いもんにならねぇわ」
「あんなにできたのに?って思うかもしれないけど、今日が最高に調子が良くて多分あの時間内だから持っただけで、今膝ガクガクなんよ。ここにも蓮とハナちゃんに支えられてきたから、フルでゲームできない。可笑しいなぁ、めちゃくちゃ努力したし、そろそろできるって、思ってたんだけど、なぁ」
「あん時の選択は後悔してねぇし、あん時の言葉も本心なんだよ。でもさ、悔しい。めちゃくちゃ悔しい。色んな国の奴と約束した、また一緒にフットボールしようなって。俺はそれを破る馬鹿にはなりたくない」
「だから、さ、俺、決めた。まっててほしい。時間かかっても、またフットボールしに会いに行くわ。なんねんかかってもさ。全員爺さんの大会やろうぜ
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