2022/12/31

2022年度没ネタ整理163



「真実を映す鏡?」
「そう。みんな騙されている!と騒いだ妖魔がいてね。その妖魔が持っていたのだけれど。私達が映っても何もならないんだ」
そう言って郭嘉殿はおもちゃを動かしていく。私もそれに伴っておもちゃや碁石を動かす。この人着々と難易度上げてるのやめてほしい。うーーん、と考える。真実を映す鏡。
「でも、阿子と同じ世界からきた人を映すと違う人が見える場合がある」
と、なると、それは紛い物ではないと思われる。本当に真実を映す鏡なのだろう。
「それはどちらに?」
「一人が怒って割ってしまったよ。破片も散り散りだ。装飾部分は阿沙が大切そうに持っていったけれど」
「寵沙が?」
「友達の持ってるものに似てるからと言っていたかな」
友達の持ってる鏡に似ているとなれば、諸葛果のもつ八卦鏡だろうか。それをうまく使えば元の姿に戻る可能性はあるのだが、割れてしまったのであれば意味はない。
「明日、それを見てきても?」
そう言って郭嘉殿をみる。破片ならあるのだけれど、と郭嘉殿は布で包んだ何かーー恐らく鏡の破片を地図の上に乗せた。
「阿子は鏡を見たら困る子かな?」
「いえ、私は特に困りませんが、郭嘉殿や周りの方が困るかもしれませんが」
「それはどうして?」
「この世界に来る際に私も周りの皆様と同じように姿が変わっています」
率直に郭嘉殿をきちんとみてそう告げる。郭嘉殿はこちらを見て布地から手を離す。
「子供の姿で告げても信憑性も何もありませんので言いませんでした。子供の戯言と思われる可能性もありましたので」
私は布に包まれた破片を取り出す。彼を映しているその破片にはなんら変化はない。それを少し傾けて自分をうつす。なるほど魏にいた頃の私の姿を映している。恐らく郭嘉殿もそれが見えたのだろう。一瞬驚いたものの、すぐに笑った。
「これは面白いことになったね。阿子が本当はこんな姿だとは。おっと、阿子は失礼だったかな」
「いえ、兄代わりにも呼ばれたことがなかったので少し新鮮でした。それに、このようなことをいうのは無礼かもしれませんが」
そう言って眉尻を下げる。彼は首を傾げた。
「あまり子供子供した扱いを受けたことがなかったので、少し嬉しかったといいますか……」
もごもごしながらそう言えば郭嘉殿は肩を振るわせる。なんだ。笑うなら笑ってほしい。
「では、これからも阿子と呼ぼうかな。貴方を元の姿に戻す術を探すべきだね」
「これは頂いても?」
「構わないよ。私から曹操殿に言っておこう。さて、元の姿に戻ったあかつきには貴方とは飲みに行きたいところだね。もちろん、二人っきりで」
「貴方と二人っきりで飲みにいくと他の方々に妬まれそうなので私はご遠慮したいところです」
今は子供の姿なので受け入れられるだけでしょう。
そう困った顔をしておく。いや本当この人の女性人気は凄いのだ。大丈夫、とわらっているがそうではない。


「阿子、友人が来ていますよ」
しばらくすれば荀攸殿が鏡を持った寵沙と徐庶殿をつれてきた。なんというか体が子供だと精神的にも子供に引きずられていくからか、布で包んだ何かをもった寵沙が半分泣きそうになっている。とりあえず徐庶殿に挨拶をしてから寵沙にこえをかける。
「寵沙?どうしました?」
「鏡……」
「はい、郭嘉殿から話を伺っています。八卦鏡を割られたのですね」
「李子さん、なおせる?」
そう言った寵沙は私がいた縁側に布で包んだ何かをおく。布をとけば、なるほど諸葛果の八卦鏡にそっくりである。鏡面はないが。
「阿果の鏡にそっくりですね」
「そうなんだよ」
「阿果?」
「文化交流先であった寵沙の友人で、私の妹のような方です。父親から渡された特殊な八卦鏡を持っています」
破片はありますか?と告げれば寵沙は首を左右に振った。
「特殊な鏡……妖魔曰くこの鏡は真実を映し出す鏡だそうだけど……」
「真実?」
荀攸殿が徐庶殿をみる。徐庶殿が説明をするために口を開く。
「なんでも俺たちには普通の鏡と同じく映る姿は変わらないけれど、一部の人を鏡に映せば違う姿が映るのだとか」
「だから真実の鏡だと?」
「恐らくそういうことだね」
郭嘉殿がそう言って鏡をみる。この人みたいに恐らくは鏡の破片を持ち帰った人間がいるのだろう。まぁそれはさておきだ。阿果の鏡は人の執着をうつし、それを再体験するというものだったはずだ。だから、彼女が扱うものとこれは別物である可能性はたかい。が、寵沙の言おうとしないことはわかる。鏡を通して阿果がくる、鏡の中に入ってしまった阿果がこの鏡が壊れたことで世界を彷徨うことになるのではと心配なのだろう。
「阿子、なおせそうかな?」
「なおせれば色々と使い道はあるので直したいのは山々なのですが」
手をかざすとはんのうするあたり、まだ術は残っていると思われる、のだが。うーんと考える。破片がないものをどうしたって元には戻しかねる。徐庶殿が首を傾げた。
「使い道?」
「何か姿を変える術にかかった方や姿をわざと変えている何かを判別できたりすると思うのですが……」
すなわち、妖魔の防衛に使えるのだ。荀攸殿がうむと頷いている。
「普段寵沙のいる陣に道術に詳しい方はいらっしゃらないのですか?これはそういう方の方が良い部類です。私には似たように使えるかもしれない方法は浮かびますが、鏡部分なおすのは難しそうです」
私の説明にがっくしと寵沙が肩を落とす。それをみた徐庶殿が励ますように口を開いた。
「えっと……孔明や左慈殿に聞いてみるかい?」
「あ……そっか!孔明さんや左慈さんがいるのか!聞いてみる!」
「……ちなみに似たように使うには?」
荀攸殿の言葉に少し考えてから口を開く。
「清めた水で水鏡にしてしまえばあるいはと思ったのですが……見たところ、この鏡にかけられた術のようなものは残っているようですので。恐らくなおってしまえば寵沙にも扱えるようになるはずです」
「君にも寵沙にも道術の心得が?」
「あぁ、いえ、私は何度か文化交流に参加したのですが、2件目の時にお世話になった方が扱えたので私も寵沙も多少は扱えます」
郭嘉殿達に似た方に出会ったのは一つ目ですね。
徐庶殿の問いにそう答えれば、徐庶殿は何か納得した。
「あぁ、なるほど、だから阿沙と阿名無が君が男装しているところをみた見てないの話になるんだね」
その言葉に私は固まる。寵沙はそっと目線をそらした。徐庶殿に悪気はない、のだが。荀攸殿がこちらを見下ろし、郭嘉殿も楽しそうにこちらをみる。……。
「男装……?」
「おや、意外にもそんなことを?」
「……、……いえ、あの、1度目の文化交流の際に命を助けていただいた方がいらっしゃるのですが、その方の元にいるには男装するのが手っ取り早かったといいますか……」
「ああ、それをきいて納得がいったよ。だから君は礼儀も所作も少しだけ女性というよりは男性寄りで、武術の心得も学も必要だったんだね」
「はい。そういうことです。所作に関しては気をつけます」
「いや、そういうつもりじゃなかったんだ。気にしなくていいよ。ただ、君の将剣の扱い方が女性の扱い方というよりは俺のに似ていたから……」
ふむ、と考えるような仕草をする。それはまぁ元直の扱い方を真似たのだからそうなる。ちなみに棒系を持つと郭嘉さん似、清浄杖なら、と色々あるのだがそれは黙ろう。普段は飛翔剣だしな。そして無意識マウントをとるのが元直である。
「私は私の友人に教わったので、その子の扱い方が貴方の扱い方に似ていたのかもしれません」
と答えたのだが、郭嘉殿や荀攸殿あたりは恐らく、
・自分に似た人物がいる
・徐庶殿と同じような武器の扱いをする子供がいる
と頭の中で並べられているんだろうな、とは思う。はた、とあった視線には首を傾げておくが。寵沙が鏡を布で包みながら口を開く。
「李子さん、男装しねぇの?多分さー、董卓?って人がそろそろ李子さん狙いに来る気がするんだよなぁ」
「おや、それはどうして?」
「この前、夏侯姫さんが連れ攫われそうになったのみんなで阻止したんだけど、魏にも奥ゆかしい娘がいるとかなんとかいってた気がするんですよ」
「蔡文姫様では?」
「いや、蔡文姫さんとかは名前呼んでたし」
「私みたいなのを好き好む方はいらっしゃいませんよ。ピジンなどでもありませんしね」
そう言えば、寵沙がなんとも言えない顔をした。
「でたよ李子さんのそれ。あんた今街の女の子からなんで呼ばれてるか知ってる?性別わかんないから深窓の麗人様だぜ」
「深窓の麗人」
「しかも、この前から荀家?の人と出かけてるからそこの子供説とか、かの李将軍の血筋の子供とかって推測されてるって名無さんがいってた」
その言葉になんとも言えなくなる。いや、李将軍の血筋云々は計画通りではあるのだが。郭嘉殿が口を開く。
「阿沙、助かったよ、その情報はありがたい」
「李子さんの評判?」
「いえ、董卓の話です。事前に聞けば対策はうてますから」
荀攸殿の説明に、寵沙はそれは良かったですとはにかんだ。うーん、弟力が高い。頭を撫でてしまうのは仕方がない。子供扱い!と怒られたが、子供である。
「寵沙、私も鏡の復旧については調べておきます。そちらも何かあれば教えてください」
「わかった、ちょっと孔明さん達に聞いてみる!」

==

「李子さーん、鏡の話きいたー!?」
そういってかけてきた仮名殿は「ふぎゃっ!?」と声を上げて見事に転倒した。ため息をついた匿名殿が助け起こしていたが。名無殿が誰アイツと聞いたので、ほら文化交流にいたといえばなんとなく理解したらしい。
「あぁ、李子さんに突っかかってた女子とやれやれしてた男な」
「理解の仕方がまた……」
「間違ってる?」
「いえ、あってますが」
会っているのだが、紆余曲折を経て今は仲がいいのである。助け起こされた仮名殿は「陸名無がいる!!」とまた駆け出そうとして匿名殿に止められていた。うん、歩いてきた方がいい。
「李子さーん、名無さーん、お待たうわっ!!」
「こっちもこっちで転けてるしよ」
「大丈夫です?」
「大丈夫」
そういって起き上がってきた寵沙はやはり包みを持っている。
「李子さん、鏡の話ききまし……ひぎゃ!オリアカ主人公くんだ!!」
仮名殿に対し、寵沙が目を爛々と輝かせながら口を開く。
「クロニクル主人公ズじゃん!!」
これは話が進まないフラグ。まぁ、名無殿と匿名殿がまるっと二人の話を無視したが。
「李子さん、鏡の話聞いたか?」
「はい、聞きました。郭嘉殿がどうやらその場にいたようです。なんでも妖魔が最初にもっていて、それでうつせば私達と同じ場所からきた人は違う姿になって映るのだとか。事実、郭嘉殿がかけらをお持ちでしたが私が映った姿は皆さんが知る姿でした」
そう説明すれば、彼らはなるほどな、と考える。
「その鏡があれば、前の姿に戻れるのか?」
「その可能性はあります。恐らく神鏡の一種でしょう。しかし、姿を見て激昂した人物によりその鏡は割られてしまい、今寵沙と共に元に戻す方法を探しているところです」
私の説明に匿名殿と仮名殿が首を傾げた。
「寵沙?」
「あ、俺です。こっちでは寵沙って名乗ってます。苗字ネムです」
「わー、一緒の苗字だ〜、私苗字名無!こっちは苗字匿名!」
「全員同じ苗字ってのがまた」
そう言って名無殿が頭をかく。何かあるんだろうか?と考えても答えは出なさそうだ。一緒の苗字?と首を傾げた彼彼女に気にすんなと名無殿が手を振った。
「で、鏡はなおったのか?」
「孔明さんにきいて、ちょっとなおしてみたから使ってみようと思って!」
寵沙はそう言っていそいそと布に包まれた鏡を取り出す。私達が映る姿は今の子供の姿だ。寵沙が慣れたように八卦鏡を起動させれば、そこに映り込んだのは大人の姿の私たちである。
「わ、すごい!」
「このまま大人にできないのか?」
「やってみる!」
寵沙はそう言って鏡に触れた。文言を教えれば寵沙はその文言を正しく告げる。足元に陰陽の模様が浮かび上がり、光った、のであるが。
「……失敗ですね」
そう言って寵沙をみる。身長やらなんやらはかわっていない。寵沙はがっくしと肩を落とした。どうやら服装だけが元の服装(無双世界だったりオリアカ世界だったり)に戻ったらしい。
「てか、李子さんがやったらよかったんじゃん……」
ちょっと拗ねモードである。まぁ、状況をみて腹の探り合いをしているのかお互いの情報を交換してるのか、井戸端会議をしている可能性がある保護者がきた。李子さんのセコムきたな、とは名無殿のセリフであるが、私の今のセコムは郭嘉さんではなくて荀家だぞ。
「阿子、一体なにを?その服は?」
「寵沙の仙術が失敗したようです。文化交流していた時の服ですね」
「ああ、例の鏡かな」
「はい、そうです」
そう困った顔をする。この世界の孔明くんが失敗してしまいましたか、と寵沙をみる。寵沙はまた肩を落とした。まぁ、一定時間が経つと元に戻るのか、また足元に陰陽のマークが現れて光ると元の服装に戻っていたが。
「ふむ……色々考えることがあります。元の所持者ならきちんとできるのかもしれませんし、その人がなんらかの詳しいことを知っているかもしれません」
「元の所持者って妖魔だろ?戦場にしか顔出さなくないか?」
「そうですね……」
戦場に忍び込むか、捕らえるように頼むしかない、のであるが。ちらりと伺うように三大軍師を見る。まぁ惚けたふりをされたが。

==

ガラシャ殿形式で兵糧の箱の中に紛れ込んだのはいいのだが、普通に君主組のピンチだったんで落ちてた将剣で庇いでたのは仕方がない。鍔迫り合いになったが、まぁ、大人の相手の方が力が強いわけで。押し負ける前にどうするか考えていれば、合流した夏侯惇殿が妖魔を叩っ斬ったけど。
「阿子、なぜここにいる!」
「例の鏡の持ち主に会いたかったからといいますか……」
そう言って周りを見る。兵達がひどく慌てている。統率があまり取れていないし、よくよくみればその兵達は彼彼女らに与えられた兵が圧倒的に多い。恐らくは戦力カウントされていた同じ世界から来た子が軒並み戦力を奪われていそうな感じである。もしかしたら、別経由で元の姿に戻ったのかもしれない。あとは私たちが知らないだけでこの世界が結構ヤバい世界だった可能性はある。郭嘉殿が言っていた場所は一致している。兵力、人数を考え、ここに戻ってきた兵力、逃げた兵力を考える。恐らく孔明くんや、周瑜殿もどこかに参陣しているはずなのだ。だからああいう陣の形になっている。色々と考えて出た結論に、曹操様を見上げた。
「曹操様、子供の私の言を信じる覚悟はございましょうか?」
そう尋ねれば彼や周りにいる君主組は一度驚いたがフッと彼は笑った。
「お主の才は郭嘉達から聞いている。申せ」
その言葉に礼をしてから、考えた結果を全部話す。南西周りから救援、東、あとは。
「各所を救援したのちに、ここを囮とし敵を引きつけ、周囲から包囲、撃破いたします。それが私の思いつく限りの最善でございます。こちらの指揮は私に任せ、貴方様達は一時撤退し兵を再編して救援くださいませ」
私の言葉に彼は私をじっとみる。
「……持つのか」
「持たせます、必ず。今は撤退くださいませ」
そう言えば曹操様は撤退する、と声をかける。劉備様が心配そうにこちらをみた。
「しかし……」
「劉備様、あなたの命と私の命の価値は等しくありません。貴方様達は撤退ください。仮名殿、撤退路の確保をお願いします。貴方はそう言うはながきくかたです」
「了解!」
「名無殿、匿名殿、寵沙、幻影兵を率い各地を救援後先程のいう通りこちらの救援を」
「わかった」
「兵がガキの言うこと聞くか?」
確かにそうである。孫堅様がやはり無理があるんじゃないか、と私に告げる。子供の姿だからそう思われるのだろう。仕方ない。できるかどうかはわからないが。
「……寵沙、鏡を」
寵沙は鏡を取り出して私に渡す。
「太極両儀四象八卦、相剋、嘘剋真」
そう言えば八卦鏡が浮くと、くるりと回転して光を放つ。すると、足元に陰陽の模様が絵かがれた。それが光を放った瞬間、背が伸びる。周りを見ても成功したらしい。そうして同じぐらいの背丈の彼ーー私は所謂ヒールを履いているし、それでもほんの少し曹操様の方が高いのであるがーーを見た。
「これならご心配はないでしょう?はやく撤退を」
「……なぜお主は儂達につくす?」
「貴方様達には幼児であった私達を助けていただいた恩がございます。それに……いえ、これは貴方によく似たお人の話であり、貴方には関係のないこと。さぁ、はやく。夏侯惇殿、関羽殿、黄葢殿」
そう告げれば夏侯惇殿達が促してくれるのであるが。兵の撤退、再編は名無殿達がやってくれている。不足分は幻影で補うしかないが。匿名殿が兵を律し、寵沙が励ますかたわらで名無殿がやってきた。
「李子殿、再編はできた。いつでもいける」
「……どれくらいこの姿見の術が持つかわかりません。貴方達を奇襲が成り立ちそうな場所に戦術を使いお送りいたします」
そう言って持っていた巻物を広げる。まぁこれは飛翔剣のものではなく仙術を扱うためのものであるのだが。それを扱えば、地面に文字がはしりそれが散って光ると三人や兵達は消えたが。あとは幻影兵で警備を固めるだけだ。幻影兵をうみだしていれば、背後から音がして振り返る。そこにいたのは徐庶殿である。
「ーー驚いた、君は仙女か何かだったのか」
「徐庶殿、貴方は……」
「子供一人を置いていけると?」
その言葉に、目を瞬く。彼の性分的には難しいかもしれない。彼は私のそばにきて、私は笑う。
「貴方は優しい人ですね」
「俺は優しくないよ」
「いいえ、優しい方です。この場での最善は貴方達が生き抜くこと。正しい選択は変な術をあつかう子供を捨て置き戦を放棄、次の防衛に備えることのはずです」
そう言って彼を見上げる。彼はまっすぐにこちらをみおろした。
「いいや、最善は違う。最善こそ、君たちと生きて帰ることだ。大丈夫、劉備殿達であればすぐに救援はくる。そこまでどうにか戦線を持たせればいい」
俺なんかじゃ力になるかわからないけれど、力は貸すよ。
徐庶殿の言葉に、ああやっぱり彼は彼なのだと理解した。
「元直、貴方はやはり優しい方です。世界が違えど、人は変わらないのだとわかります」
「ーーえ?」
「いえ、こちらの話です。急ぎ防衛線を固めます。貴方にご助力いただけるのであれば、大きな力になりましょう。お力添えを願います、徐庶殿」
「……あ、あぁ、」
「他の方も」
そう言えば隠れていた将兵が現れる。私はそれを見て、思考を切り替えた。被害を少なくしつつ、防衛する策を考えなければ。


==

恐らく全ての場所の救援が間に合った、のでこちらの策の形が整った。とりあえずまさかの展開にパニックになる妖魔を味方で押さえ込む。なんとか術も持った。さて、鏡を持っていた例ね妖魔ーーというよりは妲己などと同じようにみえるーーは私達を見て口を開いた。
「貴方達も同じか!神様の力で真の姿に戻してやる!」
私達が光が包まれ、嘲笑った彼なのだが、光が晴れても私達の姿が変わることはないようだ。身長は変わらないままである。相手は、は?と小さく声を上げた。
「これ完璧に戻ったのか?」
そう尋ねた名無殿に近くにある鏡を見る。あれからも何度か術を掛け直し、術を扱っている間は淡く光っているのであるが、今は反応はしていない。
「私の術は解かれていますね」
「おぉー、じゃあ元の姿認定だ!懐かしい!」
「何故!もう一度!」
もう一度鏡をむけた彼に寵沙がこちらにある八卦鏡をとると鏡の方に向けた。妖魔の持つ鏡の光が一度八卦鏡に収束し、その光は彼に当たる。すると、どう言うわけかその人は苦しみ悶え、なにか黒いドロドロしたものを撒き散らす。周りの妖魔にも気味が悪かったらしい。一部の妖魔は一目散にさって言った。そうしえ最後には妖魔の姿普通の人間に姿を変えた。同じような術にかかっていたのか、違うのか。そのあとはあっけなく名無殿が押さえ込み、残っていた妖魔達を威嚇すれば彼らは立ち去って行った。一安心と言うところだろう。寵沙が鏡をしまいながら口を開く。
「李子さんこいつどうするの?」
「お伺いしたいことは山ほどあるのですが……私には権限がございません。上の方の判断に任せる形になります」
そう言えば仮名殿がちょっと嫌そうな顔をした。
「首を落とすとか鞭打ちとか釜茹でとかされるの?かわいそう」
「罪人扱いじゃなく敗将扱いじゃないか?ってことは首落とされるか磔とかじゃないか?」
「いや、首落とす一択だろうな」
匿名殿と名無殿の言葉に彼は顔を真っ青にしてふるえあがる。寵沙がちょっとそれはいただけないみたいな、困った顔をしているが。
「李子さーん、マジでどうにか何ないの?」
ふむ。と考える。まぁ確かに同じ世界の人間が死ぬのは気分があまりよろしくはない。仕方ない。
「わかりました、私は私なりに最善を尽くしましょう。ただし、なにもなしでと言うのは難しい話です。貴方が妖魔や敵、この世界について、ここからの帰り方など有益なことを知っているのであればその情報を元に皆様に交渉はいたします」
何かご存知ですか?とできるだけ優しく問いかければ、泣かれたけども。あ、これは面倒くさいフラグが立った気がする。


話をようやくするに、同級生は神様のようなものを呼び出した。自分もそこにいたし、貴方達(私達をさす)は意識を失っているようだった。彼彼女らは願いを叶えてもらったのに自分が叶えてもらえないのはずるいといった。神様は願いを解く鏡をくれ、使い方を教えてくれたし、力を与えてくれた。そのまま彷徨っていたら妖魔に拾われたし、人間側に同じ世界から来た人がいるしで戦ってたそうだ。ただ彼も巻き込まれただけであるから帰り方はわからないし、神様に会う方法もわからない、らしい。姿の術が解けた身内に話を聞いた方が早そうである。
とりあえず名無殿には見張ってもらい、私は説明も含めて交渉しなければならない。宥めるのは寵沙がいれば何となかるだろう。今も励ましているし。
「名無殿、あとは任せても?」
「あぁ、見張っとく」
そう言った名無殿に、私はとりあえず曹操様のところに向かうか、とそちらに向かうことにする。まずはお礼だな。
「曹操様、劉備様、孫堅様、ご助力助かりました」
「いや、礼を言うのはこちらよ、阿子。お主らがいなければこの戦さぞ難しいものになっていただろうからな」
「もったいなきお言葉です。私は才の限りを尽くしたまで、それを可能にしたのは皆様の行動あってのことです」
そうもう一度一礼しておく。周りが固まっている。と言うか戸惑っている。まぁ、曹操様は私をみたが。
「それにしても、阿子よ、それがお主の真の姿か」
「はい。皆様を騙す形になり申し訳ございません。こちらの世界に来る際に何らかの術にかかってしまったらしく子供の姿になっておりました。子供の姿で大人だと告げたところで、それこそ子供の戯言……信憑性はあまりございませんし……私の国ではまだ子供とされる年でございますので間違ってはいませんが故に」
そう説明すれば納得はえらえた。まぁ、早い話子供じゃないと騒ぐところが子供というか、そう言う話である。
「あの鏡を持った妖魔なのですが、術を解いてみれば同郷の身でございます。話を聞けば、私達と同じく世界を跨いだ際にあのような身なりへ落ち、妖魔に保護をされたのだとか」
「元は普通の人間、ですか」
諸葛亮殿の問いかけに頷く。郭嘉殿が私の隣にたった。逃げる気はないが、逃げ道を潰されている。
「阿子、貴方達が何故術にかかったのか、この世界に来たのかということはわかったかな?」
「いえ、それに関しては何も。しかし、彼が言うには神と呼ぶ存在に合い、他の人物達が願いを叶えてもらうのを見ていたようです。なので自ら交渉し、あの鏡と戦う力を得たのだと」
「それに対してあなたの推測は?」
諸葛亮殿の言葉に私は答える。
「彼は人である対価を払って、戦う力や知識あの鏡を得た」
「対価?」
「神様は無償で願いを叶えてくださるとは限りませんし、善神とは限りません。通常は願いを叶える為にはそれ相応の何かが必要だと私の世界ではよく言われます」
私の説明に周瑜殿が口を開く。
「……ということは、他の彼らは君たちの年齢を対価に歳を重ねていたのか」
「恐らくは。しかし証左は未だございませんし、私達がこの世界に迷い込んだ理由もわかりかねます」
「……その為に彼や他を生かせというんだね」
郭嘉殿の言葉に話が早くて助かるなぁと思う。そして恐らく対価の話になる。
「厳しいことを言うけれど、阿子、あなたが最初に言った通りあの子たちは無力だ。将兵としての力をなくしてしまったようでね」
「戦線崩壊はだからだおこったのですね」
「そう言うことだね。かと言って農作業もできない。言ってしまえば」
「農村の民よりも役に立たない。尚且つ敗戦の責任もある」
「そう言うことになるね。それこそ、こちらがそれらを無かったことにして同じように保護をするには対価は必要になる」
「それは承知の上です。彼の言から妖魔の砦の位置を割り出しました。匿名殿と名無殿が今書き出しているところでしょう貴方様方でお使いくださいませ」
「それは素晴らしいね、でも、貴方もわかっているように、それで助かるのは彼だけだ」
ですよねぇ。これで引いてくれるわけがない。
「……我らの今回の功績を持って覆るとしても、敗戦の責任だけでしょうか。貴方様方が、継続して彼彼女らの面倒をみる対価にはなりかねますね。……少しだけ、彼らと話をしても?私だけでは決めかねます」
尋ねれば、構わないよと言ってくれる。とりあえず名無殿と寵沙に合流し、匿名殿と仮名殿を招く。一緒についてきた「彼」の目線を合わせて口を開く。
「貴方の命は助かりました。ご安心ください」
「あり、がとぅ、ございます」
「いえ、礼を言うなら寵沙にお願いします」
「なんかあったのか?」
「他の方々の話です。普通の人に戻ったのなら足手纏いになるだけなので」
「面倒をみる必要はない、か」
名無殿の問いかけに頷く。
「ただ、我々が士官すれば面倒は見てくれると」
「まとめて?」
「郭嘉殿をみるにそのつもりでしょう。しかし、恐らく他から反発はあがりそうです。私たちを分けて考え、彼彼女らを分割した方が各陣にも負担は少なくなります」
私の説明に戦力的にもそっちの方がいいだろ、と匿名殿が告げる。
「それかさぁ、俺たちは手伝うし俺たちで陣の一部もらって俺たちで切り盛りしちゃダメなの?」
見張もできるしそっちの方がいい気はするんだけど。
寵沙の言葉に四人で目を瞬く。私はふむと考える。それはありかもしれない。そちら方が精神安定上は。しかし、そばにいる彼が集中砲火を喰らう気はするが。

==

改めて同郷の人に会ってみれば、なかなか色々な人がこちらにきていたのだとわかる。例えば、学校の教員がいたり、上級生下級生色々なのだ。とりあえず全員の名簿をつくり、何ができるのかなどを書き出す。協力してくれない人はやはりいて、私たちに与えられた陣地からは私たちが知らないうちに逃げ出してしまった。原因の人達とは皆が口を揃えて言うことなので何かあるのかもしれない。とりあえず追跡は匿名殿が請け負ってくれたのでそちらに頼んでおいた。
意外にもあっさりと自分達の陣地が欲しいという言葉は承認された。手伝いに行くと言う言葉があったのか、まとめて管理したいのかは分かりかねるが。とりあえず私はしばらくこちらの陣地の整頓に力を入れる必要があるし、他の人をどうするかを考える必要はある。寵沙はあっという間に民にも周りにも馴染んだらしく、やはり寵沙は城主向きなんだよなと再認識だ。ちなみに名無殿はリストを元に兵系や体育会系の管理をしてくれている、ので、必然敵に文化理数系の管理は私になるんだよな。前は同郷とはいえ医者薬剤師がいたのは助かったし。化学部門か。
「李子さーん、李子さんの知り合いがもって人見つけたから連れてきたよ」
そう言っては言ってきたのはなるほど。
「森さんと柴田さんと結城さんでは?」
「あー、やっぱり李子だったか」
「君も巻き込まれていたんだね」
これちょっと待て、何分の何が異世界トリップ経験者だ。絶対に私たち以外でも歪な人がいる気がする。
「またお前過労で倒れるぞ」
「いえ、今はそれほど業務を抱えているわけでは」
そう言った私に部屋にいた人ーー鏡を持っていた京目くんと私の手伝いをかってくれた赤垣さんは変な顔をした。仮名殿も「え?」と声を上げる。なに、!
「でた、李子のワーカーホリック度合いがわかる発言。どうみても業務抱えてるだろ」
「これは人事なので特には何も」
「僕たちは何する?」
「また前回と同じことをお願いしたいです。赤垣さんや鈴木さんと言った方や学校の先生方もいるので、今日の夜にでも大人が集まって話し合いはいかがでしょう」
「学校の先生ということは、学生が多いのか」
「はい、そうです」
「まて、鈴木?赤垣?」
そう言った柴田さんは苦々しい顔をしている。赤垣さんがやぁ久しいね三郎と笑ってみせたが。
「お知り合いです?」
「まぁな……お前何やってんだおい」
「見てわからないかい?李子さんが大変そうだから手伝ってるんだよ」

==うーん、ズレるなぁ……

12/9



 Comment(0)
未分類 

次の日 top 前の日