ネタ帳vol.3

2023ネタ帳107:中華組の話

01/14 17:48 


「恐らくは覚えていらっしゃらないでしょう」
そう言って彼らの背から目を離す。私達にとってはほぼ地続きの世であるが恐らく彼らにとっては違う。一度の区切り、もしくは覚えてもいない記憶なのだ。そうだな、と頷いた陸治殿と一緒にその場から離れ、私たちは学校の列に戻る。その後に向いた視線は知らないふりだ。

危険なことをしてはいけない、とは私達が行方不明になった時にすっ飛んで帰ってきた父親の話である。私はその姿に驚いたし、泣いてしまったのは仕方ない。なぜならあの時私の目の前で自害した彼だったからだ。届かなかった彼への手が届いて、安堵して、泣いたのだ。それをどう受け取ったのか父親は過保護になったわけであるが。
「嫁には行かせたくない」
そんな父親が不意にそんなことを告げる。働く気満々な私も行く気はありませんね、と返してしまったが、よくよく考えて何でそんな会話が?と首を傾げた。
「何かありましたか?」
「婚礼の話が劉邦殿からきている」
劉邦さんもいるらしい。目を瞬いていれば、父親はお父さんの会社というかお父さんが所属しているもうひとつの部署の上司でね、と彼は告げた。
「いつも私に息子がいるはずだと言ってくるんだが……」
それたぶん私である。私は黙っているが。
「どこからかーーまぁ、李嘉さんの親族からだろうけど、私に娘がいると聞いたらしくてね」
「はぁ、では、えっと、その方の息子と?」
「いや」
「では陸治さんとか?」
「彼でもない。さらに別の部署の人だ」
さらに別の人、とは。目を瞬いていれば、彼は大きくため息をつく。
「……私が出ることで何とでもなるならお話だけして帰りますが。なんなら粗野な行動でも」
私がそう言えば彼はまた深くため息をついた。
「粗野な真似をしてはナマエの名誉に傷つく……」
別に気にしていないのだが。

「えっ」
と声を出したのは荀攸さんである。私も目をパチパチと瞬く。どうやらお見舞い相手とは彼らしい。えっという言葉をこぼすあたり彼は覚えているようだ。食事もそこそこに、あとは二人でだなんて言いながら席を外した彼の父親と(引き摺られるように)私の父親は退出していく。私は気にせず父親がくれたデザートを食べた。しばらく考え込んでいた彼が生唾をのみ、そして口を開く。
「李子殿?」
「はい、なんでしょう、公達殿」
そう返せば彼は目をまんまるに瞬く。そして頭をかかえた。
「お待ちください、整理をするのに時間がかかります」
「公達殿は記憶をお持ちなのですね」
「ええ」
「どこから話せば良いのやら」
そう言って困った顔をする。一から説明したほうが良いか、と私は彼を連れて散歩に出た。

「わかりました」
目頭をほぐした彼に私はそれはよかったとつげた。しかしながら私は首を傾げる。
「公達さんは何故お見合いに?引くて数多では?」
「いえ、俺は仕事ばかりなので……父が心配して俺の上司はな相談すれば別部署に話が飛んだようです。俺は全くその気はありませんが。それに、貴方を娶るとなると周りがうるさくなります」
うるさくなる、と繰り返せば彼は頷いてうるさくなりますとつげた。
「まぁ、私もバリバリ働きたいです……父親は断りたいが無碍に断れないから私を連れてきたと聞きました」
「なるほど、でしたら俺個人と貴方のお父上との利害は一致していますね。しかし、李子殿、就職先はもう?」
「いえ、まだ高校生なので。大学受験を控えています」
「高校生」
「あー,えっと、18です」
公達殿めちゃくちゃびっくりしている気がする。いやしかし昔の年齢差を考えると、とぼやいている彼に私は小首を傾げる。
「公達さんはおいくつですか?」
「俺は32です。文若殿が29」
「ちなみに、郭嘉殿は?」
「26です」
「満寵殿は?」
「20ですね」
「……元直は?」
「徐庶殿や諸葛亮たちも20を超えていたと思いますが」
私はピシリとかたまる。いやこれは父親の世代とごっちゃになっているからこうなのかわかりかねるが。わかりかねるが。
「私だけ離れすぎでは……」
そうしょんぼりすれば彼は頷いた。
「そうですね、なので俺も驚きました。李子殿、連絡先を伺っておいても?」
「はい、構いません。しかし、簡体字が得意ではなく……」
「日本に住まれているなら仕方ありませんよ。簡体字はこれから覚えれば良い話です。幸いなことに、俺はどちらも理解できますから」
荀攸さんと連絡先を交換する。やった、と少し喜びつつ、写真を撮っても?と聞けば仕方ありませんねと頷かれた。そのまま写真をとったりしてから戻れば父親がちょっと悲壮な顔してたけども。
「ナマエ、仲良くなって……?」
「ああ、いえ、中国語や勉強を教えていただいたりする約束を取り付けただけです」
「父上、流石に一回り以上離れているのはどうかと思います。幸い、彼女は勉強熱心な方でしたので話は持ちましたが」
「彼は博識なので、お兄さんみたいですね。そう言えば攸兄とお呼びしても?」
「構いませんよ」
そう頷いた彼にニコニコする。ちなみに荀攸さんの父親はニコニコしていた。まぁ荀攸さんがよく喋ってるからかもしれない。父親は納得したようなしていないような顔をしたが。

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「いえ、流石に一回り以上離れていたので勉強を教える約束だけはしましたが」
「荀攸殿に次をだなんて相手はやり手かな?」
「そうですね、ある意味は。夏休みには皆さんに会わせることができるとは思いますが」
「夏休み?」
「インターンに来ていただく手筈を整えているので」

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父親は心配性である。恐らく彼の中ではやはり私はあの時死んだことになってるんだろうか。と、戻ってきてからは思っていた。一人中国(彼にとっては本国)に単身赴任している彼であるが、昔から大切に大切に育てられできた感じはする。が、母方祖父の親族との会話を聞いているとそうでもなさそうだ。というか母は祖父側の親族が嫌で祖母側親族の元に来たらしいけども、私は別に祖父というのか、彼が嫌いなわけではない。まぁ、わかるように言えば私に武芸を仕込んだ李信その人であるし、叔父にあたる人達もわかっているので頭をぺちぺちされる感じだ。ただ、それはうち内処理なだけで、対外的なものは変わるのだろう。
「孫娘だ」
そう繰り返したのは蒙恬、蒙毅兄弟である。待て待て待て、と繰り返したのは李斯殿だろう。
「孫息子ではなく、か?」
「ああ、章邯と娘の子だ」
その言葉に祖父の周りは理解したらしい。
「たまたまあの時……いや、娘がこちらによこしていて逃れた。そのまま匿えば我々も一族郎党だ。だから男として育てた。そうしたらどうだ、口は聞けぬが一級品だ」
「だがお前、父親と対峙させた上に自害を見るのはどうかと思うぞ」
もっともなことだろう。祖父はそれは知らんと返す。
「それは若造達のやったことだろうよ」
「あ、いえ、劉邦殿は私に父親を連れて去れとこっそり告げてくださっていたので」
私の返答に、ではお前の父親の早とちりか、と祖父がこちらをみおろした。
「あの頃の父にとって、私は死んだ人だった、それだけです」
ちょっとしょんぼりしながら返す。さよか、と頭をまたぺちぺちされたが。
「お前の父は事実を知ってそりゃあまぁ悔やんだ。多少の過保護は許してやれ」
「……はい」
ぐしゃぐしゃにされる。というかこの人がバラしたらしい。まぁ目の前でくよくよされるよりマシか。

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「うちの孫を紹介しよう」
そう言った祖父様に私は顔を覆う。この面子の中でやめてくれ。というか人質の時に言わないでほしいというか。
「なんでい、爺さんやっぱり李章を隠してやがったな」
「わしは隠しとらん。隠してたのは父親よ。文句は父親に言え」
はーーとため息をつく。まぁ、曹操様もいる。ドレスっぽい姿なのが傷であるが。仕方ない。祖父様がやれと目線で訴えてきたので、とりあえず近くにいた敵から剣を蹴り上げて奪い、そのまま双剣よろしく奪った。陸治さんに目線をやれば彼も頷いたが。私はそのまま雑踏から飛び上がると祖父様近くの敵に蹴りを浴びせ剣で縄を斬る。雑兵がこちらをみた、が、陸治殿が制圧にかかる。そのまま敵の親玉を気絶させたが。
「祖父様、やれと言われてもこのような装いで困ります。何事も順序というものがございましょう」
「構わん構わん、お前は男のような装いでも女のような装いでもできるから頼んだだけよ」
「そういうことではございません」
動いた相手にヒールで思いっきり手を踏んづける。はぁ、ともう一度ため息をついた。子嬰様が何かいう前に、劉邦さんがそろそろやってきて胸元触った。
「女ァッ!?」
「こうなるから嫌だったのです……」
頭を抱える。女顔だと思っていたら,と言われたが。

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嫁問題来るのやめてほしい。本人抜きで話してるし。私はとりあえず荀攸殿にて招かれたのでそちらーー曹操様のところに向かう。
「攸兄様、お久しぶりです」
「ええ,この間ぶりです」
「……荀攸、知り合いか?」
「はい。夏休みにインターンをできるように整えている方で、そこで改めて紹介しようと思っていたのですが……李子殿、こちらは俺たちの直属の上司曹操殿です。曹操殿、こちらは我らの軍師である李子殿です」
紹介されたそれに私は嬉しくなってぱぁっと目を輝かせてしまったのは仕方がない。周りの視線が私に向いたが。
「お久しぶりです、曹操様。……いえ、李子は只今戻りました」
そう言ってへにゃりと笑う。曹操様はふっと笑って私の頭をポンと撫でた。
「お主にすると、大変遅い戻りであったな、李子よ」
「ちょっと待て、孟徳、李子。あっちはなんだ?」
「親類と元の上司です」
「親類……」
「李子殿、正しく名乗ったほうが良いかと」
「……私の名は章李子。秦の将軍である章邯と李信の娘である李嘉の娘です。父親が逆賊と見なされた為、母方の親類に男として……李章として育てられ……最終的に仙界にまよいこみ、貴方があの時代に行きつきました」
「おいおい、李章!なんでお前は曹操のとこいるんだよ!お前は俺のものだろうが!」
「……漢時代に属する人は皆劉邦様の部下のようなものでは?」
私の言葉に彼は目を瞬く。そしてぱぁっと目を輝かせた。
「それもそうだな!いやぁ、しっかし、元から李章は顔がととのっているとは思っていた、女だったとはな。嫁に来るか?」
「いきません。劉邦様には素敵な奥方がいらっしゃいます」

category:中華組関連(msu・oa)