ネタ帳vol.3
2023ネタ帳119:君僕主(現代if)
01/14 17:55
私とその子の関係はただのクラスメイトだった。関わりがない女の子、ただそれだけ。私はゲームやアニメが好きな女の子達と集まり、彼女は違う人と集まっていたのだからそうなる。たまに彼女がピアノのコンクールで入賞しただとかそういう話を聞く程度だった。
しかし、彼女は事故に遭ってーー学校をやめた。それは夏休み中のことだったらしい。辞める必要はあるのかと思ったけれど、どうやら事故の衝撃でD.mhになって人が変わった様になったらしい。d.mh。dual Memories holders(二重記憶保持者)。精神病の一種。解離性同一性障害に含まれ、昔は多重人格障害とよばれたもの。世界のたった数%しかいない存在は畏怖され通常の人からは嫌悪される。ありもしない記憶をかたり、時には人格をも変える。この世界の第二次世界大戦はその人達がきっかけだったと呼ばれるほどだ。はるか昔の言葉であれば天命を受けた存在。私の様に緩やかな出現でも週に一度のカウンセリングがついて回るというのに、彼女のようにいきなり出た人は入院という名の隔離が施され、薬剤による鎮静化が測られるという。瞬く間に広がった悪い噂とともに、私もまたカウンセリングに通っていることがバレて疎外され学校をやめた。そうして学校のつなぎとして通う様になった場所に、彼女がいたのだ。薬のせいかいつもぼんやりして、窓から外を眺める。人はあまり寄りつかない。寄り付けさせない雰囲気を持っていたから、だけでなく、彼女は暴力的だと思われるからだとは職員にも言われる。戦場にいた記憶を持つ人はそうなるのだと。まぁ、私は年が近いからと彼女の主治医に彼女と話す様になり、カウンセリングをする人と一緒に彼女の過去を聞くことになったのだが。
現代から始まる私ではなく、戦時下の第二次世界大戦からはじまる彼女の話はまるで映画の様で夢中できいた。しかし、彼女は最後だけを必ず伏せる。私が気になって、最後はどうなったの?と聞けば彼女は変わらない困った笑顔を浮かべて口を開いた。
「任務でソ連に亡命して、私を殺す任務をうけた親友に殺された。私は殺されることまでが任務だったから」
その言葉にカウンセラーは泣いた。私も泣きそうになった。彼女がいかにその人を大切に思っていたかわかっているからだ。恐らくそれは彼にとっても。しかし、私はその物語を知っている。それは私が昔聞いた話だ。私が大好きで大切だった人達の根幹に関わる話だ。最後に呪いを吐いてしまった、と告げた彼女に、カウンセラーが泣きながら呪い?と尋ねる。
「彼に愛してると呟いてしまった」
知ってる。だって、あの人が言っていた。だからこそ彼は彼女を憎んだ。嫌ったふりをしてくれたらよかった。なんで最後にそう言ったんだ。あれは呪いだったと。でも、彼はこうも告げた。彼女を殺すこと(この未来)を選んだのは自分なのだと。やっと答えを言いに行けるのだと穏やかに。
私はそれを思い出してさめざめと泣いた。私の記憶の中にない女の子は彼女が彼を思って未来を歪めたからこそ生まれた存在だったのだろう。あの子も最後死んでしまったけれど。泣きじゃくる私達をみて、変な人達と笑った彼女は何も変わらない。ただのクラスメイトだった少女だった。
私はその日から私は彼女と仲良くなった。彼女の妹達とも呼べるのか、彼女のそんな存在にも会ったし、気づけば彼女は退院して一人暮らしーーではなくその妹達と暮らしている。私もたまに泊まる。病院の仲介したNPOで働き出した彼女と、大学に通う私。結局は彼女が私の両親に逢えど、彼女達の両親は現れなかった。
そんなことを走馬灯の様に思い出したのは、彼女が一人現地でテロリストに立ち向かい、メタルギアと呼ばれるそれをなんとかしようとしたからだ。彼女のおかげで人質達は飛行機に戻り、飛行機はいつでも離陸ができる。そんな状態で起動した二足歩行の兵器に、彼女は立ち向かいーー私達に離陸する様に告げた。彼女は妹達に大丈夫だ、と告げる。彼女の無線は飛行機の中でも聞こえる。一人逃げたんじゃないかと騒いだ人がいたからである。彼女の幼い妹が大丈夫って?とたずねる。
「お姉ちゃんはこれを海に落とすだけ」
「すぐ帰ってくる?」
「ああ」
嘘だと理解する。だってそれは操縦は確かできているけれど、それは自動操縦機能が働いていないからであり、何より自爆シークエンスにはいっている。彼女は口を開く。妹達に向けてじゃなく、搭乗者に向かって。
「貴方達は国に帰れる。大丈夫だ、これはなんとかする。貴方達は無事だ」
誰もが言葉を詰める。
「機長、離陸して出来るだけはやく高高度にいけ。離れろ。海に落としても爆風の影響がどこまであるかわからない」
「……わかり、ました」
機長がそう頷く。ナマエちゃんの妹が、まだお姉ちゃん帰ってきてないよ、と私たちに告げた。
こんな時私は嫌になる。だって、私はいつも見てるだけだ。彼女だって同い年の女の子のはずなのだ。こんな覚悟、間違ってる。でも、私には何もできなくて、いつもの様に喚くこともできなかった。だから、わたしは違うことをつげる。
「ナマエちゃん、戻ってきて、絶対に。私達は信じるから」
泣きそうに鳴りながらそう告げる。彼女はその言葉に息を詰めて、ああ、と彼女は力強い声で告げる。
「必ず」
離陸した飛行機を背に轟音、そして水柱があがる。
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死ぬな,と言われた気がしたのだ。手元の操縦桿をベルトで固定し、ただ前に進ませる様にする。そのまま降りようものなら踏み潰される可能性もある。それでもなんとか操縦席から離脱し、踏まれることはなく、受け身を取る。ここからは時間勝負だった。どれくらい距離を取れるか。できるだけ離れようとしてもそんな時間はないのだろう。頭の中でカウントをしながら走って、走って、そうして響いた重低音と振動にわたしはやっぱり吹き飛ばされたのだが。コロコロと転がり、木にぶち当たる。強打はしたが熱線はないのが救いだった。木の葉がパラパラとまい、港に近い建物が崩れるのが見える。空の方に視線をうつせば、あのこたちがのる飛行機がみえーーわたしは意識を闇におとした。
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飛行機の不時着先はアメリカ軍の基地の中だった。恐らく飛行機の会社が話をつけたのか、無線を傍受したのかはわからない。ただ、降り立って生還した私たちに対し兵の人達は優しくでむかえてくれた。私達も誘導される時、だ。無線が反応したのは。雑音に紛れたそれは機体から離れたからだろう。近くにいた人に断り、飛行機の近くにいく。
「聞こえるか?」
と呟いた彼女は、生きている。それを理解して、私は泣いた。そりゃあもう。周りにいた兵士や偉い人は驚いたが、妹二人はわかったのだろう。
「おねーちゃんから!?」
そう言った二人に搭乗者達の視線がこちらに向いた。わたしは大きく頷いて、搭乗者達にわかる様に大きな丸をつくる。
「生きてる!!」
その一言に周りは歓声を上げ、兵士たちはなんだなんだと言う顔をする。誰かが兵士に伝えたからか、兵士の上官が現れる。珍しく女性だ。金髪を束ねたその姿は見覚えがあるきがした。その近くにいた男性もだ。彼女はわたしに近づくと口を開く。
「あの子は無事なのね」
「生きてはいます、でも、怪我とかが……」
「迎えにいくと伝えて。ジョン」
「メディックを連れていく」
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