ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳23:中華組が遠呂智入り(目隠し李子)
08/12 14:36
はた、と目が合う。目を瞬いた元直に、私は風で靡いた前髪を元に戻し、困ったような笑みを浮かべた。彼はじっとこちらを見て動かないため、徐庶様?と首を傾げた。ああっと慌てたように彼は動き出す。「す、すまない、」
「いえ、お見苦しいものを」
「見苦しいだなんて、そんな!!」
うーん、距離が近い。まぁ、私はいま一緒にいる人達のうちの1人に醜女かつ使用人扱いをされているために、前髪で顔を隠しているのだが。
「あまり他言されないでいただけると助かります。きつく叱られますので」
私はそう言ってまた困った顔をする。まぁ、目元は見えていないだろうが。元直、もとい、この世界の徐庶様は「あぁ、わかった」と頷いてくれる。
「でも、驚いたな……」
何に、とは言及されないので、私は珍しい瞳の色でしょう?と返す。
「父がずっと北方の方の出なので、このような瞳の色なのです。揶揄われることも多く、あの方が親切にも隠すように助言くださいました」
私の返答に、彼はなんとも歯切れが悪そうに、あぁ、そうなんだね……と返した。まぁ違う理由だとなんとなくは理解しているのだろう。実際はそうである。さて、私は正しく彼に聞かれる予定だった言葉を答えねばなるまい。
「紫鸞殿でしたら陸治殿や寵沙殿と一緒に呉の方と狩りにでられましたし、仙殿と夢殿であれば街に出られるとおっしゃっておいででした。あの方……主人の葉林様なれば、今日は魏の方々と出かけております。葉林様は最近はたくさんの方に声をかけられ、忙しそうです。明日ならば私が聞いた時点では予定は入っておりませんでしたが……」
そう言いつつ私は掃除を再開する。彼はああ、うん、えっと、と言いながら、黙りーーそうして、頭をかいてから、君の名前を聞いてもいいかな?と尋ねてくる。
「張三李四」
「えっ……」
「ふふふ、冗談です。本名は皆さんに馴染みない音でしょうから……李子とお呼びください。李に、子、で李子」
「李子?」
「はい。貴方達のような文化を持つ方と話すときに使う名です。正しくは桃李子ですが、李子で良いです。紫鸞殿や仙殿もそう呼んでくださります」
私はクスクス笑いながらそう告げる。彼は改めて徐元直だ、と名乗った。
「では、改めて呼ぶのであれば、元直様、でしょうか」
「あぁ、そうしてくれると嬉しい」
わかりやすいなぁと思う。ぱぁっと表情を明るくした彼に、私は苦笑いしながら口を開く。
「では、元直様、申し訳ないのですが、貴方に名乗ったとしられると葉林様にきっと叱られてしまいます。できるだけ内密に」
「……わかった。……あの、また、きてもいいかな?」
「?明日なれば葉林様はいらっしゃいますが」
「えっと、刀葉殿ではなくて、君と話したいんだけど……」
だめかな?そう尋ねた彼は、様子を伺う子犬のようである。あざとい。
「私はだいたいこちらにいますので、いつでもどうぞ」
そういえば嬉しそうに彼は笑うのであるが。うーーん、わかりやすい。可愛い。
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ぶれねぇな、と、俺がいえば、紫鸞(転生者だったらしい)もまた、ブレないな、と頷いた。この世界の徐庶殿がどうやら李子殿に惚れたっぽい。多重世界の記憶がある俺たちであるが、だいたい徐庶という人物は幼馴染の李子殿に恋愛感情、もしくはそれより深い感情を抱いていると言っていい。親友とお互いいうが、徐庶殿のそれは親友に向けるそれではない。そうでなければ、沈んだ李子殿を探しに何年も行ったり、想って結婚をしなかったりするはずがない、と俺は思う。李子殿が紫鸞がいなければ基本赤壁アウトなので、余計にだろうが。
仙(こいつも転生者)が庶李と嘉李は悩ましいとつぶやいたところに、新参のゆめ殿が「こーいーしちゃったんだ」と古い曲を口ずさむ。何故か子供化している寵沙は徐庶殿に近づき、なぁなぁ、と声をかけた。
「徐庶さん、刀葉様の使用人さん……李子さんのこと好きなの?」
その問いかけに俺たちは顔を逸らし、笑うのを堪える。寵沙 はこういうところがある。徐庶殿がエッと声を上げ、近くにいた軍師達が徐庶殿をみた。法正殿が水を得た魚のように(悪魔の)笑みを浮かべ、諸葛亮殿と龐統殿が徐庶殿をじっと見た。
「えっと……どうしてそう思うんだい?」
「いや、俺たちが留守の時によく会いにきてくれるっていってたから」
ほーお?と俺と紫鸞、仙やゆめ殿が徐庶殿をみた。諸葛亮と龐統殿もまたほーお?というふうに徐庶殿をみる。彼はええっと、と言いながらほおをかいた。
「いや、言いたくないならいいんだけど、引き止める方法考えた方がいいよ」
寵沙の言葉に、俺たちも首を傾げた。
「引き止める方法……?」
「そ。刀葉様が許昌に住むことになるみたいだし、使用人……というか李子さんだけらしいけど、連れて行くっていってたから」
違う国だから行き来しにくいでしょ?
そう尋ねた寵沙に、俺たちも口を開く。
「聞いてない」
「困る、めちゃくちゃ困る……」
「俺たち行かないからじゃない?李子さんだけ連れて行くって言ってたし。当の李子さんは多分刀葉様が心配だからついて行こうかなって言ってたし」
「あいつやっぱ根の方はお人よしなんだよな……」
そう言って眉間に皺をよせる。紫鸞が徐庶殿をみた。
「徐庶殿、止めた方がいい」
「えっ、紫鸞もなにを……」
「曹操は異世界の李子の恩人に似ていて、兄達に似た人もちらほらいる。多分許昌に行ったらそのまま許昌にいる。でも、徐庶殿が一緒にいてほしいって行ったら蜀にいてくれるかもしれない」
「後悔しないようにした方がいいよ」
「えっと……でも……彼女が残ってくれるかどうか……」
うじうじしている奴である。まぁ、李子殿が、皆さん此方にいましたか、と言ってやってきたが。徐庶殿が顔を跳ね上げる。
「いつもの場所におられないので、どちらにいるのかと思いました。諸葛亮様、龐統様、法正様、元直様、同郷がお邪魔しております」
視線がもう一度徐庶殿にむく。ちゃっかり字呼びさせている。
「李子殿、ほんとに許昌行くの?」
「許昌?あぁ、刀葉様が移り住むのについて行くという話ですかね」
「行かないでほしい……」
しゅんとしながら紫鸞が告げる。仙もまた、行かないでほしい、と李子殿のうでをとった。寵沙も、行かないでほしい、という。俺は徐庶殿をみる。いけ、と視線で言えば、徐庶殿が尻尾を下げた犬のようにしゅんとして、此処にはいれない?と遠慮がちに尋ねた。
「こんな時勢だからまだ行き来できるけど、いつどうなるかわからないし、できれば俺は君と敵対したくないし……何より、俺がもっと君といたいというか……」
そう言って伺うように李子殿をみた徐庶殿に、李子殿は動きを止めた。効いてやがる。やっぱりあっちの徐庶も素直に口に出すべきだったのだ。いや、あっちは遠呂智世界で拗らせていたというか自分はそばにいて当然みたいな顔してたが、口に出さないんだよ。そういうところである。
「……。………。いえ、あの、元直様、そのお気持ちは嬉しい、です」
李子殿は照れたように少しあたふたしながらそう言った。少し間をおいてから口を開く。
「……皆様のそのお気持ちは嬉しいのですが、恐らくあれは、刀葉様が郭嘉様の冗談を真と受け取ってしまったからそうおっしゃっているだけで……」
「郭嘉殿の?」
「あの方は美しい女性の方に皆等しく声をかけるときいています。この前、たまたま葉林様がお買い物されている際に郭嘉様にお会いして、ながれで食事をともにしたのですが……その流れの言葉です。本心というよりは甘言の類でしょう」
李子殿の言葉に徐庶殿が見るからに安心した。まぁ本気にしてないし靡いてもないからだろうが。ゆめ殿が首を傾げる。
「郭嘉殿って言う人はそんな人なの?」
「うわさやこの前話した印象をいえば、あまり近づかれないほうがいいですね」
そう言った李子殿はもう一度徐庶殿を見上げてすこしはにかんだ。
「あの、元直様、引き留めていただけて、ありがとうございます。そういうことを言われなれていないので、嬉しかったです」
「えっ、あっ、うん、よかったよ……?」
「……貴方は紫鸞殿達に用事があったのでは?」
「あぁ、そうでした。勇士殿より一件妖魔討伐の助成依頼の書簡が届きましたのでお持ちに」
そう言って李子殿は俺に書簡を渡す。ほーん、織田対妖魔の戦ね。
「なんて?」
「織田が妖魔とどんぱちするらしい」
「まぁ、半分くらいはそれを口実に仙殿や紫鸞殿と話してみたいだけだと思います。あちらはあちらで美味しいものがありますから、お二人も行ってみては?」
「李子さんは行かないの?」
「私はただの使用人なので」
李子殿はそうにっこり笑うと、徐庶殿達に頭を下げるとその場を後にした。噛み締めるように「……かわいかった……」とぼやいた徐庶殿には夢見てんなと思ったが。
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「李子は来なくていいから」
とは、刀葉琳と名乗る少女の言うことである。しかし、と言えばうるさいと言われる。小言が鬱陶しいやらなんやらと言われーー結局は1人で魏に行ってしまった。あちゃあ、と頭を抱える。いや、郭嘉殿ではなく李典殿や楽進殿と言った面々と仲良くなってくれたら大分生存率があがるのだが。と、思っていれば、李子?と元直様がやってきた。
「どうしたんだい?」
「葉林様がですね……お一人で魏に向かわれてしまって……お一人では心配なのでついていくと申し出たのですが……ついてくるなの一点張りでして。他の方々はこの前の依頼に向かわれてしばらく帰りませんし……どうしたものかと」
そう言えば徐庶殿が私が見つめていた先を見てからこちらを見下ろした。
「自分の意志で君をおいて魏に向かったのなら、放っておいてもよくないかな?」
「元直様が思っているよりも、彼女は生活能力はありませんよ。あとはこの世界の礼儀にも疎いです。一応教えはしましたが、できていませんし」」
「あぁ、よく君が何か言って彼女が顔を顰めていたのはだからか。ようやく合点がいったよ。まぁ、でも、しばらくは大丈夫じゃないかな?何かしらあれば先に俺たちに連絡がくるか、彼女から連絡が来るだろうし」
その言葉に、私は考える。流石にいきなり突き放すことはしない、か?
「しばらく様子を見てから、こちらから伺うことにします。その際は元直様に許昌へ連れて行っていただくかもしれませんが、よろしいですか?」
「よろこんで」
「あと、よろしければですが、お世話になるだろう郭嘉様へ書簡を認めたいのですが、貴方の添え書きをいただいてもよろしいでしょうか」
「構わないよ。でも、こちらの文字が書けるのかい?」
「はい、学舎でも個人的にも学びましたので。失礼があってはいけないので、一度目を通していただくことにはなりますが……」
「わかった」
そう言った彼はじっと私を見下ろした。私は首を傾げる。
「……刀葉殿がいないなら、前髪を避けてもいいんじゃないかな」
それはそう。私は前髪をわける。視界が明るい。というか、眩しくて目を細めた。
「本当に珍しい瞳の色だね。とても綺麗な色だ。ずっと見ていたくなる」
私は前髪を元に戻す。あっ、じゃない。恥ずかしいのだこちらは。戻った時に幼馴染に対しての弊害がでる。
「元直様、あのですね、さすがにまじまじと見つめられてそのように言われると照れます……」
そう伺うように彼を見れば、何か噛み締めるような表情を浮かべられた。何を噛み締めてるんだ。
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とりあえず郭嘉殿宛に、発言を間に受けた主人である刀葉林が許昌に向かったことやら失礼があるかもしれないやらということ、忙しい中申し訳ないが何かあれば実行する前連絡して欲しいこととこの連絡があったことを教えないでほしいことを簡潔にまとめて書く。それに元直様に言葉を添えてもらって完成というわけだ。ということで元直様に書簡を渡せば、彼は読んで、うんよく書けてると言いながら言葉を添えてくれた。
「李子は字が書けるのですね」
「はい、学舎や、私的に学びました」
「よろしければ、我妻月英の手伝いをしていただけませんか?」
諸葛亮殿の言葉に私は目を瞬く。そうして、月英様、ですか?と首を傾げた。あまり関わりがなかった方である。
「ええ、妻は色々と発明などをしてくれるのですが手が足りず……私や元直達もずっと手伝えるわけではないのです」
「私でよければ喜んで。刀葉様が留守にする間、私もすることがないので手持ち無沙汰だと思っていたのでありがたい申し出です」
「では、元直、悪いですが明日から李子を月英の元まで送っていただけますか?」
「ああ、わかった」
そこまでしなくても大丈夫なのであるが。
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なるほど、満寵殿に近しいタイプ。とりあえず数日は説明をきいて作業していたが、色々と手回しした方が良いのではと思い手回しする。兵器開発に使える予算とかも知りたいがその辺りは国家機密だろうから材料費、量産する際の推定価格を割り出しつつ、月英殿の設計図をみて用途を確認し配置する場所や長所短所などまとめていく。久しぶりだし、女性同士なのでとても楽しい。
2人できゃっきゃしていたら、郭嘉殿から返信が届いたらしい。馬岱殿が持ってきてくれた。根を上げるのがはやくないか??と思いながら読めば、違った。私の申し出の了承と、書簡の方が早くついたから、向こうから合流できるように動いてくれたこと、ついでに郭嘉殿ではなく楽進殿と仲が良いから楽進殿のところにいるよ、ということだった。ご丁寧にどうも。
「なんと?」
「どうやら葉林様は楽進という方と仲が良いようでお世話になっているようです。何かあればご連絡くださると」
「それは、とりあえず一安心ですね」
「はい、ほっとしました。すぐにでも迎えに行かなければならないかと思いましたが……これでもうしばらく月英様と仕事ができます」
「ええ、私も嬉しく思います」
そんな会話をしていれば、書簡を持ってきてくれた馬岱殿がなんとも言えない顔をしたが。
「李子、働くのが好きなの?」
「えぇ、実を言うと、兄の背を追っていたからか家事などよりこういったほうが好きです」
素直にそう言えば、馬岱殿が「へぇ、お兄さんいたんだ」と首を傾げた。
「血は繋がっておりませんが……うーーん、近所に住むお兄さん……親類の中のお兄さんが一番近い感覚ですかね」
「一緒にきた紫鸞殿達?」
「いいえ、彼らは学友ですね」
「……じゃあ、心配されちゃうんじゃない?」
「恐らくは。寿命が縮んだなどと文句を言われそうです。私からすれば兄達が巻き込まれなくてよかったと安心するのですが」
「寂しいね」
「皆さんが構ってくださるので寂しくはないですよ。月英様や元直様が会いに来てくださいますし、馬岱様達もこうやって話しかけてくださまいますから」
ふふふ、と笑いながら私は告げる。月英殿もふふふと笑ったが。
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さてはて、それからは結構穏やかだったのだが、魏軍から刀葉林殿が帰りたいといっていると言う旨の連絡を受けた。結構もったな、とは陸治殿のセリフである。私はと言うと月英殿の補佐と目をつけた法正殿達の補佐にもまわっているため、今戻ってきてもずっと一緒にいてられないわけで。私はうーーんと目を伏せる。
「話を聞いてきます。もしかしたら、慣れないことばかりで疲れただけかもしれません。無理そうなら連れて帰ってきます」
と言えば、紫鸞殿と仙殿も来てくれるらしい。陸治殿は寵沙をしごくといっていた。
「出立は2〜3日ずらせるかな?俺の仕事も落ち着くと思う」
「わかりました、それまでに私も仕事を落ち着かせます」
さて忙しくなるぞ、と頭の中で段取りを組んでいく。
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挨拶もそこそこに刀葉殿のところに向かう。しかしながら、私を見た瞬間、泣かれるのは予想外である。嫌だって楽進殿だぞ??いい人だぞ??今だってめちゃくちゃオロオロしてしゅんとしているんだぞ??と思いながら彼女に近づいて背を撫でて、話を聞くことにする。
ーー要約すると、だ。何もできない自分に嫌気がさした、と言うところだろうか。礼節もなっていないと陰口のようなことを言われ、この時代の女性にできることができないことも嫌味を言われ。怪我をして帰ってきてくれた楽進殿をみて、自分ができないことが多すぎて嫌になった、と言うことだろう。ある程度同調しつつ、私は「葉林様」と彼女を見上げる。
「異界から来た貴方が、私や紫鸞殿達のように似た国の文化を知らぬ貴方がわからないのは道理、仕方のないこと」
そこでとめる。
「しかし、仕方ないこと、で止めてはいけません。何もできないと思えたのであれば、これから学べば良いのです。礼儀も作法も皆生まれた時から知っているわけではございません。親や師……皆誰かに教わってできるようになっています。今から覚えれば済む話なのです」
そう、今から学べばいい話だ。
「楽進様に恥をかかせたくないのであれば、礼儀礼節作法を学べばいい。何もできることがないと嘆くより、何か出来ることはないかと探せばいい。そうすれば、蔑む言葉はなくなるでしょう」
「でも、わからない……」
まぁそりゃあそうだよなぁ、と思う。紫鸞殿や仙殿をみる。仙殿や紫鸞殿に行くと分働きになるが、それはあまりよろしくない気はする。彼女がそういったことをするとは考えづらい。それならまだ元化殿にお願いした方がよさそうだ。仕方ない。連れ帰ってもいいが、楽進殿がこちらをしゅんとしてみている。私はちらりと元直様を見上げる。彼は首を傾げたが。仕事を最悪どれほど開けれるか頭の中で試算する。
「一月」
「一月?」
「申し訳ありませんが、私は与えられた邸の手入れなど、貴方様が留守の間受けおった仕事もございます。元化殿に協力いただき、一月で貴方には授業形式で朝から晩まで詰め込みます」
「え、俺!?紫鸞殿や仙殿じゃなくて!?」
「お二人に任せたら、武寄りになります。彼女が武働きをすれば楽進様が心配してしまいましょう。かと言って、私が礼節以外を請け負うと、一ヶ月では中途半端な文官寄りができます。その後、どなたかが彼女をお育てになるのであれば一人前になるでしょうが、皆様お忙しいので無理です」
「俺暇だって思われてます!?」
「いいえ、言葉が悪かったですね。貴方も忙しいと理解しています。ただ彼女が必要としているのは、楽進様達の隣で戦う武術でも、元直様のように戦線を支えている軍略でもなく、傷だらけで帰ってきた方々を治療する医術です」
私の言葉に、元化殿は目を少し見開いた。
「心的疲労もありましょうが、私たちの世界では普通に生きていれば傷を負って帰ってくることはない。彼女が今一番怖いのは、そばにいてくれた人が傷だらけで帰ってきたのにーー何もできない自分が怖いのでしょう。非常に短期間です。病気の治療ではなく、最低限外傷の治療ができるようになれば良いでしょう。そこから先、医術をもっと学ぶかそこで満足するかは彼女次第ですが」
「元化、俺からも頼む」
紫鸞殿の言葉に元化殿が「わかりましたよ!」と叫んだが。私は彼女をみる。がんばる、と告げたので良しとする。そのまま元直様を見上げたが。
「元直様……」
「……仕方がないことだね。孔明達には報告しておくよ。しばらく俺もこちらにとどまる」
「おや、徐庶殿、丁度いい。蜀領の隣接地域で妖魔がすくろっていてね、貴方の手を借りたかったんだ」
そういった郭嘉殿に徐庶殿も同じ報告を聞いてからだろう。ええ、俺たちも問題視していました、と返していた。
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朝から晩まで詰め込み教育である。塾の夏期講習的なやつだ。まぁ息抜きに楽進殿が外に連れ出してくれるし、私がいない時だと李典殿達や軍師陣、女性陣がやんわりと注意してくれる。曹操様は頑張る人は嫌いではないので大丈夫なようだし、まぁ魏軍は彼女の頑張りを認めている。今日は実践編と名付けて春華殿の元で家庭のことなどを教わったりする日にしたので休みである。
「おや、李子。今日はお休みかな?」
「こんにちは、郭嘉様。今日は葉林様は司馬春華様の元で手習いしていただいています」
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