ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳25:桃の木のもとに1
08/12 14:37
・180年代生まれの方が綺麗にいくかな?・李子殿は前作の記憶あり
・紫鸞は魏ルート二周目
高い塀に囲まれているその店に私が売られたのは、五つの時であった。貧しい農村だ。飢えもあっただろう。しかしながら、本当のところは違う。恐らく私を君悪く思ったのである。教えてもないのに知識をもち、話し方も子供のそれではない。ついで言うなら瞳の色か。この辺りに馴染まない灰色の瞳は両親のもつそれと同じではなかった。
「桃李、何を考えている?」
そう尋ねた男性に私は庭から彼に視線を移した。あまりこういったところは好きではないだろう。最初は誰かに連れてこられていた。しかし、いつしか彼は私に会いにきてくれるようになった。
「塀の外はどんな世界か、考えておりました」
私の返答に彼は碌でもない世界だ、と答える。後漢。黄巾の乱のあとも漢室の権威は落ち、董卓の代頭様々な横行が起こっている時だろう。彼は憂いている。なぜなら彼もまた清流派の人だからである。
「外に出たいのか」
「そうですね……いつかは」
私はそう言って彼の空いた杯に酒をつぐ。
「そういえば、先日、易者がきて、皆占ってもらっておりました。なんでも当たると評判なのだとか。志才様は機会を逃されましたね」
「占い、か。桃李も占ってもらったのか」
「えぇ、私も占っていただきました。だいたい20年後に命運が別れるのだとか」
「20年後?」
「汝、士として覇道の礎とならん。瑞鳥その道に来れば天寿を全うし、瑞鳥他の道へ行けば20年の時来れば大戦で覇道を守り川に身を投ず。瑞鳥が何かわかりませんが、20年後には川で行われる戦で身投げでもするのでしょうか」
ふふふ、と笑う。だって当たっている。20年後はだいたい赤壁のあたりだ。私は覇道ーー曹操殿を守り、いつだって命を落とす。彼は少しばかり目を見開いた。
「この場所にいればどうなるのかは聞いたか?」
「店主様が。病で早死にするとか」
私の言葉に彼は少し考えたようだった。志才様?と尋ねれば、彼は「いいや」と目を伏せる。
「桃李よ、太平の要は知るか?」
「太平の要?」
聞いたことがない言葉だ。今までの『場所』にはなかった存在である。
「うむ。高祖が建国の際、暗躍したとされる隠密集団だ。人里離れた場所に住まい、漢室を支えて続けている。恐らく瑞鳥はそれだろう」
彼はそれだけ言うと、また黙る。私が首を傾げれば、彼はいいやと目を伏せた。
「桃李、その名では不便がでよう。外に出る際は李子と名乗りーー字は成蹊とすれば良い」
男名だ。士としての名だ。目を見開いた私に、彼は、必ず外に出す、と告げ、酒を飲み干した。
ーー私は彼の死と引き換えに買われることになる。彼の財をもって。曹操殿には言ってあると、書簡をよこして、彼はいなくなったのだ。
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子供では、と言いかけた周りにとりあえず私は仕事で黙らせるとする。頸を隠し、腰を隠し、手を隠す。不自然ではないくらいに。仕事は昔と変わらず曹操様のために献策をし、仕事をするだけである。
ーーそんなおり、彼らと会うのだ。いや、ようやくきた、と言ってもいい。
子供?と首を傾げた荀家に、よく言われますがこう見えて成人しております、と返す。まぁ女として、だが。申し訳ありません、と誤った荀ケ殿に私は首を左右にふった。
「いいえ、気にしていません。子供のような見目なのは自覚しております。私は李子……いえ、李成蹊と申します。戯志才殿に紹介していただき、曹操殿に仕官しております」
私の言葉に、荀家が戯志才殿の名に反応しーー郭嘉殿がにこやかに笑った。生きている彼だ。久方にみる。まだ、顔色が良い。
「成蹊殿、だね。私は郭嘉、郭奉考。こちらは荀攸殿と荀ケ殿。曹操殿に仕官することになったんだ。今から食事に行くのだけど、李子殿もいかがかな?」
「よろしいのですか?」
「えぇ、これから共に働くもの同士、親交を深めましょう」
私は仕事を確認する。これくらいなら恐らくは大丈夫だろう。
「はい、よろこんで」
荀攸殿が酔っ払っている。饒舌になった彼は太平の要に助けられたのだという。私は杯を傾けながら彼の話を聞く。面白そうに荀攸殿を見た郭嘉殿に、荀ケ殿が少しうんざりとしている。そんな折、太平の要が現れた。不思議な瞳の色だ。彼は荀攸殿を面白そうに見てから、私と郭嘉殿をみて少しだけ瞳に喜びを含ませた。どうしてだろうか、とじっと見れば、酔いが覚めたらしい荀攸殿が彼を席につかせたが。思えば、紫鸞と呼ばれる彼がいるのは知っていたが、会ったことはなかった。タイミングが合わなかったのだろうか。そう言ったことはよくある。さて、満寵殿はいないようであるがーー私がやることは多い。魏に迎えられたのであれば、典韋殿を助け、郭嘉殿を養生させねばならない。やることは山ほどある。私が生きている間にどう片付けていくかを考えねばならない。郭嘉殿よりはあるがーー順序立てていけば時間はなかった。
「李子殿?」
「ああ、いえ、申し訳ありません。少し考えごとを」
そう言って彼らを見上げる。考えごと?と首を傾げた彼らに、戯志才殿のもとでいろんなことを学んでおりましたがーーと言って目を伏せた。
「やはり机上のものと実際は違うのだな、と最近痛感しておりまして。つまりは仕事のことを考えていました」
「それはいけないね。休みの時はもっと楽しまないと。人生は刹那なのだから」
「……人生は刹那だからこそ、出来ることを為さなければ」
私は困った顔をして彼を見る。私は彼のように器用じゃないのである。
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「貴方は……太平の要、でしたか」
そう尋ねれば彼は頷いた。無名だ、と告げた彼に私も再度自分の名を名乗る。知っている、と告げた彼に私は小首を傾げた。
「この前も驚かれていましたね。どこかでお会いしましたか?」
私の言葉に彼は少し驚いたように目を見開く。しかしながら、美男子と美少年がいると思った、などとふざけた返答しか来なかったが。
「まぁそう言うことにしておきましょう」
「……武器屋で何を?」
「従軍することも増えるでしょうから、ある程度鍛錬を積まねばと思い……そう言えば無名殿は武芸者でしたね。厚かましいお願いではありますが、私に稽古をつけていただけないでしょうか?」
私はそう言って彼を見上げる。彼は目を瞬いた。
「私がやるべきことを成し遂げるにはある程度武力が必要なのです」
「わかった」
詳細は聞かないらしい。
「話せるようになった時でいい。でも、俺にも手伝わせてほしい」
そう言った彼にいつかの友人の姿をみる。私は目を伏せて、ありがとうございます、とお礼を告げた。
「加減はできないかもしれない」
「構いません。そのほうがやりがいがあります」
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「典韋殿」
そう言って彼を呼び止める。私の時間の合間を縫って、軽く兵法などを教えているわけであるが。
「貴方は殿のそばに控えられている方。万が一にもその身を囮として殿を逃す可能性もございましょう」
そう言えば彼はうーむと考えて、そうだな、と頷いた。
「今日はそういう際の突破口を共に考えます。貴方は決して犠牲になって良い方ではない」
そう言って彼を見あげる。でも、もしもだろ?と告げた彼にやってきた紫鸞殿が、もしもでも考えていたら損はない、と告げてくれた。
「俺も考える。自由に動ける。典韋を失いたくない」
紫鸞殿の言葉に彼は目を見開いて、おめえら……!と感激したが。そのあとはああだこうだと言いながら考える。紫鸞殿のいうことも的確だ。
「私は小さいので人目を忍んで入り込むこともできましょう」
そう言って典韋殿をみる。わかりました?と聞けば、だいたいな!と返された。今はそれでいい。
さて私は忍び込み、典韋殿を射殺するだろう弓兵を徹底的に片付けていく。恐らくはーー紫鸞殿も動いてくれているのだろうか。曹昂殿とも合流できーー兵が減っていく。入っていく兵があるのであれば、出ていく場所はあるはずなのだ。とりあえず典韋殿と合流し、紫鸞殿は殿と合流した。
「おめぇらが一緒に考えてくれてよかったぜ!」
そう笑った彼に私は目を伏せる。
「私もまさか全く似たような状況になるとは思いませんでした」
私は彼らを連れて城の外にでる。馬を借り、撤収が始まりそうな陣営に戻る。立ち去ろうとしていた曹操様に殿!父上!と2人がかけていくのが見えた。夏侯惇殿達が驚いているのが見える。
「典韋!!無事だったのか!!」
「ええ!紫鸞と李子のおかげでさぁ!」
その言葉に曹操様達は私を見た。血だらけだからあまり見ないでほしい。私は困ったような表情を浮かべる。
「子供のような姿だと皆さま揶揄われますがーー忍び込むには丁度良いので」
私はそう言っておく。貴方がいないと思ったら、と告げた郭嘉殿に、いつ向かったのか聞かれる。情報が入ってすぐ曹操様を城から出そうと思って、と返す。
「途中で軍勢が来たときき、また典韋殿の姿が見えなかったので最悪な事態を想定して動きました。紫鸞殿が見えましたし、彼の方が武功が立ちますから殿を守るにはそちらの方が安全ですから」
「ーー自分の危険は顧みなかった?」
郭嘉殿のその問いかけに私は首を傾げる。立場上、彼は上司である。
「死ぬつもりはありませんでした。しかし……貴方は私と典韋殿の命の価値が釣り合うとでも?」
釣り合うはずがないだろう。昔も孤児だ。今は妓楼から見受けされた身だ。一介の将や、軍師と釣り合うわけがないだろう。
「……申し訳ありません。少し気が立っています。すぐに撤収準備を始めます」
「……うむ。……李子よ、よくやった」
そう言って私の頭をポンと撫でた曹操様に、私は彼を見上げる。
「臣下として当然なことをしただけです」
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「顔色が優れないので」
そう言って彼に薬をだす。飲みたくないな、と告げた彼に私はそうだろうなと思う。恐らくはーー今度の彼はあまり私が好きではない。生き急いでいると思っている。
「貴方が倒れられては困る」
「私が倒れればきっと貴方が私の席につくだろうね」
「私では貴方の代わりにはなれません。無理です」
はっきりという。近くにいた荀ケ殿や荀攸殿、賈詡殿がこちらを見た。
「貴方も、荀ケ殿も、荀攸殿も、賈詡殿達も、私は代わりにはなれません。1人でもかけると困ります」
「驚いたな、貴方は陳羣殿のように私が嫌いかと思った」
郭嘉殿は面と向かってそう告げた。私はだから面と向かっていう。
「まさか。貴方を嫌う理由はありません。それをいうなら、貴方が私を、でしょう」
知っている。彼が人を嫌う時に見せる仕草を知っている。それが今私に向けられているのも知っている。元に微かに目を見開いたものの彼は否定をしない。私は小さく呟く。
「私は志才様のように貴方にいなくなってほしくない」
ああいけない、と目を伏せる。飲んでください、と言って彼に差し出せば彼は少し笑みを浮かべて仕方ないねと言って飲んだが。
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「李子殿はなぜ生き急いでいる?」
賈詡殿の問いかけに、私は彼を見上げる。隣に座った彼に、私は彼から空を見上げた。
「汝、塀から出ねば幼き頃病で死に、塀から出れば、士として覇道の礎とならん。20年の時来れば大戦で覇道を守り川に身を投ず」
「……なんだって?」
彼の訝しげな問いかけに、私は彼をまた見た。
「幼い頃に易者に言われた言葉です。私はあと10年ほどで死にます」
そうはっきり告げる。賈詡殿はなんとも言えない顔をする。
「ただの占いだろう」
「……そんなことをいえば、高祖が顔を見て皇帝となると言われたのも、ただの占いでしょう」
私は困ったように笑って彼を見た。彼は特徴的な笑い声をあげて、それもそうだ、と告げた。私は自分の手元に視線をうつす。
「……違うければ、それはそれで良いです。しかしーー本当なのであれば、やるべきことをしておかなければならない。曹操様のためにも。私に郭嘉殿の代わりなどもってのほかです」
「……」
「あの方の主義も主張も理解しています。あの方の人生だ。あの方にーーいえ、私と同じくあの方が生き方を決めること。あの方がそう生きたいと願うのであれば、本来私が何か言うことではない。……あれは、ただの私のわがままです」
「……」
「少しでも長く、郭嘉殿に生きて殿のそばにいてほしいという、わがまま」
そう言って、私は目を伏せる。あぁ、切り替えなければ、と思っていれば、賈詡殿が口を開く。
「10年後に大きな戦、ね。覚えておこう。俺も年若いアンタに死んでほしくないんでね」
その言葉に、彼は私を見下ろす。
「しかし、李子殿、本当に成人してるのか?」
「成人しております」
まぁ女としては、であるが。
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「李子殿はいるかな?」
何があったのかわかりかねるが、郭嘉殿が嫌いな人に向けるそぶりを見せずーー何かと構ってくるようになった。なんでだ?と不思議に思いながら、私は荀ケ殿の仕事をある程度取り上げつつ口を開く。
「李子はいません」
私の発言に、荀ケ殿だけでなくその場にいた数人が吹き出した。まぁ私がそう答えたら意味はない。郭嘉殿が紫鸞殿をみる。
「紫鸞殿、あそこに李子殿が見えるのだけれど、私の幻覚かな?」
「紫鸞殿は幻覚だから休んだほうがいいと言います」
「幻覚だから休んだほうがいい」
紫鸞殿はこういう時お茶目な面があるとは最近わかったことである。郭嘉殿が私のそばにやってくる。
「ではここにいる子供は誰かな?」
「子供は生憎いませんね。……荀ケ殿、こちらを先に。そちらが終われば半刻だけでもおやすみください。こちらは私が担当しても差し支えなさそうです。ある程度進め、貴方の確認をとりに伺う際に起こします。目を瞑るだけでもお身体は軽くなります」
「では、李子殿。それは明日お願いできますか?貴方もきちんと休まれていないでしょう」
「李子殿、誰かさんみたいになる必要はないが、たまには遊んだほうがいい。まだまだ時間はある」
賈詡殿がそう言って私を見下ろす。荀攸殿も休息は必要です、と声をかけてくれる。
「それでは行こうか、李子殿」
ーーそれでは行こうか、ナマエ。
あぁ、それは。いつかの、彼らの、ように。
「李子殿?」
「あぁいえ」
目を伏せて、息を吐く。彼ら、は、彼ら、じゃない。
「それでは皆様の言葉に甘えて、郭嘉殿のお遊びにご一緒いたしましょうか」
category:中華組関連(msu・oa)