ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳50:大神妹と奏とtwst

08/12 15:03 


勘違いされているというか、知らない女の子に代わりに参加して!!と押し付けられたに近い。え、え!?と思っていれば男の子が迎えにきて、説明もないまま何かを押し付けられてかけていった。なにを……と思っていれば、知らない人がまた駆けてきた。お嬢様!お待ちください!というあたり先程のはお嬢さまだったのだろうか。彼はどうしたものか……このままでは……と、オロオロしている。奏くん達がやってきたのだが。
「どうかしたのか?」
「何かわからないまま押し付けられました……」
そう言って困った顔をする。ジェイド先輩が、おや、それは、と告げて私の持っているチケットをみた。
「陽光の国のコンテストの参加チケットですね」
「コンテスト?」
「えぇ。陸の王子がお妃を選ぶために開いた声楽コンテストが元になったのだとか。今でも世界中の猛者が集うコンテストとして有名だとか」
ジェイド先輩の言葉に、ならあの子に返さないと、と思っていれば、先程の男性がぐるりとこちらを見た。おっと、面倒ごとの予感、で、ある。見るからに奏くんとジェイド先輩が顔を見合わせた。
「そのチケットは……!」
そう言って私の手を掴んだ彼に、ジェイド先輩がチケットをお返ししましょうか、と告げる。私もそうしようとしたが、ご馳走という言葉、彼の属する国に山があったこと、など、などなど。色々に釣られて参加することになった。楽譜もなにもない、と言えば、奏くんが鞄から楽譜を取り出す。
「ここにあと二、三節記入すれば人魚姫の妹ちゃんパート寄せ集めメドレーがある」
なんで準備がいいんだろう。というかタイミングがいい。もうちょっとで完成すると言っていた中、先輩達と約束でしょうと私が奏くんを連れてきたのだ。助かった、と息を吐いたその人に、今から顔合わせがあるので!と私の背中を押した。

「逃げたんだな?」
「ええと……あのぅ……」
そんな声が聞こえて私は奏くん達と顔を見合わせる。先程の人と誰かが話しているらしい。ため息をついた誰かは、僕が代わりに謝って帰ってもらうよ、と真っ当なことを告げる。かちゃり、と扉が開いた先には初老くらいの狼の獣人である。歳を重ねているからか、黒い毛並みの耳には白毛が混ざっている。見たことがある顔立ちである。そうして彼は私を見下ろすと、目を瞬いて、いろは?と告げた。その名前に反応したのは奏くんもだ。いろは、というのは私のステージネームなのである。私はもう一度上から下まで彼を見る。もしかして、だ。
「もしかして、ループくん?」
小首を傾げた私の問いかけに、彼は目を見開いて、いろは!?と驚いた。尻尾をブンブンと振って、本物かい!?偽物なら食べてしまうよ!!と告げてハグをした。
「本当の、本当に、いろは!?」
「くすぐったいです」
そうクスクス笑えば、彼はポーイっと男性を部屋から追い出すと私を部屋に引き入れた。どうしていろはがここに、と言われたので全部話せば、彼は喜んじゃダメなんだけどダメなんだけどと繰り返した。尻尾は揺れている。相変わらず素直な尻尾だ。
「また会えてうれしいよ!」
「私もです。ループくんが無事で……無事に元の世界に帰れていてよかった……」
そう安堵すれば、彼はまた説明してくれる。どうやら強制オバブロ状態に落とされ、私達の力でこちらに転送されたのだろうという話だ。
「そうか、いろはならいいかな!」
そう言って彼は扉を開ける。
「ごめんね、いろはのお兄さん達、話は彼女から聞いたよ」
「いろはって呼ぶってことは、あっちにいた人か?」
「まぁね。色々あってどうやったかわからないけれど戻ってきたのさ」
「おや、では巨匠であるループ・シュバイエは戻り方はわからないんですね」
「まったくね。闇の鏡はなんて?」
「無理って言われました」
「アイツ僕の時適当に繋げたくせに……」
彼はそう言って少し眉間に皺を寄せた。そうして、まぁいいか!と告げた。
「いろは用の楽曲を用意しないとね!」
「あー、俺作って持ってます。向こうの演目の人魚姫なんですけど、妹ちゃんが歌うパートだけ抜粋メドレーにしたの」
奏くんがそう言えば、ループくんは見せてくれるかい?と告げる。奏くんは楽譜を取り出して彼に渡した。
「……よくできた楽譜だ」
「巨匠に褒めてもらえるとは光栄っス」
え、ほめた!?みたいな反応している男性をおいて、これで行こう、と彼は告げた。
「でも、オーケストラは……」
「大丈夫、その辺はなんとかなる。それより、いろは、こう、彼らでもいいんだけれど、誰か王子様とかめちゃくちゃ有名人とかお金持ちとかの知り合いはいないかい?」
そう尋ねた彼に私は首を傾げる。ジェイド先輩だけが、あぁ、と納得した。
「そう言えば、陽光の国の王子や珊瑚の海の王子は許嫁がいませんでしたね」
「そう、今回は!ふざけたことにそれも兼ねていてね。あの子の両親がちょっとした知り合いで大金を積まれたから僕が色々することになったんだけども……逃げたみたいだからね」
「男の子が迎えにきていたので、駆け落ちですかね……」
私の言葉に男性がはちゃめちゃにおどろいていたが。知らなかったらしい。
「君たちは僕の弟子で会場に出入りできる、ということで。満席御礼、チケットは売り切れだから関係者以外は入れないんだ」
「ではお言葉に甘えて……」
と、とんとん拍子に話が進む。
「しかし、誰を呼べば……」
「ヴィルさん、レオナさん、マレウスさん、カリムさんあたりが妥当ですかね」
「グルチャ投げたら誰かは釣れる気がするからグルチャ投げるか」
ツノ太郎さんが一番来てくださる気がする。あの方は結構誘えば来てくれるのだ。ループくんは私を見おろした。
「先生に許可もとっておこうか」
それはそうだ。私は手を叩いた。今の保護者は先生達である。ということで先生たちに連絡しておいた。



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出演者は別に、と言われたわけであるが、よくわからないまま移動する。どうやら個室があてがわれているらしい。私はヴァネッサという名前で出ているので、気をつけないとな、と思いながら手元にある楽譜をながめる。軽くハミングで歌っていれば、誰かが逃げ込んできた。あれ?と思いながらそちらを見れば、誰かがわっ!?ごめん!!と謝る。赤毛が印象的な青年と、黒髪の青年である。そのあとに足音が聞こえたので、二人の青年をとりあえず大きな鏡とクローゼットの裏に隠した。扉から顔を覗かせてみれば、誰かがいる。
「どうかされましたか?」
「いえ、失礼レディ。本番前に。こちらで人は見ていないだろうか?」
「いえ……。足音が通り過ぎたので、何事かと思ったのですが」
「ありがとうございます、レディ」
そう言って通り過ぎた人達に、私は扉を閉めて彼らのいる方を見る。
「行きましたよ。今なら反対側に出れば良いかと思います」
「ありがとう、助かったよ」
彼はそう言って息を吐いた。
「……君も王子様のお妃になりたくて参加するの?」
「いいえ?成り行きというものです」
「成り行き?」
「はい。少し色々ありまして」
ふふ、と笑う。早く行かないと追いつかれてしまいますよ、と言えば二人はハッとしてそうだった!と言って駆け出した。まぁその後にノックの音が聞こえてでれば、奏くん達だったが。

ヴィル先輩とクルーウェル先生が飛んできてメイクやらドレスやらを選んでくれて助かる。めちゃくちゃ助かる。なんでも、メイクよ!!で通したらしい。強い。理由をきいたクルーウェル先生(とサムさん)がドレスを急ぎで持ってきてくれたらしい。とりあえずそれを着ていれば、先程の男性の上司っぽい人がやって来てギャンギャン言われた、が、ループくんがやって来た。
「ああ、あなたの娘さんはこの子に押し付けて逃げたようだから、代わりを引き受けてくれたんだ。君たちが文句を言うのはこの子達ではなく、逃げた娘だ。履き違えないでくれ。まぁ、彼女の名誉は娘の名の名誉になるかもしれないけども」
そう言ったループくんに、男性は少したじろいで部屋を後にした。
「ありがとうございます、ループくん」
「いや、気にしないで。僕が君の音を聞きたいんだ。お腹いっぱいにね!」
そう言ったループくんに、私はクスクス笑う。頑張ります、と言えば彼もまた笑った。

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まさかのトリとは思わないし、オーケストラに誰もいない、と思ったが、ループくんが指揮棒を構えた瞬間音が鳴る。なるほど、魔法のオーケストラ!と納得し、私は前を向く。まるで歌うような音に耳を澄まし、私は音に歌声を乗せる。そうして歌声に少しだけ霊力を混ぜる。陸に恋焦がれる人魚姫のように、歌声を響かせていく。歌声に気持ちを乗せていく。
そうして演じ切れば/歌いきれば、一拍置いて拍手が起こったので私は上品にカーテンシーをして下がった。
舞台袖に下がり、ホッと息を吐く。なんとか無事にやり切った。控え室に行こうとすれば、呼び止められる。なんだ?と思えば、最優秀者はもう一度歌わないといけないから、と呼び止められた。
「私が最優秀者とは限らないのでは……」
「いえ、おそらくはヴァネッサ様、貴方様が最優秀者です」
と、言われても、私が表彰されてもいけないのでは?と思う。私が帰ろうとするからか表彰にそのまま流され、私と出演者達は舞台に立つことになるのだが。まぁ、これが目的だったのかもしれないなー、とは思う。と、いうのも私が表彰される前に、私がヴァネッサの偽物!という先程見た人と本物を見たからだ。私の方が美しい声が出せるだとか言われるが、それならば黙って出場すればよかった話では?ループくんが近くで鼻で笑ったのはよろしくない、ので、ループくんを見上げる。
「ごめんごめん、いろは。とんだ茶番劇だなって思ってね。そうだ、僕の楽団の名前を教えておくよ」
と言って彼の所属する楽団の名前を教えてもらえる。
「ヴァネッサ、いや、偽物よ、これは一体どういうことだ」
と偉い人に言われたので、私は一言断ってから口を開く。
「どういうこと、と言われましても、私は普段住まわせていただいているところから今日こちらの国に観光に来たただの庶民です。街を散策していたところ、彼の方にチケットを押し付けられーーそのまま流れるように参加することになってしまいました。そこで虚偽であると申告すればよかったですが……私も声楽を嗜む身、少しばかり腕試しを、と思ってしまった次第でございます」
まぁここは嘘をつかない方が良い、ので、そのまままっすぐに彼らを見る。
「その言葉に偽りはないのだな」
「はい、命と……この声に誓って」
そう言ってカーテンシーのように頭を下げる。まぁ、ループくんがケラケラ笑ったが。
「珊瑚の海の王様、とりあえず彼女の歌声を聴いてみませんか?ここは美しい歌声を競うコンテストです。声が美しければ問題はありません。鈴の音のような歌声をもつこの子よりも上手いなら、ヴァネッサ嬢はさぞかし美しく歌声をお持ちなのでしょう」
ループくんの言葉に、彼女は一瞬目を逸らした。それは、と口籠った彼女に私は口を開く。
「これは貴方が始めた即興劇です。このように観客がいるのであれば、責任を持ってやり遂げるべきです」
「何言ってるの?頭おかしいんじゃない?[
「腕試しは嘘偽りありませんが、私はこちらのコンテストの開かれる意味を、ループ先生や兄のご友人方に聞いた時、てっきり貴方がそちらの男性と駆け落ちしたから私にチケットを押し付けたのだと思いました。それがこんなことになるなんて思いませんでしたが」
そう言ってからは、私は目を伏せる。
「このような諍い、美しい歌声を聴きに来た観客達にも、地位ある方々にも耳障りになりましょう。貴方が始めたこの劇の幕を下ろすには、貴方は歌い私より上手であると証明するほかありません」
「貴方が魔法で奪った!貴方のユニーク魔法で」
「それはあり得ません。私には魔力が微塵もありません。それは……ナイトレイヴンカレッジの闇の鏡が証明してくださっています」
申し訳ないがそう告げるしかない。まーーここからは真実をかいつまんで説明するしかない。
「兄と私は家も故郷も持ちません。貴方達が思う卑しい身分でしょう。兄が素質を認められ、ナイトレイヴンカレッジに入学が決まった際、私は危うく一人で右も左もわからない世界に投げ出されるところでした。しかし、学園長のお優しい御心で学園で暮らすことを許され、職員棟の一室を借りて、先生方のご好意や、兄やその友人、先輩方のご好意もあり声楽や教養などを身につけさせていただきーー花の街に住もうとした矢先でしたので」
まっすぐに彼女に告げる。
「私は私がいくら陥れられようと、悪く言われようと、変なお話だった、損なことをした、と笑ってすませます。しかし、私の歌声が貴方から魔法で奪ったもの、という発言は、私の周りの方のご厚意や優しさを踏み躙ったもの。許せません」
いけないと、深呼吸する。
「貴方が黙ってさえいれば、与えられる名誉も貴方のものだったのに。歌わない、終わらせれないならどうして出て来たのですか」
「どうしてって……」
「ここにいる誰もが私をヴァネッサだと思い込んでいたのです。美しい歌声を持つという称号は、名を告げずに参加した私ではなく、貴方をがざる称号になっていたのですよ。貴方が騒ぐものだから、私のものになりかけていますが、貴方が欲しいのであればお渡し致します」
彼女に舞台に幕を下ろす力はない。ならば、私は去るだけだ。私はループくんを見上げる。彼はふふと笑いながら、そうだねぇ、と頷いた。
「優秀者は一曲歌って帰らないとね!」
そこで私は楽譜があるのかと思ったが、舞台袖で疲れた顔をした奏くんがサムズアップした。なるほど作ったらしい。ループくんがそっと指揮棒を構えれば楽器が浮き上がり、曲が始まるのだ。私はとりあえずカーテンシーをしてから、歌い始める。あとは楽団名聞いたのはこの布石かぁ。最後に帝国華撃団って入るからなぁ、と思う。まぁ、私は楽しくなって笑ってしまい、最後は綺麗に一礼をするのだが。



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