ネタ帳vol.3

2023ネタ帳30:三界の首枷(三國とあと田中)

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頭が痛いなこの状況。統率が取れていないーー恐らく別の所属だからだろうがーー軍団に助太刀して指示して妖魔に勝ったのであるが、これはやばい。私の一存でどうにかできる問題ではない。異界から人がやってきた、といえば聞こえはいいが、それがどの時代かによるだろう。しかも、今はおとなしくされているが、所属の関係で仲が良くないのは目が見えている。あとは両親に似ている人がいるからちょっと困る。
「李子殿とおっしゃいましたね、こちらはいったい……」
と尋ねてきた人は張良その人である。とりあえず、堕ちた仙人が死にたくて作り上げた場所で古今東西色々な軍団が集まっています、と返答する。
「古今東西……ということは、殷や周、太公望といった人が?」
「確かに太公望殿はいらっしゃいますが、彼は仙界の方。人界にはあまり関係ありません。殷や周などの方はいらっしゃいませんね、今のところは。あなた方が一番です」
そう言えば顔を見合わせるあたり、仲良いのかもしれないが。
「えっと……俺たちが一番……?」
「一番昔からいらしています。貴方達の名は口伝なり書簡なりに残されていますので一方的にこちらが知っている形になりますが」
私の言葉に、劉邦殿が私の肩をだく。うーん、お酒の匂いがするが、めちゃくちゃ酔っている感じではなさそうである。
「ほー、未来っていうことは、俺たちの誰が勝ったか知っているんだな?」
劉邦殿の問いはわかる。確かにそう尋ねてしまうだろう。
「わかりません」
「書簡が残っているのに?」
そう首を傾げた田広殿に、私は説明した。
「正しくは、貴方達の未来はわかりかねます。貴方達が私たちと同じ世界の過去からやってきた人なればわかりますが、そうでない場合もありますので。仙の方いわく、同じような文化で同じような歴史を持つ場所もあるということなので」
私の返答に彼らは納得したような表情をうかべた。それにしても、だ。
「貴方達はどちらから?そもそも、あの場だから共闘を?」
劉邦殿にそう小首を傾げて尋ねれば、彼は「いーや」と首を左右にふって酒を口に運んだ。
「もともといたのは寿春か。まぁ情勢が情勢だから同盟みたいなものは結んでるが、戦働きを一緒にということはまずない。たまたまだ」
まぁこの辺りは寿春に近いため、確かに違和感はない。それにしても、この三国が同盟するとなれば秦相手しかないとは思うのであるが、そうなると章邯殿がいるのがおかしな話になる。
「情勢?」
「秦という国が再興したんです」
その言葉に再興と繰り返す。
「趙高という奴が実権を握って一度は壊滅したはずだが再興した。どこから寄せ集めたのかわからん兵達だが、兵力が高い」
田横殿のその言葉に少し考える。そんな場面はないはずである。試しにそれは先程のような兵ですか?と尋ねれば彼らは首を左右に振った。ということは妖魔ではないのだろう。ふむ、と考えてから口を開く。
「やはり私には貴方達の未来はわかりかねます。書簡には似たような国名はあれど、そのような記述はありませんから。まぁ、そもそも、どこの軍勢が有利かなど貴方達が一番ご存知でしょうから貴方達の未来に関しては何もいえません」
面倒くさくなってそう投げたら周りが目をパチパチと瞬いた。まぁそれもそうだな、と彼は頷いたが。劉邦殿がこちらを見て笑った。
「ということで世話になる!」
「いえ、それはできかねます」
「俺たちの仲だろ!」
そうバシバシ叩いた劉邦殿に、私は困る。というか痛い。どんな仲ですか、と言えば助けられた仲と言われたが。田中殿が口を開いた。
「俺たちには頼る国もありません。李子殿の世話になれれば助かるのですが……」
「もちろん、貴方達に頼る国がないことは理解しておりますし、女性や子供もいらっしゃるので放っぽり出すつもりもありません。しかし、一つの勢力に貴方達を固めない方が正解のような気がするので、ただの一文官である私の一存では安易に頷けないのです」
私の言葉に田中殿は一瞬困った顔をした。何かを切り出す前に口を開く。
「今はある意味均衡を保った平和な状況です。あなた方で争うのはまぁ致し方ありませんが、貴方達がどの国に所属するしないということが戦の火種になっては困ります。急に兵力を増やしてしまえば、何か企んでいるやもと思われてしまう可能性もあるのです」
私の説明に彼は納得したらしい。それに変わって父親に似ている章邯殿が口を開いた。
「……君主達と言いましたが、その国とその方々の名を伺っても?」
うーむ、声までそっくりだとは。国、は、言っても大丈夫だろう。
「はい。蜀の劉備様、魏の曹操様、呉の孫堅様……貴方達に文化が近いのはこの三国です。他にも倭の国の勢力では織田信長殿や徳川家康殿、北条氏康殿、武田信玄殿、上杉謙信殿、毛利元就殿がいらっしゃいます」
他は顔を顰めているが、田中殿が百面相している。もしやこの人は私や陸治殿と似たような感じなのではないだろうか。まぁ、後でこっそり聞こう。劉邦殿が一口お酒を飲んで、聞いたこたぁねぇが、劉備ってやつは同じ姓だなとうむうむしている。そうですね、としか言いようがないが。
「とりあえず、もうすぐ日が暮れます。近くに私が任されている城があります。そちらに向かいましょう。兵の方の食事も必要でしょうから」
こちらです、と引率すればついてくるあたり素直である。孔明くんと周瑜殿……というよりは魚粛殿や士元の方がいいかもしれない。郭嘉さんにも報告をあげなければいけないし、曹操様や劉備様、孫堅様に報告する必要もある。うーむ、休みが休みでなくなってしまった。


「お、李子殿、今帰り?って、なんか軍率いてない?」
そう言ったのは夏侯覇殿である。一緒にいる姜維殿が李子殿!と目をキラキラさせている。うーむ、孔明くんの弟子は今日も元気である。
「異界から来た方と合流してしまい……とりあえず夜になりますのでこちらに連れてきました」
「大丈夫なのですか?」
「大丈夫だと思います。ちょっと武力的に心配にはなりますが、今は張遼殿達もいらっしゃいますから。姜維君は今から蜀へ?」
「はい、今から帰国いたします。元は貴方へ書簡を渡しに来たのですが……書簡は王元姫殿にお渡ししました」
「ありがとうございます。長旅ご苦労様でした。城下の様子を見に来てくださったのであれば、説明ができたら良かったのですが……」
「いえ、夏侯覇殿が教えてくださいましたし、拝見するだけで勉強になりました」
「そう言っていただけるなら嬉しいです。姜維君、大変申し訳ないのですが、孔明くんか士元に言伝を頼んでもよろしいですか?」
「丞相に言伝、ですか?」
「はい、相談事があるのです。何人かで来ていただいても構いませんとお伝えください」
「徐庶殿には良いのですか?」
姜維くんの言葉に首を傾げる。向こうも首を傾げた。元直に言伝と言われても特にないのであるが。
「元直に?では、たまには顔を見せて剣術のあいてをしてくださいとお伝えください」
「わかりました。では、夏侯覇殿、李子殿、また」
そう言って馬でかけていく彼を見送る。そのまま夏侯覇殿は私を見た。
「夏侯覇殿、申し訳ないのですが、明日にたっていただいて大丈夫ですので曹操様や郭嘉殿達に言伝をお願いしたいのですが……」
「妖魔が何かあったんです?」
「いえ、異界の方についてお話ししたく」
「ああ、なるほど。ちょうど俺も父さんや母さんと話したかったんで、明日朝一に向かいます」
「ありがとうございます」
「いやいやいや、お礼言われるほどじゃないですって。俺なんかで役に立てるなら」
「?夏侯覇殿はとても気配りができる方で私はいつも助かっていますよ」
「いやいやいや、李子さんほどではないって。他に何かあるなら手伝いましょうか?」
「……王元姫殿と張遼殿……徐晃殿は満寵殿で忙しいですかね……まぁ、お二人をお見かけされれば、明日で良いので私の仕事部屋に足を運んでいただくようお伝えいただけますか?」
「わかった。李子さんも無理しないでくださいよ!」
そう言った夏侯覇殿にまぁ頷いておく。部屋の手配や衣服食事の手配などやることはたくさんである。とりあえず客間に案内はするが、歩きながら女官達にいっていけばでいいだろう。


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「李子殿、いかがされた?」
そう顔を出したのは張遼殿と王元姫殿、加えて司馬昭殿である。この三人を呼び出すとは珍しいですね、と告げた司馬昭殿に、王元姫殿は休暇のはずでは?とちょっと顔を顰められたが。
「異界よりこられた方がたを今この城内にお招きしております。その方々のことでの話です」
「見張り、ということですかな?」
「もちろんその面も含まれます。が、彼らの身のあり方は曹操様をはじめとした方々にお伺いを立てなければなりません。その間、お手数ですが気にかけていただきたいのです」
「魏に入れるわけじゃない……ということですか?」
「はい」
「なんで?まとめていれたらいいじゃないですか」
「もちろん、魏に来ていただければ助かるのですが……まとめていれると……。……ええと、楚漢戦争……漢の成り立ちあたりの乱世はもちろん司馬昭殿もご存知だとは思いますが」
「秦と楚と漢の戦ですな」
そう言った張遼殿に頷く。
「来訪したのは劉邦と項羽、田横に章邯と名乗る方々です。連れていた兵の衣服または武装、戦車をよういた戦い方それらを考えると恐らく本人でしょう。私たちが知る世界と少しずれている世界のようですが」
その言葉に三者三様の表情を浮かべる。なんと、と珍しく驚いた張遼殿、何か考えている王元姫殿、めんどくせっと表情を口に出した司馬昭殿である。
「なるほど、揉めないために話し合いが必要なのですね」
「はい。そこで彼らの待遇が決まるまで張遼殿や徐晃どのに項羽殿や田横殿と言った武官寄りの方の相手をしていただきたいのです。手合わせなどをしていただければ肝紛れましょう。兵もある程度生活に馴染ませなければいけません」
「心得た」
「私は何をすれば?」
「虞姫様や蒙琳様といった女性の方々がいらっしゃいます。そちらの方の諸々をお願いしても?女性であれば安心されますでしょうし……服に関しては名無殿に頼みましたので。司馬昭殿や高祖は文官寄りの方と話されますか?高祖や張良殿は女性好きの人垂らし、お酒が好きなようですよ」
「うげ……」
「蒙恬殿といった老将もいらっしゃいます。昔の軍略の勉強でも……」
「うげげ……」
「では、田広殿という田横殿の甥子様がいらっしゃいます。一緒に街に出ていとまを潰していただいても?」
「夏侯覇の方がよくないですか?」
「生憎、夏侯覇殿は明日朝に曹操様や郭嘉さんにこの件の言伝を頼んだので向かわれます。変わっていただいてもいいのですが……まぁ、春華様より貴方の怠け癖をどうにかしてほしいとは言われていますが、街を出ている間は私も王元姫殿も知らないなで、何も言いませんが」
「じゃあ街に……でます……」
がっくしと項垂れた司馬昭殿に、うむうむと頷いた。
「王元姫殿も街に出ていただいて構いませんし、張遼殿も構いません。……賈充殿、そのままでも構いません。貴方にも頼みたいことがあります」
そう言えば賈充殿が顔を覗かした。なんでバレたって顔をしてるが、仙術の関係である。
「なんだ」
「彼らが来た際の話を聞いたのですが、秦が趙高のもとで再興していたようです。どこから来たかわからない大量の兵は屈強で手足が出なかったと」
「妖魔ということか?」
「いいえ、尋ねましたが違いました。が、何かそう言ったものが秦にちからを貸しているのだとは私は推測します。その秦が現れない可能性は否定できかねます。何が一番危険なのか貴方はお分かりでしょう?」
「わかった、動こう」
「報告は私でなくても構いません。妖蛇の二の舞だけは避けなくては」
「私が報告しない可能性はある、とは思わないのか?」
「貴方が解決できるのであれば、それだけの規模の話です。司馬昭殿に話が行けばこちらに来るでしょうから」
それだけ返し、私は竹簡をみる。うーむ。また溜まっている。
「では、私は仕事に戻りますので皆様よろしくお願いします」
「李子殿、ご無理はせぬよう。貴方に何かあれば曹操殿が悲しみますぞ」
張遼殿の言葉に、手が止まる。ぐ、それを引き合いに出されては。彼を見れば、じっとこちらを見ている。ほどほどにします、とちょっと頭を下げたら、うむそうされよと頷かれた。

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李子という人物について考えてみる。三国志にそんな名前の人物がいただろうか?と考えていれば、幸先がいいなと劉邦が口を開いた。それを聞いた一部が頷いた。幸先がいい?と首をかしげれば、張良が口を開いた。
「敵対するわけでもなく、情報を与えられて迎え入れられましたから」
「あぁ、なるほど」
「しかし、俺たちの時代がめちゃくちゃになってるからの処置なのかなんなのか……また変な場所が開けたもんだ」
劉邦はそう言って瓢箪に口をつけた。避難先と言えば聞こえはいいがな、とは蒙恬殿の台詞である。
「しかし、あの李子という男に覚えはあるか」
「三国は呂布しかわからん。俺みたいなのがいるなとは思っている」
「俺の子孫しかわからん。李子というやつは有能そうだから時代が時代であれば部下にほしい」
「田中はどうだ?」
「俺も細かな将まではわからないんだよなぁ」
俺の返答に、蒙琳さんがあのと口を開く。
「私の記憶が正しいのであればあの李子という方は女性です」
その一言に俺たちは固まる。え?と俺たちが固まる中、彼女は頷いた。
「女ァ!?」
「はい、司馬遷様が異界の歴史を書いてくださっているでしょう?あの方はそれに登場します」
「はい、私も存じ上げます」
そう言った虞美人に、蒙琳さんがちょっと嬉しそうな顔をした。俺たちは顔を見合わせる。なんというか、美青年のような顔をした女性である。思えば、声は確かに男にしたら高い。納得はできる。張良とは逆、男装の麗人というわけである。
「女は後宮や家にいるものじゃないのか」
「あの方は命を助けられた恩に報いるために勉学や武に励み、男として仕官するのです」
そう言ってほうっと二人は息を吐く。女か、と劉邦は繰り返し口を開く。
「まぁでも配下に欲しいな。義理高いなら尚更いい」
まぁ劉邦はそうだろう。劉邦は能力が高ければ雇用する。それは曹操も同じような人であるが。
「失礼いたします」
そう言って入ってきたのは数人の女官と女性である。
「わー、異界の人、本当に似た服だ」
「名無殿。……私達は貴方様達の世話をもうし遣わされた者です。まずは湯浴みの準備や衣服の準備を。夕食や部屋もその間に整いましょう」
「なぁ、あの李子って将は女みたいな顔をしているが、女か?」
劉邦がづけづけと聞く。メジャーのようなものを持った女性は、あの人はどっちでも美味しいからいいんですよ!と笑った。美味しい……?と首をかしげる。
「男なら男で美青年が美丈夫と仲良くしたり世話焼いてるの楽しい。女なら女で美男美女で美味しい」
「名無殿、怒られてしまいますよ。あの方は男です」
そうはっきり言った女官に、名無と呼ばれた人物は笑いながら張良の胸部を測ろうとして目を見開いて動きを止めた。
「綺麗なお姉さんだと思えば男だと……!?」
「ふふ、名無殿は不思議な言い回しをされますね」
「何を隠そう、私も異界から来たんでね!李子さんに拾われて将兵の服やら貴族や庶民やら婚儀の服やらを作っているんです!」
だいたい二千年後の世界から!とケラケラ笑った彼女に俺たちは顔を見合わせる。同じ時代である。俺たちは楚漢戦争あたりにいた記憶がある。俺以外はいわゆる前世という奴なのだ。楚漢戦争あたりの歴史を正しい道筋に戻すための組織に属してはいるのだが。次々と測っていく名無さんはだいたい目安がついたのか竹簡にメモをしてもらっていく。そうして章邯の計測に取り掛かろうとした時動きを止めた。なんだ?と思えば、彼女は章邯を見上げる。
「貴方って、行方不明になった子供とかいません?」
それは過去の話か、今の話か。今の話であればそうだ。章邯の娘さん達が、誰かの策略でどこかに飛ばされて帰ってきていない。
「……なぜです?」
「貴方のその首飾り、李子さんが持ってるやつと一緒。父親とお揃いっていってたから」
そう言った彼女に章邯は動きを止めた。女官がまぁと口を開く。
「お揃い?」
「ほほえまエピソー……話聞いちゃう?李子さんがちっちゃい頃、お父さんの首飾りほしくて泣いたら困った父親が作ってくれたって酔った李子さんが言ってた。私は徐庶さんとの話を期待したけど、李子さんが朧げな父親の記憶話してくれるだけだった」
「しかし、このような城を任せられるならそれなりの身分の家じゃないのか?」
田横の問いかけに、女官が首を左右にふった。
「李子殿は孤児なのです。幼き頃に水鏡先生に拾われたと我らは聞いています」
「はい、だから我らのような孤児にも優しいのでしょう」
「うーーん、でも時代が違うっぽいしな……貴方の子孫かなぁこんな感じだし時間超えちゃった感じかもとか一瞬思ったけど」
そう言って計測を終えた名無殿は、湯浴み後までにはとりあえずの服を準備するんで!と言って数人の女官を連れて行ったが。俺たちは章邯をみる。章邯は目を伏せたが。
「お前の子供、行方不明だったよな?」
「……えぇ」
「お子さんに似てるんですか?」
「年が違うので、なんとも……しかし、確かに面影はありますし、声も似ています」
困った顔だ。他人の空似なのか、本人なのか。記憶もおぼろなのであれば、確認も難しいだろう。俺が運が良かっただけで、遡行軍が落とした先で精神が体が退行するなんて話もザラにあるのだ。


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「はわわ、美人は何を着ても似合う」
そう言った名無さんにわかると頷く。まぁ、色々と彼女が持っている服を手配してくれたようだ。ちなみに風呂はなんと温泉である。長期任務に当たっていたため、久しぶりにきちんと入浴した。あとは食事も運ばれてきちんと毒味役もいる。なかなかの高待遇である。まぁ、食事もそこそこな時間に、李子が再度挨拶にやってきたのだが。
「とりあえず、明日以降各国の使者が到着しだい皆様をどちらの陣営に迎え入れるかの話し合いを行う予定です。項羽殿や田横殿と言った方は、よろしければ張遼殿……張文遠殿や徐晃殿と手合わせしていただければと思います。女性の方は同じく女性である王元姫殿に一任しておりますので、そちらの方に。他の方はお任せいたします。街に出るのではあれば、司馬昭殿が付き合ってくださるようです。田広殿はよろしければ街でお過ごしください。幼いうちに見聞を深められるのは良いことかと」」
「李子は?」
「私もご一緒できれば良かったのですが、残念ながら別の仕事がございますので」
張文遠って三国志の張遼だよなぁ。項羽vs張遼って結構浪漫あるわけだが。しかしながら、街に出るのも捨てがたい。めちゃくちゃ賑わっていたからだ。劉邦は恐らく飲みに出るだろうし、張良はそちらにいく。女性陣には女性がつくようであるし。田広殿についていくのが正解だろうか。

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気分が良くて歌を紡ぐ。とおい記憶の中で、両親が紡いでいた歌を。この歌の意味は私は知らないし、他の誰も知らない。蔡文姫殿さえもしらなかったのだ。

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「ナマエ殿、異界の方の処遇のことで相談があるとお伺いしたのですが」
そう言ってやってきたのは荀家である。孔明くんも元直と一緒に先程到着したし、陸治殿が魯粛殿を連れてきてくれている。まぁ呉は別件で来ているので偶然なのだが。とりあえず集まってもらっているところに二人を連れていく。三國揃っていることに驚かれるが、とりあえず荀攸さんや荀ケさんに椅子に座るように告げる。私もとりあえず座れば、魯粛殿が口を開いた。
「三国軍師が揃ったか。李子殿が集めるとは珍しい」
「……ナマエ殿、何が?」
そう困惑いっぱいで尋ねた荀攸殿に私は口を開く。
「……高祖や項羽といった方々が迷い込まれました」
どうしましょう。
困った顔をしてそう告げてしまう。周りは動きを止める。事態を噛み砕いているらしい。元直が首を傾げたが。
「ええと、本当に?」
「どう説明したらよいのか……妖魔と戦っていらっしゃったので助太刀したのですが、劉邦、張良、項羽、章邯、田横などと名乗られました。名乗る方たちの衣服だけでなく彼らが連れている兵の衣服や武器、防具、戦車を率いた戦い方兵の話などを考えると時代は前漢以前だと推測されます。普段からは異界人は私の砦で面倒をみるのですが、高祖と同じ名となればこの城だけでどうにかすることも、魏だけでどうにかすることも憚れると思い集まっていただいたのです」
私の言葉に荀ケさんが口を開く。
「時代はいつから?」
「確かな話ではありません。統一前、尚且つ章邯将軍が生きている時代だとは思われます。ただ、恐らく私たちの過去ということではないのかもしれません」
「何か根拠があるのですね」
「始皇帝の死以降、どこも私たちの知る内容と少しだけ話にズレがあります。それに、秦が趙高の元で再興したと話していらっしゃいました。その兵力をどこから保管したかは不明ですがおおよそ人では思えないと」
「妖魔が?」
「いえ、妖魔ではないですが似たような存在が力を貸している可能性もありますし、まだこちらに来ていない方が妖魔に操られる騙される可能性もございます」
つらつらと考えを言えば周りはふむと考えこんだ。あとは絶対教えた教えていないの問題になる可能性はあるから集まってもらってもいるがそれは言わぬが花というやつだろう。とりあえず曹操様や劉邦様、孫堅様で話された方がいいかと言おうとすればうわっという声と共に田中殿がやってきた。まぁ集まっているのを見てヤベっみたいな顔をしたが。まぁ、押された可能性はある。
「どうかされましたか?田中殿」
「いえ、衣服の礼を……田横殿だけでなく、私のようなものの分までありがとうございます」
「お気になさらないでください。この辺境は穏やかですが服装が違えばよく思わない方がいらっしゃる場所もございます。ちょうどあなた方の話をしていたところです。劉邦殿達も隠れていないでこちらにお越しくださいませ」
「なんでぇ、バレてたのか」
そう言って顔を覗かせたのは劉邦殿である。
「張良殿はどうされました?」
私の言葉に彼は満寵と話してると告げると私のそばに劉邦殿がやってきた。
「李子よ、どれがお前の上官だ」
「教えません」
「悪い話じゃないと思うがなぁ」
「私にとっては悪い話です」
「そんなに俺の部下になるのが嫌か?」
「私は曹操様の理想を手伝う為、なにより恩に報いる為にこの国にいるのです」
「李子、俺は諦めが悪いことで有名でな」
「……劉公、本音のほどは?」
「ここが欲しい。李子付きで」
「却下します。貴方に領土を認めれば同じように項羽殿、田横殿、章邯殿にも領土を認めなければなりません」
バッサリそう答えれば悪い話じゃねぇと思うがな、と彼は瓢箪に口をつける。田中殿が苦笑いをしている。劉邦殿はそのまま荀家のところに移動して、ぽん、と肩を叩いた。うわっ、と荀攸殿が驚いていたが。
「李子の上官殿もなんか言ってくれ」
「……承諾できかねます」
荀ケさんがにっこり笑って断った。それを聞いてから劉邦殿は近くの椅子に腰掛けた。
「しかし、李子よ、そのうち領土の話になってくるとは思うが。俺たちはともかくーー項羽は今は大人しく従っているが、あれは考えるより先に手が出る。不満が溜まれば手のひらを返して攻めてくるぞ。章邯には止められんよ」
まぁ呂布タイプだもんなぁと思いはする。虞姫を人質にしたところで怒りを買うだけだなと告げた彼に、私は口を開く。
「項羽殿はそのような子供のような方ではありません。きちんと考えていらっしゃいます」
まぁあとは張遼殿もいる。多少はもうだろう。
「李子よ、俺はお人好しは嫌いじゃねぇが、甘さを捨てねぇと喉元掻っ切られるぞ。俺たちがいた場所じゃお前みたいなやつは後処理を押し付けられて死ぬかその善性を利用されて死ぬ。さっさとその席を他人に譲った方がいい。お前の幸せは他にもあるはずだろ」
「つまり?」
「俺の部下になれ。それか俺の妾になるか」
この落差なのだ。この人は。真面目に話したと思えばおちゃらけるのである。こういうところが周りを惹きつけるのだろう。
「お断りします。私は男ですよ」
「そうだな、それもそうだ」
そう言いつつケラケラ笑いながら彼は酒に口をつけた。もう完璧に彼のペースに巻き込まれている。
「どうせ貴方は自分の良い方に交渉する為に割り込んできたと推測しますが、他にご用件は?」
「いや、なに、お前に聞きたいことがあってな。李子の首飾りを見せて欲しい」
その言葉に首を傾げる。それを見たら戻ると言ったので仕方なく首飾りを外した。この時代からしたら簡素なものだ。田中殿が息をのんだ。
「よく似たものがある」
そう言って劉邦殿が首飾りを差し出す。確かに私のものとは似ているが、少し違う。並べてみれば、少しだけ私のものの方が簡素というか粗末なのだ。私はこれを見たことがある。恐る恐るついている装飾を触れば、そこには懐かしい模様が書かれていた。それに動きを止める。
「なぜ貴方がこちらを?」
「なんでだと思う?」
彼はそう言って私を見た。
「劉邦殿、答えてください、これは、記憶の中にある私の父のものです。見間違うはずがありません。どちらて会ったのですか?もしや、私が助太刀する前に」
「いいえ、李子殿。こちらは章邯将軍のものです。章邯将軍が奥様より贈られたものです。名無殿が章邯将軍の服を作る際に気付かれました」
その言葉に私は動きを止める。
「章邯将軍には子供がいらっしゃいます。家族の多くは処刑されましたが、一人だけ逃がされた子供がーー」
「田中殿」
そう言ってやってきたのは章邯将軍である。
「李子殿が困る。他人の空似だろう。似たような顔の人間だっているはずだ……申し訳ございません、李子殿。私が貴方をみて我が子の成長を重ねてしまっていただけのこと。あなたが気にされることではありません」
「あなたの子孫がナマエの可能性もあります」
「その通りです」
孔明くんの言葉に章邯殿は頷いて劉邦殿と田中殿の手を引いてそのまま外に出て行く。う、わ、私の頭の中は思っているよりごちゃごちゃである。どういうことだ?と考えようとすれば、ちくりと頭が痛む。頭を抱えれば、ナマエ?と元直がこちらをみた。頭がぐわんぐわんする。なんだ、この感覚。音が遠くなる。申し訳ありませんが、少し休憩をしても、といおうとしてそれは失敗した。私の体が倒れたからだ。



逃げる夢を見る。逃げなさいと言われて逃げる夢をみる。誰もが敵だったのだ。首を斬られてしまうと私を逃した人は告げた。だから、逃げる。宛先もなく。後ろからくる足音。しかし、前は崖だ。川が見える。兵達がジリジリとこちらにくる。それをみて、私は川に飛び込んだのだ。
「……哀れな人の子よ、なぜ飛び込んだのだ。流石にあの高さから叩きつけられればただではすまぬ。流れてこの岸に来たのも」
川に落ち、岸に流された私を解放した青年にどろりとした視線をおくる。小さくととさま、と口をひらけば、彼は目を少し見開いた。
「ととさまが、いつか、かえってくるから」
「お前は死ぬ。今のままならな」
「……」
「だが、お前は運がいい。夫諸達もお前を気に入ったようだ。いいものをやろう」
瞼が閉じて行く。青年が何かを飲ませるのがわかる。それを飲めば、意識は完璧に落ちる。そうして目が覚めてからはいつもの夢だ。盗賊に襲われて、曹操様に助けてもらうのだ。ああ、と腑に落ちた。これはもしや前世というやつではないのかと。

「ナマエ、よかった。目を覚ましたんだね」
そう言ったのは郭嘉さんである。郭嘉さんをぼうっと眺める。この人いつの間に来たんだろうか。
「ナマエ、荀ケ殿達から話は聞いたよ。今劉邦殿達のことは曹操殿達が話し合っているから安心して欲しいかな」
そう言って、寝台のそばに座った彼は私の髪をすいた。私はぼんやりとしながらその手に触れる。郭嘉さんの手だ。そのまま考える。あの青年は誰だ。見たことがある。どこで。
「楊戩殿」
「……楊戩殿がどうかした?」
「……むかし、楊戩殿に会いました」
「それは初耳だね、いつだったかわかるかな?」
「盗賊に襲われる前も……おわれて……川に飛び込んで……そのあとに……」
私はそう言って彼の手を握ると丸くなる。怖くて仕方ない夢だった。いや、今恐ろしいのは自分だった。だから、嘉兄様、だなんて昔の呼び方をしてしまったのだ。
「私はどこの誰なんでしょうか」
その問いに彼は李子はと口を開く。
「魏の軍師で、私の補佐の李子だ。字はナマエだなんて変わっているけれど、あなたは私の1番の理解者だ。過去がどんなものであろうが、血筋がどうであろうが、私にとってナマエはナマエだよ」
その言葉に安堵する。涙がポロポロ流れる。
「私だけじゃない。他の人にだってそうだ」
「はい……」
「私はもう少しだけ、ここで休んでいくことにしよう。もう一度おやすみ」
郭嘉さんの言葉に頷いて、目を伏せる。郭嘉さんのよく焚く香の匂いがする。私はそれを感じて安堵するのだ。



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