ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳184:二週目ジャックと君僕主の逆転人生
08/12 17:00
「仕返しだ」
ジャックは息も絶え絶えにそう告げる。仕返し?と私が眉間に皺を寄せた。知らない間に彼に何かをしたのか。だからこうなったのか。だから私にはわからなかった。彼に銃口をむけた私に、そうだ、と彼はつげた。
「……あの時の……仕返しだ。今度は、俺が……呪いを吐くばんだ」
彼はそう言って笑った。なんで笑うのか理解できなかった。今から私に殺されるのに。私が嫌いなはずなのに。
「生きてくれ」
引き金を弾け。私はそう念じる。引き金を弾かなければ、私たちは、私の仲間は。
「俺はお前を愛している」
私は、引き金を弾く。白い花が赤く染まる。
ねぇ、ジャック。どうして。どうしてこうなったの。どうして。こんなはずじゃなかった。そこにいるのは私のはずだった。私が代わりに死ぬはずだった。名誉なんていらない。何もいらない。
ーー私は。私が帰ってきて欲しかったのは。
「スネーク!」
山猫さんがやってくる。通信が入る。私は彼の持っている指輪をぬいて、私が持っていた指輪を彼の指にはめた。きっと燃えてなくなってしまうが。燃える。赤く燃える。何もかも。燃えてしまえ。楽しかった思い出も、何もかも。私の中から、なくなってしまえ。
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「……気分じゃない」
私はそう言って私は山猫である青年を拒む。拒まれると思っていなかったからか、彼は驚いたような表情をした。
「悪い……君には協力してもらったから、体の一つくらい許せばいいのにな」
私は自嘲して、指輪を握る。思考をーー思考を切り替えろ。私は彼の額にキスをおとした。これで許してほしい、と笑えば、彼は額に手を当てたのだが。ジュニアにはそれがお似合いか、と言えば彼は嫌そうな顔をした。
「だから子供扱いはやめろ」
「悪いな。これ、は、君がうまくやってくれ」
私はそう言ってフィルムをわたす。彼は今度こそ本当に驚いたように目を見開いた。
「またどこかで縁があったら会おう、山猫さん」
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「夢をみるんです」
私はそう言ってボスをみる。私がジャックのお墓の前にいたからか、彼女は私を見つけだしてーー声をかけてきてくれたのだ。
彼女なら私を殺してくれるだろうか。私は彼女の愛弟子を殺したのだ。だから。
「ジャックの夢。幸せそうに笑ってり夢。でも、毎回私は彼を殺して目が覚める」
「……」
「誰かに殺してほしいのに、ジャックがあんな言葉を吐くから」
彼女は私をハグした。強く、強く。私はそこではじめて自分が泣いているのに気がついた。
「生きたくないのに、生きろなんて願ってくるから」
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あぁ、なるほど、これは狂気だ。まごうことなく、狂気だ。私は彼らをみつめる。「私が殺した彼と私の子供を作る」?「嬉しいだろう」?
馬鹿なことをいわないでほしかった。話をきりあげて、自室に向かう。気持ち悪い。周りがひどく気持ち悪い。歪んでいく。彼がボスの代わりに死んでも。私が本来いるはずである彼の生き様をなぞるように、正しく世界は歪んでいく。
私はこの国を出る。ボスは止めることはなく、ただ私を抱き寄せただけだ。
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「殺しに来たのか?」
と、私はオセロットに尋ねる。彼は眉間に皺をよせた。というか近くにいたカズ達も眉間に皺をよせーー緊張感をだした。嘘だよ嘘、と言えばオセロットは「そんなことを冗談でも言わないでください」と私を叱る。
「悪い」
「まったく、探しました」
「それは君が?エヴァが?アメリカが?ボスが?……それとも、サイファーが?」
「私が、です。半島の事件……いえ、私と母を引き合わせていただいて以来、本当に消息を経つとは思わなかった。我々でも掴めなくなるとは……」
ふは、と、私は笑う。
「聞いたか?カズ。君がある程度冗談を流してくれたおかげだぞ」
ふふ、と笑いながらカズに言えば、カズは「そうだろう!」と胸を張った。
「もっと褒めていい!」
「……誰です、コイツは」
「カズだ。サイファーとビジネスな関係」
それだけでもオセロットは良い顔はしないだろう。
「で、ボスの恋人だ」
そう言ったカズに、オセロットが「は?」と声を上げた。私の恋人発言は飛んだ地雷らしい。私は否定する。
「ないない」
「おいおい、あんな夜を過ごしといてか?」
「は?」
「そうだな、スリリングな夜だった」
山猫さんがみるみる嫌悪を浮かべる。
「敵に周りを囲まれたところを脱出しただけだよ。本当にそんな関係じゃない」
「俺はそういう関係でいいんだが?」
「生憎歳下は好みじゃないんだ」
私はそう言って葉巻に火をつける。
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ボス、と呼びかけられる。その声に私は振り返った。たまに、そこにジャックがいるように錯覚するのだ。
「……私の恋人と似た声だから、君と話していたらたまにそこにいるように錯覚する」
そう言って彼をみる。彼は私を見下ろした。ジャックより背が高い。ジャックより大人しくて、ジャックよりも静か。でも、顔も声も似ている。
「貴方の?」
「そうだ。もう10年も前になる」
殺した。私が彼を殺した。最近はもう、楽しかった記憶のほとんどが消えている。ただ、殺すだけだ。引き金を弾くだけだ。消えかかった声とともに。だというのに、彼と話すと、少しだけ楽しかった思い出すのだ。
「貴方の声を聞くと、忘れかけてた恋人の声を思い出す」
私の言葉に、彼は相手の死を察したのだろうか、少しだけ目を見開いた。
「悪いな、湿っぽくなるつもりはなかったんだ」
「……いえ。ボス、俺でよければいくらでも話しかけますよ」
「ふふ、ありがとう。君のおかげでしばらく忘れなさそうだ」
同じ声だったからだ。彼が。
ーー知っている。彼は本来、ジャックの影武者として世界に用意された人間だ。だから、こうなっている。本来であれば、そっくりに整形をする過程があるが、そんなものをしなくても、彼はすでに似ていた。私は酔っている。いや、それを理由に彼の優しさに甘んじている。
「ジャック、どうして生きろなんて言ったんだ」
そう言って彼の服をにぎる。わかっている。彼は違う人だ。だから彼は何も言わない。
「どうして……」
彼は私をゆっくりと抱き寄せる。誰もいないからだろう。そっと添えられた手に私は目をふせた。臭いがしない。彼に香った、葉巻の香りがしない。そうだ、するはずがない、違う人だ。わかってる。
「ジョン……どうして……まだ迎えにきてくれないんだ……」
泣き言だ。そう、ただの。彼も私を殺してくれない。私が先に殺すことができるからだ。生きろという呪いが私を生かすからだ。
「愛しているなら、連れて行って」
そんな嘘をつくなら、そんな言葉を吐くなら。そちらに連れて行って。
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「君はお父さんによく似てる」
私はそう言ってイーライを見下ろす。こちらを見上げた彼に私は彼の頭を撫でた。私とジャックの子供。人工的な子供。彼の目の色。目元も彼によく似ている。
「ごめんね」
私はそう言って彼の髪を撫でる。彼はこちらを見上げた。
「何がだ」
「お父さんにあわせてあげれなくて」
ハグをする。彼は緊張して固まったが。
「……普通の親子でいられなくてごめんね」
まぁその後、うっさいババア!と言われーーオセロットが締めていた。やめてあげてほしい。ただの反抗期である。
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歪んでいく。世界が。いや、私が、周りが、歪んでいく。私もきっと正常じゃない。だから、私になっても世界の大筋はあまり変わらない。何度も思った。ジャックによく似た声の彼が死に、私もここで死ぬ。私は青年をみる。ジャックによく似ている。いや目元は私かもしれないが。
「君は私の希望だ」
私はそう言って彼を見上げた。彼は私を見下ろした。希望だと?と返した彼に、私は目を伏せた。
「大丈夫、君は引き金を弾くだけだ」
そう言って私は手を添える。そうして、引き金を。
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「また会ったな」
私はそう言って困った顔をする。年老いた彼は息を詰めた。
「だから、君は希望だった。悪いな、君に重荷を乗せすぎた。君は自由でいていい」
「やっと、会いに行ける……長い人生だった。……犠牲を産みすぎた人生だった」
私は指輪をみつめる。手に持っていたそれが堕ち、デイヴィッドは指輪を拾った。
「悪い。君の……父親に……もらった指輪なんだ」
私はそう言えば、視界がぼやけた視界で彼はその指輪をわたしの薬指にはめた。
「あぁ、いいものだね、」
そうして私は命を終わらせた。
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目を覚ます。私を見下ろしたジョンに、やっと会えた、と言って彼の頬をなでれば、彼は私の額をこづいた。俺の気持ちが少しはわかったか、と彼が告げたその瞬間、色々な記憶が頭を巡ってーー仕返し、の意味がようやくわかった。はらはらと涙を流した私に、彼はそれを拭う。
「……意地悪」
私はそう言って、怒る。意地悪!ともう一度彼の肩あたりを殴れば、彼は私を抱き寄せたが。私はそのまま大人しくおさまった。葉巻の香りがする。あぁ、彼だ。毒蛇の彼じゃない。私は彼の服を握る。あぁ、本当に、ジャックだ。
「……いなくならないで」
「ああ」
「一緒に生きて」
ああ、ただの縋る女だ。それでも、彼は、ああ、と嬉しそうに頷いた。
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