ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳190:君僕主たちとヨルムンif

08/12 17:05 
ナマエちゃんが珍しく頭を抱えている。どうかしたんだろうか、と思って見てみるが彼女はラップトップを見つめてため息をつくとーーその画面を閉じた。そうして私たちをみて、何か考えるとーーもう一度私達をみる。勢いよく起き上がった彼女は私でもなく、ジョンさんやオセロットさんでもなくーージョージさんに声をかけた。
「ジョージ!そうだ、君がいた!!」
そう言ってナマエちゃんはジョージさんの手を取ってブンブンと振る。本を読んでいたらしい彼は珍しく目を瞬きーーナマエちゃんをみた。
「何がだ?」
「助けてほしい!あ、いや、違う、一緒についてきてほしい!」
その言葉にジョンさんがみるからに顔を顰める。何で俺じゃないんだって思ってると思う。
「私に?」
「そう!」
「君の旦那ではなく?」
「ジョンはダメだ。エイハブとデイヴィッドもダメ」
ナマエちゃんはそう答える。デイヴィッドが「は?」と声をあげた。
「イーライはいいのか?」
「イーライはまだいい。エスコートがうまい」
その言葉に私は内心頷く。桜くんとイーライさんはもともとイギリスにいたからか息をするようにエスコートする時があるのだ。扉とか開けたりしてくれるのである。ジョンさんがようやく口を開いた。
「何だその理由は。お前にエスコートなんているのか?」
「時と場合による。君たちは軍人っぽさがありすぎる。そもそもジャックはスーツ着た大人が集まる場所は嫌いでしょ」
ナマエちゃんはそう言ってジョンさんを見た。図星を刺されたのかジョンさんはだまる。デイヴィッドもそれを聞いて、俺はいい、と、聞かれてもないのに手をひらりと振った。ちょっと渋い顔をしたイーライさんに変わって桜くんが口を開く。
「苗字、イーライもそういう場所はやめといた方がいい。そういう場所は嫌いな部類だ」
「だろうと思った。その点、セツからの話を聞くにジョージはそういう場所に慣れてるだろう?」
ナマエちゃんの言葉に、そりゃあそうだ、と私は納得する。政治家というか大統領してたもんね、と。彼も彼で「他よりはな」と否定することはない。それでいくと、である。
「オセロットさんはダメなの?」
オセロットさんもそう言った立ち回りは上手いような気がする。私の問いかけに、ナマエちゃんは「いや、オセロットは器用にこなすけど……」と口を開いたがーーメールを受信した音にナマエちゃんはジョージさんから手を離してもう一度ラップトップを開いた。そうして何かを眺めてからもう一度ラップトップをとじて、目を伏せた。そうして数秒考える。目頭をほぐした彼女は考えて考えて口を開く。
「前言撤回する。ジョージとオセロット、桜で私の補助をしてほしいのと、ジョンとエイハブとイーライとデイヴィッドでちょっと待機しといてほしい。給料はだす。その間サチとオタコンとセツは遊んできてオッケー」
給料はだす、とは??と私達の疑問をよそに、ナマエちゃんは珍しく、ああああー、と声を上げた。
「ナマエちゃん、どうしたの?」
「嫌だ、嫌すぎる、本当に嫌だ」
「行かなきゃいいだろ」
「断れたら断ってる。私の付き添いだけでいけるかと思ったけど多分無理」
ナマエちゃんはそう言ってから大きなため息をついて、椅子の背もたれに完璧にもたれかかる大勢になる。そうして本当に嫌そうな顔をして私たちをみた。
「暇だ暇だて暇を持て余してる諸君、喜んでいい。無料でいける旅行だよ」
「旅行?」
私の問いかけにナマエちゃんは「そう」と頷いた。
「行き先は?」
「南アフリカ」
「何でまた」
「その近くにいる実父達に会いに行くのが一つ。私の友達に会いに行く理由が一つ。そこにいくのを踏まえてちょっとした場所に行かないといけなくなったのも一つ。そこで経営なんかをしてる人に会わないといけなくなったのが一つ。」
ナマエちゃんはそう言って息を吐く。それを聞くとそこまで悪くなさそうではあるけども。
「実際は?」
「実父の運営してる組織に顔を出すのが一つ、私の友達に会いに行くのが一つ。ここまでは良かったんだ、ここまでならジョンだけでもいいし、普通に美味しいもの食べて観光したりもまだできたし、まぁ想定内だったんだ」
ナマエちゃんはズルズルと溶けるように背もたれに重心を預ける。ジョンさんがナマエちゃんに近づいてそのままズルズルと引っ張った。珍しい。
「顔を出す場所が嫌なのか?」
「それはまだマシ」
「ちなみにどこに?」
「武器の展示場」
ナマエちゃんの言葉に私はハテナを浮かべる。博物館的な?と思ったが、アダムスカさんがちょっと眉間に皺をよせた。ジョージさんが口を開く。
「一般人が入っていい場所ではないだろう」
「そうだな。そうなんだ。普通はそう。父親に変わってそこにいる偉い人に挨拶に行かなきゃいけない。だから対外対応ができる素敵な大人のジョージがいたら、助かったんだ」
「ご合判に預かれるのは嬉しいが、問題は最後の経営してる人間か?」
「そう。大星海公司というアフリカを資源開発する中国の会社」
「姉御が嫌がるってよっぽどじゃん。何で嫌なわけ?」
セツくんの言葉に、ジョンさんの足の間に移されたナマエちゃんは顔を覆った。
「たぶん、人民解放軍非公然部隊のカバー組織の商社……」
ナマエちゃんは消えいるような声でそう告げた。私はよくわからなくて首を傾げる。が、だいたいはわかったらしい。ジョンさんがナマエちゃんを見下ろす。
「おいまて、だいぶ風向きが変わるぞお前。誰だ?下っ端か?」
「多分友達が言ってるのは少将……」
「少将!?」
「まぁ、会社の専務を名乗っているあたり恐らくは身分を隠してるんだと思う。何もなく穏やかに終わらせるために手伝ってほしい」
「手ぶらか?」
イーライさんのその問いかけにナマエちゃんは、いや、と口を開いた。
「途中で別の友人に合流してそれなりのものは揃える。ただ、当たり前だが日本には持って入れない」



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