ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳191:君僕主たちとヨルムン
08/12 17:05
ややこしいことになる、と、私はメールを見て眉間に皺を寄せる。ただでさえジョン達を巻き込みたくなくて色々伏せてるのでやれることが限られているのだ。そんな時にこういうことが立て続けにおこる、と、私はラップトップの画面を伏せた。ジョン達に武器を持たせたいかと言われたらノーである。手を離して生きれるのであれば、それに越したことはない。
が、こうなってしまうと、私の周りの騒動に巻き込まれる可能性は高い。どうしたものかな、と目を伏せてため息をついた。
「どうした?」
そう言って声をかけたジョンに、頬杖をつく。「なんでもない」と私がいえば、嘘だろう、と返された。私愛用のマグカップを私に渡した彼は隣に座る。
「お前の悪い癖だ。一人で抱え込む」
それはあの任務を見ての言葉だろうか。それ以前からを見ての言葉だろうか。それは正しいかもしれない。でも、開けて友人がさってほしくもないし、ジョンに危険が及んでほしいわけじゃない。
「で?」
彼はコーヒーを飲みながら口を開く。私は困った顔をした。話したくない。話したが最後彼はこの世界のいざこざに巻き込まれるからだ。私は彼が渡したマグカップに口をつける。
「何も」
「嘘はよせ」
と、また告げた彼に、私は頬杖をついた。周りはあれほどゲームで騒いでいたのに、もう静かだ。
「君たちを巻き込みたくない私の配慮なんだから受け取ってほしい」
と、言えば、ジョンは家に屯する面々をみて、帰れという。普通に、嫌だとか言われてるけど。
「是非とも巻き込んでくれ」
そう言った桜に私は何とも言えなくなり、困った顔をした。せめてサチだけでも、と思ったが本人は「私もどかないからね!!」とデイヴィッドを掴みながら告げた。私はため息をついてーー彼女ではなくデイヴィッドを見て口を開く。
「デイヴィッド、出してくれ」
「本人が断ってるんだから無理だ。こいつはしつこいぞ」
「彼女達に危険が及ぶ可能性がある」
そうはっきり言えば彼は少しだけ動きを止めた。私は目を伏せてからーー自分を嘲笑いながら口を開いた。
「ここにいたら君達はまた兵士に戻らなければいけなくなる。そういう話だ」
「……」
「だから巻き込みたくない。さっさと帰れ」
ボスのように、あの頃のように威圧的にはっきりと言えば、彼はサチとオタコンをみおろしてからーー「無理な話だな」と告げた。
「この二人はしぶといぞ。第一その手の話であるなら、お前と関わった時点で俺たちには危険が及ぶ可能性がある。違うか?」
それは正しい。が。
「優秀な護衛をまわす」
「並の護衛より俺の方が対処できる」
「そーだそーだ!」
サチがデイヴィッドの後ろでそう告げた。巻き込みたくないのだ。日本にいる彼女らにを。普通の家庭で育った彼らを。私の気持ちなんてこれっぽっちも考えてない。それは私も同じだろうが。
「ナマエ、前からお前俺たちに隠して何かしてるだろう。お前が黙ってるから聞かなかったが」
ジョンがそう言って真っ直ぐにこちらをみる。この目が苦手で、大好きだ。
「私の我儘を聞く気はないと」
「今回はない」
「後悔しないのか」
「後悔しない。俺はお前といる」
そう言った彼に私はまた困った顔をする。そんな表情しても今回はだめだ、と、はっきり断られたので諦める。彼は本気だ。
「……インサイド」
「インサイド?」
「実父の抱えるPMCだ。昔から私の護衛をしてくれてる」
私はそう言って頬杖をまたついた。
「その実、その人達と君たちは同じだ。だから、同じ扱いとしてーー君たちをそこに所属していた、ということにして国籍やビザ、パスポートを作っている」
私はそう言ってため息をついた。私の発言に、彼は「俺たちと同じ……?」と首を傾げる。が。
「いや、待て」
桜がそう止めた。
「それはアンタ達という存在があるから予測できることだ。何で一般家庭のお前にPMCが護衛についてる」
そう、その疑問が1番正しいのだ。
「……苗字、というのは母方の姓だ。国籍も本来日本ではタブーであるが、多国籍を持ってる」
「え、ナマエちゃん、日本人じゃないの?」
「母は日本人だ。その前はフランスに身を寄せて、その前はアメリカだ。ファミリーネームもシードル、クラウディアと変わってるんだ。実名はナマエ・ベルンシュタインだ」
私の返答に、ユダヤ系のドイツですか?とオセロットが尋ねた。私は頷く。
「実父がそっちだ」
「ん……ん?何でユダヤ系だから護衛がいるってこと?」
サチは首を傾げる。私がそうならいいんだけどな、と答える。桜が「ナマエ・ベルンシュタイン」と繰り返しーー何か思い浮かんだのか私を見た。
「おいまて、お前、あのナマエ・ベルンシュタインか?」
「多分ね」
私は苦笑いしてコーヒーを飲む。
「あの?」
「平和運動の矢面にさせられた子供だ。確か父親が国連でも上位のスタッフであるがために戦地に共に行ったりして反戦をリベラルに訴る手段にされたガキだ」
正しい。私はそうだ。歩く広告塔のようなものだった。世界中に友達はいる。たまに連絡を取り合う人もいるし、戦禍で死んだ人もいる。子供はいい。話して喧嘩しても多少は仲良くできる。問題は大人だ。大人の対応は別れた。私を嘲笑う大人、私に哀れみを抱く大人、私を諭す大人、私を信じる大人、私を慕う大人。後者の二つは私が歳を重ねるにつれ多くなった。
「正解。じゃあ、そのガキを中心に据えた組織は?」
そう、最後にはその受け皿が必要になったのだ。実父はそれも整備した。自分の立ち位置を変えても。
「ーー難民支援組織swallow」
「そう。そこの代表になってしまっている。難民支援と言いながら、あそこの実質は国連が持つ唯一の医療及び軍事派遣部門だ」
私はそう言ってまた頬杖をついた。
「そこには国境はない、東西の思惑があってもならない。そうなると当然正義や悪という概念もない」
「助けるなら正義じゃねーの?」
セツの問いかけに私は困った顔をする。
「敵を助ける無所属は正義だと思うか?」
「あーー」
「まぁ、みんな正義だと思ってるが。私たちはあくまで公平でなければならない。東西とか敵と味方は関係ない。いうならば全員味方として扱い、唯一糾弾できるのは戦争犯罪者だけだ。だから、戦勝国が強い力を持つ安保理でなく世界の意志として総会の採決を受けなければならない決まりがあったりする」
そこまで説明する。ジョンが口を開いた。
「その案件か?」
「いや。それなら父親と現地機関でなんとかなる。だが、子供の頃からそんな立場にいてみろ。まぁーー周りにどこぞの諜報機関がいたりだとか変に誘導しようとする悪い大人がいたりだとか私を誘拐してそれをうまく使いたい大人だとかにそりゃあまぁ目をつけられてて。ちなみに英語のALTはCIAだしロシア語教員はSVRだ」
私はそう言って伸びをする。
「彼らはおとなしい。まぁ、私の瞳孔見てるだけだからな。1番やばいやつはまぁ私の友人を狙った人を17の時勢いあまってやり返しちゃったのがいて」
私はそう言ってため息をつく。サチが首を傾げた。
「まぁナマエちゃん自分で身を守れるから多少は仕方なくない?」
「そこからたまに殺し屋さんを配達してくれるようになった」
ちょっとかわいこぶってみる。その場にいた全員が私を見た。
「おいまて」
「話が変わったぞ」
「だから言っただろう。巻き込みたくないって。インサイドから私に向けていったっぽいっていう連絡と夏休みにはswallowに顔を出してほしいっていう連絡がきたんだ」
「お前、どんなやつを締めたんだ」
「CIAのパラミリ超過激派自称愛国お姉様。法にスレスレの行為ばっかりしてる。彼女ほど国を愛している人間はなかなかいないと思うが、法にスレスレむしろアウトな行為をしすぎて国にはあんまり愛されてない、と思われる」
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