ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳203:君僕主と息子の話(ver2)
08/12 17:13
マンションの前に段ボールが置いてある。朝にあんなのあったっけ?と思いながら私は見つめた。多分その視線を追ったデイヴィッドやオタコンもまたダンボールを見たのだろう。
「置き配かな?」
「置き配のボックスは別じゃなかったか?」
「捨て猫とか犬?」
という話をしていれば、ジョンさんが通りかかる。
「サチは帰ったのか」
「あー、ナマエちゃんちょっと手続きがあるから帰り別です」
「あぁ、遅くなるとは聞いてる。どうしたんだ?」
「あのダンボール知ってるか?」
デイヴィッドの問いかけに、ジョンさんはダンボールをみる。
「いや、俺が出る前にはなかったな。置き配ボックスは別にあるだろう」
ジョンさんはもう一度ダンボールをよく見るとーー近いた。私たちも同じように近く。ジョンさんはダンボールを隅々まで見るとーーダンボールを持ち上げた。その中にいたのは小学生くらいの少年である。わっ、と私は声を上げる。ダンボールの中に人間いたら結構びっくりするんだ。少年も少年でびっくりしたはしい。「!」と驚いた彼に、ジョンさんは視線に合わせて屈むとーーかくれんぼか?と尋ねた。
「ダンボールに隠れるアイディアはいいが、この国の今の季節でそれは自殺行為に近い。顔が真っ赤だ。水分は取ってるか?」
ジョンさんの問いかけに彼はフリーズしたように動かない。英語がダメな感じかな?と思ったが、首をふるふる振ったので理解はしてそうだ。ジョンさんは持っていたスポーツドリンクを差し出す。ありがとう、が綺麗な英語だ。
「見つかりそうか?」
「……人を待ってる」
「ダンボールに隠れてか?」
「通行人の邪魔になる」
と言ってダンボールをまた被ろうとした彼にひょいっと彼が取れないようにジョンさんが意地悪をする。
「誰を待ってるんだ?」
「……ここに住んでる人だ」
彼の言葉に私たち目を見合わせた。この、マンションーーというよりはガチでなんかオフィスとか入っていても違和感がないちょっとした高層ビルーーは、ナマエちゃんの持ち物である。なぜ持ってるかわからないが、彼女が私たちに快く貸してくれているのだ。ただで。なんか手伝って欲しい時は声がかかるらしいけど。と、まぁ、そんな感じでナマエちゃん達はもちろん、私達や桜くん達、セツくん達が住んでるわけであるが、色々な事情もあってあまりここに住んでることをみんな吹聴していない。イコール。
「ナマエの知り合いか?」
そう尋ねたジョンさんに、少年はこくりと頷いた。
「ナマエは帰ってくるのは遅いぞ。中で待つか?」
「……」
首を左右にふる。とりあえず私はナマエちゃんに連絡をしたら、すぐ帰る、と連絡がきた。心当たりがあるんだろうか。
「ジョンさん、ナマエちゃんすぐ帰ってきてくれるって」
「そうか」
「……アンタも知り合いか?」
「あぁ。一緒に暮らしてる。ジョンだ」
その言葉に彼はジョンさんをじっとみる。そうして何かを考えに考えてーーやっぱり中で待つ、と告げた。
「お前の名前は?」
「ルーカス」
「ルーカスはどこからきたんだ?」
「アメリカ……」
というわりには荷物がない。サコッシュ的な簡単な荷物しかない。まさかその荷物だけで?!バックパッカーより少なくない!?
「……一人でか?」
デイヴィッドの問いかけに、彼は頷いた。この年で!?一人で!?荷物こんだけで!?アメリカから!?
とりあえず共用スペースで涼むことにする。エイハブさんが、念の為診察したが、熱中症になりかけということで塩飴とスポドリを飲ませている今である。寡黙というのか、静かというのか……部屋の端でちびちびと飲んでいる様子はちょっと可愛い。そうこうしていたらナマエちゃんが帰ってきたらしい。かけてきた彼女は、ルーカス!と彼を呼んだ。ルーカスくんと言えば、その瞬間にぱぁっと目を輝かせる。
「母さん」
か あ さ ん ?
私たちは彼女をみる。彼女はルーカスくんにかけよると口を開いた。
「まさか一人で来たのか!?ウィリアムは!?」
「ウィリアムはいない。ひとりできた」
「荷物は!?」
「これ」
その言葉にナマエちゃんは頭を軽く抱える。やっぱりサコッシュだけか。そりゃあ頭を抱えたくなる。周りもびっくりしているし。
「ルーカス、ちゃんと父さんには言ってきたんだな?」
「言ってない」
ナマエちゃんはそれを聞いてさらに頭を抱えた。ohなかなか問題児では。ナマエちゃんはスマホを取り出すとそのまま通話をはじめた。英語かと思えばあまり聞き馴染みのない言葉だ。何語?とデイヴィッドに聞けばドイツ語だ、とかえされた。ってことはお父さんはドイツ人なんだろうか。いやでもお母さんなら旦那さんの可能性もある??え、ナマエちゃんの子供なら何歳で産んだことになるんだ、と思っていたら、桜くん達が帰ってきた。
「……子供?」
「ナマエちゃんの……」
私はそこで言葉を詰まらせる。
「苗字の?」
「親族……?ルーカスくんって言うんだけど、ナマエちゃんをお母さんって呼んでたんだよね」
「は?」
「で、今電話してるのが『お父さん』」
私の言葉に桜くんが珍しく困惑した。
「どっちだそれ。苗字の父親なのか、旦那なのか」
「わかんなくて待機中」
「聞けば済むだろう」
イーライさんはそう言ってルーカスくんをみる。きちんと座って待ってるかと思ったらナマエちゃんに撫でられてちょっとご満悦らしい。そうして会話がおわりーーナマエちゃんはルーカスくんに視線を合わせた。
「ルーカス、すくなくとも私には事前に連絡をくれ。単独潜入はいささか心臓に悪い」
「……ん」
「現地調達は確かに基本だが、いささかその荷物は少なすぎる。というかそもそも私が留守ならどうするつもりだったんだ」
「待つ」
「待つな、連絡してくれ」
ナマエちゃんはそう言ってデコピンした。デコピンされてもちょっと嬉しそうだなこの子。さて、会話がおわったので、みんなの視線に応えてナマエちゃんに声をかけた。
「えっと……ナマエちゃんの……?」
「年の離れた弟だ。母親代わりをしてるから母親扱いされてる」
ナマエちゃんの言葉に私たちは納得する。よかった、ちょっと似てるし子持ちかと思った。
「それにしても、ウィリアムと喧嘩したんだって?」
「した」
「珍しいな」
「……アイツがダンボール捨てた」
それだけで?と言いたくなるが、言うとデイヴィッドに怒られるので黙る。ジョンさんが「ひどいやつだな」と言ったが。
「大事にしてたやつか?」
「してたやつ……だから代わりにアイツのレゴ壊した」
おっとこれは熾烈な戦いでは。ちなみに最終メイドさんか何かに締め出されてどうしても腹が立ったので来たらしい。この子猛者すぎない??ナマエちゃんは屈んで彼の視線にあわせると、口を開く。
「そう。物を壊されたからって物を壊すのはよろしくないよ。私達には言葉があるんだから、言葉で伝えようね」
「……ん」
「許せそう?」
「……努力はする」
「……ごめんなさいはできそう?」
「そのうちな。母さんといたらできる」
ナマエちゃんの服をやと摘んだ彼は大変いじらしい。可愛い。ナマエちゃんはわしゃわしゃと頭を撫でた。ルーカスくんはそこでジョンさんを見上げる。
「ジョンは……強いのか?」
「ああ、強いぞ」
ジョンさんがそう返す。
「インサイドより?」
「……あぁ」
ナマエちゃんの説明に、彼は「!!」と目をぱちくりと瞬いた。インサイドってなんだろう。
「ちなみにあっちにいるデイヴィッドやイーライも桜も分野は少々違うが強い。君が参考にするべきはデイヴィッド。ウィリアムがイーライだろう。でも恐らく子供は苦手だから、なんか総合的な感じのジョンに教えてもらったらいい」
ナマエちゃんはそう言ってルーカスくんをみる。
「でも1番は」
「よく寝てよく遊んで勉強もしてよく食べること」
「よろしい」
ナマエちゃんはルーカスの頭をわしゃわしゃと撫でる。なんかそう言うのを見てると本当に親子っぽくみえてしまう。
「ちょっとルーカスの服をみてくる。多分気が済むか迎えが来るまで滞在するつもりだろうから」
「車出すか?」
「たの……」
「いい、歩く」
「……らしい。いってくる」
そう言ってナマエちゃんはルーカスくんと手を繋いで出かけた。はわわ、ママと一緒にお出かけが嬉しいボーイだ、あれは。それはそうとして。
「インサイドって何?」
と聞いても周りは知らないと帰ってきた。あれくらいの歳ならなんかこうヒーロー的な感じだろうか。と、しばらくナマエちゃんとルーカスくんについて話していたら、セツくんとジョージさんが帰ってきた。セツくんが、「あねごぉ」と服で汗を拭いながらやってくる。
「ナマエちゃん出かけてるよ」
「まじ?なんか姉御の知り合いっぽい子供がいたから連れ入ったんだけど」
そう言ったセツくんの後ろにはルーカスくんと同い年くらいの金髪の少年がいた。ジョンさんは屈むと、ナマエの弟か?と少年に尋ねる。にっこり笑った少年、いわく。
「世間的にはそうです!ミスター。実際は親子ですけど!」
「……そうか。ナマエなら残念ながらルーカスと買い物に行った。しばらくしたら帰ってくると思うが」
ジョンさんの言葉に、少年は「はぁ?」と不服そうな顔をした。
「マジ何あいつ、やっぱり共同資金から金持って先に行きやがったなこの野郎。レゴを壊したことといいゆるさねぇ」
と、いうことは。
「ダンボール捨てたウィリアムくん?」
私の問いかけに、彼は目を瞬いた。
「捨てるしかなかったんですよ、ゴキブリが出てきたから」
「それは仕方ない」
私は即座に告げる。デイヴィッドの視線が痛いけど。
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