ネタ帳vol.3

2023ネタ帳79:中華組と遡り2

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「何故」
李子さんが片手で頭を抱えながらそうつげる。何かの術をかけたのか、それとも解かせたのかわかりかねる。ただ、李子さんにしろ陸治さんにしろあまり良い顔をしなかった。
「何故、忘れたままでいさせてくださらなかったのですか」
李子さんは苦々しいようにそう言った。仙人達がなんとも言えない顔をしている。楊戩さんがなんとも言えない顔をする。
「何故、記憶を呼び起こさせるのです……」
「やはり記憶を失っていたか。無理矢理仙界から降りるからそうなるのだ」
そう言ったのは素戔嗚だ。李子、どういうことだ?と尋ねた曹操さんに李子さんは何も答えない。
「素戔嗚、違う。李章が人間界に降りる際に私が記憶を消した」
「何?」
「人の子に戻るのならば仙界の知識など不要。そこで野垂れ死ぬ死ぬならその程度の人の子だったというわけだ」
まぁこのように生きているし、追っていった奴こそお前がいうそれだろう。
サラッと告げた楊戩さんに、お主の弟子じゃろうて、と伏犠さんが告げる。
「私の気が向いたから拾っただけだ」
「拾った?」
「川で死にかけていたのを拾った。どうせ野盗に襲われたか身投げだから放っておこうと思ったが、夫諸が助けようとしているのを見て興味を持った」
夫諸?と首を傾げれば、四本の角がある鹿のような水難を起こす幻獣でしたか、と孔明さんが口を開く。
「それは人の子の思い過ごしだな。あれらは善意で人の子に水難を告げているのだ。夫諸がいるから水難が起こるのではなく、夫諸は水難が起こるから逃げよと人の子に告げている」
ほぇ、神様の使いのようなモノか、と納得する。意識が朦朧としているのか李子さんがフラフラしているのを郭嘉さんが肩を掴んで支える。
「ナマエ、少し休んだ方が頭の整理がつくのではないかな」
「……是……少し休みます」
「連れて行こう。おいで」
郭嘉さんがそう言って李子さんを誘導する。李子さんは一礼するとよろよろとそちらに向かった。一方陸治さんはピンピンしている。
「やっぱりアイツなんかかかってたんですか。全く忘れているようだから様子を見てたんですが」
「なんだ、坊は覚えていたのか」
「まぁ俺もはっきりじゃないですけどね、あいつよりはマシ」
陸治さんはそう言って李子さんが消えた方を見送る。
「あのままでいさせてやった方が良かったんじゃないか?」
「忘れたままか?」
「ええ。あの記憶はただただ地獄でしょうよ。記憶がない孤児の方がよっぽどマシだと俺は思いますがね」
陸治さんはそう言って肩を竦める。魚粛さんが首を傾げた。
「陸治も李子殿も仙だったのか?」
「完璧な仙人になるのかはわかりかねるが、仙界にいたのは確かだ。アイツが人界に降りたのを聞いて降りてみたが、時間がズレたらしい。まぁ俺は無理矢理降りたからか記憶がなかったし仙術も使えなかった」
「ということは、李子殿も?」
「さぁな。アイツは俺とほぼ同じ年代にいたんだが……同い年扱いされてたが多分実際は年下」
「ん……?では李子殿の李将軍の家系という噂は噂に過ぎないのか?」
そう尋ねた魚粛さんに陸治さんは肩をすくめた。
「いや、元を辿れば同じだと思うが」
「陸治よ、李子に何があった?」
「詳しくはしらん。仙界に行くまえはほぼ敵だ。戦場で何回か出会したのと、最後らへんは俺もアイツのいた方の陣営にいたが。指揮よりおっさん達の護衛って感じで邪魔だった」
陸治さんの言葉に、毛利元就が「劉邦!」と声を上げる。
「高祖……お待ちください、先程、李子殿は李章殿と呼ばれていましたね」
「なんか伝わってんのか。おっさんはその辺り律儀だな」
「高祖をおっさん呼びか……」
苦々しく告げた孫堅さんに陸治さんは肩をすくめた。
「知らん。俺は元々楚の国の人間だぞ。親父が最終的に劉邦についたってだけだし、項羽と戦えるって聞いたからおっさん側着いただけだ。別におっさんに忠誠誓ってたわけじゃねぇ。だから恩賞もいらん」
「陸治さん脳筋じゃん」
そう突っ込んだ俺に陸治さんは「当時はな。若気の至りってやつだ」と返した。今はある程度考えているらしい。
「李子さんは?」
「詳しくは知らん。おっさんから聞いたのは、秦からとった唯一の略奪品だって話と、最後あたりで戻っておっさんに合流したのは予定外って話だけだ」
「予定外?」
「俺が加わったのも、アイツが合流したのも『嬉しい誤算』っつってたからな。本来ならあの大返しはなかったんだろ」
サラッと告げた陸治さんに大返し?と首をかしげる。陸治さんが劉邦だとか項羽というあたり、楚漢戦争あたりだと言うことはわかるが、細かいことがわからなすぎる。
「俺は何にも変わらねぇよ。李章はまぁ暗くなるかもな」
サラッと告げた陸治さんに李子さんが暗く?と思う。もしや、ぽこぽこおこる李子さんはもう見れない??仙人側がため息をつく。まぁいつかは思い出さないといけない記憶だろうが。

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郭嘉さんが戻ってきた。上着を脱いでるあたり多分李子さんに上着をかけてきたのか、李子さんが離さなかったんだろうか。徐庶さんがそれに気づいて首をかしげる。
「ナマエは?」
「今落ち着いてぐっすり眠ったよ。本当に思い出したくない記憶だったようだね」
泣き虫になってしまった、と告げた郭嘉さんに、泣き虫、と周りは繰り返す。荀攸さんが口を開いた。
「李章、と言えば高祖や魯元公主が『宝剣』。今は帝がおもちのはず」
「そうだね。私たちが聞いている『李章』は高祖が唯一、秦と言う国から略奪したもの。劉家の『宝剣』。劉家に危機が迫れば救ってくれるという剣だ」
郭嘉さんの言葉に、え?物ってこと?と聞けば、荀ケさんが肯定した。
「えぇ、物です。あくまで私たちの時代においては、ですが」
「恐らくは意味が途中ですり替わったのだろうな」
曹操さんの言葉に、俺は考える。
「えーと、つまり褒め言葉だった『宝剣』が、いつしか本物の剣に意味がすり替わったってこと?」
「そう言うことだね」
郭嘉さんが肯定した。毛利さんに詰め寄られていた陸治さんは口を開く。
「アイツ仙界に来た時一本剣を無くしてたから、多分モノも元を辿ればアイツの剣じゃねぇか」
「李子さんの武器は飛翔剣じゃん」
「今はな。仙界にいったから飛翔剣使うだけだぞアイツ。元はどっちかというと徐元直の撃剣についてる鏢を剣にした感じの双剣でめちゃくちゃ機動がはやい戦い方してくる」
そう言った陸治さんに徐庶さんが、ああなるほどと理解した。
「だからナマエは俺の教え方が馴染んだのか」
「まぁそれはお前の教え方もよかったんだろう」
サラッと告げた陸治さんに、徐庶さんがちょっと照れた。
「ふぅむ。興味深いな。李子殿あらため李章殿に話を聞きたいところだけど、聞かない方がよさそうだね」
「まぁ本人も落ち着いたら話してくれると思いますが」
郭嘉さんがそう言って肩を竦める。うーん、弱々しい李子さんがあまり想像がつかない。

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「嘉兄」
起きたらいないその人をさがしてしまったのは仕方ないと思うのだ。もうあの時代ではないというのに、かけられた羽織を被って、顔を隠す。どちらにいらっしゃるのですか、と小さく呼んでも彼はどこにもいない。
夢なのではないかと。あの、暖かな日は夢であったのかと。
そんな気がしてきて、泣いてしまう。まぁ、ナマエ殿?と公達さんが飛んできたのだが。
「攸兄様、」
「……随分と懐かしい呼び方を。そんなに泣いて、きっと夢見が悪かったのでしょう」
「……落ち着くまで、そばにいてくださると、助かります」
小さくそう言えば彼は一瞬驚いたものの、仕方ないですね、と困ったように告げた。

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しばらく寝込んでいた李子さんが復帰したが、やっぱり元気がない。まぁ、復帰した、というよりは、連れてこられたが正しいのであるが。まぁ部屋に篭ると余計内向きになるのもあるだろう。魏軍(軍師)と女媧が甘やかしてるだけ、とは陸治さんの発言であるが。李子さんもこのままではいけないと思ったのか、気丈に振る舞ってはいるが、何かの拍子にものすごいしょんぼりしている時がある。
「李子ー、元気出せって気軽に言えねぇけど元気だせって、な?殿達も心配してるぜ」
「はい、気をつけてはいるのですが……」
と、しょんぼりしていた李子さんが頷いた。李子さんと夏侯親子がセットでいるのは励まし隊なのか。曹操さんも心配してるっぽいしな。
「そういや、李子は俺たちのご先祖様も知ってるんだよな?」
「夏侯嬰様ですね。まぁ見事に夏侯惇殿と夏侯淵殿を足して割ったような方でしたが」
「馬車云々って本当なんです?」
夏侯覇はそう言って李子さんをみた。李子さんは首をかしげる。
「馬車云々?」
「子供突き落としたけど、娘の方は剣があったから助かったってやつ」
「あぁ、彭城の撤退ですか。魯元様は私が拾い馬に乗せて走りましたが、夏侯嬰様は馬車をお止めになられて珍しく本気で怒っていましたね。まぁそのあとは私は足止めにまわり、撤退は叶いましたが。その時の追っ手の先鋒が当時は項陸と名乗っていた陸治殿でした」
夏侯覇が納得したような表情を浮かべる。
「ああー、だからたまにアイツ李子殿がいなければって言うのか」
「私は結構彼に嫌がらせばっかしてますからね。彼の遂行の邪魔ばかりしている気はします。途中から劉邦様が面白がって私を当てがっていたような気はしますが……」
「陸治さんもそれ言ってた。同い年くらいだし、お前で決着つけろって再三言われたらしいよ」
俺の言葉に李子さんは目をパチパチ瞬く。夏侯淵殿が口を開く。
「李子の方が強かったのか?」
「いえ?今もそうですが力で言うと彼の方が強いので力で押し切られます。なので、出来るだけ自分が有利な場所に連れてきたり、無闇に暴れられない森や建物のある場所に誘導はしてました。項羽殿といい、陸治殿といい、力がとても強いので。今は通用しないでしょうが……」
李子さんはそう言って苦笑いをした。曹操さんが黙って聞いてるっぽいんよな。というよりか。
「李子さんって秦にいたんでしょ?」
「……えぇ、まぁ」
「なんで秦から高祖のところに?」
「……もとより私は祖父により子嬰様に仕わされた身でした」
「子嬰?」
「秦の皇族……秦王であられた方です。私は彼の護衛でしたが、彼が劉邦様に降伏した際に私を連れて行くように劉邦様に頼んだ、と張良様に聞いております。が、当の劉邦様は私を略奪したなどとおっしゃっていましたので真相は謎です」
「ふぅん」
「まぁ、私は劉邦様に下げ渡されたおかげでまた処断から逃れているわけなんですが」
あ、だめだコレ地雷だったっぽい。李子さんがしょんぼりした。夏侯覇がおれに肘打ちをする。曹操さんが李子さんをみて、郭嘉さんが首をかしげる。
「……また?」
「……ああ、いえ……父側の親族は国に処断され、たまたま母方の親族の家を訪れていた私は助かりました。そのまま私は母方の一族に育てられたので」
「ということは、お主が今名乗る氏は母方のものか」
「はい」
曹操さんの問いかけに李子さんが頷いた。満寵殿が問いかける。
「鹿を鹿だと言ったのかい?」
なんだそれは。満寵殿、と荀家が嗜めようとしたが、李子さんが首を左右にふった。
「いえ、あの問答の際には父はもう戦に出てらっしゃったので」
「李家……お祖父様が李斯なら君も処断されているね」
「李斯様とは私は違う家です。父や祖父はもしかしたら知り合いだったかもしれませんが、私には関わりがありませんでした」
満寵殿の言葉に李子さんが否定する。
「何その問答」
「趙高という悪政の原因となった人物がいたのですが、その方があまりにも権力を持ちすぎた為の問答です。鹿を連れて馬だと言いその様子を眺めたのだとか。正しい答えを告げた人は皆処断されたようですね」
「え、なにこわっ」
「それほどまでにその当時その人物の権力が高かった、ということです。扶蘇様や子嬰様が後を継いでいれば私は……」
そう言って目を伏せた李子さんは、否、それは過ぎ去った時のこと、と小さく呟く。
「すべては過ぎ去りし時の話……もう大丈夫です」
李子さんはそう言ってキリッとした顔で告げた。おおう、美青年フェイス。無理すんなよと夏侯淵さんが告げたが。


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「李章さまー!」
「李章!」
そう言ってかけてきた姿に固まる。というか、抱きついてきたのを受け止めるが。は?え?と内心混乱しながら見下ろした。
「阿魯様?」
「ああ、やっぱり李章様!お会いしたかったですわー!」
むぎゅっと抱きついてきた彼女に、いけませんよ、と嗜める。後からゆっくり追いついてきた張敖殿は私を見た。
「やはり李章か。顔を隠してはいないが、身なりからしてそうかと思っていたんだ」
「……是、この世界では隠す理由がない為隠していませんでしたが……」
いやこれ二人が来たとなれば私顔隠さないといけないのでは?
「は??なんで張敖とガキがいるんだ?」
「出たわね、脳筋」
「よぅ、案外世話焼きの脳筋」
その言葉に寵沙が肩を震わせる。まぁ、陸治殿が拳骨を落としたが。
「なぜ二人はここに?」
「二人で散歩をしていたら迷ってな、森を抜ければここにいた」
「張耳殿はいらっしゃらないのですか?」
そう首をかしげる。二人は口元を覆った。阿魯様に関しては、「はわわ、推しが尊い……」などと言っている。劉邦様のこの2人の姉弟は多分転生者っぽいんだよな。馬車事件あたりに思い出したようにも感じる。いつの時代から来たかわからないのが。張敖殿は首を左右に振る。
「父はいないようだ」
「そうですか……」
「ここは仙界か?」
「否……しかし、似てひなる場所です」
「仙人が作り上げた世界だな」
やれやれしながら陸治殿が告げる。いやコレ困る。後漢期である。彼女は高祖の娘だ。ある意味劉邦様が神聖化された今、彼女が現れると誰が面倒をみるかで恐らく揉める。現に陸治殿に至っては誰が面倒を見るんだと言う顔で私を見た。
「……とりあえず私の屋敷で面倒を見る他ありません。寵沙がいますが」
「それはそうだが、まぁ、坊主ならうまくやるだろ。俺はしばらく黙っておく。それよりも」
「はい、他の方々も迷い込まれる可能性があります」
そう頷けば二人は首をかしげる。
「とりあえず私の屋敷に向かいましょう」
「李章、悪いがもう何人かほど追加してもいいか?」
尋ねた張敖殿に構いませんが、と答える。おーい、田家よ、と言った張敖に田家の三人と蒙恬殿と女性が現れたのだが。私は固まる。
「あ?田横殿と田中と田広か。久しいな」
「ふむ?やはり項陸か」
とりあえず私はフードがないので顔を覆う。やばい。コレはやばい。
「顔を隠さなくても美青年なのになんで顔を隠してるんだ?勿体無い。誰だよ醜男説唱えた奴は」
「田中出てんぞ心の声が」
「えっ」
「見ないでいただけると助かります……」
そう言って顔を逸らす。田横殿が口を開く。
「しかし、お主誰かに似ているような」
「……気のせいでしょう。とりあえず私の屋敷に向かいましょう」
そう促せば彼らはついてくるのだが。

ちなみに。
「俺は大体二千年後から迷い込んでるから余計にわかんないんだよなぁ」
と、いった寵沙に、田中殿と張敖殿、ついでに阿魯様が握手を求めにいっていた。あの楚漢戦争あたりはおかしかったのでは?

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とりあえず全員私の屋敷で面倒を見ることになったので、業務の傍、服やらなんやら手配したりしていたのだが、郭嘉さんにバレた。やっぱりなぁと思う反面、これでようやく相談できると思ったわけである。まぁ今は海外式壁ドンで行手を阻まれてるけど。
「それで、ナマエ、囲っている女や男はあなたに相応しい人なのかな?」
と、問題発言ともとれる発言をした郭嘉殿に、周りもこちらをみる。浮かれた噂がなかったからだろう。
「奉考さん、私は今ちょうどそのことで困っていてご相談したく……」
「男女のことならば、私は何にも助言できないのだけど」
そう言った郭嘉さんにしょんぼりする。勘違いされている。郭嘉殿、と荀ケ殿が嗜めたが。賈詡さんが笑いながら私の肩を叩く。
「まぁ、言い訳くらいはきいたらどうだ?なぁ、ナマエ殿」
「違います、みなさまの勘違いです」
「勘違い?」
「本当に困っているのです……」
「放り出したらいいんじゃないかい?」
「できかねます……私が李章であった頃に生きていた方々を保護いたしました」
今は食客として養っています……
そう顔を覆って告げる。彼らは顔を見合わせた。荀ケさんが口を開く。
「もしや高祖ですか?」
「いえ、彼なら流石に曹操様や劉備殿、孫堅殿たちとの会合を整えます。そもそも彼なら全員漢の臣下なら自分の臣下だろうというある種暴論ともとれる発言をされるというか……まぁあの人なら曹操様達と恐らく上手くやるので特に気にしないと言いますか……」
そう、劉邦様なら気にはしないのであるが。私の歯切れが悪かったからか、郭嘉さんが首を傾げた。
「扱いに困る人なのかな?」
「……阿魯様がいらっしゃいます」
「阿魯?」
「ええと、張敖殿と、その妻であり劉邦殿の娘です。あとは斉の田家の三人衆と蒙恬殿、その姪の蒙琳様がいらっしゃいます……」
そう言えば彼らは目を瞬く。
「弟である劉盈様がいらっしゃらないだけまだ救いですが……この時代の生き方に馴染ませるのと何処で面倒をみるかで一揉めしそうでしたので、少しの間私の屋敷で過ごしていただいておりました」
私の説明に郭嘉さんは少し考える。
「彼らはどうやって迷い込んだと?」
「皆霧の中で迷ったらこの世界だと。時間はさまざまです。張敖様と阿魯様は統一後ですが、斉の方々は統一前から……」
と言った後に考えたくない可能性を考えてしまうのだが。
「……項羽や秦の者が妖魔と関わってしまうと厄介ですね」
「そうだね。恐らくナマエと知り合いだと言えば、こちらで面倒を見ることにはなるだろう。早めに通達を出しておこうか」
「はい、そのように」
郭嘉さんが当然のように同じ方向に帰ろうとするので首をかしげる。
「郭嘉殿は仕事では?」
「挨拶するのも仕事のうちだよ」

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李子さんが顔を隠した。なんでだ?と思ったら妖魔軍に楚と秦が合流したっぽい。で、だ。その理由を察する。目の前にいる将の目元が李子さんにそっくりだったからだ。この人もしや李子さんの血縁では?ということで剣を弾き、静止をかける。

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「やっぱり李子さんに目元似てる気がする。氏が違うから血が繋がってるわけでもないもんなぁ」
と章邯さんの目元を見ながら考える。若干垂れ気味な切長な目である。元は文官らしい彼はめちゃくちゃ強いのだが、徐庶さんみたいなもんかとも思う。彼は少し困ったように口を開く。
「李子……?」
「ああ、えっと、李章さんってなるいえばわかります?」
と告げれば彼はなんとなく理解をしたのだろう。ああ、頭巾で顔を隠した彼か、と理解を示した。
「……彼が何故顔を隠しているのか知っていますか?」
「いや、知らない。この間まで普通に顔晒してたし……」
楚漢秦あたりの勢力が現れ始めてから隠した、が正しいのだろう。

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酔っている李子さんが、章邯さんの裾をつまむ。そうして、どうしてですか、と小さく呟いた。
「貴方との約束を信じていたのに、どうして貴方は戻ってきてくださらなかったのですか」
なんだなんだと周りは李子さんと章邯さんをみる。董翳さんも彼を見、司馬欣さんが人違いではありませんか?と李子さんに尋ねる。恐らく章邯さんもそう思ったのだろう。同じく人違いではありませんか、と尋ねる。李子さんは首を左右に振った。
「貴方は私の身になにかあれば、何処にいても助けに来てくれると約束したではありませんか」
その言葉に章邯さんは動きを止める。恋仲か?とざわざわしている周りに、李子さんは泣いているらしい。
「何度、何処にいるかもしれない貴方に助けを願ったでしょう。貴方が今の状況を変えて元に戻してくださると……何度、貴方の身を案じたでしょう。でも、貴方は……私を見てくれぬのです」
「それは、」
「理解しています、貴方に取っては私は死人です。私は死んでいるのです。母たちと同じく。お祖父様にはそんな望みなど捨ててしまえと何度も私に告げました」
その言葉に、章邯さんが目を見開いたのがみえた。
「阿李はそれでも貴方とまた暮らせる日を願っていたのです。なのに、貴方は、最後まで私の元に帰ってきてくださらなかった」
その言葉に章邯さんは震える手で李子さんの頭巾を外す。章邯さんは李子さんの顔を見て息を呑んだ。
「お父様、阿李を置いていかないでくださいませ」
そう言って泣き崩れた李子さんに、周りは騒然とする。父親!?という言葉がもっとも多いが。一部が若干違う反応をみせる。俺は驚いた。まじかよ。章邯さんが李子さんを抱き寄せる。
「よくぞ、生きていてくれた、我が子よ」


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「なんでさっき一瞬顔顰めたの?」
と、魏軍師にきけば、なにやら李章さんの大返しは章邯さんと戦っていた場所で戦勝をあげてから合流したらしい。ん?と首をかしげる。と、いうことは、だ。李子さんもしや父親を殺して?と思ったが、どうやら自害したらしい。
「恐らく目の前でね」
郭嘉さんの言葉にうわぁと顔を顰める。忘れていた方がよかった、とは李子さんの言葉であるが、確かにそうかも知れない。

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