ネタ帳vol.3

2023ネタ帳83:鷹丸ネタ

01/14 17:38 


「は?苗字?」
見かけた姿にそう口を開いてしまったのは仕方がない。実況役も「そんなわけないでしょう」と言って、寄ったカメラで気づいたらしい。は?と同じように声を漏らすと、慌ててスタッフから受け取ったシートをみた。俺もみてみれば今まで空白だったコーチ欄に苗字の名前が乗っている。高校紹介VTRで学校に雇われたコーチじゃないけどコーチっぽい人がいるとはキャプテンが言っていたが恐らくそれが苗字だったのだろう。
ーーあの苗字が立っている。立っていることさえも絶望的だと言われた男が。歩いている。こともあろうが、指導している。
「アイツなんで俺に連絡してこないんだ」
と漏らしたのは仕方ない。まぁそれは持田や花森、達海やアイツの古巣も思っていることだろうが。

思えば、この高校の応援はいつかのETUに似ている。廃校が決められた高校で、生徒数が少ないがために街の人も応援に来ているからかまるでプロの試合だ。そんな中に立つ高校生が緊張しているかと思えばそうでもない。円陣、そして全員ハイタッチしたあと、苗字は監督ーーというより年老いた顧問を席に座らせると自分は立ってピッチを眺めた。

今までの謎が解けたというか。
顧問は生徒たちが自分で考え出して戦略を組み立てていると言っていた。苗字は考えることができる人物だ。戦術の理解度が高く、それでいてそれがうまく当てはまらないチームと当たった場合違う戦術を使う時がある。その行為に相性がいい監督と悪い監督がいるのは確かだ。代表でも出さないようにしたい監督は苗字のような柔軟か考えを嫌う節がある。どちらかといえば昔のETUもそうだ。しかし、海外で苗字は圧倒的な評価を得た。恐らくは苗字は全員にそれを仕込んでいる。そこに苗字が来たらどうなるか。ゼロゼロでの折り返しだ。力はずっと拮抗しているはずだった。

ーー揺れる。ゴールネットが揺れる。

決めた選手は一目散に苗字に駆け寄ってハグをする。この時間での失点は相手にとっては痛いだろう。総じて苗字みたいなサッカーをするストライカーと持田みたいなやつ、途中交代ではいった花森みたいな奴と椿みたいなやつがいるのだ。そこをつなげてしまえばもう決定的だろう。
長い笛が鳴る。長い長い笛が鳴って、駆け寄ってきた選手たちに苗字は笑いながら宙を舞った。

==

「俺たちの!コーチじゃないけど!コーチ!」
とインタビュアーに向かって言った鈴木に「今日は流石に給料発生してるのでコーチですねぇ」とすれ違い様に言えばマジ!?と彼は振り向いた。顧問の先生が今までの指導は苗字さんがしてくれたと言ったのでインタビュアーがこっちにきた。やめろ。
「今日だけ雇われてグラウンドに立った苗字ですー」
「今日だけってお前なんだそりゃ」
とやってきた成田さんに、成田さんじゃん!!と声を上げる。
「成田さんに会いに行こうと思った矢先会えてラッキー!」
「阿呆、質問に答えろ」
「いやー、今までは勝手に俺が口出してただけで給料発生してなかったんですよね。あ、念のため指導資格はとってるよ」
「今までは裏から指示を?」
「ないない、それはズルだかんな。今まで俺がやったのは情報共有の徹底と、終わった後の反省会の口出し、技術考え方を伝えただけだから。考えたのは選手たち。俺はずっとサポート。今日は指揮若干取ったけど」
お前が無給……みたいな顔を成田さんにされたので、俺は口を開く。
「高校生にリハビリ付き合ってもらったんだから、高校生に見返りないとダメだろ?俺が利用してるから俺も利用されてる。そういうことだよ。この結果はアイツらが頑張った結果だから、俺どうこうじゃなくてアイツら褒めてほしい。じゃあなー、俺は向こうのチームに挨拶してくるから」
ひらひらと手を振ってから成田さんにあとでライン交換しよ!と言っておいた。まぁ高校生にわらわらひっつかれる前に、成田さんが叫ぶように問いかける。
「苗字、まさか、お前、サッカーできるのか?」
俺はそれにニッと笑って答えるのだ。
「コイツら翻弄できるくらいにはなー」
「ひっでぇ!!最初俺たちの方が上手かった!近所の小学生にやられてたのに!」
「鈴木、シーッ!」

==

「苗字」
「笠野さんじゃん!久しぶり!!」
成田さんと連絡先交換したあと撤収準備をしていたら声をかけられる。いやー、GMとかスカウト大量にきてるもんな、今日。笠野さんもいたんだな、と言えば彼はまぁなと頷いたが。
「おっちゃんに連絡できなくてごめんっていっていて」
「あぁ。まぁそこは達海で慣れてるだろ……サッカーできるようになったのか」
「まぁね。でもだいぶレベル下がったよ。フルでやれば高校生くらいじゃねー?今のところ高火力維持はできないし」
やれやれしながら言う。笠野さんは俺の隣に並んだ。
「プロに戻る気は?」
「戻る気でいるからトライアウト受けたいけどあれどこあかしろに所属ないと無理だろ?どうしたもんかなぁと考えてたとこ。まぁ育成も楽しい気はするよ。今バタバタしててさー」
「何にだ?」
そう告げた笠野さんにこれまだオフレコねといいながら答える。
「廃校になる関係で2年のコイツらをどっかのチームに入れたいんだけど、その関係で誘致することになってそのことで」
「誘致?」
「この近辺のチームとかETUとかにも挨拶しにいくとは思うけど、男女ともにユナイテッドの養成とか」
そう言えば彼はピタリと動きを止めた。というか聞き耳を立てていた周りがこちらをみた。何これ面白い。


==

「連絡くらいよこせ馬鹿者ー!」
とはETUのおっちゃんの台詞である。いってー!と落とされた拳骨に頭をさする。有里ちゃんもそうよそうよ!と告げて殴られる。自分が悪いとわかっているので殴られているが。
「悪かったって、連絡先全部飛んだんだよ」
「ったく、そんなとこまで誰かさんに似なくていいのよ」
とやれやれした有里ちゃんに、苦笑いする。そんな気はないのだが。後ろにいるリフィンと稲瀬さん(女子監督)とユーゴと椎羅さん(男女ユース監督)が目を白黒させている。とりあえず英語でこれ通常運転と告げた。まぁ有里ちゃんがそこで4人に気づいたんだろう。ハッとしたように誤魔化した。笠野さんが4人を眺めて口を開く。
「苗字が人を連れて来たってことは正式に決まったのか」
「まだリリースはしてないけどな。ユースとかスクールの方に挨拶しときたくて」
「ユース?なんでまた」
「スクールとユースのチーム作るんだよ。あと女子プロのチームと。練習試合とかするにも横の繋がり作った方がいいし、その挨拶回り」
「ユース?何処の?」
「俺のもう一個の古巣」
そう言えば彼らは叫んだが。騒ぎに顔を出したのは達海さんである。
「あ?苗字じゃん。今日練習でミニゲームするけどしていくか?」
「え!行きたい!」
はいはーいと手を上げる。行ってきていい?と四人に聞けばゴーサインが出たのでいくとする。よっしゃあぁ!練習じゃあ!!


「ふつーにできてるじゃないっすか!」
とは赤崎のキレ芸である。クロちゃん先輩のキレ芸を引き継いだらしい。うむうむと頷く。
「いやー、瞬間的な火力はあるんだよな。ミニゲームくらいならこれくらいなんだよ。問題はフルゲームなんだよな」
そう説明すれば杉江が口を開く。
「体力的な問題か?」
「それもある。スタミナ作り頑張ってんだけど、無意識に庇ってる箇所があるっぽくて、攣ったような感覚になったりするし、まぁ学生相手ならできるけどプロ相手はわかんねぇのよ」
「結局膝なのか?」
「足もあるけどどっちかと言うと腰。もうちょっとで脊椎やってガチで下半身付随になるところだったって聞いた。ラッキー」
「軽く済ませることッスか?」
「今動けてるからな。まぁプロ精神云々って言われると謝るしかないけど、その時のことを別に後悔してないしな」




==

「だーれだ」
と、ふざけてハナちゃんにしてみる。目を隠されてパニックになっているハナちゃんだが、しばらくして、ナマエ、と俺の名を呼んだ。手を離せば振り返った彼にあたり〜と言ってみる。彼はそれを見て泣いた。さめざめと。しょうがないなぁとその涙を拭ってぐしゃぐしゃ頭を撫でる。まぁ自分がが悪いわけだし。まぁ、アレックが気づいて飛んできたが。

==

平泉監督と話していたら蓮が通りかかったので手を振る。こちらに気づいた蓮は俺を見たが。
「何、生きてたのお前。連絡ないから死んだと思った」
「悪い悪い、連絡先ぶっ飛んでさー。連絡先くれ」
「いーよ」
ハナちゃんとは違ってサラッとしている蓮である。ハナちゃんは散々泣いて一緒にサッカーしたらまた泣かれた。でも言葉が刺々しいから多分怒ってはいる。
「怒ってる?」
「わかってて聞いてくるあたりお前タチ悪いな」
「いやー、だってメンタル死んでたからさー、多分会ってたら暴言ふっかけてた可能性があるから。それはちょっとな」
困った顔してそういえば、蓮はお前の暴言ね、とこちらをみる。
「心配してくれた?」
「別に?お前だから戻ってくると思った」
その言葉に嬉しくなって目を輝かせてしまったのは仕方ない。蓮がでれた!!
「当たり前じゃん!!伊達に不死鳥の相棒してるわけじゃないし!」
「うざっ」
「熾烈じゃーん。デレをくれ、デレを」
「は?つーか、お前どっかチーム入ってんの?ETU?」
「いや?平泉さんとも話してたんだけど、来季復帰目指してトライアウト受けようかなとは思ってるけど、フルタイムはちょっと不安がのこんだよなぁ。なんて言うか、瞬間火力はあるけど持続が難しいというか」
そううむうむと頷いていれば「ふーん」と返事をした。
「スタミナ配分バグってるだけだろ」
「それは正しい」
「今日入ってったら?」
「蓮にその権限はないとおもうなぁ」
と言いながら平泉監督をみる。今日は流しみたいなものだから構わないと言ってくれる平泉監督流石すぎる。やったー!と喜べばロッカーこっち、と蓮に首根っこ掴まれたが。
「ついでにいうと城さん今季引退だし」
その言葉に俺は言葉を詰める。は??
「はー!?何それ!!来季にしてもらって!!俺と試合してからにして!!」
「知るかよ、復帰遅れたお前が悪い」
「ぐぅっ、そりゃそうだけどさー、去年の今頃はまだやばかったんだって!城さん引退後なにやんの?」
「知らねー、しばらくニートじゃねぇの?」
「えっ、ガチめに俺が噛んでるスクールで教えてほしい」
とこぼしたら蓮に頭を掴まれた。いたい。
「いででで」
「ふーん?高校のコーチといい、スクールといいお前いい回り道してんね」
「いやアレはフィジコいないから近所の高校生で調整してたから向こうにも利用されてたというか……いででで」
平泉さんが目をパチパチしているし、東京Vのスタッフが和んでいる。暴君と俺の絡みに和むのやめろ。
「あ!!城さーん!!」
「苗字!?」
「城さん!!就職先決まってないなら引退後スクールかユースの先生やらない!?」
「は?」
「お前話飛ばしすぎ」

==

「ふっふー、やっぱ俺上手くない?」
「俺よりだいぶ下手」
「くっそーー!下手になってるから返せん……!」
そう言いながらぽこぽこする。レオが持田嬉しそうとポルトガル語で告げた。だろーと同意しといた。蓮がこちらをみる。
「お前いつくんの?」
「まず三雲どかさんと」
と三雲を指差したら三雲が「えっ」と固まった。
「俺とお前揃ったらハナがうるさいから無理」
「そくいは三雲庇ってやれよ」
「椿どくだろ。そこはいったらお前」
そうサラッと告げた蓮にうぐぐと三雲が怒っている。
「えー、椿の後釜入れんのかなぁ。まぁ確かに俺とお前そろうと監督の胃が痛くなるな。三雲うまいし。最近態度お前化してるけど」
っていったら蓮がへぇ、調子乗ってんな?って言いながら三雲みた。すまん三雲。

==


category:鷹丸(gk.vt)