過去を生きる少年と今を生きる青年は
僕はいつの間にやら海帝の生徒になっていたらしい。通されたのは、一年生のクラスだ。どうやったんだろう。よくわからない。頭がグチャグチャしてて、思考が回らなかった。僕はとりあえず、海帝の生徒だ。みんなはいないけど。ノノについて廊下を歩く。
「零、?」
そう声をかけた人に目を見開く。その人もこちらに近づく。大きな身長、そして、まっすぐな目に、うれしそうな感情をにじませている。
「零!? 何でこんな場所に! 無事だったんだな!!」
歩み寄って来た人は、僕を抱きしめた。タミヤに似てる。ノノが僕を見て、彼を見る。
ああ、良かった、と繰り返す彼に、グチャグチャとしてた思考が、少しだけおさまる。そのまま為すがままになっていたら、彼は僕を慌てたように離した。
「あ、悪い!!」
そう言った彼に首をかしげる。
「タミヤ?」
僕の言葉に、彼は少し動きを止めた。困惑してるのがわかる。
「零、俺はタミヤじゃない」
何言ってんだよ、と笑った彼はタミヤにしか見えなくて。タミヤ、と僕は呟く。視界が滲んで、ポロポロと涙が流れた。タミヤは僕に合わせて少し屈む。相変わらず背の高い奴め。身長が低い僕への嫌がらせか。しかし、そんな文句は頭の隅にすぐに追いやられた。消えていたはずのあの子の声が聞こえる。でも、まだまだ何を言っているかは聞こえない。
「零?」
「タミヤ、会いたかったよ、」
「だから、俺は――」
「海帝に通ってたなら、早く言ってよ、タミヤの馬鹿」
そういった僕にタミヤは顔をしかめた。そして、何か言いかけて止まる。何か感情を押し殺すように目を伏せて、そして何か意を決したように目を開けて僕を見た。
「・・・・・・零、どうしたんだ? 俺にいってみろ」
「タミヤ、」
「ああ、なんだよ、零」
「……――タミヤ、助けて」
ポツリと出た言葉に彼は動きを止める。ぽろぽろと涙がこぼれた。
「タミヤ、助けて。どうしたらいいのかわからないよ。ひどいこと、たくさん、たくさん、された」
「ひどいこと、?」
「ねぇ、タミヤ、もうやだよ。僕、こんなのやだ」
――助けて、僕のヒーロー。
タミヤの視線が僕から違う方へ向く。ノノが「俺じゃない!」と叫んだ。タミヤが庇うように僕を引き寄せる。暖かい。壊れ物を扱うように、そっと頭を抱えられて顔を胸板に押しつけられる。
「俺は何もしてない!」
「……零、行こう。コッチだ」
「本当だ!」
ノノを無視して、タミヤは僕の手を引く。僕はつられて歩き出す。ノノがもう一度、違う! と叫んだのが聞こえた。
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